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2006/02/10

オリガ・モリソヴナの反語法 (米原万里)

「これぞ想像を絶する美の極み!」
1960年代にプラハのソビエト学校に通っていた日本人女性志摩が、ソ連崩壊後、当時の親友と、反語法を駆使して奇天烈な個性をもった老ダンス教師オリガ・モリソヴナの足跡をたどるためにモスクワへ。そこで知ったのは、時代に翻弄された伝説の舞姫や周りの人々の数奇な運命と、スターリン時代の粛清やラーゲリ(強制収容所)のこと。オリガの反語法はいかにして生まれたのか…。

オリガの駆使する反語法というか罵詈雑言がとっても可笑しい「メス豚に乗っかってから考える去勢豚」とか、「他人の手の中にあるチンポは大きく見える」とか「七面鳥にも思慮はあったが、結局はスープの出汁にされてしまった」などなど。ド派手なオールド・ファッションと厚化粧の老婆だが、踊りだすとどんな踊りでも素晴らしく、そして自称50歳だが推定年齢70~80歳なのに、筋肉質の脚とほっそりとした体躯を持っている。

モスクワの劇場で一世を風靡した妖艶な舞姫オリガと、中国の青年と大恋愛の末結ばれたパリの大富豪の娘エレオノーラ。このふたりが、あまりにも苛酷な運命に翻弄され、粛清で家族や愛する者を失い、ラーゲリでの地獄のような日々を乗り越えてプラハになぜたどり着いたのか。そして二人をママと呼ぶエキゾチックな美貌のバレリーナ、ジーナの語った話ですべてのパズルのピースが一箇所に収まる。
493ページという大長編だけど、思わず一気に読むきってしまうほどの勢いがある。

フィクションという体裁は取っているものの、膨大な調査に基づいて、実際にあった話をつなぎ合わせた物語といった雰囲気。あまりにも都合よくヒロインが関係者に出会えて話を聞き出せたというところには違和感はあるものの。この骨太の物語の力の前ではそんなことはどうでも良くなる。

「プラハの春」直前のプラハでの生き生きとした子供たちと、個性的な二人の老女教師たちの描写は楽しい。生き地獄のようなラーゲリでの生活を彼女たちが乗り切れたのは、かつてはダンサーや俳優、歌手をしていた収容者たちが、夜な夜な台詞の暗誦や歌、踊りを繰り広げていたから、という感動的なエピソードに、最後に人の魂を救うのは芸術でありということを思い知らされる。悲惨な歴史を経過しながらも、素晴らしい芸術を生み出したロシアという国の底力が感じられる。

ジーナ探しに尽力した劇場のオバちゃんなど、ロシア人の暖かさが滲み出てくるエピソードの数々も素敵。ボリショイ劇場の話などバレエ関係の話がたっぷりと出てくるので、バレエ好きの人ならなおさら楽しめるのでは?「ジゼル」の衣装が気に入らないからってコール・ドの衣装まで全部作って寄付したという某日本人バレリーナ藻刈富代(!)の悪口も書いてあってかなり笑える。

オリガ・モリソヴナの反語法オリガ・モリソヴナの反語法
米原 万里

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コメント

なんだかおもしろそうな本ですねえ。
図書館で探してみようかしら?

図書館で・・・といえば、「肉単」借りてきましたよ。別に英語の本ってわけじゃないんですね。
これ単体で記事を立てるほど読みこなせないので(汗)どうしようか迷っていますが、ほんと語彙とか載っていておもしろいので、脳単、臓嘆など他シリーズも借りてみたくなりましたよ。

うるるさん、こんばんは!
開会式お疲れ様でした!(笑)

この本だったら多分図書館にあるんじゃないかしら。米原さんは結構人気あるし。私も他の本を色々と読んでみたくなりました。文庫本で700円くらいなので、買ってもいいかなと思うけど。でも文庫でこの値段はちょっと高いですよね。

「肉単」なかなか面白いでしょう。確かに一冊だけではネタになりにくいけど、ジェイソンの写真とか見ながらこれが〇〇筋なんて確認しています。骨のもなかなか面白いです。

こんばんは。開会式・・・(苦笑)。
この本、図書館にありましたよ。あした借りに行ってきます。
肉単・・・シリーズのほかのものは図書館にないんですよ(こうなったら脳単、臓単なんてのも見てみたいのに)。なんとなくこのシリーズ、おうちにそろえておいておそばに置きたい気分・・・。でも医学関係の専門書のようなのでお値段がお高いんですよね~。

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