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2006年3月

2006/03/30

ブロークバック・マウンテン

※ネタバレ満載です。未見の方はご覧になってから。

「お前のせいでオレはこんな人間になってしまった。オレをどうか楽にしてくれ」と苦しそうに叫ぶイニス。あの夏からもう20年近くが経っていて、すでに若さもなければ、希望も失いかけている。恋愛というものは、決して人を幸せにするとは限らない。それどころか、不幸にしてしまうことの方が多いのかもしれない。それでも、その出会いがあったからこそ、その物語はずっと語り継がれ、人間の美しさを伝えていく。I sware (永遠に一緒だよ)の言葉とともに。

1963年。ワイオミン州ブロークバック・マウンテン。羊の放牧の仕事についたイニスとジャックというふたりの20歳の若者。美しいが厳しい自然の中でともに生活した二人は、やがて身を寄せ合うように結ばれる。夏が終わり二人は別れるが、それは20年にもわたる愛の始まりだった…。

カウボーイ同士の禁断の愛を描いた作品、というのが世間的な認識ではある。しかし、これは同性愛についての作品ではない。どうしようもない高い障害に阻まれ世間から決して理解されることのない愛の物語。二人のすべてはブロークバックにあり、二人の残りの20年間はブロークバックで過ごした日々を反芻し夢見続けたのである。20歳の夏のかけがえのない日々、ともに過ごした愛しい存在を想い続けることで、その後の人生はどのように変えられてしまったのか。そして人は生き方を変えることができるのか、望み通りの人生を生きることができるのか。

ジャックは言った「俺たちには、ブロークバックマウンテンの思い出しかない」と。あの楽園での夏の後も、彼らは短い逢瀬を続ける。が、お互いに家庭を持つ身となり、また同性同士ということで人目を忍ぶ付き合いとなる。あの時のような、何もかも輝いていた幸福感は二度と訪れなかった。不器用なイニスは、生活に疲れ、ジャックとの関係に気付いた妻と娘たちに去られてひとりぼっちに。一方、金持ちの娘と結婚したジャックは、金銭には不自由しないものの妻の家族には疎まれ、イニスを想いながらも牧場主と関係を続けている。彼らの人生の中で本当に美しかったのは、ブロークバックで過ごした日々だけだったのだ。象徴的なのが、ジャックからイニスに送られるのが、いつもブロークバックの山を映したポストカードであること。最初に別れてから4年後、郵便局留で届いたこの絵葉書を見た時、イニスはたちまちジャックのことを思い出して懐かしくてたまらなくなった。そしてポストカードのやり取りはそれからずっと続くことになる。

障害のある恋愛については、いくらでもドラマティックに仕上げることができるだろうに、それがなされていないことに好感が持てる作品だ。ブロークバックで出会った二人が結ばれるまでの過程も淡々としており、美しく厳しい自然の中で次第に相手を愛しく思う様子が、台詞が少ないのに伝わってくる。だからこそ、あの寒い夜にテントの中でどちらからともなく結ばれることも不自然ではなく思えるのだ。特にイニスは寡黙で口下手という設定なのだが、だからこそ、言葉に依存しない感情が伝わってくる。

「あれは1回限りのことだ」「オレはおかまじゃない」と、初めての行為の後イニスは言う。イニスは、自分自身が同性愛者であることを激しく否定しようとしていた。そのために、ブロークバックを降りて間もなく結婚するのだ。しかし、その言葉とは裏腹に、二人はしっかりと結ばれていた。夏が終わり、何事もなかったかのように、連絡先も伝えずに別れた二人。だが、イニスの激しい慟哭ぶりに、いかに彼が深くジャックを愛してしまったのかが現れていて、胸が痛くなる。
子供の時のトラウマから同性愛に抵抗を持ち、感情を表に出すことが苦手なイニスが、搾り出すように一人物陰で涙を流すところも、決して大げさな描写ではないゆえ、響いてくる。
対照的に、情熱的で、イニスを求める自分を抑えられなくなっているジャック。離婚したばかりのイニスと過ごすことができず、情欲をもてあましてメキシコに男性を買いに行ってしまうところが哀しい。

彼らの結婚生活を経てからのうんざりするような日常も丁寧に描かれている。結婚式の時には初々しかったイニスの妻アルマもやがて生活に疲れてくすんでいき、ジャックとのラブシーンを目撃してからはもはや彼を愛することができなくなっていく。イニスがふがいないため幼い娘二人を抱えてスーパーで働かなければならない、貧しい田舎での暮らし。ジャックは妻となるラリーンとロデオの会場で出会い、勝気で積極的、華やかな彼女に惹かれる。だが、やはりジャックの本当の愛が自分にないことに気付いたラリーンは服装ばかりが派手になって不満を募らせていく。時を重ねることで変わっていく様子を、二人の女優は実にうまく表現している。

それでも、ラリーンはジャックを愛していたのだろう。ジャックの死を知ったイニスからの電話に、最初は事務的に対応する彼女が、「遺灰はブロークバックマウンテンに撒いて欲しいと言っていたわ。あの頃が一番楽しかったと彼は言っていたわ。青い鳥が舞い、ウイスキーの川が流れる土地なのかしら」 と話す時の声の震え。これもまたとてもせつない。

ジャックはイニスと二人で牧場を経営したいと考えていた。しかし、父の手によって惨殺された同性愛者の死体を見てからのホモフォビアであるイニスは、その提案を拒否してしまった。もし、あの時Yesと答えていたら…。
人生なんて、もし、あの時という後悔ばかりだ。でも、後悔ばかりが人生ではない。

なんといっても、シャツの使い方!ジャックの粗末な実家のクローゼットにあった、シャツ。血染めの自分のシャツが、見覚えのあるジャックのシャツの下に重ねられていたこと。ブロークバックで過ごしたあの夏、けんかをして鼻血を出してしまった時のものだ。ジャックがこの世にいなくなっても、この重ねられたシャツだけで二人は永遠に結ばれていたことを示していた。ジャックから届けられた、ブロークバック・マウンテンのポストカードと、「I sware 」の言葉。シャツとポストカードで、この物語は光り輝き語り継がれるものとなった。やっとイニスは負け犬から抜け出して新しい人生を歩みだすことができるのだろう、と私は思った。クローゼットとは、もちろん、カミングアウトすることの隠喩でもある。

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2006/03/28

Gene Schiavone Gallery更新

アメリカン・バレエ・シアターを中心に撮影している写真家のGene Schiavoneさんのギャラリーは少し前にリニューアルをしていて写真を観やすくしたのだけど、今日久しぶりに覗いてみたら新しい写真が大幅にアップされていた。

昨年10月のシティセンターシーズンでの「アポロ」「牧神の午後」「In The Upper Room」「Gong」、さらには「シルヴィア」2月にワシントンで公演した「ロミオとジュリエット」、3月のシカゴでの「海賊」が早くもアップされていて嬉しい限り。

なんといっても「海賊」でのイリーナ・ドヴォロヴェンコが美しい~こんなに美人なバレリーナは世界中探していもいないのではないかと思うほど。もちろん体のラインも綺麗。ゲネプロの写真もあるのだけど、旦那マキシムの髪型、かなりやばい感じ。
それとジェローム・ロビンス版の「牧神の午後」はデヴィッド・ホールバーグのとんでもない美少年ぶりに驚く。大きな青い目に吸い込まれそう。相手役のステラ・アブレラのオリエンタル・ビューティも素敵。ジュリー・ケントは好きではないけどやっぱり美人は美人ですな。
「アポロ」はホント、ホセ・カレーニョのためにあるような役だね。この間のマラーホフの贈り物では女神はテレプシコーラしか登場しなかったけど、ちゃんと3人出てきて、あの面妖なポーズをとらせるのが「アポロ」だと思うのだ。

ABTといえば、METシーズンの一般発売は4月10日とのこと。フリオ・ボッカの引退公演「マノン」は即日完売必至なのでチケット取りがんばらなければ~

2006/03/26

SWAN MAGAZINE/バレリーナへの道

あちこちで取り上げられていますが、SWAN MAGAZINE2006年春号はパリ・オペラ座特集です。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582833209/ressurreccion-22/ref=nosim/この本のメーンコンテンツであるMaiaまいあーSWAN actIIのヒロイン、まいあはパリ・オペラ座学校の生徒であるという設定からして、マッチしていますね。
有吉京子さんによる表紙は、「ル・パルク」の第3幕のシーンから。そしてマニュエル・ルグリ、カール・パケット、ドロテ・ジルベールのインタビューが掲載。3人とも、カラーの写真がとても素敵。カールはちょっとベッカムに似ていますね。
ルグリは「オネーギン」で共演したマリア・アイシュヴァルトを大絶賛(たしかに、その大絶賛に値する素晴らしい演技でした)。そして、定年後はカンパニーを持ってみたい、コーチをしてみたい、振付にも挑戦したいと語ってくれているのが興味深いです。
カールは「フランスでは昔からの言い伝えで、木を触ると長く踊りつづけられるんだそうです。だからいつも机とか木を撫でています」って言っているのが可愛い。とってもいい人そう。
ドロテはピナ・バウシュやフォーサイス、バランシンが好きだとのこと。日本でそういう演目を踊る彼女を観られる日が来るといいですね。
ほかに進級試験の模様とか、勅使川原三郎がオペラ座に振付けたAIRのレポートなど、パリオペ好きにはたまらない内容になっています。もちろん、「まいあ」も、彼女の両親である真澄とレオンが登場したりして、かなりお話が進んできました。
それと巻末のバレエファンの対談も、なんか身近な感じがして面白く読めます。

