BlogPeople


2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

ブログパーツ

  • HMV検索
    検索する
無料ブログはココログ

« 2005年11月 | トップページ | 2006年1月 »

2005年12月

2005/12/31

今年観た舞台

これから実家に帰らなければならず、総括はまた後ほどということでリストだけ羅列します。
数えてみたら89回!でした。去年より30回ほど増えているけどこれは全部白鳥さんです(笑)

1月6日(木) 牧阿佐美バレヱ団 白鳥の湖(ゲスト:アンヘル・コレーラ&ジリアン・マーフィ)東京文化会館
1月7日(金) 牧阿佐美バレヱ団 新春ガラ(ゲスト:アンヘル・コレーラ&ジリアン・マーフィ)東京文化会館
1月8日(土) 牧阿佐美バレヱ団 白鳥の湖(ゲスト:アンヘル・コレーラ&ジリアン・マーフィ)東京文化会館
1月10日(祝)新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」(酒井はな&山本隆之)新国立劇場
2月3日(木) ハンブルクバレエ ニジンスキー 東京文化会館
2月13日(日) 東京バレエ団&マチュー・ガニオ ラ・シルフィード 東京文化会館
2月17日(木) ハンブルクバレエ 眠りの森の美女 NHKホール
2月22日(火) マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
2月26日(土)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
3月5日(土)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
3月5日(土)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
3月6日(日)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
3月9日(水)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
3月12日(土)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
3月13日(金)H・アール・カオス「神々を創る機械2005」東京芸術劇場中ホール
4月6日(水)マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月9日(土)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月9日(土)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月10日(日)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月10日(日)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月15日(金)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月16日(土)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月16日(土)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月17日(日)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月20日(水)マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月23日(土)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月24日(日)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月26日(火)マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月27日(水)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月27日(水)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 Bunkamuraオーチャードホール
4月30日(土)東京バレエ団&シルヴィ・ギエム 愛の物語Aプロ
5月3日(祝)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 神戸国際会館
5月3日(祝)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 神戸国際会館
5月4日(水)マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 白鳥の湖 神戸国際会館
5月15日(土)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 「白鳥の湖」韓国公演 LGアートセンター
5月15日(土)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 「白鳥の湖」韓国公演 LGアートセンター
5月16日(日)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 「白鳥の湖」韓国公演 LGアートセンター
5月16日(日)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 「白鳥の湖」韓国公演 LGアートセンター
5月29日(土)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 「白鳥の湖」韓国公演 LGアートセンター
5月29日(土)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 「白鳥の湖」韓国公演 LGアートセンター
5月30日(日)マチネ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 「白鳥の湖」韓国公演 LGアートセンター
5月30日(日)ソワレ マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 「白鳥の湖」韓国公演 LGアートセンター
6月20日(月)ベルリン国立バレエ 「ラ・バヤデール」東京文化会館 ポリーナ・セミオノワ&アルテム・シュプレフスキー
6月23日(木)マシュー・ボーン&ニューアドベンチャーズ 「愛と幻想のシルフィード」東京芸術劇場中ホール
6月24日(金)ベルリン国立バレエ 「ニーベルングの指環」東京文化会館
6月25日(土)マチネ ABT 「海賊」 メトロポリタン・オペラ・シアター
6月25日(土)ソワレ ABT 「海賊」 メトロポリタン・オペラ・シアター
6月26日(日)ニューヨークシティバレエ「真夏の夜の夢」ニューヨークステートシアター
6月27日(月)オペラ座の怪人(ブロードウェイ)
6月28日(火)ABT 「海賊」 メトロポリタン・オペラ・シアター
6月29日(水)マチネ ABT 「海賊」 メトロポリタン・オペラ・シアター
6月29日(水)ソワレ ABT 「海賊」 メトロポリタン・オペラ・シアター
6月30日(木)ABT 「海賊」 メトロポリタン・オペラ・シアター
7月1日(金)ABT 「白鳥の湖」 メトロポリタン・オペラ・シアター
7月2日(土)マチネ ABT 「白鳥の湖」 メトロポリタン・オペラ・シアター
7月2日(土)ソワレ ABT 「白鳥の湖」 メトロポリタン・オペラ・シアター
7月10日(日)ロイヤル・バレエ「シンデレラ」 ダーシー・バッセル 東京文化会館
7月12日(火)ロイヤル・バレエ「シンデレラ」 吉田都 東京文化会館
7月15日(金)ロイヤル・バレエ「マノン」ダーシー・バッセル 東京文化会館
7月17日(日)ロイヤル・バレエ「マノン」タマラ・ロホ 東京文化会館
7月23日(土)マチネ エトワール・ガラ Aプロ  Bunkamuraオーチャードホール
7月21日(木)ABT オールスターガラ 東京文化会館
7月22日(金)ABT オールスターガラ 東京文化会館
7月23日(土)ソワレ ABT 「ライモンダ」東京文化会館 コレーラ&マーフィ&パスタ-
7月24日(日)マチネ ABT 「ライモンダ」東京文化会館 カレーニョ&へレーラ&ボッカ
7月24日(日)ソワレ ABT 「ライモンダ」東京文化会館 ゴメス&パールト&サヴリエフ
7月26日(火)ABT 「ドン・キホーテ」 東京文化会館 ボッカ&へレーラ
7月27日(水)マチネ ABT 「ドン・キホーテ」 東京文化会館 コルネホ&レイエス
7月27日(水)ソワレ ABT 「ドン・キホーテ」 東京文化会館 カレーニョ&マーフィ
7月28日(木)ABT 「ドン・キホーテ」 東京文化会館 コレーラ&ヘレーラ
7月29日(金)ABT 「ドン・キホーテ」 東京文化会館 カレーニョ&ケント
7月30日(土)ABT オールスターガラ 大阪フェスティバルホール
7月31日(日)ABT ライモンダ びわ湖ホール コレーラ&ヘレーラ&パスター
8月7日(日) 日本バレエフェスティバル 新国立劇場
8月14日(日)東京バレエ団「ユカリューシャ」 ゆうぽうと
8月18日(木)東京バレエ団「眠れる森の美女」マニュエル・ルグリ&小出領子 東京文化会館
9月8日(木)スペイン情熱のバレエGALA
9月9日(金)スペイン情熱のバレエGALA
10月30日(土)東京バレエ団「M」ゆうぽうと
11月5日(土)新国立劇場「カルミナ・ブラーナ」
11月6日(日)ルジマトフのすべて 新宿文化センター
11月8日(火)シュツットガルト・バレエ「オネーギン」x2 東京文化会館
11月12日(土)マチネ シュツットガルト・バレエ「ロミオとジュリエット」フォーゲル&アマトリアン 東京文化会館
11月13日(日) 兵庫県立芸術文化センター 「春の祭典」
12月4日(日)ラファエル・アマルゴ「エンランブラオ」Bunkamuraオーチャードホール
12月5日(月)シルヴィ・ギエム&東京バレエ団「最後のボレロ」Cプロ 東京文化会館
12月14日(水)マシュー・ボーン「白鳥の湖」Theatre Mogador
12月15日(木)マシュー・ボーン「白鳥の湖」Theatre Mogador
12月16日(金)マシュー・ボーン「白鳥の湖」Theatre Mogador
12月17日(土)バレエ・ビアリッツ「くるみ割り人形」Gare Du Midi
12月18日(日)バレエ・ビアリッツ「くるみ割り人形」Gare Du Midi
12月24日(土)東京シティバレエ「くるみ割り人形」 ティアラこうとう

ビアリッツ二日目

Hotel1

今回の旅行で初めて、ホテルのレストランで朝食をいただくことに。とても素敵なマダムVeroniqueさんが用意してくださった。小さなホテルだけど、レストランのインテリアがミントグリーンを基調としていて、とてもかわいらしくて素敵。パティオがあるので、暖かい季節にはここでもご飯が食べられる。クロワッサンと紅茶、オレンジとジュースのシンプルな朝食だけど、美味しいジャムやバターも添えられていて、しばしとても幸せな気分に浸る。それにしてもフランスで食べるクロワッサンは何でこんなに美味しいんだろう。

Biarritz3


昨日よりはお天気もよくなったので、ビアリッツ観光へ。まずは、これまたかわいらしい観光案内所に行った後、海洋博物館の横を通り抜け、処女の岩へ。岬の先端に白い処女マリア像のある岩があって、見晴らしが大変よい。左方向を見ると、そこはもうスペイン。大西洋の大きな波が打ちつける。ごつごつした岩場に上るのも楽しい。観光には季節はずれではあったけど、観光客も少しはいた。ビーチやオテル・デュ・パリ、灯台などが一望できて晴れた日にはさぞ気持ちよいだろう。腐女子二人はここで色々と妄想を働かせては盛り上がっていた。

Biarritz

それから旧市街の方へ。瀟洒なレストランが建ち並び、入り江になったビーチの砂は白くてきれいだし海も遠浅になっていて水も透明だ。こんなに素敵な場所なら、夏はきっと人で大賑わいだろう。市街地も、カラフルでとても可愛いお店がいっぱい建ち並ぶ。どこの写真を撮っても絵になる。デジカメのメモリが少なすぎてあまり写真を撮ることができなかったのが残念。

一通り散策した後、ビアリッツでいちばん有名なチョコレート店Henriet(アンリエット)で買物。実はビアリッツのあるバスク地方というのは、フランスで一番最初にチョコレート文化が伝わった場所なのである。お店の中は美味しそうなチョコレートやケーキでいっぱい。ディスプレイもとてもお洒落で、見ているだけで幸せだ。ただしお値段はちょっとお高い。この店の名物であるフワフワのチョコレートムースで作られたケーキ「ベレ・バスク」を買って帰る。
Biarritz2

一休みしたら、ようやく晴れてきたので、カジノのある海岸近くの中心街に出かけていく。すると、これまでもちょくちょく見かけていた謎のパフォーマンス集団が人々を集めていた。軍用のコートを着てベレー帽をかぶり、竹馬に乗っている。歌ったり演奏したり、さらには着替えて竹馬に乗ったまま踊ったりとなかなか芸達者で、相当の人だかりができていた。

