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2005年11月

2005/11/30

バンコク編その2

バンコクは実は10回近く行っているんだけど、最後に行ったのは7年前なのでそれからずいぶんと変わっていた。なんといっても、BTSという新交通システムと地下鉄ができたので、バンコク名物の渋滞に遭わずに済んだこと。とにかくこのBTSってやつは便利だし新しくて綺麗だし、地下鉄ではないので明るくてなんとなく安全そうな感じなのだ。
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昨日も書いたように、マッサージの後はマーブンコーン・センターという、ナショナルスタジアムそばの怪しげな巨大ショッピングセンターへ。迷路のように大きい。7階建てで、一番上のフロアがシネコン&ボーリング場&レストラン街が一つのフロアに収まっていると言えばどれくらい大きいかわかるというものだろう。怪しげなTシャツ(例のGood Bush Bad Bushとかナイキのロゴをパクッた「Just did it」というエッチなやつとか、変な日本語の詩が書いてあったり「財」「福」といっためでたい漢字が書いてあったり、「ヨンタ」という新潮社の「ヨンダ」パンダのバッタモノのポロシャツ、それから偽ブランド商品を扱う店が何百とあるフロア。DVDショップやコンピュータゲームを扱う店が集結したフロア。民芸品や家具が集まったフロア。なんといっても圧巻なのは、携帯電話ショップが何百と集まったフロアである。なんとタイでは、携帯電話の番号がいっぱい張り出されていて、番号によって値段が違うのだ。あれだけたくさん携帯電話屋が一箇所に集まっていてよく共存共栄できるものだと不思議に思う。
すっかり歩き疲れたので、何も買わずアイスクリームを食べてサイアムスクエア近辺を散歩したのち一旦ホテルへ。サイアムスクエアはお洒落な街ということになっているのだが、なるほど、街を歩く若い人は垢抜けている。女性はすらっとしてスタイルが良いしファッションも東京にいる人と遜色がないほどだ。しかし女装した男子高校生とかが平気で歩いているところはさすがタイって感じ。
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日本にも支店があるタイスキのコカ・レストランも、7年前に行った時から改築したようで、びっくりするほど立派になっていた。

(つづく)

写真1:BTSの中にはこんなペインティングが施された車両も。
2:これは路地の壁にあった謎のグラフィティ・アート(?)

2005/11/29

バンコク到着

バンコクのドンムアン空港に着いたのは夜の11時半。ところが入国がずいぶんと混んでいたので1時間も並ぶはめに。タイは入国する際テロ対策のためか顔写真を一人一人撮影するのだ。
タクシーでホテルへ。夜も遅かったのですぐ寝ようとするが、飛行機の中で結構寝てしまったのでなかなか眠れない。

朝はホテルのバイキングで食べた後、ちょっと散歩して近くのマッサージ店へ。なかなかきれいで日本語で料金がお店の窓に書いてあったのでそこにする。2時間で450バーツ(1バーツは3円位)と格安でタイ古式マッサージを受ける。しかしこのタイ古式マッサージってかなり大変で、マッサージする人が全身、それから肘とかひざとか使ってやるんだよね。ストレッチっぽい動きが多数。後半はほとんどプロレスの技をかけられているような状態。バレエやっていて普通の人よりは体が柔らかいから何とかなったけど、カタい人は大変だと思う。イタ気持ちいいって感じ。

それからホテルの入っているエンポリアムというデパートのフードコートでランチを食べ(激安!うまい!)BTSという新交通システムに乗ってナショナルスタジアム前に。ここはかのサッカーワールドカップアジア予選、観客なしで日本対北朝鮮戦をやったところである。そこにある迷路のようなどでかいショッピングセンター、マーブンコーン・センターを冷やかしてまわる。タイにいったら怪しいTシャツを見るのが楽しい。なぞの日本語の詩とか書かれていたり、Good Bush, Bad Bushってイラスト入りのTシャツ(Bad Bushは皆様ご存知の大統領、Goodに関してはご想像にお任せします)

