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« イーサンファンには悲しいニュース | トップページ | 世界バレエフェス概要発表雑感 »

2006/04/06

「ブロークバック・レイク」

友人に教えてもらった、サンフランシスコの新聞の、マシュー・ボーン「白鳥の湖」に関する興味深い記事。
なんとタイトルが「Brokeback Lake」である(!)

http://www.sanfran.com/home/view_story/1244

この文章の筆者Paul Parishは、マシュー・ボーンの「白鳥の湖」のシノプシスを聞いたときに、すぐに「ブロークバック・マウンテン」を連想したそうだ。男同士、そして白鳥と人間との不可能な愛、社会的に果たさなければならない義務と、人間としての生き方との葛藤。そして犠牲。

Paul Parish氏がフレデリック・アシュトン演出による「白鳥の湖」を初めて観たときに感じたこと、それは、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を読んだりダスティン・ホフマン主演の映画「卒業」を見た時のような感情が襲ってきたという。その時この筆者はちょうど大学生で、ベトナム戦争の時期だった。戦争に行ったら、憎んでもいない敵を殺さなければならないのか? その疑問は、「白鳥の湖」の王子の、「愛していない人と結婚しなければならないの?」という疑問と重なって、単なる絵空事とは思えなかったと彼は述懐している。

「マシュー・ボーン版の白鳥の湖では、一見チャップリン的な喜劇的な描写が皮膚の下に感情として伝わっていくのを感じる。哀れな幼年時代の王子は、まるで洗車をされるかのように召使たちに体の手入れをされる。不機嫌な王子の姿を見て、ここで観客は彼に感情移入をするのだ。白鳥たちと公園で踊った時に初めて、王子は自分が受け容れられたということを感じた。ザ・スワンが彼の胸に顔を埋めた時、それを許してくれなかった冷淡な母親を思い、観客は涙する」と。

チャイコフスキーは同性愛者であったといわれており、その死も、実は自殺だったのではないかという噂がある。しかもホモセクシャルであることがツァーにばれて自殺を強要されたという説までまことしやかに囁かれていた。ここで、王子の死とチャイコフスキーの死が重なっていくのである。
そしてまた、「ブロークバック・マウンテン」のカウボーイの死も。

私が古典版の「白鳥の湖」を観ていつも不満に感じるのは、4幕のつまらなさである。王子が悪魔と戦って愛の力で勝利を収めるのも、王子とオデットが二人で死を選ぶことで悪が滅びるのも、違和感がある。2幕、3幕であれほどまでドラマが盛り上がっていたのに、4幕はほとんど蛇足としか思えないのだ。(ヌレエフ版の「白鳥の湖」はまだ観ていないのだが、どうやら、オデットを救うことのできなかった王子が一人取り残されるという終わり方のようで、それはもう少し説得力があるのではないかと思われる)
4幕の音楽の圧倒的なドラマティックさ、悲劇性はかのプティパやイワーノフの振付でも再現できていなかった。チャイコフスキーは自らの悲劇的な死を予感しており、自分の死と王子の死を重ね合わせてこの部分を作曲したのではないか。しかし、王子の自殺で終わるはずのこの作品は、プティパ/イワーノフによって王子とオデットの心中に書き換えられてしまう。

そして、このPaul Parish氏の見解、チャイコフスキーの圧倒的で、まるで世界の終わりが来たような、カタルシスをもたらすエモーショナルな音楽に真にマッチするのは、このボーン版の白鳥の4幕の振付であるという意見に、私も同意するのである。

「今までは「白鳥の湖」のこのシーンを見たときには「卒業」を思い出していたのが、ボーン版を見てからは「ブロークバック・マウンテン」を見たときの感情が甦ってくるようになった」「なんという不公平な、間違った世の中だったのだろう。王子だろうと王女だろうと、カウボーイだろうと白鳥であろうと、なんという悲劇であったことだろう。彼ら恋人たちは、幸せになるチャンスすら与えられなかったのだから…」

しかし悲劇であったからこそ、現世では結ばれなかったからこそ、この愛は胸を打ち、忘れがたいものとなったというところが、たしかに、この二つの作品に共通する点なのだ。

それが同性愛であろうとなかろうと、実のところ関係はない。自分の生き方を周囲に認められず、周囲を恐れて本当にしたいことができず、壁を打ち破る勇気も持てずに一歩を踏み出せなかったことで、幸せになることができなかった。そんな経験は、誰にでもあるものだ。この普遍性こそが、二つの作品がいつまでも輝きを放つであろう理由なのだと、この批評を読んで思ったのだった。

(というわけで、「ブロークバック・マウンテン」を観て気に入った方はぜひDVDででもボーン版「白鳥の湖」観てみてください。逆に「白鳥の湖」が好きな方は絶対に「ブロークバック・マウンテン」にハマるはず)

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コメント

>チャイコフスキーの圧倒的で、まるで世界の終わりが来たような、カタルシスをもたらすエモーショナルな音楽に真にマッチするのは、このボーン版の白鳥の4幕の振付である

私も激しく同感。この記事(ココの日本語の方ね・笑)を見てさらに納得です。この著者ポールさん、この白鳥(チャイコフスキー)談義をさらに含まらせて本にしたら私買うのに・・・(和訳本出してくれたらね)。
「ブロークバック・マウンテン」を早く見なければ!

大丈夫よ、もし本が出たらnaomiさんがちゃんと訳してくれるから!
私も欲しいその本。

うるるさん、
そう、私も是非このポールさんにもっとディープに白鳥を語っていただきたいです。

ずずさん、
う、プレッシャーだわ(笑)
白鳥の湖だけについての本ってもしかして今まで出ていなかったのかもしれませんね。そういうのが一冊あれば結構売れると思うんだけど。マシューの本だって韓国では発売になっていたのに日本ではでていないし。

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