昨日は雨だったので閑散としていたけど、冬の太陽が照り付けてきたのでしばし海岸で散歩。ついでに大西洋にちょっと触れてみたい、と砂浜を歩いた。波は結構大きくて、大勢のサーファーが波を乗りこなしている。気持ちよいこの場所でゆっくりしていたかったけど、そろそろまたバレエ・ビアリッツの「くるみ割り人形」開演の時間だ。

2005/12/30

バレエ・ビアリッツ「くるみ割り人形」Casse-Noisette

GareDuMidi2

今回のフランス行きのメーンイベントともいえるこの公演。場所はGare du Midiという劇場。名前からもわかるとおり、もともとは駅舎で、ナポレオン3世も利用したという由緒正しい場所。アールヌーヴォー様式の建築物である。オルセー美術館のミニ版という感じもする。2階席はバルコニー席のみだが、1400席ほどあり、東京では東京国際フォーラムAで上演された「ピンク・フロイド・バレエ」を上演したほどだからステージはとても広い。おそらくオーチャードホールくらいの広さはあると思う。しかも、席の座り心地はとても良いし、段差もあってとても観やすい。
バレエ・ビアリッツBallet Biarritzは1998年に設立された新しいカンパニーで、フランスの文化庁とビアリッツ市、およびバスク政府が共同で設立。2004年にブノワ賞にノミネートされた芸術監督のThierry Malandaineティエリー・マランダンの作品を主に上演している。ティエリーの作品は日本の貞松浜田バレエ団が上演したこともある。

GareDuMidi3

さて、開演は9時と遅い。だが、「くるみ割り人形」という演目の性質上、観客に小さな子供が非常に多かった。広いロビーだが人はぎっしり。グッズ売り場でかわいいクマのぬいぐるみと、パンフレット、クリスマスっぽいかわいいボールペン、Tシャツを買う。すると、サポーターズクラブ募集担当のボランティアらしきおじさんが話し掛けてきた。ここのカンパニーは16人しかいないので、怪我とか病気になっても代役がいないから健康管理に細心の注意を払っている。皆とても素晴らしいダンサーだ。ディレクターのティエリー・マランダインは、パリ・オペラ座でプリミエ・ダーンスーズにまでなった人で、大変な才能の持ち主だと。彼の作品はクラシックでもなければモダンでもなくて、でもとても面白いよって。地元の人にこのカンパニーがとても愛されているのがわかった。クリストファー・マーニーを観に来たの、と言ったらもちろん知っているよ、いいダンサーだねと言った。ニュースレターやポストカードは無料でもらえた。

そして開幕。キャスト表を見ると、私たちの目当てのクリスは、クリスマス・パーティの客と、スペインの踊りとある。ちょっとで番が少なくて残念だな、と思ったのだがそんなことは全然なかった。 実は出ずっぱりだったのである。
http://www.balletbiarritz.com/gb/0303cassen.html (「くるみ割り人形」動画あり)

cassen02

ステージのセットはとてもシンプルだ。左側に、円錐形の物体があって、これがクリスマスツリーを象徴させている。ちゃんと後で巨大化する。ショートヘアで黒い大きな瞳のかわいらしいダンサーMagali Praudがマリー(=クララ)で、ドロッセルマイヤーは、長身で脚がとても美しい、非常にハンサムなイタリア人Giuseppe Chiavaro。長い脚がすっとまっすぐに伸びた彼のジュッテの美しさは特筆ものである。ドロッセルマイヤーは、ニットのセーターと普通のパンツを着用しているが、あまりにも素敵なので、マリーはドロッセルマイヤーに対しても恋心を持っているのかしら、なんて思ってしまった。

ストーリーそのものは原典の「くるみ割り人形」に忠実だし、音楽もチャイコフスキーのスコアをほぼそのまま使っている。でも、モチーフが色々とキュートにポップに、でもあくまでもフランスらしくスタイリッシュに変えられており観ていて楽しい。くるみ割り人形は、赤いヘッドギアとボクシングのグローブにボクサーのブーツという造形。くるみを踊るのは、ロイヤル・バレエ・オブ・フランダース出身のFréderik Deberdtで、小柄で金髪のダンサー。なんとなく「くるみ割り人形」という演目は王子にしてもくるみ割り人形にしても男性のダンスが少ないという印象があるが、この版はそんなことはない。かなり複雑なリフトが多くて、非常にテクニックを求められるが、立派にこなしていた。

クリスマス・パーティの招待客がやってくる。エジプトのスフィンクス風の露出度の高い衣裳、人民服など様々な扮装。背中にはプレゼントを背負っており、一人一人がクリスマスツリーの前でプレゼントを下ろし踊り始める。クリスもこの招待客の一人で、上は緑に大きな水玉柄のひらひらのブラウス(胸はだけ。チャームポイントの?胸毛もばっちり)をウェストで結び、下はフュ-シャピンク&オレンジのハーフスパッツという派手な扮装。しばし群舞の後、クリスマスツリーが巨大化するという例の演出で、マリーがおとぎの国に行く。

ねずみの軍団とおもちゃの兵隊たちとの戦い。16人という少人数のバレエ団のため、ねずみたちの中に女性ダンサーが混じっている。かぶりものをかぶっているが、なんだかとても可愛いねずみたちだ。そしておもちゃの兵隊たちとくるみ割り人形はというと、なんと棒を武器として駆使し、棒高飛びのように高く飛んで脚を大きく開脚しながらダイナミックに前進するという高度なテクニックを駆使する。その棒にぶら下げられて運ばれてしまう哀れなねずみの王様…

そして8人の雪の精たちが登場。白いボンボンのついたニットキャップにロマンティックチュチュで、粉雪を撒き散らしながら速いジュッテで舞台を横切っていく。細かいステップを駆使した群舞。綺麗だわ~とうっとりと観ているうちに、脚が筋肉質で太目の人たちが混じっていることに気がつく。そう、ニットキャップで頭部を隠してしまっているのですぐには気がつかなかったのだけど、雪の精の中には男性ダンサーも混じっているのだ。16人のカンパニーで男性9人の女性が7人、マリーと母親役はコール・ドに入らないから男性も踊らないと足りないわけだ。そうしたらクリスもこの中にいるはず?似ている人はいたけど、かなり動きが速く、くるくるとフォーメーションも変化し一箇所にいることがほとんどないので追いきれなかった。男性ダンサーたちも女性に負けないくらいの柔らかい動きで、美しいアラベスクの軌跡の残像を残しながら飛び去っていく。この幕のラストでは雪の精たちが指先から粉雪をこぼしながら佇んでいるという美しい幕切れ。(幕間では、一生懸命雪を片付けているところが見えてしまってちょっと笑ってしまった)

2幕は、ドロッセルマイヤーがマリーにおとぎ話を聞かせるところから始まる。お菓子の国の王様と女王様が赤ん坊のかごを見守っているところから始まる。王様は頭にトナカイの角をつけていて、ふたりともクリスマスの装い。ねずみたちから子供を守るための猫がいるが(この猫は、フレデリック(=フリッツ)がカブリモノをかぶって演じている。フレデリック役は、元ベジャール・バレエ・ローザンヌのRoberto Forleo)猫は赤ちゃんを振り回したり色々とやりたい放題。そしてねずみの呪いであかちゃんは真っ赤な姿に変えられてしまい、くるみの実を探してきてそれを砕かないと呪いは消えないということになって、ドロッセルマイヤーは世界を旅して周り、ニュルンベルグにいる甥の家でそのくるみを見つけてきて呪いを解くというところは、原作どおり。赤くなってしまった赤ん坊は呪いが解かれて、マリーの姿に。しかし甥は間違ってねずみの尾を噛んでしまったことでくるみ割り人形の姿に変えられてしまったので、ねずみの王様をやっつけてようやく元の姿に戻るというお話。その旅の中で、スペイン、アラビアなどの各国の踊りが登場するってわけだ。

そしてお待ちかね、クリスが踊るスペインの踊り。例のフリフリ水玉柄シャツで、女性ダンサーとユニゾンで踊る。ワイノーネン版などのくるみのスペインの踊りとは違って、あまりスパニッシュな感じの踊りではなく、2番プリエを多用したかと思ったら、スピーディで、後ろ脚をアティチュードにした軽やかな跳躍、脚をアラスゴンドにして上体を同じ方向に倒したりするなど柔軟性を求められる振り付け。クリスの柔らかい体と綺麗なアンディオールにはぴったりの踊りだった。アームスもとてもきれい。すごくにこやかに、のびのびと踊っているのが印象的。あっという間に終わってしまったけどもっと観ていたいと思った。
アラビアの踊りは、マシュー・ボーン版の「くるみ割り人形」のアラビアの踊りとちょっと似ていて、アラビアというよりエジプトのファラオって感じの頭飾りをつけた半裸の男性ダンサーが、床の上で妖しくのた打ち回るような不思議な感じの踊りだった。そしてトレパック(ロシアの踊り)は、なんと男性ダンサーに左右から女性ダンサーが一人ずつフィッシュダイブで飛び込んでくるという大変難易度の高い振り付け。最後には男性が女性二人をリフトするのだから、大変な体力が必要なのだと思う。中国の踊りは比較的一般的なくるみ割り人形の振り付けに近い可愛い踊り。

元の姿になったくるみ割り人形=王子がマリーを花のワルツの国へと連れて行く。そしてこの花のワルツがまた、コール・ドが男女混合ってワケ。やはりニットのキャップにオレンジとブルーグレーのボーダー柄のトップスにへそ出し、下はクラシックチュチュ。脚はポアントではなくバレエシューズ。背中にはシルフィードのような羽根。さすがにクラシックチュチュだと脚がむき出しになるので、男性が混じっているのがすぐわかるし、クリスを見つけるのも簡単だった。クリスは上半身は逞しく、胴回りも比較的太くてしっかりしているのだけど、膝から下がとてもすんなりとしてきれいな脚をしている。クラシックチュチュの踊りだけあって、振り付けもフォーメーションもクラシックバレエの群舞的な要素が強く、手をつないでのパ・ド・ブレ、アラベスクが多用されていた。ここのダンサーはレベルが非常に高く、アンディオールしたアラベスクの美しさ、バランスの長さにはうっとりとしてしまう。ラーララーララララ、と一同が歌うと男性が混じっているのがわかるのがご愛嬌。クリスのキラキラした笑顔がとても素敵。