そこでDVDを2枚買う。DVDはすごく安い。旧作は300円しないし、準新作で500円、新作で1000円、ハリウッド映画で1200円くらい。一枚は香港映画「ワン・ナイト・イン・モンコック」でもう一枚は「たそがれ清兵衛」ところか、まちがって「そがれ青兵衛」てなっちゃっているんだよね。一応正規盤だとは思うんだけど。 お金があったら欲しい映画はいっぱいあったんだけど、まだ見ていないDVDが大量にあることを思い出して思いとどまる。東京国際映画祭で観たばかりの「ミッドナイト・マイ・ラブ」も売っていたけど新作だったのでちょっと高かった。

(つづく)

2005/11/23

東京フィルメックス「バッシング」

かのイラク日本人人質事件をモチーフにしたフィクション映画で、今年のカンヌ国際映画祭のコンペティションに選ばれている。事件をあくまでもモチーフにしているのであって、事件そのものを映画化したわけではない。

中東の某国でボランティア活動をしていた有子が、人質となってしまい世間を騒がせた数ヵ月後。北海道の実家で、父親と、父親の後妻とひっそりと暮らしているが、事件の余波はまだまだ続く。勤め先のホテルを解雇されたばかりか、嫌がらせの電話が何十本もかかってくる、見知らぬ人に突然暴力を受けたり、コンビニでも「あんたには売れない」と言われたり、恋人から別れを告げられたり。さらに、理解者だった父親も、勤務先に殺到する抗議メールや電話のせいで、30年も勤めた会社を辞めさせられるなど、有子はどんどん追い詰められていく…。

小林政広監督の自主作品で、90分にも満たない尺。緊張感のあル映像が続き、一瞬足りとも気が抜けない映画であった。有子を演じる占部房子が素晴らしい。実在の人物をモデルにしたわけではない。有子は決して聖人君子ではなく、今まで何をやってもダメだった人間が、ボランティア活動で人に感謝されることで救われたといういわば「自分探し型」の人である。すごく頑固で、でもバッシングされて弱気になって、自分の殻に閉じこもったりして対話を拒んだりするところを、リアリティをもって演じている。演出として彼女の顔のクローズアップが多いのだが、表情から彼女の人物像が伝わってくるのだ。普通に綺麗な継母役の大塚寧々とは対照的である。また、継母が作った食事を食べないで、大量の汁を入れたコンビニのおでんばかり食べているところも、彼女の脆さを象徴するものである。

映画技法的には、説明的な描写を極力省き、省略を行いながらも、省略されたところに起きた出来事がちゃんと伝わっているところに、演出の力を感じる。有子の父は職を失って茫然自失となり、ついには自らの命を絶ってしまうのだが、飛び降り自殺をしたはずの彼の姿を映さず、有子の表情と荒涼とした海、そしてその前のシーンの父の顔に漂う死相でその死を表現し、次のカットでは喪服の有子と継母、読経のシーンに移っているというシークエンスは、大変手際が良い。

一方で、意外性の少ない映画ではある。人質となった女性が帰国して激しいバッシングにさらされ、多くのものを失い、もはやここに自分の居場所はないと悟って再び中東へ戻っていくということだけを、想像できる範囲内で描いているのだから。ただ、この映画の中から、日本の社会の病理というものが浮かび上がってくるところは見事だと思う。おそらくは"ニート"であったであろう女性が自分探しのためにボランティア活動をして、自分自身を癒すために危険に身を投じる。一方で、有子の恋人や職場の上司の言葉に表れているように、ボランティアというのは暇な金持ちがやる道楽であって、普通の人間がやるのは異常なことであるという固定概念が蔓延している。なぜ、実際の事件であれだけ人質がバッシングされたのか、カンヌ国際映画祭で記者たちはそのことを凄く不思議に思ったらしい。自分たちの国ではそんなことはありえないからである。
そしてすごく気になったのが、外国に出かけていってそんなことやるんだったら、「国のために何かやれ」って口をそろえて言うことである。そういう発想にはぞっとするんだけど、そう考えている人は多いんだろうな。論法として、国のお金を使って救出してもらってなんて迷惑なやつだ、ってことなんだろうけど。(でも国は自分の国民を守る義務はあるはず)