バレリーナへの道62号
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4893362089/ressurreccion-22/ref=nosim/特集は「童話をモチーフにしたバレエ作品」。想定される読者が、バレエを習っていてプロを目指している人が中心なので、日本のバレエ団のオリジナル作品中心だけど(ちなみに私が通っているバレエ教室の先生や作品も登場)、異色なのは、ノイマイヤーがデンマーク・ロイヤル・バレエに振付けた「人魚姫」と、ウィリアム・タケットが振付けてマシュー・ハートやウィル・ケンプが出演した「ピノッキオ」が紹介されていること。特に「人魚姫」はノイマイヤー独特の美学が感じられる美しい作品のようです
デンマーク・ロイヤル・バレエの「人魚姫」ギャラリーは必見

それと、ハンブルク・バレエファンにとっても嬉しいのは、イヴァン・ウルバンとアンナ・ポリカルポヴァのインタビューが掲載されていること。二人の子供時代の写真、イヴァンがローザンヌ・バレエコンクールに出演した時の「スパルタクス」クラッススを演じた写真やアンナの「椿姫」の写真、そしてロシアのヴォーグに掲載された二人の美しいツーショット写真も載っています。4ページモノクロ。

SWAN MAGAZINESWAN MAGAZINE
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2006/03/23

3/22 東京バレエ団「ジゼル」

ファンの方がいたら申し訳ないんだけど、斉藤友佳理さんが苦手で、最後まで行くことを迷っていたのだ。でも、急に友達の連れがいけなくなってチケットを譲ってもらって観に行った。しかも大変良い席で。行ってよかった!なんといってもフィーリンが素敵過ぎ。その上ヒラリオンの木村さん、ミルタの井脇さん、ドゥ・ウィリの小出さん&長谷川さん、みんな素晴らしかった。斉藤さんは、ジゼルの発狂シーンの演技はさすがにすごかった。あれは斎藤さんにしか出せない味だろうな。

実はジゼルを舞台で観るのはまだ2回目で、しかも初めて観たのが、3年前に同じ東京バレエ団で、マラーホフとヴィシニョーワの客演だった。そうゆうわけで、ほとんど大まかな流れは把握していたものの、細かいところはすっかり忘れていたのであったw
ジゼル2幕って案外面白かったのね。

ジゼルの斉藤さん。3列目で観ていたということもあって、やっぱり娘役を演じるのは正直かなりキツイ。ビジュアル的にはすっかりおばちゃんなのに、演技は幼い少女系なので、ややカマトトっぽいのだ。が、前述の通り、発狂のシーンは凄まじかった。完全に狂っていて、箍がはずれていて、怖かった…本当にジゼルになりきっていて恐れ入った。
ウィリになってからのジゼルは、ポール・ド・ブラは綺麗だと思った。ウィリの衣装はロマンティックチュチュなので脚はあまり見えないし。軽く浮遊感があるかな、と思ったらそうでもない。わりとどすんどすん音がしていたし重たかったんだけど、上半身はちゃんと引きあがっているし動きは綺麗なので、下半身の問題という気がした。私は技術的には専門家ではないのでもう少し観る目を養わないといけないのだが。斉藤さんのジゼルの2幕は、母性を感じさせるものだったと思う。男女の愛ということではなくて、この人を守りたい、死なせてはならないというもの。そういう解釈も確かにあるとは思ったし、感動もちゃんとさせてくれた。ただ、アルブレヒトとの間に流れる感情というものはあまり感じられなかった。

フィーリンのアルブレヒト。なんて素敵なんでしょう。1幕のアルブレヒトは遊び人風ではあるものの、プレイボーイという感じでもない。ジゼルとの恋愛を純粋に楽しんでいて、罪悪感のかけらもない。ジゼルのことはかわいい妹とでも思っていて、そんな田舎娘と楽しく遊んで何が悪いんだと思っているんだけど、基本的にはとても真面目な人なんだと思う。結婚するつもりは微塵もないくせに、ヒラリオンに正体を明かされて本気であたふた動揺しているし。
2幕では、ジゼルを死なせることになってしまって心の底から後悔しているのが見て取れた。かといってマラーホフのアルブレヒトみたいにナルシストというか自己憐憫型でもない。"いい人アルブレヒト”なのだ。多分フィーリンという人自体がとてもいい人で、その人のよさが滲み出ているんじゃないかと思うのだが。ちょっとシャイで優しげな感じなのが可愛い。
2幕のウィリたちに無理やり踊らされているヴァリエーションは、鬼気迫る熱演。本気で心臓が破裂するほど踊らされている感が伝わってきた。はあはあ息を吐いていて、肉体的な辛さとジゼルをこんな姿にしてしまった後悔による精神的な辛さで、見ているこちらの胸も締め付けられる。ジゼルには同情しないでアルブレヒトに同情する人でなしな私。そんな苦しい息の下でも、薔薇を背負っているような麗しい貴公子然としているフィーリンには、ハート鷲掴みにされてしまった。ジュッテ・アントルラッセは高いし、得意の脚捌き系のパの輪郭ははっきりしているし、足先はこれ以上ないというくらい美しいし。黒いタイツなので時々保護色になって、ほっそりとした美脚が見えなくなってしまうのが残念。
それと、マントと白い百合の花が似合うこと!ジゼルの墓に花を捧げて背中を反る姿は萌えポイントが高い振付なのだが、フィーリンだとさらに麗しくて、もうどうしよう、と思ってしまった。
サポートの上手さにも改めて舌を巻いた。体重を感じさせた重たげな斉藤さんのジゼルを、まるで体重がないように軽々と垂直に持ち上げる。一見なんてことないようだけど、これはおそらくはすごく大変な技なのである。あそこまで軽やかにリフトできる人を観たのは、初めてかもしれない。

東京バレエ団のジゼルといえば絶対に忘れてはならないのが木村さんのヒラリオン。これが濃くて最高。1幕の終わりはジゼルよりもヒラリオンの演技に釘付けになってしまうほどだから。まずはジゼルの住む家にチュッと投げキッス。ジゼルのことが好きで好きでたまらないヒラリオンは、熱血漢で彼女の気を惹くのに必死。でも「あんたの顔が嫌い」なんてすげなくされてしまってかわいそうなことこの上なし。ジゼルが死んだ時なんか、地面をどんどん叩いて、大げさに嘆き悲しむのだけど、このヒラリオンだったらこれくらい派手に悲しんでも全然不思議じゃないのだ。オレを殺せ!とアルブレヒトの前に身を投げ出すところは男らしくて素敵。

2幕ではさらに芸達者振りを発揮。人魂に怯え、ウィリたちに無理やり踊らされるのだが、この無理やり踊らされソロが素晴らしい。ピルエットにしても6回くらい回っているし。ここまで気合を入れて踊ったら、たしかに息が切れて死んでしまうだろう。ミルタへの命乞いの必死さ。それなのに、ドゥ・ウィリにポイっと湖へ捨てられて終わりでなんて哀れなんだろう。でも、考えようによっては、ヒラリオンがジゼルへの一方通行の愛ゆえに死ねたのは幸せだったのかもしれない。アルブレヒトは死ぬことも許されずに、一生後悔して、バチルドとの愛のない結婚生活を生きなくちゃいけないのだから。
いずれにしても、木村さんのヒラリオンは至芸である。踊りも演技もブラボーだ。

そしてもちろん、井脇さんのミルタ。ミルタは彼女のように美貌でスタイルが良い人がやらないとね。登場しただけで、劇場の中にひんやりとした空気が漂った。ヒラリオンに向ける氷のような視線が印象的。ぞっとするほどの美しさ。そして背中の柔らかいこと。正確なパドブレ。これでアルブレヒトが生き延びられたのは奇跡のようだ。ドゥ・ウィリの二人も素晴らしい。小出さんはドゥ・ウィリを演じるには小柄でかわいらしすぎるのだが、それでも、ポール・ド・ブラの美しさは際立っている。次の東京バレエ団の「ジゼル」は絶対に小出さんがジゼルを踊るべきだと思った。

ウィリたちは、ちょっと足音の大きさが気になったものの、みんなでアラベスクをしながら一歩ずつ進むところも揃っていたし、すごく怖かったので、全体的にできが良かったと思う。クローンっぽい怖さが伝わってきた。やっぱり処女のまま死んだ女は怖いのだ。

1幕の豪華なメンバーによるパ・ド・ユイット、パトシスも良かった。葡萄を持った娘たちに踊りもとてもかわいらしくて、このカンパニーのレベルの高さを示していたし、高貴なバチルド姫役の浜野さんも素敵だった。全体的に非常に充実した公演で、観に行って良かったと思う。

ひとつだけ苦言を呈すと、これはダンサーのせいではないのだが、ジゼルが墓の中に消えていき、彼女と永遠の分かれをしたアルブレヒトが花を持ってジゼルを想うラストシーンで、余韻を残す間も与えずに緞帳が下りてしまったのはどういうことだろう。せっかくのフィーリン様の演技を切っちゃったのは許せない!美智子妃殿下が観ておられたのだから、もう少し最後の余韻に浸らせて欲しかった。ラストのフィーリンの表情が素晴らしかったのに…

ジゼル:斎藤友佳理
アルブレヒト:セルゲイ・フィーリン
ヒラリオン: 木村和夫

バチルド姫: 浜野香織
公爵:後藤晴雄
ウィルフリード:森田雅順
ジゼルの母:橘静子
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):高村順子 - 中島周
門西雅美 - 大嶋正樹 小出領子 - 古川和則 長谷川智佳子 - 平野玲

