そしてSWAN LAKE一日目
待ちに待ったモガドール劇場でのニューアドベンチャーズ「SWAN LAKE」 (マシュー・ボーン版)
モガドール劇場はガルニエから程近いモガドール通りにあるのだが、夜になると娼婦が立っていたりと実はそれほど風紀がよろしいところではない。でも、劇場自体は中くらいのサイズながらクラシックなヨーロッパの劇場という感じで雰囲気はある。クロークにコートを預けたらなんと2ユーロも取られた。パンフレットは15ユーロもする。目新しい写真の1枚も無いのに…
私たちはR列なので1階でもかなり後ろの方だけど、この劇場はこじんまりとしているので、舞台からはかなり近い感じがする。オーチャードホールだったら15列目くらいといった感じだろうか。オペラグラスを使う必要はほとんど感じられない。舞台もかなり小さいくて、韓国のLGアートセンター寄りも少し小さいくらい。でも一応オーケストラ付きなのでオケピもある。段差はそれほどは無いので前の人の座高が高いとちょっとかぶってしまうが、オーチャードよりはかなりまし。
マシュー・ボーン版のSWAN LAKEについては今までも散々書き散らかしてきたから今回はそんなに詳しくは書かないけど。
ジェイソン・パイパーは良かった。この日はちょっと疲れが見えたのと、王子がいつもはあまり組んでいないサイモンだったので、コンビネーションとしては今ひとつだったかもしれない。が、冒頭の王子のマドに現れるところから、腕がとにかくすごく柔らかくて驚かされた。クラシックダンサーよりも上かもしれない。踊りが、とても完成度が高いし、非常に安定している。スタミナ切れも感じられず、精悍で力強いのに優雅で高潔、成熟が感じられた。以前の"狼"的なシャープな印象は薄れたが、強く雄雄しく美しい。
後ストレンジャーがすごく怖くてテロリストって言葉がぴったり。今までは遊びの部分、軽薄なところも見せて陽気なラテン系のストレンジャーだったのに、3幕の最後で女王と抱き合って高笑いするまではにこりともしなかった。
王子を踊ったサイモン・ウェイクフィールドはロイヤルバレエスクール出身だけあって踊りが美しい。綺麗にアンディオールしているし伸びやかな動きを2幕では見せてくれた。ただし、ちょっと小太りなので、いたいけな面は感じられなかった。パンフレットに載っているプロフィール写真だとほっそりとしてハンサムなのにね。
演技のほうは悪くなかったけど、内向的ですごくダメダメでださくてイケていない王子という感じだった。とにかく内側にこもりがちで。
女王はオカメインコことイザベル。韓国公演で見たときはとても鈍重で、それなのに若い男に飢えている中年女って感じだった。今回も中年女のいやらしさというのを憎たらしいほど発揮していて、それはそれでよいかな、と思った。王子に対しては徹底的に冷淡で、ストレンジャーと踊っているときにはウハウハしている。サイモン王子の母親だったらこんな感じだろう。
幼年王子と木こりのギャヴは相変わらず良い。特に木こりのユーモラスさはもはや芸術品といってもいい。公演直前に怪我をして降板したヘンドリックが女王のエスコートやアフロの男、スワンNo.8で復活したのが嬉しい。ピーターさんは相変わらずビッグスワンでは迫力満点の踊りを、そしてイタリアのエスコートでは最高に可笑しい演技&ひっぱたかれながらのダンスを発揮して目を釘付けにさせた。でも、今回一番目立っていたのは、ビッグスワンを踊った、2003年アジアツアー組のダミエン・スタークだろう。なんてこの人の踊りは美しいのだろう。ほっそりとして優雅な腕の使い方は、女性顔負けである。柔らかい背中、高高としなやかに上がる脚、群舞のどこにいても際立っている。いつかザ・スワンを踊れるのではないかというカリスマ性を持ったダンサーだ。新しい人では、ビッグスワンの一人を踊ったトビーが魅力的だった。やっぱりビッグスワンの踊りは、男性群舞の中でも、とてもパワフルでカッコよくて大好き。
パリの観客は、やはりツボが日本人とは大分違うようで、ストレンジャー登場のシーンやタンゴで女王と王子が入れ替わるところで笑ったりする。ガールフレンドのリアクションや4羽の白鳥の踊りも受けていた。
時差ぼけ、席がやや遠いこと、劇場の空気に慣れないことなどがあって、日本公演の後半ほどの感動は得られなかった。だけど、懐かしい家に帰ってきた、そんな気持ちになった。やっぱりスワンは面白いし大好きだ。あと2回観られると思うと幸せ!