実際の人質となった方は、たぶんここまでひどい目には遭っていないんじゃないかと思うんだけど、田舎だからこんなことになるのだろうか。東京の人だったらわざわざ、特に面識があるわけでもない相手を暴行したり、悪戯電話をかけてくるような暇がある人が早々いるとは思わないんだけど。というかそうであって欲しい。

自主映画で見るからに低予算で、有名な俳優も香川照之がちょい役で出ているくらいなのだけど、カンヌのコンペ作品でいまだに公開そのものが決まっていないというのはなんとも…よほどあの人質事件ってタブーだったってことなのだろうか。映画としては大変良くできていると思うのに。

さて、今回は舞台挨拶として、小林政広監督を始め主演の占部房子、香川照之ほかの舞台挨拶と、小林監督のQ&Aがあった。香川照之の言葉がなかなか可笑しい。「小林監督は荒涼とした風景を撮る人で、僕は日本のアキ・カウリスマキだと思っています。そして、占部房子さんはかねがね日本のジュリエット・ビノシュだと。ね、似ているでしょ?」たしかに占部房子はちょっとビノシュに似ていると思うけど、ビノシュより美人なのでは?その美人さんが三つ隣の席でこの作品を観ているのでちょっとドキドキしてしまった。前の席に香川照之が座っていて、Q&Aの時の質問に対するリアクションがいちいち面白い。

それにしても、ボランティアって胡散臭いって固定概念を広めたホワイトバンドの日本での展開って罪深いよね。(人質の男の一人がやたら目つきが悪かったというのも一因かもしれないが)
身内にボランティアを本格的にやっている人間が何人かいるので、余計色々と考えてしまった。

2005/11/22

東京フィルメックス「SPL<殺破狼>」

毎年、映画祭「東京フィルメックス」ではかなりの本数を観ているんだけど、今回は23日からバンコクに行くこともあって2本のみ。そして一本目は香港映画「SPL<殺破狼>」
ウィルソン・イップ監督、出演はいまやハリウッド・スターのサモ・ハンとドニー・イェン、そしてサイモン・ヤムだ。舞台挨拶がなく、代わりに冒頭、メッセージビデオが流れた。監督は若くてなかなかの甘いハンサムで一瞬俳優かと思った。ドニー・イェンは世界のアクションスターなので英語でメッセージだ。そしてサモ・ハンはなんだかちょっとふざけている。さすがデブゴン。

いわゆる香港ノワール系刑事モノである。サイモン・ヤムが脳腫瘍のため1週間後に退職を控えた刑事チャン、その後任がドニー・イェン。そしてサモ・ハン演じるポーはチャンの同僚刑事の家族を殺した憎き黒社会のボス(しかし子煩悩)である。潜入捜査官の部下を惨殺されたチャンはあらゆる手段をとってポーを逮捕しようとし、証拠まででっち上げようとしちゃうのだ。しかしチャンの部下は一人一人、ポーの手下により血祭りにあげられるのだった…

女性の登場人物は(ちょっとだけ登場するポーの妻と、チャンの幼い養女以外は)一切登場しない、アナクロなまでに男の世界である。サイモン・ヤムも、ドニー・イェンも、サモハンですらもやたらカッコよくセクシー。中でもサイモン・ヤムのスーツ姿はいつ観ても萌え~だ。ひたすら彼らをカッコよく映すことに注意を払った映画で、ついでに"父の日”というモチーフを使って泣かせようとしている。少しだけど登場する3人の部下たちのエピソードと 彼らの凄惨な死、そしてラストの海辺のシーンにはこみあげるものがある。

それと、この映画を観る人のほとんどが期待するだろう、サモ・ハンとドニー・イェンという新旧アクションスターのマーシャルアーツ合戦。これはすごい!あんなヤクザの組長でしかも小太りの初老のオッサンが、シャープでどこから見ても強そうなドニーと互角に張り合っているというのには感動した。ドニー・イェンはクールな持ち味を発揮していて相変わらずいかしている。そして残虐なナイフ使いの男とのアクションシーンも、死ぬほど痛そうだけど凄いね。 ドニー・イェンっていつも誰かに似ていると思うんだけど誰なんだろう。布袋寅泰?

