BlogPeople


2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

ブログパーツ

  • HMV検索
    検索する
無料ブログはココログ

« ビアリッツ1日目 | トップページ | ビアリッツ二日目 »

2005/12/30

バレエ・ビアリッツ「くるみ割り人形」Casse-Noisette

GareDuMidi2

今回のフランス行きのメーンイベントともいえるこの公演。場所はGare du Midiという劇場。名前からもわかるとおり、もともとは駅舎で、ナポレオン3世も利用したという由緒正しい場所。アールヌーヴォー様式の建築物である。オルセー美術館のミニ版という感じもする。2階席はバルコニー席のみだが、1400席ほどあり、東京では東京国際フォーラムAで上演された「ピンク・フロイド・バレエ」を上演したほどだからステージはとても広い。おそらくオーチャードホールくらいの広さはあると思う。しかも、席の座り心地はとても良いし、段差もあってとても観やすい。
バレエ・ビアリッツBallet Biarritzは1998年に設立された新しいカンパニーで、フランスの文化庁とビアリッツ市、およびバスク政府が共同で設立。2004年にブノワ賞にノミネートされた芸術監督のThierry Malandaineティエリー・マランダンの作品を主に上演している。ティエリーの作品は日本の貞松浜田バレエ団が上演したこともある。

GareDuMidi3

さて、開演は9時と遅い。だが、「くるみ割り人形」という演目の性質上、観客に小さな子供が非常に多かった。広いロビーだが人はぎっしり。グッズ売り場でかわいいクマのぬいぐるみと、パンフレット、クリスマスっぽいかわいいボールペン、Tシャツを買う。すると、サポーターズクラブ募集担当のボランティアらしきおじさんが話し掛けてきた。ここのカンパニーは16人しかいないので、怪我とか病気になっても代役がいないから健康管理に細心の注意を払っている。皆とても素晴らしいダンサーだ。ディレクターのティエリー・マランダインは、パリ・オペラ座でプリミエ・ダーンスーズにまでなった人で、大変な才能の持ち主だと。彼の作品はクラシックでもなければモダンでもなくて、でもとても面白いよって。地元の人にこのカンパニーがとても愛されているのがわかった。クリストファー・マーニーを観に来たの、と言ったらもちろん知っているよ、いいダンサーだねと言った。ニュースレターやポストカードは無料でもらえた。

そして開幕。キャスト表を見ると、私たちの目当てのクリスは、クリスマス・パーティの客と、スペインの踊りとある。ちょっとで番が少なくて残念だな、と思ったのだがそんなことは全然なかった。 実は出ずっぱりだったのである。
http://www.balletbiarritz.com/gb/0303cassen.html (「くるみ割り人形」動画あり)

cassen02

ステージのセットはとてもシンプルだ。左側に、円錐形の物体があって、これがクリスマスツリーを象徴させている。ちゃんと後で巨大化する。ショートヘアで黒い大きな瞳のかわいらしいダンサーMagali Praudがマリー(=クララ)で、ドロッセルマイヤーは、長身で脚がとても美しい、非常にハンサムなイタリア人Giuseppe Chiavaro。長い脚がすっとまっすぐに伸びた彼のジュッテの美しさは特筆ものである。ドロッセルマイヤーは、ニットのセーターと普通のパンツを着用しているが、あまりにも素敵なので、マリーはドロッセルマイヤーに対しても恋心を持っているのかしら、なんて思ってしまった。

ストーリーそのものは原典の「くるみ割り人形」に忠実だし、音楽もチャイコフスキーのスコアをほぼそのまま使っている。でも、モチーフが色々とキュートにポップに、でもあくまでもフランスらしくスタイリッシュに変えられており観ていて楽しい。くるみ割り人形は、赤いヘッドギアとボクシングのグローブにボクサーのブーツという造形。くるみを踊るのは、ロイヤル・バレエ・オブ・フランダース出身のFréderik Deberdtで、小柄で金髪のダンサー。なんとなく「くるみ割り人形」という演目は王子にしてもくるみ割り人形にしても男性のダンスが少ないという印象があるが、この版はそんなことはない。かなり複雑なリフトが多くて、非常にテクニックを求められるが、立派にこなしていた。

クリスマス・パーティの招待客がやってくる。エジプトのスフィンクス風の露出度の高い衣裳、人民服など様々な扮装。背中にはプレゼントを背負っており、一人一人がクリスマスツリーの前でプレゼントを下ろし踊り始める。クリスもこの招待客の一人で、上は緑に大きな水玉柄のひらひらのブラウス(胸はだけ。チャームポイントの?胸毛もばっちり)をウェストで結び、下はフュ-シャピンク&オレンジのハーフスパッツという派手な扮装。しばし群舞の後、クリスマスツリーが巨大化するという例の演出で、マリーがおとぎの国に行く。