花のワルツが終わって、人形の姿のくるみ割り人形と一人取り残されたマリー。しかしドロッセルマイヤーが登場し、くるみ割り人形の王子を連れてくる。王子とドロッセルマイヤーは同じ服を着ている。そしてマリーと王子はここで愛を確かめ合う。お子様の観客が多い中で、ちょっとドキっとするようなセクシーな(性行為を暗喩するような)振り付け。しかしマリーも王子も少年少女にしか見えないような容貌なので、いやらしくは見えない。そして幕。

ちょっと不思議で、ユーモラスで、ファンタジックな夢を見せてもらえた。クラシックのバレエのテクニックを使っているけれども、クラシック・バレエとも、いわゆるコンテンポラリーとも、モダン・クラシックとも、ミュージカルとも違っているオリジナリティ。小さな子供たちも退屈していない様子で、とても喜んでいた。けっこう斬新なこともやっているのに、小さな町でこんな風に受け容れられていて、すごく幸せなバレエ・カンパニーだと思った。振り付けも面白いし、ダンサーはそれぞれ個性的でテクニックも超一流。世の中にはそんなに知られていなくてもこんなにいいカンパニーがあり、いい振付家がいるのだ。

何よりクリスがとても楽しそうに、のびのびと、そして相も変わらず美しく踊っているのが嬉しかった。

2005/12/29

ビアリッツ1日目

これまでのパリ3日間は悪天候に見舞われ、ユニクロの折り畳み傘は突風で壊れかけたりと散々だったけど、パリを去る今日になってようやくシャンパンのようにキーンと冷えて晴れ渡った冬の空が広がる。少し早く起きたので、パリにさよならを言うために、ガルニエの周囲を散策し、オペラ座通りにあるカフェでカフェオレとクロワッサンの朝食。
ホテルの人が呼んでくれたタクシーでオルリー空港へ。バカンスシーズンが始まるということで、かなり道が渋滞した。しかも、オルリー空港がまた非常にわかりにくく、重いスーツケースを抱えてあちこちへたらいまわしに。チェックインしたら私たちの荷物はそれぞれ30キロ近い。よくもまあ追加料金を取られずにすんだものだ。

1時間15分ほどの空の旅でビアリッツへ。南フランスだし、パリも晴れていたし、さぞかしお天気はいいだろう、と思ったら小雨でとても寒かった。土日で両替所があいていないだろうと空港内の観光案内所で両替したら1ユーロ154円!ぎゃ~である。小さな空港の割には発着便は多く、ヒースローへのライアンエアー(激安航空会社)便まである。

Biarritz1

ビアリッツという町の名前自体、最近まで全然知らなかったのだが、南フランスの大西洋岸に位置している。ナポレオン3世がスペイン出身の王妃のために別荘を建てたのが始まりだったようだ。この別荘は現在オテル・デュ・パレという超高級ホテルとなっており、イギリス王室を始めヨーロッパの王室御用達となっている。カジノがあったり、エルメスを始め高級ブランドのブティックがあり、また他にも高級ホテルがあったりとヨーロッパ屈指のリゾートらしい。遠浅の白いビーチがとても美しい。大西洋岸で波が比較的高いため、サーフィンのメッカでもあるらしく、寒い季節にもウェットスーツを着たサーファーがたくさんいた。また、ピカソが新婚旅行で訪れたり、ココ・シャネルが第一号店を開いたりと、文化人にもよく知られた場所のようだ。Gare du Midi劇場では、最近、牧阿佐美バレエ団が「ピンク・フロイド・バレエ」を上演した。

LeRoyalty

タクシーでホテルまで乗るが近くて10分程度で到着。途中、今回のバレエ・ビアリッツの会場であるGare du Midiの前を通る。街中に「くるみわり人形」ののぼりやポスターがあって、ちょっと嬉しい気分に。ホテルはこじんまりしているがかわいらしい。入口は鍵がかかっていて、呼び鈴を鳴らしたらマダムが出てきた。どのあたりで買い物ができるか、などのことを教えてもらう。廊下も全部電気が消えていて、人の気配もなく、おそらく宿泊客は私たちだけ。窓の外の景色が、いかにもヨーロッパの小さな街という感じで、赤い屋根が連なってとっても可愛い感じ。二つ星ホテルなので部屋はシンプルだが青が基調でなかなかお洒落である。荷物を片付け、とりあえずランチに行こうと外に出た。

LeRoyalty2

現地在住の人に教えてもらったLe Royaltyというレストランでランチ。これまたとてもかわいらしくて瀟洒なお店である。さすが観光地だけあって、ウェイターはちゃんと英語をしゃべれた。クロックムッシュに、ワインを頼むが、これがコーヒーの値段よりも安いのに、デキャンタででてきて、すっかりへろへろになってしまう。

せっかくの美しい街と海岸だが、雨が降っていて寒くては観光もあまりできない。ギャラリーラファイエットの地下の食料品売り場で夕食を買って、夜の公演に備える。

2005/12/28

12/16 ジェイソン・パイパーLAST SWANその2

3幕でザ・ストレンジャーとして登場したジェイソン。一昨日と同じく、ほとんど笑わない、スナイパーのような目をした、黒い影のような異邦人。純真な王子はたちまち魅入られたように射すくめられてしまう。各国の姫君たちは吸い寄せられるようにストレンジャーと踊るが、相変わらずストレンジャーはにこりともしない。たとえばハンガリーの王女との踊りでは、王女はストレンジャーの革パンツをぴしゃりと叩く。今までだったらジェイソンは叩かれた尻を見てから観客の方を向いてにやりと笑うのだが、にやり笑いは消えていた。本当にストレンジャーは王女たちには全然関心は無いんだな、ってわかる。彼はこの舞踏会に送り込まれたテロリストであり、標的は王子だけなのだ。女王にだって、実はぜんぜーん興味はない。女王とストレンジャーとのパ・ド・ドゥは、女王が一人で陶酔していてとろけそうになっているけどストレンジャーはクールそのもの。そういえば、ここの振り付けはアジアツアーのとは変わった気がする。イザベルの演じる女王が重いのか、リフトが以前のような、女王を逆さまにするような高さではなくて控えめなものに変えられているのだ。

全然笑わない、冷酷なストレンジャーは、でも実は自分の弱さや底の浅さを隠すために虚勢を張っているような印象も与えた。銃を持つ人間は、恐怖があるから銃を持つのと同じで、攻撃は最大の防御とばかり、ストレンジャーは精一杯恐ろしいセクシャル・テロリストの振りをしている気がした。彼は、王子の純真さ、無垢さが怖かったのだ。だからこそ、王子に対してあんなにアグレッシブに振舞ったのかもしれない。ストレンジャーは、実はそんなに悪い人ではなくて、悲しい存在なのだ。

ストレンジャーと王子のタンゴでは、日本公演のときのようなサディストぶりは息を潜めているが、突き放したような冷たさと容赦のない攻撃性が感じられて、王子がかわいそうでたまらなくなる。見事にストレンジャーが女王を誘惑することに成功し、キスをしたところへ割って入る王子。日本公演のときにニール・ウェストモーランドなどは乱れた服装と髪で登場したが、こちらのニール(・ペリントン)はあくまでもきちんとした折り目正しい外見をしているのが、さらに切ない感じだ。そこへぞっとするような高笑いを見せるストレンジャー。

昨日、一昨日とちょっと大人しいかな、と思っていた男女対抗群舞合戦だが、この日はメンバー一同かなり弾けていた。前二日間はあまり大きくなかった「うぉ~」というかけ声も出ていたし。ここはやっぱりノリノリじゃないとね。クールなストレンジャーもここではノッていた。アランのストレンジャーはあまりここ、ノリノリじゃなかったのだ。

精神病院に担ぎ込まれた王子。かわいそうなくらい怯えていて、小さな体がますます小さく見える。「なんで僕にこんなことをするの」と激しい悲しみを見せていた。手術をされてしまって、横たわる王子を見つめる女王はちょっと心配そうだが、でもしかたなかったのよね~って感じで母親らしい優しさとは無縁の様子。

ついに4幕になってしまった。ベッドから這い出るジェイソンの傷ついた姿がどうしてこんなに美しいのだろう。肉体だけでなく、精神までも完膚なまでに痛めつけられている。傷ついた獣の中にある絶望的にやるせない愛がこめられた視線の優しさ。残された力を振り絞って立ち上がり王子を守ろうとするが引き離される。なす術もなく襲撃され傷つけられている王子を見て、地団駄を踏んで悔しがる。すでにここでザ・スワンは泣いていた。倒れた王子をくちばしで引きずり、頬を摺り寄せ、死んだと思って慟哭する。まだ息があった王子とザ・スワンが身を寄せ合い心を通い合わせるところで流れる温かい感情が好きだ。チャイコフスキーの白鳥のテーマ「情景」が流れ、白鳥たちが一羽一羽ベッドの上に飛び乗って恐ろしい群れを作る。その群れとユニゾンとなって翼を上下させるザ・スワン。そう、ここでザ・スワンの肩から再び羽根が生えるのが見えた。折れて羽根が抜けてボロボロにはなっているけど、しかしそれでも力強くはばたいている。力強さと傷ついた面を同時に表現するのは非常に難しいことだと思うけど、それが唯一できるのがジェイソンのスワンだと思った。
ベッドの上に追い詰められ、聖セバスチャンのように磔になったザ・スワンはここで再び真っ白に輝き、強い光を放ったかと思ったら王子の方に手を伸ばしながらも燃え尽き消えていった。
放心したように宙を見つめながらも、残されたわずかな力でザ・スワンの姿を求めた王子。その必死な姿に思わず涙が一筋目を伝う。だが、その生命の灯火はスワンNo.9のドミニクの一撃で消えた。

カーテンコールのジェイソンとニールは、素晴らしい舞台を踊り終えた満足感で、とても幸せそうな顔をしていた。はしゃぐわけでもなく、ただただ、いいパフォーマンスができたことの嬉しさが感じられる顔を見られたのは嬉しい。そして他の出演者もみな、とても嬉しそうだった。観客も皆立ち上がって素晴らしい演技を称えた。

