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2006/02/04

バレエ・プレルジョカージュ『N』

実のところ、コンテンポラリーダンスって苦手なのである。キリアンなどネオクラシック系の作品は好きだし、コンテンポラリーの中でも好きな作品もあるのだけど、頭を使わないといけないし、退屈なことも多いし。音楽の使い方も。ネオクラシックだとクラシックの曲を使うことが多いからいいんだけど、コーラスではないヴォーカル入りの曲で踊られるのがあまり好きではない。ヴォーカル入りだったらミュージカルかオペラにしちゃえばいいのだと思ってしまう。なので、実のところベジャールも苦手なのだ。もちろん、その中でよい作品も好きな作品もあるんだけど。 あ、このプレルジョカージュの『N』の音楽には、ヴォーカルは入っていません。念のため。

パリ・オペラ座にアンジェラン・プレルジョカージュが振付けた「ル・パルク」が面白かったので、今回の公演を見ることにした。チケットも安いし。しかし、こんな注意書きがあると非常にびびってしまう。

*『N』には、幼い子供、妊婦、癲癇患者、心臓ペースメーカーや補聴器を付けた方々にはお勧めできない、低周波の大音響ならびにストロボ効果が含まれています。

『N』は世界が犯した罪に対するプレルジョカージュ自身の怒りと絶望が投影されている、という解説があったけど、それはなるほどな、と思った。プレルジョカージュは、N=「haine---憎悪・嫌悪」と理解してほしい(フランス語でNとhaineは発音が同じ) と語っている。

幕が開くと、非常に薄暗い中、二つの山ができている。目を凝らしてみると、それは一見全裸(実際には肌色のレオタード着用)に見える人間が折り重なり合っている。投げ出された手足は絡み合っている。死体の山か、と思ってみていると、ひくひくと動いている。二つの山からひとりずつ人間が四つんばいになって這い出し、獣のように取っ組み合いを始める。勝者と敗者。やがて他の人間(といっても非常に動物的)たちも闘争を繰り広げられる。非常に暴力的で、勝者は徹底的に敗者を、死ぬまで打ちのめし、倒れて動かない相手をずっと転がしいたぶり続ける。同性同士で戦っている人もいれば、男と女で戦っている者も。女性に対する陵辱的なヴァイオレンス。根源的な、原罪的な残虐性。
ゴロゴロと転がり地を這う肉体は、人間というよりは、物質化している。剥き出しの暴力。

ずっと低いノイズのような音が流れているが、やがて、この神経を逆撫でるノイズは増幅されていき、座席まで振動するほどだ。スクリーンには、ずらりと整列した、まるでシャア専用ザクって感じのモビルスーツをさらに邪悪にした感じのロボットがずんずん巨大化しながら迫ってくるように行進する映像が流れ、音と動きがシンクロしていて恐怖感を煽る。これは本当にすごく怖い。

ペアになって踊る男女。ゴロゴロと床を転がるダンサー。最初の方から小さいながらもずっと明滅していた光も、重低音とともに増幅していき、ストロボが延々と光り、デヴィッド・パーソンズ振り付けの「コート」の時のように、ダンサーたちのシルエットが浮かび上がり動きがコマ送りのロボットのように見える。しかし、ダンサーの動きは中腰の状態から、崩れ落ちるように倒れていく動作の繰り返し。崩れ落ちる姿は死を象徴しているかと思ったが何回でも立ち上がっては倒れる。ストロボの光は目を開けているのも辛いほどに。

なかなか面白く見ることはできたのだが、メッセージとして、世界には剥き出しの暴力や憎悪が満ち溢れていて、人間をを戦争や犯罪に駆り立てる、それは人間の、獣としての本能に基づくものなのでは、という人類の「罪」に対する怒りと絶望のみでそれ以上のところが伝わりにくいという気が少しした。希望というものもほとんど見えてこない。ノイズやストロボの使い方も、特に斬新というわけではない。2004年の作品という割には、もはやすっかり手垢のついてしまった表現にすら思えてしまう。ただし、"暴力性”の表現としては理屈を超えて伝わってくる激しくも力強いものがあると思った。

前半は照明が非常に暗くて、ダンサーの姿を確認するのも難しく、また単調なノイズ音楽が低い音量で流れているというのが催眠効果となり、たまに集中力が途切れる瞬間があった。1時間15分、休憩なしである。しかし後半のテンションはすごいものがあり、その結果、すっかりぐったりと疲労困憊してしまった。できれば体調の良いときにもう一度見てみたいと思った。

詳しい解説やインタビューはここで。
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/10000019.html

unoさんの感想はこちら

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コメント

私の感想を紹介して頂きありがとうございます!
naomiさんと同じく、『ル・パルク』が面白かったので見に行くことにしたんです。
実は私もちょっと意識が遠のく場面もありました…。でも、後半のテンションはすごかったですね~。ストロボの点滅の中、繰り返し崩れ落ちる姿は、心にずっしりと重く残りました。

unoさん、
いえいえ~あの作品に関しては、他の方がどのように感じられたのかすごく知りたい思いになりましたからね。
後半はなんだかすごかったです。私は2階席で観ていたんですけど、きっともっと近くで観ていたら大変なことになってしまったのではって思います。「四季」も見たかったです。

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今年最初の劇場通いです。 バレエ・プレルジョカージュ『N』(Aプログラム) 新国立劇場 中劇場 上演時間約1時間15分(休憩なし) 構想・演出 アンジェラン・プレルジョカージュ/クルト・ヘントシュラーガー/ウルフ・ラングハインリッヒ 振付 アンジェラン・プレルジョカ..... [続きを読む]

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