ジゼルの友人(パ・ド・シス):大島由賀子 西村真由美 乾友子 高木綾  奈良春夏  田中結子

ミルタ:井脇幸江
ドゥ・ウィリ:小出領子 - 長谷川智佳子

2006/03/20

3/7 マラーホフの贈り物 Bプロ

2月28日のBプロの感想はは途中で挫折してしまったので、今回はちゃんと書くぞ~

第1部
ラ・シルフィード
ジュリー・ケント/ウラジーミル・マラーホフ

マラーホフはお疲れか?やっぱりトゥール・ザン・レールが回りきれていなくて1回転4分の3って感じの着地が多かった。さすがに着地は音がなく、軽やかに跳んでいたが、ブレノンヴィル的な脚さばきはそれほど得意ではなさそう。
ジュリー・ケントは相変わらず背中が恐ろしく硬い。表情はコケティッシュな小悪魔系で似合っていると思う。マラーホフもケントもとても幸せそうな表情で踊っていて、そのことには好感が持てた。

アゴン
 ルシア・ラカッラ/シリル・ピエール
またまたラカッラの世界びっくり人間ワールド。本家NYCBによる「アゴン」は来日公演で一度みたことがあるだけなのだが、全くの別物と考えていいだろう。本来はもっとシャープで無機質な踊りだと思うのだが。これはバランシンではないわ。それにしてもラカッラの体の柔軟性は化け物級。ビールマンスピンのような状態をずっとキープしたり、220度くらい開脚したり。よどみなく流れるような動きは、かなり色っぽい。

『マノン』より寝室のパ・ド・ドゥ
 ポリーナ・セミオノワ/アルテム・シュピレフスキー
ポリーナはここでも小悪魔系でとても愛らしいけれども、でもお金も大好き!って雰囲気も醸し出している。まだまだマノンにはなりきっていないけど、ガラだから仕方ないか。対するシュプレフスキーは純朴な神学生っぽいおぼこさが出ているけど、たまに素に戻る瞬間がある。2月28日よりは踊りは安定しているが、やはり後半のリフトでいっぱいいっぱい感というか振付をこなすのに精一杯に見えてしまっていた。ポリーナ、テクニック的にはしでに完璧なのだから今度はぜひ全幕でマノンを踊って見せて欲しいなと思った。

『ライモンダ』よりパ・ド・ドゥ
 マリーヤ・アレクサンドロワ/セルゲイ・フィーリン
ライモンダのピアノソロで踊るヴァリエーション、アレクサンドロワは手を叩く時に音を出したり出さなかったりしたのがアレ?と思った。個人的には、音をパシッと出している方が好み。しかし彼女の脚は恐ろしく強靭だし、上半身も非常に安定していて危なげがない。この日は1階2列目で観ていたのだが、近くで見るとアレクサンドロワの上半身はとても逞しい。肩も腕も筋肉でムキムキだ。あまりお姫様向きではない個性なのだが、ライモンダのヴァリエーションはハンガリー風のキャラクテールが入っているということもあってとても似合う。サンドラ・ブロック似のお顔なのですごい美人ってわけではないのだけど、ゴージャスなのよね。
一方、フィーリンはマントはつけていなかったけど腕にひらひら飾りのついた白い衣装がとてもよく似合って、絵に描いたような異国の王子様。美しい弧を描くジュッテ・アントルラッセ、鉄壁のテクニック。素敵としかいいようがない。

第2部
『エチュード』
 エトワール:ジュリー・ケント/ウラジーミル・マラーホフ/高岸直樹
 白の舞踊手(ソリスト):高村順子/小出領子
 東京バレエ団

「エチュード」は2年前の東京バレエ団40周年ガラで見たのだけど、その時は、上野水香がひどかったのと、コール・ドもバラバラでなんだかな、という印象しかなかった。とにかく、カンパニー全体の実力が試される大変な演目なのである。

小出領子のレベランスから始まる。まずは黒いチュチュ姿のバレリーナたちが延々とバーレッスン。自分がバレエを習っていると、なんだかとても親しみが沸く部分である。実のところ、2月28日に観たときには、後ろアティチュードのあまりの揃わなさに呆れたのであったが、この日は美しく揃っていて良かった。そのあと、ダンサーたちの姿が黒いシルエットになるのは非常にドラマティックで美しい場面である。写真に撮ったらさぞ素敵だろう。

そしてエトワール3人が登場。さすがにマラーホフの動きは非常にエレガント。長い演目だしとにかく踊りっぱなしで体力も消耗するであろう作品なので、時々へたっていたり雑になってしまう部分も見受けられるが、音のしないジャンプと柔軟性はさすが。高岸さんは、大変な奮戦振りだった。ピルエット・アンドオールを延々と繰り広げなくてはならないところも、キビキビとした動きで年齢を感じさせない。もちろん、動きの美しさという点ではマラーホフに負けていたが、ジャンプの高さやエネルギーという点ではむしろ買っていたのではないかと思うほど。ジュリー・ケントはやはり背中が硬い。28日ではポワントが落ちてしまったりミスが目立ったが、この日はミスはなかった。さすがに容姿は美しいのでエトワールらしい存在感はあるのだが。
東京バレエ団の男性陣も奮闘していて、平野玲さん、高橋竜太さんは非常に良かったと思う。ただ、どうしようもないことだけれども、男性陣は全体的にプロポーションが見劣りする人が多い。高岸さんのような長身で見栄えがする、しかもテクニックもしっかりしているダンサーってなかなかいないということだ。
ソリストの高村順子、小出領子の二人も良かった。とても丁寧で愛らしい雰囲気を出せる二人である。それ以外のソリスト級もみな美しく踊っていて安心してみていられた。ところが、ラスト近くで出演者ほぼ全員が横切るようにグランジュッテするところがあるのだが、そこにばらつきが観られた。バレエ教室のお稽古じゃないんだから、と思うような、乱暴な踊り方をする人も見受けられたのである。終盤で出演者もかなり疲れている頃だとは思うのだが。
いずれにしても、一昨年観たときよりは相当レベルも上がっているし、満足度は高かった。観る側もとても疲れる作品である。

第3部
アポロ
 ポリーナ・セミオノワ/アルテム・シュピレフスキー
容姿だけ見ればシュプレフスキーはアポロにぴったりで、あの片肌はだけた白い衣装がズルイ、と思うほど似合っている。長身で筋肉質の惚れ惚れするような肉体に美しいお顔。しかし、あまりに背が高いからなのか、ちょっと猫背気味に見えてしまうのと、大柄なので実際以上に重たく鈍く見えてしまうのが難点。それでも、Aプロの作品よりははるかに合っていると思う。ポリーナは女神テレプシコーラにしてはちょっとキャピキャピしすぎ。踊りそのもののレベルは相変わらずとても高い。シンプルな白い衣装だと、大きな胸が非常に目立ってしまう。「アポロ」はやはりアポロに対して3人の女神たちが出ていた方がいいし、なんだか終わり方も唐突だった。

『ロミオとジュリエット』よりパ・ド・ドゥ
 ルシア・ラカッラ/シリル・ピエール

なんと、去年の11月から3回連続して、バルコニーのないロミジュリバルコニーシーンを観ていただけに、バルコニーがあることが嬉しかった。あたりまえのことなんだけどね。
ラカッラのジュリエットが可愛すぎる!ほっそりとした体に小さな顔、パッと輝いた無邪気な表情は、ほんの少女のようである。ロミオに会えた幸せで全身はちきれそう。見ているこちらの方も幸福感で満たされる。ジュリエットがそこまで脚を高く上げる必要があるのか、というツッコミは別にして。柔軟な体とテクニックだけではない、演技力に関しても彼女は超一流であることを証明していた。フェリが演じるジュリエットは、バルコニーのシーンでも、とても生き急いでいて、この瞬間を燃焼し尽くす情熱がほとばしっている感じなのだが、ラカッラだと、そんな未来のことは考えないで、ただ無邪気にこの幸せを全身で感じていたいという純粋さ、可憐さが心を打つのだ。
一方シリル・ピエールはここでもサポートの上手さを発揮していたが、珍しくソロも踊って安定したテクニックの持ち主であることを見せていた。ロミオにしては少々老けた感じがしなくもないが、ジュリエットとしっかりと気持ちが通じ合っていて、情熱を高めあっているのが見受けられる。今回はクランコ版というわけで、マクミラン版の超絶技巧はないのだが、それでも難しいリフトを多用した非常に美しい振付であった。
去年シュツットガルト・バレエで観たときには、ラストは懸垂のようにバルコニーにロミオがぶら下がっているのが印象的だったのだが、今回は懸垂キスはなしで、バルコニーの上に上がったジュリエットを、ロミオが追いかけて駆け上ってキスをするという情熱的な終わり方だった。
カーテンコールの時の二人のキスが、ラブラブさ炸裂で素敵だった。ここまで幸福感に満たされるバルコニーシーンを観たのは久しぶり。短い時間の間に本当のドラマを見せられた思いがした。

