イーゴリ・コルプ!
プチバレエ強化週間になっていて、全然ゆっくり感想を書く余裕がない。またちゃんとした感想はのちほど書くことにするのでお許しください。実は書き始めると2,3時間平気でかかってしまうんでそんなことすると睡眠時間が減ってしまうのだ。明日も「オネーギン」行くし。
「ルジマトフのすべて2005」
得チケ7000円はお得。ただし、割り当てられた新宿文化センターの2階席は最悪だった。今後は、絶対ここの2階席ではバレエを観ないことにする。いや、普通に考えれば観やすい席なのよ。2階4列目サブセンターって通常はS席にしないと思うけど。何がダメって、暗転しているはずなのに会場内が明るくて明るくて、キャスト表もパンフレットも読めてしまうし他の観客の姿が視界に入ってしまう。最初、後ろの扉が開けっ放しになっているのかと思ったほど。なぜこんなに明るいかと言うと、足元灯が明るいのもあるんだけど、ピンスポの光が漏れて2階席を照らしてしまうのだ。特に「シンデレラ」と「カルメン」のときがひどかった。この明るさでは、非常灯を消していることなどまったく意味がない。こんなにひどい会場のコンディションでバレエを観たのは初めてだ。せっかくの良い公演なのに非常に悔しい。しばしショックから立ち直れなかった。
今回の公演は、なんといっても怪しい存在感を発揮しまくりのイーゴリ・コルプに尽きるでしょう。彼の妖しくも禍禍しい『薔薇の精』は「Kirov Celebrates Nijinsky」のDVDで観ていて、今回チケットを買うことを決意したのもこの作品ゆえだったわけだけど、映像で観るのの数倍すごい!彼の薔薇の精はほとんど物の怪の領域だと思ったけどね。そうでなければ死神。腕に一体いくつ関節があるのかと思ってしまうほどの柔軟性。長くしなる脚。重力を無視したような跳躍。でも、少女が見ている夢はきっとエロティックな悪夢だろうな、なんて思わせてしまう。最初の作品がコレだったけど、ずっとこの薔薇の精が頭をぐるぐる飛びまわっている一日になってしまったよ。
もう一つのコルプ作品『白鳥』がまたすごかった。私が観たのは3日目で、すでにネットですごい、すごいという噂が飛び交っていたのだが、どうすごいのかわからなかった。言葉にもなかなかできないほどのすごさだったよ。
彼のために振付けられた作品ということもあり、イーゴリ・コルプというダンサーの面妖な個性を生かしきっていた演目だった。彼は自分が良くわかっている人なんだと思う。フードのついたボロボロのコートでよたよたと背中を曲げて入ってきた彼がフードを外し、前をはだける。口髭、目の下には隈。上半身は裸で、腰のあたりにヘンなビラビラが下がっている。踊り始めると…これがすごいんだな。クラシックな踊りではないんだけど、クラシックなダンサーじゃないと踊れない作品であることは間違いない。確かに白鳥を思わせる腕の使い方。やがて見せる雄雄しい鳥のようなワイルドな跳躍。音楽はサン=サーンスの「瀕死の白鳥」の曲だというのに、全然無視して踊っているし不気味な笑い声は上がるし、目をギラギラさせて、邪悪な表情は見せているし。まるでジャンキーのようなのに、ひどく美しくて、魅力的なんだよね。醜悪さと美しさは紙一重のところにあるんだと思った。表現者としての底力を見た気がする。不安や恐怖を抱えうまくいかない人生を生きている男が、心の中で音楽が響いて、目の奥で美しく誇りに満ちた鳥が力強く翼を広げ始める、という筋書きなのだそうだが、まさしく、コルプはそれを体現していたと思う。カーテンコールの時ですら、完全に役に入り込んでいて、怪しい色気と狂気を振りまいていた。 この白鳥はしばらく忘れられそうにない。コールプが今度日本に来たら万難を排して劇場に駆けつけなければ。
遅くなったので今日はここらへんで!
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