パリでこのような素晴らしいパフォーマンスが見られてとても幸せだ。しかし、あまりにも完成度の高い舞台なので、立ち上がれなくなるほど動揺するとか、憔悴するといった気持ちにはならなかった。もしかしてこれ以上すごいSWAN LAKEを見ることはないのかもしれない。ジェイソンの踊りはこれ以上のことはないというくらい完璧で、一点の曇りもないザ・スワン、ザ・ストレンジャー像を確立した。おそらく彼も、もはやこれ以上のパフォーマンスはできないと考えていたのではないか。そして、やっぱり、首藤さんやクリス相手でも見たかったという思いを新たにした。もちろん、ニール・ぺリントンの王子もとても良い。だがパートナーシップとエモーションいう意味では、首藤やクリスとのほうが優れていたと思う。だから、満足はできたけど、心が震えるほどの感動はここには無かった。いつか、ジェイソンが三度ザ・スワンに返り咲いて、クリスと踊ってくれたらなあ…。

2005/12/27

ジェイソンラストSWANの輝き

上演前に腹ごしらえと、ベニさんのパニーニ屋に行く。昨日行った時は遅かったのであまり客がいなかったが、さすがに夜7時ごろは大繁盛で大忙しの様子。しかし、あちこちから飛んでくる注文をさばきつつ、手際よくパニーニを焼いたり飲み物を取り出したり代金を受け取ったりするベニさんの仕事ぶりは芸術の域にまで達していて感心しちゃった。忙しい時にも決して愛想を忘れなくて、好感度大だ。

そしてついに、SWAN LAKEをみるのも最後の日となってしまった。今日は当初は観る予定ではなかったのに、初日に到着してから窓口で買ったら思いがけず良い席が取れた。睡眠も十分取ったし、腹ごしらえもしたし、用意は万端だ。

この日の王子は、王子役としては初めて観るニール・ペリントン。マシュー・ボーンの「くるみ割り人形」の来日公演でボンボン(フリッツ)やキューピッドを踊っていて、そのときはちょっとベン・スティラーに似ていて、とてもユーモラスな印象が強かった。そんな彼が、この作品での要というか感情移入のポイントと言える王子役を演じられるのだろうか?

しかしニールの王子は良かった。踊りも端正で丁寧だし、何より演技が上手だ。演技のタイプとしては、クリスに近いのではないかと思う。鬱々としている内向的なサイモンとは対照的に、感情を比較的ストレートに素直に出すタイプである。本当は普通の青年なのに、たまたま王室に生まれついてしまったため、様々なプレッシャーに押しつぶされそうになっているという感じだ。女王に対しては一丁前に反抗的なところも見せている。女王からの扱いは、昨日のサイモンに対しての方が冷たく、ニールに対しては母親らしい思いやりが少し感じられた。小柄で細身のため、ジェイソンとのバランスも良い。顔立ち的にも、ちょっとチャールズ皇太子系おやじ入り気味なのがこの役柄に合っている。
4幕、ザ・スワンが白鳥たちに殺されてしまった後の、感情を爆発させたような泣きっぷりも上手で、観ているこちら側も感情移入して涙が出てきた。
しかし、クリスに演技の性質が似ているだけに、クリスの王子が思い出されて、やっぱりクリスの王子は別格といっていいほど素晴らしかったとその幻影が頭をよぎってしまうのである。この日の王子がクリスだったらどんなに良いだろう。

もうザ・スワンは踊らないと言っているジェイソン、彼のスワンを観るのはこの日が最後になるであろう。そして、まさに渾身の演技を彼はここで見せてくれた。王子との相性も今日のほうが良かったし、圧倒的な力が全体的にみなぎっていた。2幕の登場シーンでの神々しいまでの輝き。聖なる野獣だったのが、もはや野獣ではなく、美しい肩から白い翼が生えているのが見えるほどだ。腕の動き一つとっても、波打つような滑らかなしなやかさ。鋭い視線。去り際に王子に振り向いたときの片脚バランスの長さと安定感。柔らかい野のシャープなキック。いつの間に彼はこんな高みに上り詰めてしまったのだろうか。そして、これは滅び行くものだけが持つ美しさであるということに気付いてしまった。

ジェイソンの白鳥は、予め自分の先が長くない、王子と出会ってしまったからには、待っているのは死であるということを知ってしまっている。残された短い生の中でいかに光り輝くか。そして王子を輝かせるか。その決意がザ・スワンの踊りの中に見えるから、ますます孤高の輝きを放つのである。ジェイソンの一つ一つのパを観るだけで、思わず涙ぐんでしまう。2幕はいい踊りがたくさんあるけれども、私はコーダが一番好きだ。(その次にはビッグ・スワンの踊りが好き)ザ・スワンと王子の魂が共鳴し、高まっていくクライマックス。そしてザ・スワンが「オレについてきているか」と王子に振り返る慈愛に満ちた視線。つられて王子もとても美しく踊るのだ。ニールとジェイソンは見事な対になって、素晴らしいハーモニーを奏でていた。二人とも背中が柔らかく、腕も脚も後方へすっと伸びて美しい弧を描いていた。このコーダはこうでなくっちゃ。

(つづく)

2005/12/26

パリ3日目・オペラ座をはしご&マレ

さすがに疲れたのか、起きたらなんと10時!きゃ~大変。というわけで、すぐ近くなのにちゃんと観ないと話にならないと思ってオペラ・ガルニエへ。
Garnier3

今回パリに滞在している期間、ガルニエで上演される「ドガの小さな踊り子」はタイミングが合わなくて観られない。
ところで、チケット売り場の表示を見て愕然とする。「本日はリハーサルがあるため、劇場内部の見学はできません」それなのに7ユーロ取るわけである。がーん。明日にはパリを離れるというのに。こんなんだったら先に観て置けば良かった。が、とりあえず観られるものだけ観ておこうと思って入場する。
Chagall

壮麗な入口、バレエやオペラが上演される時にはどんな雰囲気になっているんだろうと想像する。2階にある広々とした空間。奥にあるクリスマスツリー。そして、ボックス席への入口をウロウロする。すると、ガイド付きのツアーで回っている団体客が、ボックス席の扉を開けて入っていくではないか。便乗して私たちもついていくと、劇場の中を見ることができた。まだリハーサルは始まっていなくて、舞台監督らしき人や大道具の係が作業をしている。内部はかなり暗い。有名なシャガールの天井画がきらめいている。公演が始まる前のわくわくする瞬間に、この絵を見上げたらどんな気持ちだろう。舞台の神様がこっちをむいているんだろうか。深い赤の座席と、ゴージャスな金の縁取り。あのボックス席は、オペラ座の怪人の指定席だったのだろうなと思いを寄せる。こじんまりとはしているが、今までに観た劇場の中でも最も華麗で威厳があった。どれほどの名演がここで行われてきたことだろう。ここでいつかバレエを観たい!きっと格別な味わいなんだろう。

1階に下りると、廊下のところに、現在のエトワールのポートレイト写真が飾ってある(一番新しいエトワールのデルフィーヌ・ムッサンとバンジャマン・ペッシュのはまだない)。それぞれとても素敵なファッションに身を包んでポーズを決めている。女性だとアニエス・ルテステュ、男性だとローラン・イレールが一番素敵だと思ったが、それぞれ、自分に似合ったものを良くわかっているなと感じた。

ミュゼでは、クリスチャン・ラクロワによる赤をテーマとしたオペラの衣裳やスケッチの展示があった。ドラマティックで、華やか。赤といっても本当に色々な赤があるなと感じさせられた。

地下は打って変わってとても静かで閑散としていて、まるで時が止まっているかのよう。ちょっと怖いくらいである。確かにここだったら怪人が生息していても不思議は無い。売店でローラン・イレール主演の「ル・パルク」のDVDと「白鳥の湖」のパンフレット、バレエ雑誌などを購入。
Mathiew


ギャラリーラファイエットの食料品売り場でランチを購入してホテルで腹ごしらえをした後、マレ地区を見ようとメトロに再び乗る。ポンピドゥーセンター近くの花屋さんでお花を買うつもりが、なんとこのお花屋さんはインテリア雑貨店に業態替えをしていた。残念。ウィンドウの飾りつけはとても可愛いのだけど。マレ地区はすごくパリーって感じですっごくオシャレ。雑貨店、カフェ…歩いているだけで楽しい。パリにきて以来ずっと悪かったお天気も、少し良くなってきた。マリアージュフレールで紅茶を買おうとするがなかなか見つからなくて困る。そしてオペラバスティーユまで歩く。

本当は今回、バスティーユで上演される「白鳥の湖」が観たかったのだけど、テレビの収録が行われる関係で売り出し枚数が少なく、色々と手を尽くしたのだがチケットは買えなかった。そして16日はマシューボーンの白鳥にジェイソン・パイパーが出演するらしいということでそっちを見ることにしたため、結局今回の滞在でパリオペラ座バレエを観ることはできなかったのである。でも、雰囲気だけでも味わいたいと思って。

バスティーユ広場の向こうに鎮座するオペラ・バスティーユはとにかくでかい。とても大きな「白鳥の湖」の看板が出ている。入口は閉鎖されていて中に入ることはできないが、売店にははいることができたので、そこで、ガルニエでは販売されていなかったパリオペラ座のダンサーのポストカードを何枚か買う。なんと、売店に入るに当たっても、荷物検査を受けさせられたくらいだからかなり物々しい。
それから、ボックスオフィスも覗いてみるが、まだ売り出し時間になっていないので人の姿は少なかった。う~む残念。出る際に扉で指をはさんでしまい、指が腫れあがってしまった。

今日が泣いても笑っても最後のマシュースワン公演ということで早めにホテルに帰る。ガルニエ近くの花屋さん「ダニエルH」で花束を作ってもらう。とても有名なお花屋さんらしい。ここの花は本当に良いものだけをおいているのが良くわかる。一つ一つの花がとっても大ぶりで華やか。店の中にいるだけでも楽しい。少ない予算の中で、とても素敵な花束を作っていただいて、とても嬉しい気分になった。

