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2005/12/12

シルヴィ・ギエム最後のボレロ12/5Cプロ

実は私シルヴィ・ギエムってそんなに好きなダンサーではなくて、すごいことは認めるけどあまりにも踊りの中で計算が見えてきてしまって生身の人間っぽさがないと思って感心しなかった。
一昨年のダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団共演のボレロもチケット代が恐ろしかった割に、演奏とのミスマッチがあってなんともいえぬいびつなものになってしまっていたし(それはシルヴィの責任ではないと思うけど)、4月の「マルグリットとアルマン」などはこれっぽっちも感情移入できなかった。この公演も最初は行く予定がなくて、たまたま通っているバレエ教室の仲間がチケットを余らせちゃったので買い取ったわけである。

「スプリング・アンド・フォール」ジョン・ノイマイヤー振付
後藤晴雄、小出領子ほか
8月の「ユカリューシャ」公演のときにこれを観たときには、あまりにも淡々としていて眠くなりそうでいまひとつひっかかるものがない演目だったのだけど、改めてみると意外と見所があった。心地よい緊張関係が、ダンサーたちの間に感じられる。退屈に思えたのはドヴォルザークの音楽のせいだった。

とにかく小出さんがとてもよかった。柔らかくて軽やかで、音楽性があって、5月の風のような存在だった。ところがパートナーの後藤さん、一人で踊っているときはいいのだけど小出さんと一緒に踊ると、小出さんのよさが際立ってしまうというかちょっと負けている。しかも彼女をリフトすると急に不安定になってしまうし。
さりげなく、とっても難しい振付で特に男性陣はすごく体力を使う演目だったと思う。途中からばてている人多し。

「小さな死」イリ・キリアン振付
シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル
この演目は2003年の世界バレエフェスティバルと、同年秋のABTシティセンター公演で観ているのだけど、まったく違った印象があった。バレエフェスはマニュエル・ルグリとオーレリ・デュポンで、「小さな死=オルガズム」という意味もあってとても官能性とスピリチュアルなものを感じたのだった。
しかしシルヴィは、まず肉体があまりにもすごすぎた。マッシモ・ムッルと並んでもあまり変わらないような、女性らしさを排したような筋ばった体。その体で、びっくりしてしまうようなハイパーな動きを見せる。マッシモとのコンビネーションは鉄壁。とんでもなく深いドゥミ・プリエのあとにマッシモではなく彼女自身の力で高々とリフトされている。両足をアラズゴンドに広げての跳躍も、人間が跳んでいるとは思えないほど。ひとことで言えば笑っちゃうくらいすごい。ルグリ=デュポンの「小さな死」とはまったく別の演目といっていいだろう。官能は全然感じないけど、精神性を排した、人間の肉体への賛歌と思えてきて、インパクトはとてつもなく大きかった。きっとシルヴィが目指す方向性というのはこういうところにあるんだろう。マッシモは踊りは上手だし顔もハンサムなんだけど落ち武者のような髪型は何とかして欲しかった…。

「シンフォニー・イン・D」振付:イリ・キリアン
出演:木村和夫、井脇幸江ほか
打って変わってコミカルな作品。木村和夫、井脇幸江の二人が素晴らしい。井脇さんのようなクールな美女がコミカル演技をやると楽しいし、木村さんは本当に楽しそう!その分、他のダンサーの存在がちょっと弱いような。照れないでコミカルな演技をやるというのは、吹っ切れないとなかなか難しいのだろう。その点、この二人はちゃんとなりきっているからさすがだ。三つ編みにおてもやんメイクの田中結子さんはとても可愛かった。

「ボレロ」振付:モーリス・ベジャール
4列目とボレロを観るにはあまりにも前過ぎた席である。台の上で踊っているということもあり、地面についているほうの足先は見えない。ただ、その分シルヴィを近くに感じることはできた。
最初にスポットライトで手が照らされることに象徴されるように、手と腕の動きが何よりも重要な作品。シルヴィの手の動きは無駄がなくて美しいと思った。最初の方は、かなり淡々と、余裕を持って踊っている印象。リズムのダンサーたちが少しずつ立ち上がって踊り始めたところでボルテージが上がってくる。首藤康之のボレロは、なにかが憑依したかのような、トランス状態で激しく踊っているが、シルヴィはあくまでも自分自身で、クールで、余計な力を一切込めずに踊っている。だが、とても崇高な、神々しいまでのオーラを放ち始める。このボレロを評して「巫女」とか「女神」という表現をしているのを散見したが、少し違うと思った。こんなにもクールに踊っていながらも、シルヴィは戦士なのだと感じた。敢えて女神とするのなら、ヴァルキューレに近い存在なのではと。リズムの男たちを率いて、戦い、そして戦いに倒れた者たちを弔い導くような存在=ヴァルキューレに見えてきた。そこに、シルヴィというダンサーの人間像も重なってきて、凄絶なものが突き上げてきた。やっぱり凄いものは凄い。このボレロは、彼女にしか踊れない解釈のものだ。

踊り終えて本当に満ち足りた顔をしていたのが素敵だった。きっと彼女はとてもいい人なんだろうな。このボレロで初めて、血の通った暖かな人間なんだ、と感じた。

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コメント

naomiさん久しぶりにおじゃまします!
シルビー・ギエムご覧になったんですねー!
私も「最後の・・・」なんてあったので是非見なきゃ!と思っていたのにここ数ヶ月めちゃめちゃ忙しい生活していたのですっかり忘れっちゃっていました。あー残念。でもnaomiさんが記事書いて下さったので少し近づけました。ありがとうございました。

ずずさん、こんばんは!
ギエムのボレロは今まで観たボレロと全然違っていて、(実はあまり期待していなかったのに)とても楽しめました。最後には感動でちょっと泣いちゃいましたよ。いかんいかん、泣いてちゃなんて思ったりして。
でもきっとまた色んな人が踊って色んな新しいボレロが生まれるんじゃないかと思います。
明日からフランスに行ってきます。

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