ねずみの軍団とおもちゃの兵隊たちとの戦い。16人という少人数のバレエ団のため、ねずみたちの中に女性ダンサーが混じっている。かぶりものをかぶっているが、なんだかとても可愛いねずみたちだ。そしておもちゃの兵隊たちとくるみ割り人形はというと、なんと棒を武器として駆使し、棒高飛びのように高く飛んで脚を大きく開脚しながらダイナミックに前進するという高度なテクニックを駆使する。その棒にぶら下げられて運ばれてしまう哀れなねずみの王様…

そして8人の雪の精たちが登場。白いボンボンのついたニットキャップにロマンティックチュチュで、粉雪を撒き散らしながら速いジュッテで舞台を横切っていく。細かいステップを駆使した群舞。綺麗だわ~とうっとりと観ているうちに、脚が筋肉質で太目の人たちが混じっていることに気がつく。そう、ニットキャップで頭部を隠してしまっているのですぐには気がつかなかったのだけど、雪の精の中には男性ダンサーも混じっているのだ。16人のカンパニーで男性9人の女性が7人、マリーと母親役はコール・ドに入らないから男性も踊らないと足りないわけだ。そうしたらクリスもこの中にいるはず?似ている人はいたけど、かなり動きが速く、くるくるとフォーメーションも変化し一箇所にいることがほとんどないので追いきれなかった。男性ダンサーたちも女性に負けないくらいの柔らかい動きで、美しいアラベスクの軌跡の残像を残しながら飛び去っていく。この幕のラストでは雪の精たちが指先から粉雪をこぼしながら佇んでいるという美しい幕切れ。(幕間では、一生懸命雪を片付けているところが見えてしまってちょっと笑ってしまった)

2幕は、ドロッセルマイヤーがマリーにおとぎ話を聞かせるところから始まる。お菓子の国の王様と女王様が赤ん坊のかごを見守っているところから始まる。王様は頭にトナカイの角をつけていて、ふたりともクリスマスの装い。ねずみたちから子供を守るための猫がいるが(この猫は、フレデリック(=フリッツ)がカブリモノをかぶって演じている。フレデリック役は、元ベジャール・バレエ・ローザンヌのRoberto Forleo)猫は赤ちゃんを振り回したり色々とやりたい放題。そしてねずみの呪いであかちゃんは真っ赤な姿に変えられてしまい、くるみの実を探してきてそれを砕かないと呪いは消えないということになって、ドロッセルマイヤーは世界を旅して周り、ニュルンベルグにいる甥の家でそのくるみを見つけてきて呪いを解くというところは、原作どおり。赤くなってしまった赤ん坊は呪いが解かれて、マリーの姿に。しかし甥は間違ってねずみの尾を噛んでしまったことでくるみ割り人形の姿に変えられてしまったので、ねずみの王様をやっつけてようやく元の姿に戻るというお話。その旅の中で、スペイン、アラビアなどの各国の踊りが登場するってわけだ。

そしてお待ちかね、クリスが踊るスペインの踊り。例のフリフリ水玉柄シャツで、女性ダンサーとユニゾンで踊る。ワイノーネン版などのくるみのスペインの踊りとは違って、あまりスパニッシュな感じの踊りではなく、2番プリエを多用したかと思ったら、スピーディで、後ろ脚をアティチュードにした軽やかな跳躍、脚をアラスゴンドにして上体を同じ方向に倒したりするなど柔軟性を求められる振り付け。クリスの柔らかい体と綺麗なアンディオールにはぴったりの踊りだった。アームスもとてもきれい。すごくにこやかに、のびのびと踊っているのが印象的。あっという間に終わってしまったけどもっと観ていたいと思った。
アラビアの踊りは、マシュー・ボーン版の「くるみ割り人形」のアラビアの踊りとちょっと似ていて、アラビアというよりエジプトのファラオって感じの頭飾りをつけた半裸の男性ダンサーが、床の上で妖しくのた打ち回るような不思議な感じの踊りだった。そしてトレパック(ロシアの踊り)は、なんと男性ダンサーに左右から女性ダンサーが一人ずつフィッシュダイブで飛び込んでくるという大変難易度の高い振り付け。最後には男性が女性二人をリフトするのだから、大変な体力が必要なのだと思う。中国の踊りは比較的一般的なくるみ割り人形の振り付けに近い可愛い踊り。

元の姿になったくるみ割り人形=王子がマリーを花のワルツの国へと連れて行く。そしてこの花のワルツがまた、コール・ドが男女混合ってワケ。やはりニットのキャップにオレンジとブルーグレーのボーダー柄のトップスにへそ出し、下はクラシックチュチュ。脚はポアントではなくバレエシューズ。背中にはシルフィードのような羽根。さすがにクラシックチュチュだと脚がむき出しになるので、男性が混じっているのがすぐわかるし、クリスを見つけるのも簡単だった。クリスは上半身は逞しく、胴回りも比較的太くてしっかりしているのだけど、膝から下がとてもすんなりとしてきれいな脚をしている。クラシックチュチュの踊りだけあって、振り付けもフォーメーションもクラシックバレエの群舞的な要素が強く、手をつないでのパ・ド・ブレ、アラベスクが多用されていた。ここのダンサーはレベルが非常に高く、アンディオールしたアラベスクの美しさ、バランスの長さにはうっとりとしてしまう。ラーララーララララ、と一同が歌うと男性が混じっているのがわかるのがご愛嬌。クリスのキラキラした笑顔がとても素敵。