『白鳥の湖』より "黒鳥のパ・ド・ドゥ"
 マリーヤ・アレクサンドロワ/セルゲイ・フィーリン

このペアにとっては最強の演目だろう。アレクサンドロワは悪い女オーラをびしばし放っていて、怖いこと怖いこと。姉御系の顔立ちなので、オディールは似合いすぎである。表情だけでなく踊りでこの邪悪さを表現できるのはたいしたものだ。グリゴローヴィッチ版で使われる短調の曲にあわせてのヴァリエーションでも、強靭なテクニックを披露。ほぼポアント片足に乗ったままの、ゆっくりめ故難しい回転技を見せてくれた。32回転フェッテは、入る時だけダブルで後はずっとシングルだが早くて軸もしっかりしている。(おそらく調子は28日の方が良かったと思われるが)時々腕の位置をアンオーにしているのが、さらに邪悪度倍って感じだ。ムキムキの腕でのピケターンとシェネも大変な迫力だ。
フィーリンは相変わらず黒いタイツに包んだ脚がほっそりとしていて、足先までエレガントで美しい。すっかりオディールの妖気に惑わされて、催眠術にかかったかのような幻惑されて夢見心地の王子である。この人はいつでも「ノーブル」を絵に描いたような品のよさが持ち味だ。ヴァリエーションのジュッテもふわりと軽やかで、細かい点まで気配りが効いている。アレクサンドロワの魔力にかかってイチコロになってしまうのも無理はないボンボンぶりだった。
ボリショイの正統派の底力を見た。ペアとしてはこの二人が今回最高だったといえるだろう。カーテンコールでのフィーリンのマナーのよさもポイントが高い。

アリア
 ウラジーミル・マラーホフ
上半身裸に赤いスパッツ、白いお面をかぶったマラーホフ登場。彼の動きはまるで猫のようにしなやかで動物的だ。ふと、仮面を外して、仮面をじっと見る。芸術と自分との距離感。孤独。芸術家としての彼の人生がここにオーバーラップする。再び仮面をつけて、軽やかに舞ったと思ったら地面に這いつくばる。短くてなんてことのない演目かもしれないけれども、マラーホフにとても似合っていて素敵な小品だった。カーテンコールでのカラーホフは、涙ぐんでいた。

フィナーレ
Aプロと同じ振付。ここでのマラーホフの跳躍が一番美しかった。胸が一番高い位置に上がるジュッテは、まるで彼に羽根が生えたかのようである。軸がまっすぐでリズミカルなフィーリンのピルエット・アンドオール。そのフィーリンと同じ高さで跳躍してしまうアレクサンドロワの強靭さ。高さも動きも揃っていて、実に素晴らしいペアぶりである。

マラーホフの贈り物最終日ということで、最後は「SAYONARA」と書いた看板に、紙ふぶきと紙テープが舞った。カーテンコールの時に自分の体に紙テープを巻きつけたフィーリンとアレクサンドロワがお茶目。一組ずつカーテンの前に出てレベランスする時に、マラーホフは美しいジュテで飛び出すというサービスを見せてくれた。
度かさなるキャスト変更で大変だったであろうこの公演だったけど、優れたダンサーたちと、もちろんプロデューサーでもあるマラーホフのおかげでとても満足度が高かった。

ボリショイ・バレエ団2006年公演オフィシャルブログに、最終日の様子が出ているのでぜひ。

2006/03/19

3/18 ア ビアント~だから、さよならはいわないよ(牧阿佐美バレヱ団)

あらすじを読んでいたので覚悟をしていたとはいえ、本格的なサッカーの試合をバレエで表現していたのには笑ってしまった。 高円宮殿下が無類のサッカー好きでいらっしゃったことを鑑みても、ね。

しかもロバート・テューズリーの対戦相手は保坂アントン慶率いるヘルズ・エンジェルズみたいな革ジャン軍団よ。(一応嘆きの壁の門番らしい) ボールは登場しないけど、動きを追っていくと透明なボールが見えてくるし、タックルもしているし、3-2-1 というフォーメーションになっているし。実際に観てみると、サッカーをバレエで表現するというのも悪くはないと思ったけど、ちょっと長すぎたしゴールはあまりにもあっけなく決まってしまった。

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バレエを支援されていた高円宮殿下追悼、牧阿佐美バレエ団50周年記念作品。原作島田雅彦、音楽三枝成彰、演出牧阿佐美、振り付け三谷恭三、ドミニク・ウォルシュと豪華なんだけどどこか微妙な感じのスタッフ。吉田都さん主演ということで、絶対に観なければと思いつつも、チラシに書いてあったあらすじを読むとこれがまたえらく複雑そうだし、唐突にサッカーの試合が、なんて出てくるので不安いっぱいで足を運んだのであった。

パンフレットを読んであらすじを頭に入れておかないとわけがわからなくなるという事前情報があったので、一応読んでから見たのだけど、実際、やっぱり複雑な話なのだ。ロバート・テューズリーが扮するリアムは一体何回死んでいるんだろう。でも、何回死んだとしても、魂はつながっているということがテーマだから致し方ないか。もう少し死ぬ回数が少ない方がスッキリしてよかったと思う。

バレエ作品として観ると、踊る場面が非常に少ないのが気になった。上記のようにかなり複雑なストーリーのため、説明的なマイムが多く、踊りで語るというところが二の次になってしまっているきらいがあった。島田雅彦というバレエ作品の原作を書くのが初めてという作家を起用したからだろうか。

原作そのものはとても良いと思う。プログラムの別刷りで、島田雅彦による音楽のイメージというかなり詳細な文章が載っているのだけど、これを読むと実はこんなに素敵な、イマジネーション溢れるお話だったのか、と思う。これをバレエにするのは非常に難しい作業だったのだろう。で、実際にバレエになったところを観ると、なんだかロールプレイングゲームのような印象を与えられてしまった。サッカーボール、手紙、竪琴といった小道具が渡されるところ、そして何回も死ぬところなどは特に。「黒い男が矢を青い男に射る。矢は楽器に当たった。白い男が矢を青い男に射る。青い男は死んでしまった。青い男に冥界の女王は手紙を渡した」ってテロップが頭に浮かんでしまうんだもの。詰め込むだけ詰め込んだ結果、そうなってしまったのだろう。

バレエとしてみた場合、上記のような不満点が出てくるわけだが、バレエということではなく舞台として見たら、複雑すぎるところを除けば決して不出来ではないのでは、と思った。かなり睡眠不足の状態で観たのだが、全然眠くならなかったし。

2幕3場の「白い部屋」がクライマックスといえる。リヤムの亡霊とカナヤの踊りと演技。さすがに都さんもテューズリーも演技が非常に達者なので、この二人のいおおしく切ない魂の触れあいの描写は心の琴線に触れるものだった。横たわるリアムの遺体とは別のところから、パンツ一丁のリアムが現れ、彼の死に打ちのめされたカナヤを包み込むように優しく抱擁する。二人の、別れを惜しむようなパ・ド・ドゥ。「マノン」の沼地のPDDを思わせるような、カナヤを回転させるリフトが多用されている。都さんの素晴らしいところは、踊りながらも同時に感情を体の動きで繊細に伝えられる稀有な才能を持っているところだ。離れたくないのに離れなければならない、でも肉体は別々のところにあっても決して魂は離れないよ、ということを雄弁に伝えていた。テューズリーもドラマティックな演技が非常に優れているダンサーで、二人のパートナーシップは素晴らしかった。このシーンは独立したパ・ド・ドゥとして今後上演されてもいいと思った。でももう少し都さんの踊る場面が観たかったというのは贅沢だろうか?終わり方はあまりにもあっけないのが惜しまれる。

1幕4場の「求婚の祭」は楽しいシーンである。ボレロでは、6人の男性ダンサーたちがそれぞれの得意技を披露する。塚田渉さんはバック転。やはり菊池研さんのグラン・テカールと華麗な回転技は際立っていた。カナヤに求婚する白い男と黒い男のヴァリエーションも派手な見せ場があった。中でも、さすがに新国立劇場のマイレン・トレウバエフの男らしい中にも端正な踊りは観ていて気持ちがいい。その後のサッカーのシーンまでが展開がもたつくのがもったいないのだけど。

2幕1場の砂漠のシーンから2幕の無法地帯と化した街までのシークエンスもよくできていた。巫女たちの踊りはとても美しかったし、老いた盲目の王と若き日の王、そして王の娘はそれぞれ存在感があった。若い日の王を演じた小嶋直也は、非常に短い登場シーンだったけどシャープで柔軟な動きで、優れた踊り手振りを発揮。あまりにも短い登場がもったいなかった。

部分部分を取ってみると素晴らしい場面はあるし、2幕は盛り上がっていて心に染みる作品になっているのだから、もう少しすっきりとした構成にして、説明的なマイムを省けばより良い作品になるのではないかしら。

衣装と照明はクオリティが高くてとても美しかった。特にカナヤや巫女など女性たちの衣装は流れるようなラインでセンスがよいと思う。1幕1場の森のシーンの動物たちの着ぐるみは可愛い。舞台装置はほとんどなく、バックに木や砂時計、湖といった映像が映し出されるだけのものだが、洗練された印象を与えた。音楽は…所々はよかったところもあるのだが、シンセサイザーの多用は安っぽく聞こえることもあった。カシオペアの向谷実が生演奏しているという豪華版なのだが。オーケストラの演奏は、かなり外していた。

この公演、吉田都さんの踊りを目当てに来たお客さんが多いと思われ、それに対して彼女の踊る場面というのはとても少なかった。が、一つ一つの仕草や表情が実に優雅で品格があり、カナヤというキャラクターの健気で一途にリヤムを愛する強い思いが伝わってきて、踊りを抜きにした吉田都さんの魅力を実感させられた。何度も何度もリヤムから引き離され、どんなに堅く抱き合っても力づくで容赦なく引き剥がされる、だけど最後には、離れていても彼をいつでもそばに感じていられるということに安らぎを見出す。強さと弱さを併せ持つこのキャラクターの演技は非常に難しいだろうけれども、彼女に当て書きされたのではないかと思うほど合っていた。もちろん都さんの踊りはいつ観ても完璧なのだが、いつか彼女が踊れなくなる日がきたとしても、それでも類稀なパフォーマーとして演じつづけることができることを確信した。