2005/12/25

12月15日SWAN LAKE二日目

今日のザ・スワンはアラン・ヴィンセント。一昨年の韓国公演でザ・スワンを演じたところ「地を這うようなジュテ」「腹がベッドに引っかかって出てこられなかった」「土俵入りのようなプリエ」「オリヴァー・カーン似」など散々な評判だったお方である。その前評判のせいか、今日は日本人の観客の姿をほとんど見なかった。私たちの前の2列は丸々空席となっているなど、客の入りは良くない。その空席を見つけて移動してくる人が多数。

幼い王子のベッドの上の窓に現れるザ・スワンの影。なんだかとてもでかい。1幕で一瞬だけザ・スワン役のダンサーが後姿で出演するシーンがある。褌一丁で、女王に贈られた彫像としての登場だ。この彫像、ジェイソンが演じるとまさにギリシャ彫刻って感じで美しいのだが、こっちはウエストのくびれがなくてあちゃー、これはオッサンの裸だって感じだった。

ところが、2幕で白鳥を踊らせて見ると、これが案外悪くない。胴体が太いのはまあ仕方ないんだけど、大柄なだけあって腕が長く、しかも意外と柔らかい。跳躍にしても、ちゃんと跳んでいるし、バレエダンサーではないからアン・ディオールしていないもののアラベスクの脚は高く上がっている。この白鳥の場合、足音をさせてしまって問題はないわけだし。力強く男らしい白鳥(というよりは半分人間の半分トリって感じだが)で、これはこれでアリだな、と思った。難を言えばやはりクラシカルダンサーではないので背中が硬いことだが、まあそれを求めるのは酷であろう。頼れる兄貴感が充満していた。王子役のサイモン・ウェイクフィールドもどっちかといえばかなり太めなので、なんというかデブコンビで切なさがちょっと伝わりにくい。4幕でザ・スワンはあまり弱っていなくて、襲われていても死にそうにないように見えたし。でもちゃんとスムーズにベッドの中から出てきたし、俺に任せろ、と雄雄しくスワンズと戦っていて男前であった。しかしこれでは泣けない。

ストレンジャーに関しては、独特のオレ様セックスアピールがあって、個性的だけど魅力的だったのではないかと思う。マシューがアランというダンサーを重用する理由の一つは演技力というのがあル用に思えて、ジェイソンが今では決して見せなくなってしまったユーモアも感じられるし、彼にしか出せない色気があったのは確か。

幼年王子&木こり&スクールボーイ&四羽の小白鳥は、今回ニューキャストのウィル・アチソン。小柄でルックスはなかなか可愛らしいし、幼年王子としては悪くないのだけど、木こりの踊りと演技は今一歩か。ガールフレンドは、Agnes Vandrepote(フランス人だからアニエス?)。前日のリー・ダニエルズが天然キャラの頭の弱そうな可愛さがあるのに対して、もっとお笑い方面に走った、ちょっと蓮っ葉な感じで演技もオーバーだ。そのオーバーな演技は、オペラハウスのシーンでパリの観客に相当受けていた。個人的には、ガールフレンドはちょっと薄幸そうな感じのほうが好き。前回キャストのソフィアのような。

全体的に、1日目がアジアツアーのキャストがほぼそのままなのに対して、新しいメンバーが多かった。イタリアのエスコートはダミエン。ダミエンは踊りは美しいけどイタリアはやっぱりピーターの方が面白くて好き。スペインのエスコートはコーディで、持ち前の顔芸がこれまたフランス人に大受けだった。
4幕のスワンNo.9=とどめスワン、新メンバーのポール・ジェームズ・ルーニーはいまいちだった。やっぱり前日美しいトゥール・ザン・レールで王子にとどめを刺したドミニクの優雅さには到底かないっこない。

そんな感じで、思っていたほどは悪くなかったけど、感動というところまでは行かなくて、それは観客も同じだったようでスタンディングオベーションをした客は昨日よりもずいぶんと少なかった気がする。

終わった後、腹ごしらえでもしようかと思ったけど近くのカフェは高そうで躊躇した。すると、カフェの外の出店に、寒いの中パニーニを焼いている威勢のいいおにいさんが。値段も安いしとても美味しそうだ。とてもフレンドリーで、「イチ、ニー、サン」って日本語で話してくる。自分の名前は「ベニ」とカタカナで書いて自己紹介までしてきた。「トーキョー?オーサカ?」と聞いてきたり。そこで焼いてもらったアツアツのパニーニをホテルの部屋で食べたら、パンがカリッとしていて、もちもちのチーズ、それにチョリソーが見事なハーモニーで実に美味しかった。美味しいものに出会えると本当に幸せ~。

2005/12/24

パリ二日目/モロー・オルセー・エッフェル塔

短い日程で効率的にまわるとしたらどうすればいいだろう、とメトロの路線図とにらめっこ。徒歩で行けるギュスターブ・モロー美術館からスタートするのが良いだろうという結論に達し、その途中にあるカフェでカフェオレとクロワッサンの朝食。なんと温めたミルクを別に出してくれる店で、クロワッサンもカフェオレもとてもおいしかった。

Moreau

ギュスターブ・モロー美術館は以前に行ったときにすっかり魅せられてしまった場所で、今回も、何時間いても飽きないだろうな、と思わせられた。2ヶ月ほど前にBunkamuraで見かけた作品もたくさんあったけど、実際にモローが生活していて彼の息遣いが聞こえてきそうなこの場所で、薄暗い壁を埋め尽くす作品を見るのはまた格別だ。きしむ小さな螺旋階段を上る。フロアが完全に貸し切り状態になり、至福の時。昨日マシューのSWANを観た後だと、「レダと白鳥」がさらに意味深長に、エロティックに見える。白鳥の目つきと首の曲がり方がとてもエッチで。モローの生活空間も見学でき、その中には日本の絵画や小物があったのが興味深い。

Orsay

メトロでオルセー美術館へ。今回パリにきて初めて見るセーヌ川のほとりを歩く。冷え冷えとしているが、近くで仕事中のスーツ姿のおじさんたちに「ボンジュー」と声をかけられて和んだ気持ちに。

オルセーは駅舎を改装して作られた建物がシックで美しく、印象派の有名な作品がすごく揃っているところである。特にレベル5のフロアは天井が高くて明るくて気持ちよい。バレエ好きにとってはドガのコレクションはたまらない。中でも様々なアラベスクのポーズをとっている彫刻とか、バレエ上演中のオーケストラピットを描いた作品などが楽しい。ゴッホ、マネ、モネ、ゴーギャン、モリゾ、セザンヌ、ルノワール、スーラ、ミレー…有名な作品ばかり。ドラクロワやアングルのように一部ルーヴルとかぶっている画家のもある。しかし私の好きなクリムトやモローが貸し出しや改装の関係で見られなかったのがやや残念。オペラ座の断面模型や、オペラの舞台美術の再現も素敵だった。そしてどこにでも現れる日本の修学旅行生たち。
大きな時計の裏にあるカフェでランチ。しかしここで携帯を落とした際に、電池の蓋を落として紛失してしまった。

見るものがとにかく盛りだくさんだったので、観終わった頃には外は薄暗い。夜の薄闇をまとったセーヌの幻想的な美しさ。
Eiffel


それからRERに乗ってエッフェル塔へ。RERは思いっきり郊外電車で行き先の表示もわかりにくくてめっちゃ不安になったが、なんとか無事に到着。RERの場合、降りる際にもキップが必要なのが不便。

10年前にパリに行った時は夏だったので上るまでずいぶんと待たされた記憶があったけど、今日はものすごく寒いのでほとんど列はなかった。そんな中、階段で上っている猛者も何人かいてすごいな~と思う。時間もないので2階までにする。冬の澄んだ空気のため、夜景が星をちりばめたように美しい。そしてエッフェル塔は6時ちょうどになると、キラキラ流れ星が降っているように、白い点滅する光に包まれる。パリではなくて、宇宙にいるような気持ちにさせられる。こんな時にてっぺんにいたらどんな気持ちだろう。
しかし降りるエレベーターを待つのにずいぶんと時間がかかってしまった。強い風が吹き付けて寒いこと寒いこと。降りてからも名残惜しくキラキラと星をまとったエッフェル塔をカメラに収めた。

時間ギリギリになってしまったけど、なんとかまたモガドールに滑り込む。

2005/12/23

そしてSWAN LAKE一日目

MogadorSmall

待ちに待ったモガドール劇場でのニューアドベンチャーズ「SWAN LAKE」 (マシュー・ボーン版)
モガドール劇場はガルニエから程近いモガドール通りにあるのだが、夜になると娼婦が立っていたりと実はそれほど風紀がよろしいところではない。でも、劇場自体は中くらいのサイズながらクラシックなヨーロッパの劇場という感じで雰囲気はある。クロークにコートを預けたらなんと2ユーロも取られた。パンフレットは15ユーロもする。目新しい写真の1枚も無いのに…
Mogador2

私たちはR列なので1階でもかなり後ろの方だけど、この劇場はこじんまりとしているので、舞台からはかなり近い感じがする。オーチャードホールだったら15列目くらいといった感じだろうか。オペラグラスを使う必要はほとんど感じられない。舞台もかなり小さいくて、韓国のLGアートセンター寄りも少し小さいくらい。でも一応オーケストラ付きなのでオケピもある。段差はそれほどは無いので前の人の座高が高いとちょっとかぶってしまうが、オーチャードよりはかなりまし。

マシュー・ボーン版のSWAN LAKEについては今までも散々書き散らかしてきたから今回はそんなに詳しくは書かないけど。

ジェイソン・パイパーは良かった。この日はちょっと疲れが見えたのと、王子がいつもはあまり組んでいないサイモンだったので、コンビネーションとしては今ひとつだったかもしれない。が、冒頭の王子のマドに現れるところから、腕がとにかくすごく柔らかくて驚かされた。クラシックダンサーよりも上かもしれない。踊りが、とても完成度が高いし、非常に安定している。スタミナ切れも感じられず、精悍で力強いのに優雅で高潔、成熟が感じられた。以前の"狼"的なシャープな印象は薄れたが、強く雄雄しく美しい。

後ストレンジャーがすごく怖くてテロリストって言葉がぴったり。今までは遊びの部分、軽薄なところも見せて陽気なラテン系のストレンジャーだったのに、3幕の最後で女王と抱き合って高笑いするまではにこりともしなかった。