新味はほとんどないアナクロさだし、ストーリーだってあってないようなものだけど、夜ばかりのダークな映像はスタイリッシュだし、非常にほろ苦い終わり方には不思議な余韻がある。マーシャルアーツは存分に楽しめてお腹いっぱい。香港アクション映画に求めるモノは揃っている。(来年春、新宿オスカー他にて公開)

2005/11/17

兵庫県立芸術文化センター「春の祭典」ニジンスキー版

「春の祭典」振付:ヴァーツラフ・ニジンスキー 音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー 復元振付:ミリセント・ホドソン
選ばれし乙女:平山素子 賢者:薄井憲二 兵庫県洋舞家協会
国内制作日本初演。
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さて、今回のメーンイベント、ニジンスキー版の「春の祭典」だ。上演される前に、一抹の不安があった。オーケストラのことである。第一部の「白鳥の湖」の演奏はかなりお粗末だったのだ。2幕コーダがびっくりするくらいの速いテンポになってしまっていて、連続パッセをするヤンヤン・タンがかなり大変そうだった。また、音のバランスも悪かったのだ。
ここのオーケストラは、兵庫県芸術文化センター管弦楽団という専属のオーケストラで、できたてなのである。しかし幸運にも、その心配は杞憂に終わった。休憩時間の間中ずっと「春の祭典」を練習しており、またこの演目のためにオーケストラの人員がかなり増えた模様である。おかげで、音の厚みがあり、素晴らしい演奏を聴くことができた。このオーケストラはアカデミー形式といって、世界から団員を募集し、ここで育てていくというコンセプト。外国人の演奏家もかなり混じっていた。

プログラムに全部の役名が書いてあって、それを読むとなんとなく雰囲気がつかめると思うので紹介する。

第一部 大地への讃仰
三百歳の老女/三人の小柄な乙女/七人の乙女/七人の若い乙女/三人の長身の娘/青年たち/若い男たち/若者たち/長老たち/
賢者

第二部 いけにえの祭
四人の女Ⅰ/四人の女Ⅱ/四人の女Ⅲ/熊の皮をかぶった六人の祖先/十四人の祖先/
選ばれし乙女

舞台装置(といっても緞帳と後ろの幕のみ)と衣裳はフィンランド国立オペラから借り受けたもの。緞帳の絵は、素朴で原始的なのだが、不穏なまでの禍禍しさを感じさせる。右側には、馬の皮をかぶった男が二人、右側には佇む少女の絵が描いてある。バックドロップの方はもっと謎で、空を飛ぶ馬が二頭。
スモックのようなだぶっとした衣裳が色鮮やかで、素晴らしく美しいし、振付上も非常に有効に機能している。
まず、三つ編み髪の乙女たちが登場し、続いて三百歳の老女、それから若者たちが入ってくる。みな一様に腰や膝を曲げ、首をかしげ、内股だ。数人ずつ組になり、床を激しく踏み鳴らしたり、大地を這いつくばったようにすり足で進む。おおよそバレエの常識を覆すような踊りなのだけど、しかしやっぱりこれはバレエとしか言いようがないと思った。バレエのテクニックを知り尽くした上で、その真逆のことをやっていると。
賢者が重々しく大地に口付けをする。演じるのは、今回の企画アドバイザーを務めた薄井憲二氏だ。
やがて舞台の上は狂乱の渦に。カオス状態となり、乙女たちも若者たちも、首を曲げたまま、膝を曲げたままで狂ったように足を踏み鳴らしてトランス状態で音楽に合わせ激しく踊る。だが、不思議にここには秩序が感じられた。それは、三角形、円といった衣裳にも使われたモチーフが、隊形に使用されているからである。