2006/03/15

毎日新聞とマラーホフ

わが家では毎日新聞を購読しているのだけど、この新聞、全然バレエの記事が載らない。朝日や日経には定期的に舞台評が連載の形式で掲載されているのに、大いに不満なのであった。しかもたまに載る時は私の大嫌いな上野水香だし。家人が朝日嫌いなので朝日は購読できないわけだが。

しかし、なぜか「マラーホフの贈り物」については、パブリシティ記事が公演前に載った。(もうとっくの前にマルセロ・ゴメスの降板が発表になっていたのに彼の名前が出てくるという間違いがあった)そして今日、夕刊を見たら、変なロングヘア金髪ヅラに化粧をしたマラーホフの女装写真が!舞台評ではなく、マルチン・クライエフスキーの降板のためフィナーレを急遽マラーホフが自ら振付けたという内容の記事だった。写真は、どうやら、ダンサーたちとの慰労パーティで仮装した時のようだ。カラーではないのが残念だが、カラーだったらきっとすごいことになっているんだろう。マラーホフは自ら率先して盛り上げて労をねぎらったということ。忙しいのにえらいなあ。

それにしても、今回のマラーホフだけ2回も取り上げた毎日新聞。マラーホフと個人的に親しいのか?私としては嬉しいけど。

追記:記事はここで読めます。写真がないのが残念だけど。

そういうわけで、もう一度見たBプロの感想も書きたいところなんだけど、風邪を引いてしまったのでまた先送りになってしまった。もう少し待ってね。

白鳥さんたちの行方

マシュー・ボーンの「白鳥の湖」は現在全米ツアー中。現在は、ロサンゼルス公演の真っ最中なのだ。
このAhmanson Theatre劇場のサイトでは、マシュー・ボーンのインタビューも読むことができる。

そして、ぼちぼち批評なども出てきているのでご紹介。

LA Daily News
3つ星半となかなかの評価

ロイター通信
珍しく、ホセ・マリア・ティラードが出演した回のレビュー。ホセのことは「驚きべき」と大絶賛しているのが嬉しいところ。また、王子役のニール・ペリントンについても、踊りだけでなく演技も素晴らしいと手放しで賞賛。

Los Angeles Times
この公演で撮影された舞台写真があるのが嬉しいところ。4幕のスワンズや、跳んでいるアラン
批評そのものはかなり厳しいところも。振り付けと音楽のマッチングについては褒めているけど、衣装がしょぼい、とか、コメディが強引といった指摘も。そして、別の批評でも書かれていたけど、アラン・ヴィンセントへの評価も厳しい。セクシーで腕の動きも流れるようだとは書いてあるが、デザイナーのレズ・ブラザーストンが意図したスワン像とかずれていると。逞しく無骨な体は羽根の衣装が似合わない、マシューが意図しているであろう、ザ・スワンというカリスマ的な存在を際立たせるためのテクニックが不足しているという指摘は、当たっていると思う。

しかし、皮肉にもアランのインタビューがその前の週に掲載されている。知られざる彼の今までの歴史を知ることができてなかなか面白い。なんと、彼はまだ30歳なのである。そして、コンテンポラリーダンスを7歳から学んでいたが途中で断念して、アンティークの補修の仕事をしていたとのこと。しかし1年でクビになって、本当に好きなダンスの道に入り、1997年のマシュー・ボーンのオーディションを受けたのが始まりだったと。「クラシックバレエは退屈だし、足もターンアウトしていない」という彼だから、クラシックバレエ好きの日本のスワンファンにはウケが悪いわけだ。パリ公演で彼の出演している日には、日本人の観客が全然いなかったもの。しかしパリ公演では彼の演技を見てマシューが泣いたそうで。

スワンでの経験は98年にスワンNo.12(大きな白鳥さんですね)から始まったらしい。奥さんで、ツアーマネージャー、時々は王女役でも出演しているヴィッキー・エヴァンスとの出会いや、頼れる兄貴としてカンパニー内で尊敬を集めているという逸話もあってなかなか面白いインタビューだ。メイク中の写真も見られる。ぐっさんこと山口智充に似ていると言われ続けているけど、この記事ではクライヴ・オーウェン似と書かれている。腕などもけっこう毛深いですな。アメリカ人にはこういうマッチョで男らしいタイプが受けるんでしょうか。

ロサンゼルス公演は19日まで。次は21日からのサンフランシスコ公演で、これは1ヶ月と比較的長い。ツアー中の彼らの様子や批評は、Swan Lake Blogでちょっと読める。日本にもまた飛来してくれるかしら?

2006/03/12

「バレエ・ギャラリー30」

ワールド・フィギュアスケート」誌にプルシェンコのポスターがついているというので発売日以来探し回ったのだが、なかなか売っていない。やっと8軒目で見つかったのは、蒲田の有燐堂。オリンピック直後ということで記事の内容はほとんどないけど、フィギュア出場全選手の写真が載っているし、男子の方も美しい写真がかなりあるので嬉しかった。中でも、ジョニー・ウィアの「白鳥」の写真はやっぱりきれい。

有頂天になって、芸術関係雑誌のコーナーに目を移すと、「バレエ・ギャラリー30」なる本が置いてあった。Tomokovskyさんのサイトで紹介されていた本だ。ちょっとお値段は高目だけど、なかなか親しみやすそうな内容で思わず手にとって買ってしまった。

主要な全幕作品30作品の作品と登場人物の解説を、イラスト入りで紹介しているというもの。登場人物の位置関係がわかりやすいほか、各作品の内容を年表形式で時系列に説明している。中でもありがたいのが、その作品の見せ場はどこにあるか、ということを強調して書いているところ。たとえば、「白鳥の湖」だったら2幕のアダージオや3幕の黒鳥のPDDだけでなく、1幕のパ・ド・トロワもちゃんと見所としているし、「オネーギン」だったら鏡のPDDや手紙のPDDだけでなく、2幕のレンスキーの決闘前の自己陶酔的なソロなど。

それから、作品の背景についても簡潔ながら触れていて、「マノン」だと原作ではマノンは作者の口からは語られずデ・グリューが語った内容でしか語られていないことや、レスコーの愛人はマクミランが創造した人物だったとか。

それと、マイムやテクニックについての解説も若干あるので、初心者の方は特にこれを読んで予習するととても便利だと思う。30作品の中には私がまだ全幕を観ていないものも含まれているので(プティの「こうもり」など)、活用させていただくつもり。大判で見やすいし、イラストもなかなか可愛い。執筆者もしっかりとした方ばかりだ。(約1名は除くが)

バレエ・ギャラリー30―登場人物&物語図解バレエ・ギャラリー30―登場人物&物語図解
佐々木 涼子

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2006/03/08

アカデミー賞授賞式雑感

昨日帰宅してから途中から見て、今日は頭から見た。でも生中継ではない方を録画しちゃったので、レッドカーペットを見逃した。ちぇっ。

作品賞と監督賞が分かれたところが政治的な意図を感じるね。 だって「クラッシュ」はゴールデングローブ賞では作品賞にノミネートされていなかったもの。同性愛を正面から扱った作品を作品賞にしたくなかったのではないかと…。でもアン・リーは「ハルク」の大コケから立ち直って本当によかった。今、「ブロークバック・マウンテン」が一番観たい作品だし。
フィリップ・シーモア・ホフマンの主演男優賞、ジョージ・クルーニーの助演男優賞は嬉しい。(女優ふたりもだけど)

司会のジョン・スチュワート、知らない人だったけど司会はすごく上手だったと思う。かなり自虐的なお方だけどね。最初の映像の部分で、過去に司会をやった人たちに次々と断られ、謎の言葉をしゃべるメル・ギブソンにも断られ、そしてベッドで寝ていたジョン・スチュワートのところに電話が。隣に寝ているのはハル・ベリー。「これは夢じゃないか」「夢よ」そして、ふと気がつくとハル・ベリーに代わりジョージ・クルーニーが寝ている。「夢じゃないよ」「さあ、はじめようか」と真顔で言うジョージ。

授賞式が始まって前半は特に飛ばしていてすごく面白い司会ぶりだった。「ブロークバック・マウンテン」は男たちの神聖なカウボーイの世界を汚した、なんていいつつ、流れた映像は過去のカウボーイ映画の名作の中で同性愛のメタファーが含まれているシーンの抜粋を集めたもの。馬のお尻をナデナデなんてホント笑っちゃった。
今年はこの映像集(フィルム・ノワール、実在の人物、そしてスペクタクル)がよくできていて、これを見ると映画館に行きたくなった。それから、主演女優賞のノミネートを紹介する際のキャンペーンCMのパロディも超笑えた。特にジュディ・デンチ!「短いスピーチをしましょう」というメッセージを伝えるための悪い例を演じたのがトム・ハンクスで、最後にはオーケストラの演奏者たちにボコボコにされちゃう。