王子を踊ったサイモン・ウェイクフィールドはロイヤルバレエスクール出身だけあって踊りが美しい。綺麗にアンディオールしているし伸びやかな動きを2幕では見せてくれた。ただし、ちょっと小太りなので、いたいけな面は感じられなかった。パンフレットに載っているプロフィール写真だとほっそりとしてハンサムなのにね。
演技のほうは悪くなかったけど、内向的ですごくダメダメでださくてイケていない王子という感じだった。とにかく内側にこもりがちで。

女王はオカメインコことイザベル。韓国公演で見たときはとても鈍重で、それなのに若い男に飢えている中年女って感じだった。今回も中年女のいやらしさというのを憎たらしいほど発揮していて、それはそれでよいかな、と思った。王子に対しては徹底的に冷淡で、ストレンジャーと踊っているときにはウハウハしている。サイモン王子の母親だったらこんな感じだろう。

幼年王子と木こりのギャヴは相変わらず良い。特に木こりのユーモラスさはもはや芸術品といってもいい。公演直前に怪我をして降板したヘンドリックが女王のエスコートやアフロの男、スワンNo.8で復活したのが嬉しい。ピーターさんは相変わらずビッグスワンでは迫力満点の踊りを、そしてイタリアのエスコートでは最高に可笑しい演技&ひっぱたかれながらのダンスを発揮して目を釘付けにさせた。でも、今回一番目立っていたのは、ビッグスワンを踊った、2003年アジアツアー組のダミエン・スタークだろう。なんてこの人の踊りは美しいのだろう。ほっそりとして優雅な腕の使い方は、女性顔負けである。柔らかい背中、高高としなやかに上がる脚、群舞のどこにいても際立っている。いつかザ・スワンを踊れるのではないかというカリスマ性を持ったダンサーだ。新しい人では、ビッグスワンの一人を踊ったトビーが魅力的だった。やっぱりビッグスワンの踊りは、男性群舞の中でも、とてもパワフルでカッコよくて大好き。

パリの観客は、やはりツボが日本人とは大分違うようで、ストレンジャー登場のシーンやタンゴで女王と王子が入れ替わるところで笑ったりする。ガールフレンドのリアクションや4羽の白鳥の踊りも受けていた。
時差ぼけ、席がやや遠いこと、劇場の空気に慣れないことなどがあって、日本公演の後半ほどの感動は得られなかった。だけど、懐かしい家に帰ってきた、そんな気持ちになった。やっぱりスワンは面白いし大好きだ。あと2回観られると思うと幸せ!

パリ1日目その2/シャンゼリゼと凱旋門

制服姿で走り回る修学旅行生を見て、日本にいるような気分に引き戻されたルーブルを去り、オペラ・ガルニエの売店へ。とりあえず観に行けないけど「白鳥の湖」のパンフとバレエ雑誌を購入。想像していたよりもずっと狭い売店だが、所狭しと写真集などいろいろと並べられている。お金があれば写真集も欲しいところだが(現役エトワールが写っているのも多数)何しろ貧乏なもので。有名なはちみつも売っていたが、14ユーロもする。大雨に見舞われ、ホテルにチェックイン。このホテルは部屋は狭い割には洗面所&風呂場が広くて清潔。場所を考えればとてもリーズナブル。

Champsellyses


部屋で一休みした後、メトロに乗ってシャンゼリゼまで。パリに行くのは5回目なのだけど、実はシャンゼリゼを歩いたことは一度もなかったのだ。ベタなコースだけどせっかくこの季節に来ているのだから行かない手は無い。車に乗って通るばかりで。凱旋門までのライトアップがまるで光の洪水のようで、実に美しい。キーンと冷えた空気。さすがに観光客も多く、いろんな国の人からシャッターを押してくれと求められる。凱旋門まで歩いたのち、ルイ・ヴィトンの店舗の近くにあるラ・デュレでマカロンを買う。とても有名なお店なのだけど、さすがにとってもお高くて、貧乏な私たちは箱買いができず2つずつ買った(後で部屋で食べたけどさすがに美味)。
光の海を通り抜け、コンコルド広場まで歩く。さすがに観覧車に乗っている人はひとりもいない。メトロの入口がとてもわかりにくい。


オペラ駅の改札の外のPAULでキッシュとサンドイッチを購入。これが今日の晩ご飯。ホテル近くのギャラリー・ラファイエットも、プランタンもライトアップが見事だ。こんなに美しい電飾のついたデパートをほかで見たことは無い。

Galerieslafayette


そしていよいよモガドール劇場へ。

2005/12/22

パリ一日目/エールフランスとルーヴル

エールフランス21時55分発は、なぜか子供の乗客率が異常に高かった。しかもみんなフランス人の子供。連れの友人の隣もそんな子供の一人で、夜も遅いのにやたら元気が良い。フランス語で話し掛けたり、自分のではなくその友人の席の前にあるモニターで遊んだり。しまいには、スライムを振り回し、スライムがペタっと人の顔に張り付いたのを指差してキャハハと笑っていたりと困ったものだった。すごく可愛い男の子なんだけど隣に座った友人は気の毒だったと思う。ごめんね~。

しかもエールフランス、乗るの初めてなのだがとても席が狭く、私の短い足でもつかえる。リクライニングもあまりできないのでまるで拷問イスのようだ。しかしそれでも少しは寝ることができたのだけど。席が狭いせいか、落ち着き無くたっている乗客の多いこと。最初はトイレに並んでいるのかと思ったらそうではなくて、しゃべったりしている。フランス人の子供のほかは、某女子大の修学旅行?が一緒だったようで、若くてちょっとファッションが独特の娘さんたちがいっぱい。

シャルル・ド・ゴール空港についたのは朝の4時である!荷物もすぐ出てきて、ガルニエ行きのロワシーバスの始発が発車する6時まではしばしぼ~とする。6時になったら売店が開いたのでパリの地図を買って、バスへ。外は当然真っ暗。しかし他のターミナルに寄ったりしたものだから結局ガルニエの前についたのは7時だった。

Garnier1


ホテルはガルニエの裏にあるギャラリーラファイエットと同じ敷地にあるという便利さ。金髪の別嬪さんが迎えてくれて荷物を預け、まずはモガドール劇場の下見をした後、ガイドブックに書いてあったルーブル通りのPAULで朝食。底冷えがしたので温かいカフェオレが嬉しい。美味しいクロワッサンをいただいて、ようやく8時半頃明るくなり始めたのでルーブル美術館へと向かう。ルーブルは9時オープンなのだ。

Pyramide


さすがに早いので空いており、ルーベンスの間などは完全に貸し切り状態だった。だだっ広いので猛ダッシュで観たにもかかわらず観終わったら2時。(ベルトルッチの映画「ドリーマーズ」では、ルーヴルを何分で走り抜ける、なんて遊びをやっていたっけ。そしてそのオリジナルはゴダールだったよな)モナリザやミロのヴィーナスの周囲は大混雑。特にミロのヴィーナスの周りでは、なんとかしてヴィーナス像とツーショット写真を撮ろうとしている中国人観光客がワラワラ湧いて来てちょっと大変なことになっていた。装飾美術などの部門は空いており、落ち着けて良い。

Venus

2005/12/21

パリ&ビアリッツから帰ってきました

時差ぼけで頭がやられているので、詳しくはまた後日。

クリス最高♪一生あなたについていきます。
Ballet Biarritzの「くるみ割り人形」すんごく楽しかったです。
振り付けもダンサーもみんな超一流。しかも子供からお年寄りまで楽しめて、チケット代も安いのだから。
こんなに斬新なことをやっているのに、地域の人たちに愛されるバレエ団というのは素敵。
粒揃いのダンサーたち、その中でもクリスは光っていた。
CasseNoisette

もちろん、ジェイソンのラスト・スワンも素晴らしかった…これほどまでに自分のものにしてしまって、これ以上のものはありえないというくらい凄まじいものを観られて、これまた幸せでした。

また詳しくはゆっくり~

2005/12/13

20日まで留守にします

13日から20日までフランスに行ってきます。パリでマシュー・ボーンの「白鳥の湖」(結局パリオペラ座の白鳥はチケットが取れずボックスオフィスの人にもあなたが取れる可能性はありませんといわれちゃったので断念)、ビアリッツでバレエ・ビアリッツの「くるみ割り人形」を観てきます。
パリ寒そうだけど大丈夫かな?

2005/12/12

シルヴィ・ギエム最後のボレロ12/5Cプロ

実は私シルヴィ・ギエムってそんなに好きなダンサーではなくて、すごいことは認めるけどあまりにも踊りの中で計算が見えてきてしまって生身の人間っぽさがないと思って感心しなかった。
一昨年のダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団共演のボレロもチケット代が恐ろしかった割に、演奏とのミスマッチがあってなんともいえぬいびつなものになってしまっていたし(それはシルヴィの責任ではないと思うけど)、4月の「マルグリットとアルマン」などはこれっぽっちも感情移入できなかった。この公演も最初は行く予定がなくて、たまたま通っているバレエ教室の仲間がチケットを余らせちゃったので買い取ったわけである。

「スプリング・アンド・フォール」ジョン・ノイマイヤー振付
後藤晴雄、小出領子ほか
8月の「ユカリューシャ」公演のときにこれを観たときには、あまりにも淡々としていて眠くなりそうでいまひとつひっかかるものがない演目だったのだけど、改めてみると意外と見所があった。心地よい緊張関係が、ダンサーたちの間に感じられる。退屈に思えたのはドヴォルザークの音楽のせいだった。

とにかく小出さんがとてもよかった。柔らかくて軽やかで、音楽性があって、5月の風のような存在だった。ところがパートナーの後藤さん、一人で踊っているときはいいのだけど小出さんと一緒に踊ると、小出さんのよさが際立ってしまうというかちょっと負けている。しかも彼女をリフトすると急に不安定になってしまうし。
さりげなく、とっても難しい振付で特に男性陣はすごく体力を使う演目だったと思う。途中からばてている人多し。