第2部では、女たちが登場。ついで、熊の皮をかぶった六人の祖先たちも。女たちが輪になって舞う中、一人の乙女が転び輪の中から外れてしまう。彼女が、「選ばれし乙女」となり、神に生贄として捧げられることになる。
狂乱の渦に取り囲まれ、首を傾げ、内股の不自然な姿勢で、死の恐怖に怯え目を見開いた乙女は10分近く微動だにしない。
そして突然、内股のまま、足先はフレックスで120回もの跳躍を見せるのである。圧倒的なリズムに合わせ、膝をまっすぐ伸ばした美しいジュテだが、アンドォールでつま先を伸ばすというバレエの原則とは真逆のことをやって飛べるのは非常に大変なことに違いない。トランス状態のまま全身全霊で跳び続けた乙女は、バタンと息絶え、彼女の亡骸を男たちは神に捧げて幕。

凄まじい緊張感と高揚感。演奏も大変力が入って音も分厚く言うこと無し。素晴らしい舞台だった。選ばれし乙女役の平山素子は、音に精密に合わせた、何者かが取り憑いたような踊りだった。ただ、役の解釈としては、想像していたものとは少々違っていた。トランス状態にはあるが、恍惚感、選ばれたことに対する思いというのが見えず、恐怖に打ち震え怯えきったvulnerableな少女であり、犠牲者という印象が強かった。
群舞についても、異例の長さのリハーサル期間で、復元を担当したミリセント・ホドソンと、フィンランド国立バレエで選ばれし乙女を踊った中川真樹が振付アシスタントとして指導にあたったということもあってよく訓練されていた。

1913年の初演では、観客が暴動を起こしかねないほどの大騒ぎそしてスキャンダルとなったというが、いまだ新鮮さは失われていない。

カーテンコールにはミリセント・ホリゾンと中川真樹も登場。出演者たちはカーテンコールでも内股で立っていて、役から抜けきっていなかったようだ。

さて、会場の共通ロビーでは、薄井憲二氏のディアギレフ関連コレクション、ミリセント・ホドソンによるスケッチ(これが、赤が印象的でとてもかわいくて、ぜひポストカードが欲しい!)、フィンランド国立バレエやジョフリー・バレエで上演された際の写真パネルなど貴重な資料が展示されていて、とても面白かった。

シュツットガルト・バレエの「ロミオとジュリエット」2回分行きたかったのをやめて、交通費をかけてまで兵庫に出かけた甲斐があったというものだ。

とらのおさんのレポートはこちら

2005/11/16

兵庫県立芸術文化センター オープニング・ガラ ヤンヤン・タン&ヴィシニョーワ

ありがたいことに、なんとプログラムは無料で配布してくれた。財布の中の残金が2000円を切っていたので助かった。しかもちゃんと冊子になっていて、それぞれの作品についての解説もついている。中でも、「春の祭典」に関しては復刻に携わったミリセント・ホドソンによる解説なのである。太っ腹!

さて、いよいよ開演だ。

「白鳥の湖」より第2幕 ヤンヤン・タン&デヴィッド・アーシー
グラン・アダージオだけだと思っていたら2幕丸ごと、コール・ドつきで上演だったのでちょっと驚く。最初にロットバルトも出てくるけど一瞬だけだったのが残念。振付はオリジナルとのことだけど、プティパ/イワノフ版のもっともオーソドックスなもの。例のオデットのマイムは省略している。大きな白鳥の踊りは4羽で踊るのだが、この振付が大変つまらないもので、長旅の疲れもあって一瞬意識が遠のく。

ヤンヤン・タンは華奢で手足がとても長くスタイルが良いし技術的にはとても精緻。同じ東洋人の顔をしているのに、さすがに際立った存在感があるのがとても不思議な感じがした。特にポール・ド・ブラがとても柔らかい。清楚で、すごく孤独で気高い美しい白鳥だったが、もう少し感情表現を出して欲しかった気がした。デヴィッド・アーシーのサポートはかなり上手。でも白鳥の2幕は王子の見せ場がほとんどないからもったいない。

このコンビではもう一作品。この日だけの上演で、日本では初演となるクリストファー・ウィールダンの「コンティヌウム」。赤い線が奥に光っているだけの暗い照明の中浮かび上がる緑色のレオタード姿の二人。いかにもウィールダンって感じの、ストイックでシャープ、しかしゆっくりとしたテンポの振付。緊張感があり、ヤンヤンの高い身体能力も生かせて素敵だった。