ビョークはディック・チェイニー(狩りの最中に友人を誤射した副大統領に)誤って撃たれて来れませんでした、というギャグには、お腹が痛くなるくらい笑っちゃった。

プレゼンターで一番可笑しかったのは、名誉賞のロバート・アルトマンを紹介する時のメリル・ストリープとリリー・トムリン。アルトマン映画的な、かみ合わないやり取りが絶妙だった。アルトマンのスピーチも面白かった。30代の女性の心臓を移植してもらったからあと40年は生きるよって。名誉賞といえば引退寸前の人たちが受賞するものというイメージが強いけど、自分はまだまだ現役だってアピールしていたね。

「皇帝ペンギン」組がみんなで持っていたペンギンのぬいぐるみが超可愛い。「ウォレスとグルミット」のニック・パークとスティーブ・ボックスがウォレスとおそろいの蝶ネクタイを身につけていて、オスカー像にもそのミニ版の超ネクタイをつけてもらっていてこれがまたキュート。

助演男優賞のジョージ・クルーニーのスピーチ、カッコいい。うまい。最高。ハリウッドの変わり者の世界の中にいてよかった、というのは、映画人としてのプライドを感じた。でも「これで僕の監督賞はなくなったね」と残念そうに言っていて、実際取れなかったのよね。
リース・ウィザースプーンはあいかわらずあごがしゃくれているな~でも彼女は演技うまいし「ハイスクール白書/優等生ギャルに気をつけろ」のころからいつかは取るんじゃないかと思った。だんなのライアン・フィリップ、「クルーエル・インテンションズ」の頃は光り輝くような美少年だったのにすっかり劣化してしまった。妻が売れる一方で彼はいまいちだからね。(でも「クラッシュ」に出演していたから頑張っているのかな) やはりいまいちの夫を持っていて、のちに離婚してしまった去年の受賞者ヒラリー・スワンクのことを思ってしまった。

アン・リーのスピーチは素晴らしかった。「ブロークバック・マウンテン」に作品賞も取らせてあげたかったな。受賞には至らなかったけど、主演女優賞にノミネートされていた中に、「Transamerica」という映画で性転換者の役を演じていた女優Felicity Huffmanもいたし、主演男優賞のフィリップ・シーモア・ホフマン演じたトルーマン・カポーティはゲイだし、なかなかノミネートされた人たちはいい感じだったわけだけど。

それと、やっぱりクローネンバーグの「ヒストリー・オブ・バイオレンス」も一個くらい取ってくれたら面白かったのにね!

残念な点は、今年は主題歌賞を歌った人にあまり大物がいなくて、いまいち楽しめなかったこと。去年はミック・ジャガーも歌ったのにね。せいぜい、音楽賞のメドレーをイツァーク・バールマンが弾いたことくらいだろうか。

今年はキバツな衣装の人もいなかった。ニコール・キッドマンが老けていた。キアヌ・リーブスも老けていた。ジェニファー・ロペスは色が異常に黒かった。キーラ・ナイトレイは目の周りが真っ黒だった。ヒース・レジャーの隣のミシェル・ウィリアムズは勝ち誇ったような表情で映っていた。チャン・ツィイーはかわいかった。ウィリアム・ハートの髪の毛がなくなっていてショックだった。サミュエル・L・ジャクソンが一番おしゃれでかっこよかった。

2006/03/06

シアター・オン・アイスの番組が絶望的にひどかった件

キモカッコイイ宇宙人王子で金メダリストのプルシェンコが出演するアイスショー「シアターオンアイス」、気がつくのが遅すぎて土曜のチケットはソールドアウト、日曜は残っていたけどリヨン国立バレエを観ることになっていたので泣く泣くあきらめた。テレビ中継もあるし、と思っていたのだけど。
リヨン国立バレエのほうは、後半に「グロズランド」というマギー・マランによる演目があって、なんとダンサー全員がデブ肉襦袢を着て踊るというなかなか楽しいものだった。が、肉襦袢を見て、プルシェンコの「SEX BOMB♪」を思い出してため息をついていたのは言うまでもない。 中華街で美味しい中華が食べられたしいい一日だったんだけど。

さて、家に帰って意気揚揚と録画を観たのだが(いつもは長時間モードなのに今回は奮発して高画質だわ)、期待する方が間違っていたのだけどひどい。そもそも、今回私はオリンピックを全然民放で見ていなかったから、民放がどんな中継をしていたのかを知らなかったから甘かった。まず、トリノを振り返る映像はいらない。そんなものはもう散々見飽きているのだ。しかも国分太一のトリノ観覧記なんてもっといらない。一体何しにトリノに行ったのだ。延々と日本人選手のインタビューばっかり流していて、肝心の演技を全然見せてくれない。滅多に見る機会のないプロの方の演技も一瞬しか映らない人もいれば、カットもされまくり。あのものすごいスルヤ・ボナリーも一瞬で終わり。アクロバットのおじさん二人による「瀕死の白鳥」もすごく面白かったからもっとやって欲しかった。これから期待のちびっこスケーターも一瞬だけ。ミキティばっかり映すのやめなさい。その上、素人のくせに色々と偉そうなことを実況で語る国分。そんなことはプロの解説者が言うべきであるのに、もう。カメラワークも最悪。顔のアップや足のアップ。全身を映せゴルァ!

何よりもひどかったのがプルシェンコ様に対する態度。まず、プルシェンコが立っているのに国分と内田アナは座ったまま握手。はしゃいだ国分がカメラに向かってピースサインとあほ丸出し。それに対して真似をしてお茶目に振舞うプルシェンコはえらい。プルシェンコはロシア人なのに、ロシア語の通訳がつかずに、英語でしゃべらせるとは、とても金メダリストに対する態度とは思えない。しかも英語の通訳は内田!これがまた誤訳しまくりのひどい英語である。通訳代けちっているんだろうか。さらに輪をかけてひどいのがインタビュー内容で、オリンピックの演技素晴らしかったですね、日本に来ていただいてありがとうございますって当然言ってしかるべきなのにそんなのはなしで、隣に荒川静香がいたということもあって、彼女の金メダルの演技を観ましたか、なんて他のスケーターのことを聞いている。失礼だ。「僕だって金メダルを取ったんだよ」と答えたのは精一杯の機転を利かせた答えだったんだろうけど。帰るときも立って握手を求めるプルシェンコに対して、相変わらず座ったままの二人。わ~感じ悪い!

それと、昨日のスポーツニュースで流れた、後半での小芝居でプルシェンコが荒川静香や安藤美姫と組んで楽しそうに滑っているシーンが一切映っていないのはどういうことなんだろう。ラストにさっき放映したばかりの荒川の演技をもう一回リプレイするより、男女金メダリストが一緒に滑っているところや、フィナーレを流したほうがよほど映像的に美味しいと思うんだけど…。

プルシェンコが日本人に対して悪い印象をもっていないといいのだが心配だ。

2006/03/04

モーツァルト全曲BOXセット170枚組

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今年はモーツァルト生誕250周年ということで、Brilliant Classicsというレーベルからモーツァルト全曲集なんと170枚組という恐ろしいBOXセット「Complete Works 1756-2006 250 Years 」が発売になっていた。しかも中身も悪くないらしいという情報を、クラヲタのうちのオットが発見した。しかも、amazon.frで買えば90ユーロ送料込みである。1枚100円以下。amazon.frでの買い方を知らないオットに頼まれて月曜日にポチしたら(で、案の定代金は踏み倒されそう)、なんと本日到着。この枚数で場所も全然取らないのが素晴らしい。紙の解説書はないが、CD-ROMにPDF形式で英文にて収録されていた。そして、交響曲、協奏曲、室内楽、オペラ、宗教音楽、管弦楽、アリア/カノン、セレナーデとジャンル別に紙のカバーが色分けされていてなかなか美しい。

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私はクラシック音楽は全然詳しくないのだけど、せっかくの機会なので少しずつ聴き始めている。オペラ「魔笛」とピアノ協奏曲488番。後者は「小さな死」「ヴォヤージュ」に使われている美しい音楽だ。録音も、演奏の質も素晴らしい。非常によい買い物だと思う。

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エルヴェ・モロー、エトワール任命おめでとう!

3月3日、「ラ・バヤデール」の初日にニコラ・ル・リッシュの代役でソロル役として出演したエルヴェ・モローが、芸術監督のル・フェーヴェルによってエトワールに任命されたそうです。(と現地で公演を観ていた方に聞きました)
ソロルはモローにとって初役だったそうですが、大役をこなしただけでなくエトワールに任命されるとは!

