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« 新国立劇場バレエ団「カルミナ・ブラーナ」 | トップページ | パリオペラ座無念 »

2005/11/07

東京国際映画祭アジアの風『ミッドナイト、マイ・ラブ』

ここ数年タイ映画のレベルが飛躍的に上がったといわれているが、タイ映画のみならず、一本の映画としても間違いなく優れた作品だと思う。主演のぺッタイ・ウォンハムラオは、『マッハ!』で主演のトニー・ジャーの相棒を演じた人で、今バンコクにいるうちの(だ)によると、タイでは大変人気のあるコメディアンで北野武的な地位にいる人のようだ。

主人公は寡黙で孤独な中年のタクシー運転手。人気の少ない夜に商売をする。唯一の友はAMのラジオと、その深夜ラジオから流れてくる懐メロ。自分しかこの世の中に存在しないかのような、深い孤独。路面が自分に語りかけてくる。そんな彼が、若い娼婦を毎晩職場から家まで送ることになる。もちろん彼は、田舎に住む家族を養うために働く純真そうな彼女に惚れるのだが、不器用なため、彼女から好意を寄せられてもどうすることもできない。抱きしめられても体を硬くさせることしかできない。キスを求められても、顔を背けてしまう。ただただその想いを、ラジオのDJ宛ての手紙に書くだけ。

「今日、初めて友達ができました」

「娼婦とタクシー運転手はどこか似ている。自分の行き先を自分では決められず、客の言うとおりに進むしかない」

話が進むにつれ、なぜ彼がひとりぼっちなのか、その理由が語られる。タクシー運転手は強盗に遭うなどトラブルに巻き込まれて、彼女の仕事が終わっても迎えに行くことができなくなった。若くて美しい彼女には金持ちの旦那がつく。職場に行っても、彼女の名前を覚えている人すらいない。二人は永遠にめぐり合うことができなくなったように思えたが…。

なんといっても主演のペッタイ・ウォンハムラオが素晴らしい。ラジオしか友達のいない、孤独で冴えない中年男の悲哀が、人の良さそうな風貌から滲み出ている。彼女と一度だけデートした時「花嫁衣裳屋さんを開くのが夢なの」と持ち帰ったパンフレットにいとおしそうに頬擦りする姿も、彼がやると気持ち悪くなく、とても健気に思えてくるから不思議だ。娼婦の彼女のことが愛しくてたまらないのに、自分のことを振り返ると到底彼女にふさわしい相手ではないと思って引いてしまう。そう、映画の中で明らかにされるけど、実は彼は妻の不倫現場を目撃し、その相手を殺してしまった前科者なのである。更正して一生懸命真面目に生きているのに、幸せは永遠にやってきそうもなくて、寒寒としたボロアパートで夜明けに眠りにつく生活。すれ違い。さらなる不幸の連続。タクシーを失い、補聴器を使い、脚を引きずるような状態にまでなってしまった。この世の中に神様はいるのだろうか。

でも、神様はいたのだ。それが映画というものが持つ魔力だ。

ラストシーンは、レオン・ライとマギー・チャンが共演した「ラブソング」を思わせる。真面目に誠実に一生懸命生きていれば、いいこともある。現実の社会ではそうも行かないけど、映画はこういう素敵な嘘をついてくれる。

これだけ心に染みた作品は、今年観た映画の中でもこの映画だけかもしれない。本当にいい作品だ。ヒロインのウォランチ・ウォンサワンはとても美しく、娼婦の役を演じていてもまったく汚れたところを感じさせない。

監督:コンデイ・ジャトゥララスミー 出演:ぺッタイ・ウォンハムラオ ウォランチ・ウォンサワン ('05タイ)105分

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コメント

実は僕もこの映画見たかったのですがどうしても時間がとれなくて見逃してしまったのですが、僕の予想以上に素晴らしい出来みたいですね。
どこかでレイトショーでもいいんでやってくれる奇特な配給会社やミニシアターはないんでしょうか!?

のりさん、こんにちは。
コメント遅れてすみません。熱を出しておりまして。
この作品、本当に良かったです。
是非日本公開して欲しいところですが…万人の心の琴線に触れる作品です。
私はたまたまバンコクでDVDを売っているのを見つけて買ってきてもらいました。現地で買えば1000円弱なんですけどね。

そうなんですか、、、
もう向こうではDVD売ってるのですね。
日本でもネットなんかで買えそうですけど、言葉が
わからないから感動が半減しそうなのでもうすこし日本で公開されるのを待ってみます。

この主演のかたはマッハ!に出てた人なんですよね。
あの映画でもなかなか味のある演技をしてましたね。
今度このマッハ!のスタッフがまたトムヤムクンという映画を作って日本でも公開されるみたいです。

タイ映画でもアクション以外でも良質な作品があるのでどんどん日本でも公開してもらいたいですよね。

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