「小さな死」イリ・キリアン振付
シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル
この演目は2003年の世界バレエフェスティバルと、同年秋のABTシティセンター公演で観ているのだけど、まったく違った印象があった。バレエフェスはマニュエル・ルグリとオーレリ・デュポンで、「小さな死=オルガズム」という意味もあってとても官能性とスピリチュアルなものを感じたのだった。
しかしシルヴィは、まず肉体があまりにもすごすぎた。マッシモ・ムッルと並んでもあまり変わらないような、女性らしさを排したような筋ばった体。その体で、びっくりしてしまうようなハイパーな動きを見せる。マッシモとのコンビネーションは鉄壁。とんでもなく深いドゥミ・プリエのあとにマッシモではなく彼女自身の力で高々とリフトされている。両足をアラズゴンドに広げての跳躍も、人間が跳んでいるとは思えないほど。ひとことで言えば笑っちゃうくらいすごい。ルグリ=デュポンの「小さな死」とはまったく別の演目といっていいだろう。官能は全然感じないけど、精神性を排した、人間の肉体への賛歌と思えてきて、インパクトはとてつもなく大きかった。きっとシルヴィが目指す方向性というのはこういうところにあるんだろう。マッシモは踊りは上手だし顔もハンサムなんだけど落ち武者のような髪型は何とかして欲しかった…。

「シンフォニー・イン・D」振付:イリ・キリアン
出演:木村和夫、井脇幸江ほか
打って変わってコミカルな作品。木村和夫、井脇幸江の二人が素晴らしい。井脇さんのようなクールな美女がコミカル演技をやると楽しいし、木村さんは本当に楽しそう!その分、他のダンサーの存在がちょっと弱いような。照れないでコミカルな演技をやるというのは、吹っ切れないとなかなか難しいのだろう。その点、この二人はちゃんとなりきっているからさすがだ。三つ編みにおてもやんメイクの田中結子さんはとても可愛かった。

「ボレロ」振付:モーリス・ベジャール
4列目とボレロを観るにはあまりにも前過ぎた席である。台の上で踊っているということもあり、地面についているほうの足先は見えない。ただ、その分シルヴィを近くに感じることはできた。
最初にスポットライトで手が照らされることに象徴されるように、手と腕の動きが何よりも重要な作品。シルヴィの手の動きは無駄がなくて美しいと思った。最初の方は、かなり淡々と、余裕を持って踊っている印象。リズムのダンサーたちが少しずつ立ち上がって踊り始めたところでボルテージが上がってくる。首藤康之のボレロは、なにかが憑依したかのような、トランス状態で激しく踊っているが、シルヴィはあくまでも自分自身で、クールで、余計な力を一切込めずに踊っている。だが、とても崇高な、神々しいまでのオーラを放ち始める。このボレロを評して「巫女」とか「女神」という表現をしているのを散見したが、少し違うと思った。こんなにもクールに踊っていながらも、シルヴィは戦士なのだと感じた。敢えて女神とするのなら、ヴァルキューレに近い存在なのではと。リズムの男たちを率いて、戦い、そして戦いに倒れた者たちを弔い導くような存在=ヴァルキューレに見えてきた。そこに、シルヴィというダンサーの人間像も重なってきて、凄絶なものが突き上げてきた。やっぱり凄いものは凄い。このボレロは、彼女にしか踊れない解釈のものだ。

踊り終えて本当に満ち足りた顔をしていたのが素敵だった。きっと彼女はとてもいい人なんだろうな。このボレロで初めて、血の通った暖かな人間なんだ、と感じた。

2005/12/08

ジョージ・ブッシュと「くるみ割り人形」

Ballet Talkというアメリカのコミュニティで情報収集をしているのだけど、今の時期はアメリカはクリスマスの風物詩である「くるみ割り人形」一色。アメリカにこれだけたくさんのカンパニーがあったのか!と驚くほど連日新聞に記事が掲載されているのね。

その中で目を惹かれるニュースはこれ。

http://www.whitehouse.gov/news/releases/2005/12/images/20051205_p120505sc-0174jpg-658v.html
http://www.whitehouse.gov/news/releases/2005/12/images/20051205_p120505sc-0188jpg-515h.html

12月5日、ホワイトハウスでABTによる「くるみ割り人形」の抜粋約25分をブッシュ大統領と、軍人の親を持つ子供たちが観劇したというもの。写真もいろいろと載っています。ついでに、全米でテレビ放映もあるらしい。

出演は金平糖の精がジュリー・ケント、王子がホセ・カレーニョ、クララがシオマラ・レイエス、くるみ割り人形がエルマン・コルネホとなかなか豪華なのだけど、Ballet Talkでは、ブッシュの前で踊ったのがホセ・カレーニョとシオマラ・レイエスというキューバ人であることに注目が集まっているみたい。

そういえば去年メトロポリタン・オペラハウスのバックステージツアーに行ったとき、係員の人は、クリントンはしょっちゅう来るけどブッシュがリンカーンセンターに来たのを見たことがないって言っていたっけ。いかにも興味なさそうだものね。

日本でも「くるみ割り人形」が数多く上演される時期になりました。が、残念ながら私は行く予定がありません。その代わり、ビアリッツでバレエ・ビアリッツの「くるみ割り人形」を観る予定。
しかし写真を見る限りでは相当異色な感じです。
http://www.balletbiarritz.com/gb/0301cassen.html

2005/12/07

11/8シュツットガルト・バレエ「オネーギン」

オネーギン:マニュエル・ルグリ
レンスキー:ミハイル・カニスキン
タチヤーナ:マリア・アイシュヴァルト
オリガ:エレーナ・テンチコワ
グレーミン公爵:イヴァン・ジル・オルテガ

やっぱりドラマティック・バレエはいいね。もともと演劇が好きな私には、物語を振付で語っているクランコやマクミランの作品が一番しっくりくる。

怪我から回復したばかりのルグリがシュツットガルトに客演ということで一抹の不安を抱えながら観ることに。ルグリが舞台上に登場するまでドキドキしてしまった。すぐさま、それが杞憂であることがわかったけど。

ルグリが登場した時、まず、黒いタイツに包まれた脚があまりにもほっそりしているのに驚いた。相も変わらず優美な佇まい。しかし、明らかに周囲から浮いていて、エレガントでありながら黒い染みのようにも見える。
ルグリが演じているオネーギンは都会出身の貴族で、のんびりとした田舎町では浮いている。シュツットガルト・バレエの面々の中で、一人別のカンパニーに所属しているルグリが異質の存在であることと重ね合わさって、不思議な効果が上がっていた。しかし、周りと馴染んでいない、都会からきた洗練された大人の男性に、純真な少女タチアーナはのぼせ上がってしまう。

1幕のオネーギンは氷のように冷たい男だ。タチアーナが夢中になっている恋愛小説をちらりと見ては、あからさまに馬鹿にする。ここでのルグリはこれ以上は不可能というほどまっすぐに突き刺さったような姿勢の美しさ。威厳と誇り高さがあって、エレガントなのに少々エキセントリックに見受けられるほど、ピリピリに張り詰めている。タチアーナの妹オリガの婚約者レンスキーの友人であるという設定なのだが、友達と言うよりちょっとコワイ先輩のようにも見受けられる。オネーギンがこんな感じなので、レンスキーのチャーミングさがここでは際立っている。

この舞台を見て一番感じたのは、もちろんルグリというダンサーは指先まで優美で演技力も申し分ないが、タチアーナ役のマリア・アイシュヴァルトが完璧といっていいほど素晴らしいことである。

活発で少々軽薄に思える妹オリガや、ほかの可愛らしい娘たちとは対照的で、タチアーナは晩生で本の虫。夢の中で暮らしているような、恋に恋するような少女。本を抱えた姿で舞台上に姿を現した瞬間に、彼女の人物像は観る者の頭にしっかりと伝わる。知識欲に目をキラキラさせている利発な女の子だけど、田舎育ちで世の中のことは何も知らないし、ましてや恋なんて。しかし、凛とした強い目力のタチアーナ(=マリア)がすでにこの時点で、大人になれば素晴らしい女性に成長するであろうことは見て取れる。そんな彼女の潜在的な魅力に気がつかなかったオネーギンは愚かだったということだ。

一番最初のソロでのルグリは、回転がやや不安定だったのでドキッとしたが、その後はいつもの通り完璧でエレガンスあふれる踊りを見せてくれた。しかし、その感情が抜け落ちたような回転や跳躍の中には、タチアーナのことなど歯牙にもかけない、心ここにあらずといった様子がありありと伺える。

さて「オネーギン」というバレエの素晴らしさは2つのPDDに集約されていると思う。「鏡のPDD」と「手紙のPDD」だ。
レイフ・ラインズが主演した映画も、タチアーナが手紙を書くシーンの演出に力を入れている。しかし手紙を書くところをバレエで視覚的に表現をするのは非常に難しい。そこで、クランコならではの、心理状態を踊りで表現させるドラマティック・バレエの本懐が発揮されるのだ。

オネーギンに恋をしたタチアーナは、彼に手紙をしたためる。手紙を書きながら眠りに落ちた彼女の夢。鏡を覗き込んだタチアーナ(鏡に映った彼女の姿を表現するために、同じ姿をしたダンサーが同じ動きを見せる)の前に、鏡の中からオネーギンが現れる。タチアーナの恋心を象徴させるかのように、タチアーナとオネーギンは情熱的に踊るのだ。

知性のほうが勝っていて、恋愛には晩生なタチアーナ。その彼女が、眠っていた熱情を呼び覚ましたのか、夢の中では火傷しそうなほどの熱い想いを全身で表し、彼の胸の中に飛び込んでゆく。高揚した心を表現するように、高々とオネーギンにリフトされる。オネーギンも夢の中ではタチアーナを優しく受け止める。タチアーナを振り回すかのような高速回転を伴ったリフトなど、超絶技巧を尽くしたような、幻想的で美しくしかも疾走缶のあるシーンだ。幸福感に満たされてペンを置くタチアーナ。

しかし2幕は、残酷な展開に終始する。熱い想いをこめて書いた手紙を、オネーギンはタチアーナの目の前で(しかも彼女の背中に回りこみ、彼女の手のひらの上で!)破り捨てるのだ。泣き崩れるタチアーナ。ますますオネーギンは冷たく、斜に構えた嫌な男になっている。宴をよそに、一人黙々とつまらなそうにカードで遊ぶオネーギン。
ルグリが演じると、そこまで嫌な人には見えないのだが、冷たい感じはよく出ていた。反面、育ちがよく見えるため、屈折したところはあまり出ていなかったような。