去年のエトワール・ガラでの端正な王子様ぶりが印象的で注目していました。ひさびさにスターらしい美形かつノーブルなエトワールの誕生で嬉しいです。
気になるのは、来日公演の「白鳥の湖」、代役としてモローが入っていること。ニコラは上記のように怪我をしているそうですからね。ニコラの怪我は治って欲しいけどモローの王子も観たい。悩ましいところです。

今ダンソマニエに載っている舞台の写真を観ているのだけど、パリ・オペラ座のバヤデールの衣装は本当に美しいですね。ティボーのブロンズ・アイドルは完全に金粉ショーですが。
ダンソマニエには任命の時の写真も載っています。

AFPによるニュースはここです(注意:フランス語)

「サレンダー 服従の恍惚」

「ニューヨーク・シティ・バレエで踊った著者が見出した神への道……それはアナル・セックスだった。屈服から自己解放への過程を描く驚異の手記」

10年間ニューヨークシティバレエの団員だったToni Bentleyの著書で、ニューヨークタイムズでは今年の100冊(2004年)の一つに選ばれたとのこと。
Toni Bentleyはスザンヌ・ファレルの自伝の共著者であり、ニューヨーク・タイムズのバレエ関連本の書評を書いていたりロサンゼルス・タイムズにもバレエの批評を書いていたりするので大変な才女なんでしょう。

さて、この本の中身はというと、エロティックではあるが、筆者が大変真摯で真面目な人間であるということが見て取れる。

「バレエの世界こそが、神の探求にはまたとない場所だった。極端に言えば、超一流のダンサーは一人残らず神を信じていたのだった。優秀なダンサーになる秘訣は信じる力にあるのだと、わたしは推論した」

うまく踊れないのは神による試練、とダンサーたちは考えてストイックに訓練を重ねた。そんな生活を25年続けて、筆者はついに腰を痛めて踊れなくなった。しかし、一つのことをストイックに追求することは、ついには性愛と快楽のすべてを味わい尽くすことにつながっていったのだった。離婚した後の、美しいマッサージ師との関係。スポーツクラブで会ったラファエル前派の絵画に出てくるような赤毛の美女。そして、「ある男」。初めての肛門性交。それは苦痛と恐怖から向こう側の高みへと進む経験であった。298回も重ねた。快楽と生殖を目的とする通常の性交ではなく、それを超えた結びつきとしてのアナル・セックスこそが、彼女が狂おしくも求めたものだったのだ。
自分の欲望に真摯に向き合い、神と対話しながら歩んだ快楽と苦痛の道もまた、実のところ大変ストイックな行為であり、やはり痛みや苦痛に耐えながらも美を追求するバレダンサーの生き方と重なっていく。

文体は非常に格調高く、セックス、それも一般的ではないセックスを扱っていないにもかかわらず筆者の生き方と同様ストイックで、なぜか清清しい読後感がある。

あとちょっと感心したのは、腰の故障に対して、ダンサーが職業だったためマッサージの費用は保険で補填されるということ。その保険で雇ったマッサージ師とあんなことやこんなことをするわけだけど。

モラルや宗教的な抑圧があるからこそ、行為に並外れた快楽が伴うというところがストイックな中にも滲み出ているのだけど、恋愛、そしてセックスという行為自体、ノーマルだろうとそうでなかろうと、自分自身を見失ってしまうほどの陶酔感があるものであるということを改めて実感する。つまり、この作品は、決して特殊な話ではなくて、誰にでも共感をさせてしまう、シンプルで普遍的な恋愛の物語(ノンフィクションだが)なのだ。

http://www.tonibentley.com/

サレンダー 服従の恍惚サレンダー 服従の恍惚
トニ ベントレー Toni Bentley 栗原 百代

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2006/03/02

鬼が笑う話だけどABT2007年パリ公演

パリ、シャトレ座のサイトに2006-2007シーズンのラインアップが出ていて、その中にABTのパリ公演の日程も出ていました。

史緒さんのブログで教えていただきました。ありがとうございます!)

http://www.chatelet-theatre.com/popup/popupvideo/Saison0607.pdf
16ページ~18ページ目
シャトレ座2006~2007シーズン
ABT公演2007年2月6日~10日

Symphonie concertante (George Balanchine)
The Green Table (Kurt Jooss)
Mercredi 7 février 2007 à 20 h

La Bayadère (Acte des ombres) dans la version de Natalia Makarova ラ・バヤデールの「影の王国」ですね
Drink To Me Only With Thine Eyes (Mark Morris)
Rodeo (Agnes de Mille)
Jeudi 8 février à 20 h
Samedi 10 février 2007 à 14 h 30

Symphonie concertante George Balanchine
Dark Elegies Antony Tudor
In the Upper Room Twyla Tharp
Vendredi 9 février à 20 h
Dimanche 11 février 2007 à 16 h

Drink To Me Only With Thine Eyes Mark Morris
The Green Table Kurt Jooss
Samedi 10 février 2007 à 20 h

Tarif 10 €, 25 €, 40 €, 60 €, 80 €

Irina Dvorovenko Paloma Herrera Julie Kent Gillian Murphy Xiomara Reyes Michelle Wiles Maxim Beloserkovsky Jose Manuel Carreno Angel Corella Marcelo Gomes Ethan Stiefel

一番安い席が10ユーロというのはお安くていいですね。
ラインアップはほぼ去年のシティセンターシーズンと同じのようです。特に大好評だった「The Green Table」「In The Upper Room」が見られるのはいい!
エルマンの名前がないのがちょっと気になります。というか改めてメンバーを見ると女性陣の層の薄さにちょっと愕然。

マラーホフの贈り物Aプロ2/25

調子が悪い…しかもこの間痛めたのと別の腿を痛めてしまったみたいで今日はお稽古を休む。

Bプロの途中だけどAプロの感想をアップしますね。

○「ザ・グラン・パ・ド・ドゥ」/ケント&マラーホフ

ジュリー・ケントがバッグを持ち黒ぶちメガネで登場。絶対にバッグを手放さそうとしない彼女を見て苛立つマラーホフ。やがてマラーホフはアイスダンスも真っ青の、ジュリーをぶんぶん振り回したりひきずったりするリフトを行う。コミカルな中に超絶技巧が盛り込まれた作品。
踊りのうまい美男美女がおふざけをするというところがポイントなので、美しく、しかもテクニックが伴っていないと面白くない。
私の苦手なジュリーだが、がんばっていてバッグを口にくわえたりわざと下手に踊ったりと好演していた。マラーホフとの組み合わせはビジュアル的に似合っている。でも、ニューヨークで見たABTのイリーナ・ドヴォロヴェンコとマキシム・ベルツェルコフスキー夫妻のコンビの方が、イリーナの完璧美女ぶりとコメディエンヌのセンスが効いていて面白かった。
最近のジュリーは鶏がらのようにぎすぎすと痩せすぎ。マラーホフももっとはじけてもよかったのかもしれない。

○「菩提樹の夢」よりアダージョ/セミオノワ&シュピレフスキー

振付的には、"ガラ公演ではありがちなコンテンポラリー作品”でまったく魅力を感じないが、ポリーナがとても上手なので何とか観ていられる。テクニックもさることながら、切ない表情がとても魅力的。アルテムは大柄ゆえ、重たく見えてしまう。とても端整な顔立ちをしているのに、そもそもこの演目には男性側の見せ場はなくてサポートに徹しなければならず、ポリーナの陰に隠れてまったく目立たなくて残念。

○「椿姫」/ラカッラ&ピエール

当初予定されていたノイマイヤー版とは別の振付だが、音楽は同じショパン。去年「エトワール・ガラ」でラカッラのノイマイヤー版椿姫は観たのだが、どうもしっくり来なかった。ところが、こちらでは、薄物(ただし、かなりラブリーな)衣装をまとったほっそりとしたラカッラがとても薄幸そうなイメージでよく似合っていた。高級娼婦というよりは少女のように見えたが、病に冒されながらも訪れた、つかの間の幸福感をうまく表現していた。
咳き込む演技はややわざとらしい感じもしたが、柔軟な身体を生かした流麗な振付で印象深かった。ピエールはタキシードの衣装がとても似合っていた。少しルグリに似ている面差し。派手なところはないのだが、なにしろサポートが非常に上手な人で、「マノン」の寝室のPDDのような回転を伴う難しいリフトも、やすやすとこなしていた。「椿姫」の世界を舞台によみがえらせることに成功していて、今までそれほど良いとは思わなかったこのカップルの素晴らしさを実感した。

○「ファラオの娘」/アレクサンドローワ&フィーリン

「ファラオの娘」のDVDでも観られる、フィーリンの鮮やかな足さばきは見事。ジャンプは高くないが、アントルシャ・カトルの足先が美しい。素足にスカートの衣装も良く似合う美丈夫ぶり。
アレキサンドロワは小柄なフィーリンに対して大きくて踊りの方も大味だけど、テクニシャンぶりは見せつけた。映像版のアスピッシャがザハロワなのに比べられるとちょっと気の毒かも。アレクサンドロワは、映像でも演じていた侍女ラムゼアの方がテクニックの強さを発揮できて適役だと思われる。
それにしてもこの演目は音楽も振付も古臭くてつまらない。いいのは衣装だけ。「パキータ」「ラ・シルフィード」そして「ファラオの娘」とラコットが復元した作品はろくなものがない。今年の東京バレエ団の「ドナウの娘」もいかにもつまらなそうだ。21世紀にロマンチックバレエの復元って意味があることなのだろうか?「ハイランド・フリング」のようなリメイクならともかく…


○「白鳥の湖」より第二幕/ケント&マラーホフwith東京バレエ団

ロットバルトの登場からコーダまでまるまる2幕の上演。
高岸さんのロットバルトは少しも悪そうではないが、かっこよくていいのだが…
相変わらず大きな足音のコール・ド。4羽の小さな白鳥も顔の向きがまったく揃っていない。その中でさすがに小さな白鳥の小出さんは良かった。また大きな3羽の白鳥は3人とも良かったが中でも大島さんがダイナミックで素敵だった。 そもそも、群舞のフォーメーションがよくないのである。せっかくの主役二人の邪魔!
ジュリー・ケントの白鳥を見るのは去年のMETでフリオ・ボッカと共演したときに続いて2度目だが、さすがに作品の産休明けよりは良くなっていると思った。足先を小刻みに震わせるところなどはうまい。でもやっぱり白鳥というより鶏ガラなのよね。儚い存在感と薄幸そうな美貌は白鳥向きではあるものの、背中がかなり硬い感じがする。足先はきれいだが、股関節も柔らかくはないし。いずれにしてもテクニックではなく美しさで勝負の白鳥。最初に王子とであったときの驚きと拒絶のリアクションが大きくてこちらも驚いてしまった。しっかりとマイムを行うバージョンだったけどマイムも上手ではないし…もともとジュリーは好きなバレリーナではないのでどうしても辛口になってしまうが、古典全幕 のヒロインはそろそろテクニック的に厳しいのではないだろうか。 マラーホフの憂いを秘めた表情はさすがに絶品。ラスト、オデットや白鳥たちが去った後、飛び立つ白鳥の群れを視線で追っていく演技も素晴らしい。白鳥の2幕での王子はあまり踊るところはないので、もったいない感じではある。
それにしても、チャイコフスキーはテープで聴くと興ざめだし、さらにそのテープの録音状態も悪いのは非常に残念。 他の演目にしても、テープを使うにしてももう少し良い録音はなかったのか。