« パリ1日目その2/シャンゼリゼと凱旋門 | トップページ | パリ二日目/モロー・オルセー・エッフェル塔 »
「バレエ」カテゴリの記事
- あけましておめでとうございます/2012年を振り返って(2013.01.02)
- 東京文化会館バックステージツアー(2008.09.28)
- あけましておめでとうとざいます&帰国しました(2008.01.07)
- ハンブルクから帰ってきました(2007.07.10)
- またしばらく留守にします(2007.07.03)
「マシュー・ボーン」カテゴリの記事
- マシュー・ボーンin シネマ「赤い靴」2月11日劇場公開(2021.02.11)
- 2月6日マシュー・ボーン出演『赤い靴』オンライントークイベント開催(2021.02.03)
- 『マシュー・ボーン IN CINEMA/ロミオとジュリエット』6月5日より公開(2020.06.05)
- 【公演中止】マシュー・ボーンの『赤い靴』日本公演決定(2019.12.12)
- マシュー・ボーンの「白鳥の湖」新演出版、2019年7月に来日(2018.10.04)
naomiさん
おかえりなさい!
Prisレポ幸せな気分で拝見してます。
街の様子・劇場周り・そしてなによりSwan Lakeのこと、盛りだくさんに教えて頂けて仮想パリ遠征できるくらいです。ありがとうございます。
>だけど、懐かしい家に帰ってきた、そんな気持ちになった。
naomiさんのこの気持ち解ります。
私も劇場で席について舞台を見ているととても落着くし、”いっそここに寝泊りしたい”とおもうくらい幸せでした。
時差ぼけや疲れが取れるまで大変でしょうが、、、
レポの続きを楽しみにしてます!
投稿: Miki | 2005/12/23 10:26
レポ、ありがとうございます。
ジェイソンのスワン、冷静な気持ちでもう一度じっくり(間近で)見たいです。
観客の反応の違いなどもおもしろいものですね。日本の反応の方がが特殊なのかしらね。
投稿: うるる | 2005/12/23 13:04
待ってました!(笑)
進化したジェイソン、日本公演とはずいぶん印象が違う
みたいですね。腕の動きがクラシックダンサーよりも柔らかい、
というのはちょっと意外な感じもしますが、雄々しさと美しさを
兼ね備えたスワン…いい感じ。
あと、ダミエン!ギャブ。それにピーター。なんて懐かしい名前なん
でしょ。私まですぐにでも観たくなっちゃうじゃないですか〜(笑)
レポの続き楽しみにしています。
投稿: く〜てん | 2005/12/23 21:21
Mikiさん、ありがとうございます。
劇場に寝泊りしたい、そのお気持ちわかるわ~。次の来日もあるらしいという噂だけどしょっちゅうくると本当に破産しちゃう。
時差ぼけは3日目で解消しました。
うるるさん、
そうですね~日本の観客が一番大人しいのは間違いないです。しかし、その分ちゃんと観てくれているとダンサーは思われているんじゃないかしら。
ジェイソンは多分もうスワンは踊らないでしょうけど本当にもったいない!
く~てんさん
ダミエンの名前なんて本当に懐かしいでしょう?彼の踊りは本当に美しくて素敵でした。ジェイソンも彼なりの白鳥をあそこまで極めてしまって、もうこれ以上のものは作れないところまで行ってしまったと思っているのでないかと思いました。マシューは多分ずっと彼に踊って欲しいと思っているんじゃないかな。
投稿: naomi | 2005/12/24 02:22
あぁ。naomiさんのコメントを読むたびに、これでジェイソンの
踊りが見納めだなんて信じられません。
というか、信じたくないですね。首藤さんのように、暫くしたら
またダンスの世界に戻ってくるんじゃないかと、密かに期待
しています。
投稿: く〜てん | 2005/12/24 10:38
今年の春が懐かしい。オーチャードの場面が目の前によみがえってきます。
ジェイソン、本当にまたやってほしいですよね。ホセファンの私でもジェイソン踊って欲しいっておもいます。日本で。。。
naomiさんのレポでもう一度白鳥見ている気分になれました!ありがとうございます。でもその分白鳥にホームシックです。
続きが楽しみ!でも体も気をつけてくださいね。
投稿: ずず | 2005/12/25 12:54
く~てんさん、
そうなんですよ。こんなにも素晴らしいのに封印してしまうなんてファンからしてみればとっても残念。でも彼はどんどん先に進んでいくんですよね。それを見守っていかないと。スワンを踊らなくても、いつかダンスには復帰して欲しいと願うばかりです。
ずずさん
あの熱狂的な時間が思い出されますよね。ホームシック募ります。私もまたしばらく時間が経ったら観たいです。懐かしい場所に帰ってきた気持ちになるでしょうね、また。
投稿: naomi | 2005/12/26 02:02