花のワルツが終わって、人形の姿のくるみ割り人形と一人取り残されたマリー。しかしドロッセルマイヤーが登場し、くるみ割り人形の王子を連れてくる。王子とドロッセルマイヤーは同じ服を着ている。そしてマリーと王子はここで愛を確かめ合う。お子様の観客が多い中で、ちょっとドキっとするようなセクシーな(性行為を暗喩するような)振り付け。しかしマリーも王子も少年少女にしか見えないような容貌なので、いやらしくは見えない。そして幕。

ちょっと不思議で、ユーモラスで、ファンタジックな夢を見せてもらえた。クラシックのバレエのテクニックを使っているけれども、クラシック・バレエとも、いわゆるコンテンポラリーとも、モダン・クラシックとも、ミュージカルとも違っているオリジナリティ。小さな子供たちも退屈していない様子で、とても喜んでいた。けっこう斬新なこともやっているのに、小さな町でこんな風に受け容れられていて、すごく幸せなバレエ・カンパニーだと思った。振り付けも面白いし、ダンサーはそれぞれ個性的でテクニックも超一流。世の中にはそんなに知られていなくてもこんなにいいカンパニーがあり、いい振付家がいるのだ。

何よりクリスがとても楽しそうに、のびのびと、そして相も変わらず美しく踊っているのが嬉しかった。

« ビアリッツ1日目 | トップページ | ビアリッツ二日目 »

バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

待ってましたよ~~クリスのルポ。

クリスがスペインの踊りってちょっとイメージできないんだけど、フリフリ水玉柄シャツでクリスにぴったりの踊りだったんですね。で、しっかり胸はだけてチャームポイントつきで(^^♪
その写真はないの~~?(笑)
マシューちっくなアラビア(半裸男性)も見たかったわ(好みなので)。

遠くまでクリスを追い求めてはるばる駆けつけられた甲斐があったようですね。

うるるさん、こんばんは~
そういうわけで、ビアリッツ2日間は至福の時でございました!
スワン王子のいたいけなクリスはいなかったけど、すごくHAPPYで美しいクリスが観られて幸せでしたわ。ここまで来た甲斐があったというものです。
残念ながらクリスのスペインの衣裳とか、アラビアの衣裳の写真はないのですよね。最後に載せた写真の白いロマンティックチュチュ軍団の中にクリスはいたのですよ。女の子顔負けの美しさでした。

年が明けちゃいました。
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。

やっっっっっっっっと、クリスのレポ拝読させていただきました!
伸びやか〜に嬉しそうに踊るクリスが目に浮かび、読んでいるこちらまで
幸せな気分になりましたわ。
ビアリッツの街を撮影した写真も素敵です。まるで絵はがきみたい♪

く~てんさん、こんばんは。
こちらこそよろしくお願いいたします!去年もく~てんさんの素早い情報には大変お世話になりました。
ビアリッツはとってもかわいくて素敵な町でした。そしてその人たちに愛されているバレエ団でのびのび踊れるクリスは幸せですよね。でも、クリス、またいつか白鳥の王子も踊りたいみたいです。その日も楽しみにしましょう!

はじめまして。ハルと申します。いつも楽しく拝見させて頂いております。
モーツァルトのバレエを調べていて、バレエ・ビアリッツが最近新作で上演したことを知り、ブログに書きましたので、この記事をトラックバックさせて頂きました。

バレエ・ビアリッツの「くるみ割り人形」、とても楽しそうで、私も見てみたいです。
このくらいの小さな規模のバレエ団は来日公演とかしないでしょうから、こちらから行くしかないですかね…

ハルさん、こんにちは。
いつも「バレエに魅せられて」楽しく拝見しています。
そしてこの記事を発掘してブログでご紹介してくださって本当にありがとうございます。光栄です。
来日公演、いつか実現させて欲しいですよね。ティエリーの作品は貞松・浜田バレエ団で上演されていて、振付指導のために来日もしているようなんですけどね。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/30328/7898680

この記事へのトラックバック一覧です: バレエ・ビアリッツ「くるみ割り人形」Casse-Noisette:

» Ballet Biarritzの「Les Petit Riens」 [バレエに魅せられて]
しつこくモーツァルトネタですが… モーツァルトの作曲したバレエ音楽「Les Petit Riens」、 フランスのバレエ団、Ballet Biarritzでも 去年の2月に新作として上演していました。 ビアリッツバレエのサイトで写真が見られます。 ... [続きを読む]

« ビアリッツ1日目 | トップページ | ビアリッツ二日目 »