○「白鳥の湖」より黒鳥のパ・ド・ドゥ/セミオノワ&シュピレフスキー

ポリーナの存在感にひたすら圧倒された。一瞬イノセントに見えて、かわいい顔をした悪魔。その魔力は強力で、その場にいる誰もを魅惑することだろう。強い目線と演技力。そして強靭なテクニック。今回のオディールのヴァリエーションは、ボリショイでよく踊られているエキゾチックな音楽を使用したもので(グリゴローヴィッチ版)、アラベスクのまま回転したりフェッテしたり、足が下につくことがほとんどない非常に高度なテクニックを要するものだったが、安定していてよく音楽に乗っていて素晴らしかった。そしてコーダの32回転フェッテ、なんと前半は全部ダブルの高速回転。 腕のポジションが常に同じところにあって、床に突き刺さって天井から糸でつられているようなまっすぐな軸。ポールドブラも綺麗。
こんなオディールを見たら王子はイチコロだろう。もうなすすべもなく踊らされるしかない。圧倒的なポリーナの凄さの前に王子の存在感は弱いが、もともと白鳥の王子はそんなものだから。ほとんど目がいかなかった。さすがにソロでのジュテ・アントラッセやジュッテは、大柄な体に似合うダイナミックで高さもあるものだったが。ポリーナはベルリンなんかにいるのがもったいない。世界中で活躍できる大スターになることだろう。すでにボリショイに客演したりロベルト・ボッレと共演したりしているようだが。

○「ライト・レイン」/ラカッラ&ピエール

ポリーナも凄かったけど、ラカッラもとんでもなかった。少しだけベジャールの「バクチ」に似た作品。どこかインド風のオリエンタルでエキゾチックな音楽に乗って、軟体動物のような肢体をいろいろな方向に曲げたり伸ばしたり、パートナーとエロティックに絡んだり。でも単に柔らかいだけではなく、意思やエロス、香り立つような個性が浮かび上がって、とてつもないインパクト。彼女のなまめかしい体のしなり具合は、ほとんどびっくり人間の領域に到達している。でも、それだけのすごい体勢をとることができるのも、シリル・ピエールの鉄壁のサポートがあってこそだろう。素晴らしいパートナーシップだ。

○「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ/アレクサンドローワ&フィーリン

フィーリンはバジルを踊るにはちょっとノーブルすぎるかもしれない。バルセロナの床屋のお兄ちゃんに見えないが、極めて基本に忠実で、一つ一つのしぐさ、指先、足先に至るまで非常に丁寧で美しくきめていた。黒いタイツを穿くととても脚が細いのがわかる。マネージュなどもいかにもボリショイらしい、力強くも優雅なものだし、バリエーションも美しかった。どちらかといえば小柄な彼に対してアレクサンドロワは背も高ければ体格的にもがっしりとしていてバランスという意味では決して良くはないが(もともとはルンキナが出演する予定でアレクサンドロワは代役)それでもサポートはとても上手。
キトリはアレクサンドロワの持ち味にぴったり。ちゃきちゃきの下町娘という感じで、生き生きと元気良かった。バランスも長い時間まっすぐ立っていられる。フェッテは全部シングルだけどスピーディでしかも雑なところはまったくないし、コーダのピケターンも正確。まさに正統派のふたりだった。

○「ヴォヤージュ」/マラーホフ

キリアンの「小さな死」に使われているのと同じモーツァルトの美しい曲。世界中を旅して回り出会いと別れを繰り返すダンサーの生き様、孤独、人生の旅を表現した作品。だぶだぶの白いジャケットを羽織り揃いの白いパンツ姿のマラーホフは、「眠り」の時の不調ぶりがうそのように、高いジュッテ、驚くほど柔らかく反った背中、神経の行き届いた指先、ふわりと美しく舞う。ツァネラがマラーホフのために創った作品ということもあり、彼の人生が透けて見えるような、場内の空気がマラーホフの人生そのものに染められていくような感動的な逸品。ラストに笑いながら「バイバイ」と手を振るマラーホフを見て泣きそうになった。

フィナーレは「パキータ」の曲に乗って、出演者たちが技を披露しあう。フィーリンとシュプレフスキーのピルエット・アンディオールは、フィーリンのほうが高い角度で素早く回っていて、ずっと年上のフィーリンの貫禄勝ち。ところで、フィーリンとアレクサンドロワがジュッテで舞台を横切るのだが、アレクサンドロワが男性のフィーリンと同じ高さで跳んでいたのにはびっくりした。さすが前回のバレエフェスでアリのバリエーションを踊っただけのことはある。ラカッラとピエールのペアにもびっくり。ラカッラを高々とリフとして、そこから放り投げてキャッチするという超難度のリフトをやすやすとやってしまうピエール。そしてマラーホフは、胸が一番高いところに来るような、空気に浮いてそのまま飛び立ってしまいそうなジュッテを見せてくれた。「眠り」での不調ぶりが嘘のようである。彼には翼がある。

細かい不満はあったけれども、全体的にいえば非常に満足度の高い、充実した公演だった。ポリーナ、ラカッラ、フィーリンの3人は特に素晴らしかったと思う。マラーホフ、素敵な贈り物をありがとう。

2006/03/01

ボリショイ・バレエ団2006年日本公演ブログ

いつのまにか、ボリショイ・バレエ団2006年日本公演オフィシャルブログというものがイープラスにできていました。

http://blog.eplus.co.jp/bolshoi/

ダンサーの紹介から裏話までなかなかよさそうな内容です。このような企画でありがちなミーハーな内容ではなく、ちゃんとした評論家の方の記事もあります。
「マラーホフの贈り物」で来日したアレキサンドロワとフィーリンの裏話や、「ファラオの娘」を踊り終えた直後の楽屋裏での写真(マラーホフ、シュプレフスキー、ポリーナ・セミオノワも写っている!)まで載っていてファンには嬉しい限り。
こういう企画は大歓迎です。

マラーホフの贈り物 Bプロ (メモ)

ラ・シルフィード  マラーホフ&ケント
マラーホフのジェームズは珍品。果たしてあのキルト姿は似合うのか、というのが最大の関心事だったのだけど、脚そのものはほっそりとして大変綺麗。ただし、髪型をきっちりとセットしていたので違和感大有り。
ラ・シルフィードといえば脚捌き、であるが、マラーホフはさすがに足先の美しさは絶品できれいに5番に着地している。アントルシャ&トゥール・アン・レールの回数が鬼のように多い振り付けなので回りきれなくてアン・ファスに着地できないこともあったけど。
もっと軽やかに跳んでくれると期待していたが、健闘したほうと言えるでしょう。
ジュリー・ケントはシルフィードは似合っていると思う。見るからに軽いし。しかしこの人は背中が堅いね。

マノン 寝室のPDD  セミオノワ&シュプレフスキー
ポリーナはこんなにうまくなってどうしましょう、と思うほど細やかに踊れる。技術的には完璧だし、マノンの小悪魔っぽさも巧みに表現できていて似合っていると思う。アルテムは、Aプロの白鳥王子よりはこっちの方が全然いい。ただ、デ・グリューには演技的になりきれていないし固さがあるので、結局二人の気持ちが通っていないように見えている。デ・グリューは基本的にはボンクラ神学生なので、多少鈍そうに見えてもいいんだけど。マクミランの難しいリフトにもやや不安が残るところ。美男美女が演じるというだけで、ポイントが上がる演目ではある。彼は本当に顔は端正で素敵だから、もう少し演技力と技術を磨いて欲しいところ。

アゴン  ラカッラ&ピエール
再びびっくり人間というか妖怪タコ人間のラカッラが、地球外生命体並の柔軟性を発揮できる演目に挑む。この作品は一昨年のNYCBの来日公演で観たのだけど、今回はまったく別の作品に見えてしまう。もはやバランシンではない。220度くらいに開くルシアの股関節はすごすぎ。自由自在に動ける体を持つってすごい。シンプルなレオタード姿なのだが、彼女くらい顔が小さくて手足が長くてほっそりしていると、その簡素さがまたとない美しさにつながっていく。

ライモンダ  アレクサンドロワ&フィーリン
1幕の夢のシーンのPDDかな、と思ったら途中で3幕の有名なライモンダのヴァリエーションになっているので少々驚いた。アレキサンドロワはとにかくテクニックが強靭。ヴァリエーションの、ポアントに載ったままのパドブレの安定感たるやたいしたものである。いわゆる正統派美女とは違う個性的な顔立ちをしていて、お姫様っぽくないのに、高貴なオーラを出しているのはさすがだ。フィーリンはとにかく安心して見ていられる方。ダークなハンサムで、白い衣装の似合うこと。男らしさと端正さが程よいバランスで、これぞダンスール・ノーブルという感じ。リフトもお上手。

寝ます。

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