自分はこんな田舎でくすぶっていて、田舎娘に恋心を寄せられるようなつまらない人間ではない、というプライドと苛立ちが見え隠れする。ついには友人レンスキーの婚約者であるオリガにちょっかいを出してしまう。ちょっと考えの足りないオリガも、嬉しそうにオネーギンと踊ってしまうから事態は悪化。レンスキーはオネーギンに決闘を申し入れる。白い手袋で顔をぴしゃぴしゃとはたかれるルグリのややオーバーなリアクションがちょっと可笑しい。

オネーギンは嫌な男だが、品格のある人間ではある。本当に悪い奴だったら、一方的に熱を上げて来ている小娘を弄ぶことだってできたわけだ。しかしあくまでも紳士である彼はそれをしないで、屈折した思いはあるものの、自分なりの行動規範に沿ってに行動しているのだから。

決闘のシーン。この作品がタチアーナの目線で描かれているのは、この場の演出でもわかる。なんとか決闘を止めようとするタチアーナとオリガが最初に登場するからだ。そして自己憐憫とナルシズムを表現したレンスキーのソロがあり(レンスキーという男は、オネーギンとは対照的であまりにも普通で屈折がない)、全身を黒に包んだ死神のようなオネーギンの登場だ。決闘の演出も淡々としており、舞台の後方で背景のように行われている。決闘そのものよりも、それに対するタチアーナとオリガのリアクションを描くことを主眼としている演出。レンスキーが倒れ、深深と頭を下げたオネーギンは自分のやってしまったこと、親友を殺してしまったという取り返しのつかないことをしてしまったことにおののく。初めて、彼の人間らしさが露になった場面だ。ここでのルグリの演技には惚れ惚れとした。人間の弱さ、後悔、絶望、そういったネガティヴな要素を美しく演じられるダンサーはそうそういない。

そして、数年後(原作では2年後)-

1幕で屈託なく踊っていた若者たちも大人になり、落ち着いた色彩の衣裳に髭を蓄え、グルーミン公爵の邸宅で群舞を踊っている。タチアーナは先ほどの素朴な少女姿とは打って変わり、成熟した大人の女性の色香を身につけている。鮮やかなピンクの衣裳が艶やかだが、あくまでも品格を湛えている。マリア・アイシュヴァルトが驚くべき変貌振りを見せている。彼女の傍らにいるのは、2幕で彼女に好意を寄せていたグレーミン公爵。若くはないが長身でハンサム、魅力的で優しそうな大人の男性である。ふたりのPDDで、彼らが落ち着いた穏やかな結婚生活を送っていることが伺える。

そこへ登場したオネーギンが、一人でソロを踊る。髪に白いものが混じり、実際の年齢以上に年取っており精彩を欠いている。彼の中で2年以上の時間が経過したことは明らかだ。タチアーナの求愛を拒絶しさすらった日々は、彼の空虚な心を埋めることはできなかった。美しく年齢を重ねることはできなかった。そのことを佇まいだけで表現できるルグリは大した役者だ。
美しく花開いたタチアーナに目が吸い寄せられている。彼女を拒んでから今までの月日、その時間をいかに過ごしたかの違いが今の二人の姿に如実に現れている。人妻となった彼女は手の届かない存在なのだけど、でも恋心は抑えられない。

タチアーナの寝室を訪れたオネーギンは、今まで散々固執してきたプライドを捨て彼女の足元に這いつくばり、許しを乞い、愛を乞う。今までの高慢さを捨て去り、初めて本当の愛に生きようとしている彼は、手紙をタチアーナに渡す。1幕と立場が逆転しているのだ。彼のあまりの懇願ぶりに動揺するタチアーナ。二人の心の揺らぎ、葛藤を精緻に綴るのが、ラストを飾るに相応しい「手紙のPDD」。ここでも超絶技巧を凝らしたリフトや回転で、あまりにも激しい情念を語ることに成功している。タチアーナの足元にすがりついては懇願し、拒まれ、でも再びすがりつかずにはいられないオネーギン。タチアーナの心にも隙が見える。ここまで私のことを思ってくれるなら…と身を一瞬預ける。

でも、オネーギンの変節はあまりにも遅すぎたのだ。未練を断ち切るように彼を拒むと、1幕の反復のように手紙をびりびりと破り捨て、扉を指して部屋から立ち去るようにきっぱりと命じるタチアーナ。絶望し走り去るルグリの後ろ姿、その背中に叶えられなかった生涯の愛の亡骸が見える。彼が去ったあとのタチアーナ(=マリア)の、あふれ出る感情を必死に抑えようとしても抑えられずに苦悩の末慟哭しすべての想いを露にした表情。この泣き崩れた表情は観た者すべてにも、過去の叶えられなかった愛の記憶を呼び覚まし、滂沱の涙を流させる忘れ難いもの。そしてこの作品が、タチアーナという女性を主人公としながらも、彼女の視点を通して「オネーギン」という複雑なキャラクターを描いたものであるということを印象付けるラストであった。

マリア・アイシュヴァルトは本当に凄い。カーテンコールでも、ルグリも、マリアも、素に戻れないまま立ち尽くしていた。

2005/12/05

ラファエル・アマルゴ「エンランブラオ」

クリスマスペアチケットという割引チケットが出ていたので、思い切っていくことに。
http://www.ints.co.jp/amargo/

amargo

フラメンコはこの間のスペインガラで面白いな~と思ったのだけどやっぱり今回も面白かった。今回の公演のコンセプトは、バルセロナにあるランブラス通りという大通りを行き交う様々な人々の生き様にオマージュをささげたというわけで、フラメンコのみならず、ブレイクダンスやタップ、コンテンポラリーダンス的なものも登場する。ブレイクダンスを踊った若いダンサーたちがすごくうまくてびっくり。あと、フラメンコというのは単に踊りだけじゃなくて、音楽、中でも歌がすごく大きな要素だな、と思った。歌を担当した二人の女性歌手のパワフルさには圧倒される。演奏も生だったのが嬉しい。

ラファエルを主人公にした無声映画を背景にした音楽などもとても印象的だった。ラファエルはちょっと腹がやばい(笑)けど、踊りにはすごいパッションがある。バレエでいえばピルエットにあたる回転がすごく速くて何回も何回もまわる。カリスマ性もあって吸い寄せられる感じ。彼自身もフラメンコのみならずいろいろなジャンルに挑戦している人なんだな、と感じた。

この公演を観て思ったのは、ダンスというのは祝祭空間だなということと、踊りだけじゃなくて歌などの音楽、映像、照明、そして人々の息遣いや喧騒もダンスの要素の中に含まれていくものだと。席が後ろの方だったのでちょっと照明が暗くて観づらいところもあったけど満足。

終わりの方では、ラファエル自身が舞台を降りて花道沿いの女性にハグしたりキスをしたりとサービス精神満点。カーテンコールでは舞台上は一同で大騒ぎ、大きな風船も飛び出したりすごく楽しそうだった。さすがラテンだな。観客にも大受けで1階席は総立ちだった。

というわけで、終演後はパンフレット購入者のためにラファエルのサイン会が開催された。私たちの席からは行きやすいところだったので前のほうで並ぶことができたけど、もの凄い長蛇の列。しかし、彼は一人一人に握手&キスをして、しかも日本に1年間住んでいたということで「ありがとうね~」「がんばってね」「どういたしまして」と日本語を連発するすごくお茶目でかわいい人だった。ファンになっちゃったよ。

LINDEN日記さんのレポはここ

2005/12/04

タイ:リゾート編(ホアヒン)

さてタイ2日目は、王室御用達の高級リゾート、ホアヒンへ。
なんと、(だ)の勤務先の社員旅行にくっついていくのである。朝6時40分に会社に集合というしんどさ。そこからバス3台に分乗して、トイレ休憩をはさんで現地に到着したらもう昼だ。実際に出発したのは7時半ではあるが、相当遠い場所だ。
DSCF0109small

今回宿泊したホテルは、Evason Hua Hin というところで、まだできてから3年くらいしか経っていないらしい。ホアヒンの中心街から車で20分くらい、静かで自然の中の隠れ家のようなシチュエーションだ。
http://www.sixsenses.com/evason-huahin/index.php
「自然との共生」をコンセプトに造られ、天然木の質感を生かした家具でまとめられている。広大な敷地は緑がふんだんにあるし、畑があって、そこでとれたものを食材にしたり、ソープなどのアメニティにしているようだ。部屋は2階建ての棟が点在しているって感じで、決して広くはないけど開放感満点で、テラスが大きめに取ってあって、蚊帳つきの大きなソファがある。とりあえずそこに横になったら、あまりの気持ちよさに2時間くらい熟睡してしまった。
DSCF0129small

開放感といえば館内のお手洗い。なんとお手洗いまでオープンエアで、もちろん見えないようにはなっているんだけど大自然の中で、って感じでちょっと落ち着かないけど気持ちよい。

ビーチに面したプールもあるのだけど、お天気が良くなくて結局持参したビキニを着ることがなかったのが残念。
オープンエアのレストランでビュッフェ形式のランチ。いうまでもなくすっごく美味しい。でもなんだかいっぱい残ってしまっていたみたいですごくもったいない気がした。
夕食は会社の人たちと一緒で、食事の後はジェスチャーゲームなども。若い女の子たちばっかりなので、お箸が転がっても可笑しいらしく、笑い声に包まれていて微笑ましい。こんな風に思えてくるとすっかり自分も年を取ったな~って感じだ。
DSCF0106small

部屋のお風呂はガラス張りとまるでラブホみたいでちょっと恥ずかしい。シャワージェルのレモングラスの香りがすごく爽快なので思わずショップで購入しちゃった。ついでにせっけんやエッセンシャルオイルもいろいろあって、せっけんマニアの私は思わず散財。ちょっとお高い。アメニティもすごく凝っていてお洒落だ。蚊帳に包まれたベッドで寝る。けっこう蚊が多いのだ。

« 2005年11月 | トップページ | 2006年1月 »