「眠れる森の美女」より3幕グラン・パ・ド・ドゥ
ディアナ・ヴィシニョーワ、アンドリアン・ファジェーエフ
ヴィシニョーワは当初「ドン・キホーテ」だったのが「眠り」に替わってしまって。ドンキの方が向いている気がするのだが。とても丁寧に踊っていて表情も華やかで良かったのだけど、やっぱりオーロラには少し妖艶すぎる気がした。よくみると彼女って、すごく上半身が逞しいのね。背中の筋肉、肩の筋肉がすごい。それがあるから高い技術もあるのだと思うけど。少し水色かかった衣装はキラキラしていて似合っており、とても素敵。でも、せっかくの結婚式のPDDだから、シャンデリアの一つくらい吊るしておいても罰は当たらないと思うのだ。「眠り」の王子はこれまた、ほとんどオーロラ姫のバーのようなもので、ヴァリエーションくらいしか見せ場がない。とりあえずファジェーエフはサラサラの金髪にブルーアイズ、見た目が大変麗しい、(若干寝癖?があったが)絵に描いたような王子様なので、それだけで十分役割を果たしているといえる。サポートも上手だし、マネージュなども後ろ脚がすっと伸びてきれい。

「ラ・ジョコンダ」より「時の踊り」(振付:マリウス・プティパ)
上村未香、貞松正一郎
コール・ドの衣装が朝、昼、夕、夜をイメージした4色に分かれていてとてもきれい。しかしこのあたりで疲れが頂点に達していてまたしても意識を失う。ソリストの貞松正一郎は、ローマ風の衣装で、ジュテも高くて技術的には大変優れたものを持っていると思った。

「ロミオとジュリエット」バルコニーシーン
ディアナ・ヴィシニョーワ、アンドリアン・ファジェーエフ
振付が誰によるものかはパンフレットにも記述なしだが、ラブロフスキー版のようだ。私は3階席の右端だったので、ひょっとしたらバルコニーが見えないかと心配していたのだが、心配するには及ばなかった。なぜならば、バルコニーがなかったからである!
シュツットガルト・バレエによるクランコ版の素晴らしい全幕モノを観てしまったばかりだから、かなり形勢は不利である。しかsヴィシニョーワのジュリエットは思ったよりは良かった。やっぱり妖艶で情熱的なんだけど、精一杯可愛らしく見せようとしているのはわかった。難しいリフトなどは一切なかったけど、二人とも(バルコニーもないのに)丁寧に踊っていた。私はあまりヴィシニョーワが好きではないけど、自分なりのジュリエットを表現しようときちんと踊っている姿を見て、ちょっと見直した。

そういうわけで、ゲストのクオリティは高いけれども、ここ数日シュツットガルト・バレエとクランコの濃厚な物語バレエを見てきた身には、正直言ってかなり物足りない。ガラってそういうもんだから仕方ないかな、と思いつつ、今回のメーンイベントに臨んだのである。(つづく)

途中の休憩で気がついたのだが、なんと3階には屋上庭園がある。ただし、喫煙所状態になってしまっているのだが。ホワイエを歩いている分には、光がたくさん入ってきて気持ちよい構造だ。

2005/11/15

兵庫県立芸術文化センター

シュツットガルト・バレエの「ロミオとジュリエット」マチネ鑑賞後、夜行バスで関西へ。
目的は、兵庫県立芸術文化センターオープニングガラ
日本初制作の「春の祭典」ニジンスキー版の初演を観るためです。

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ほかに、ヤンヤン・タンとデヴィッド・アーシー(サンフランシスコ・バレエ)が「白鳥の湖」の第2幕とクリストファー・ウィールダン振付の「コンティヌウム」(日本初演)、ヴィシニョーワとファジェーエフ(キーロフ・バレエ)が「眠れる森の美女」の3幕のPDDと「ロミオとジュリエット」のバルコニーシーン。それと「ジョコンダ」より「時の踊り」。

「春の祭典」すごかったです~。
詳しくはまた後で。

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兵庫県立芸術センターは、西宮北口駅とデッキで直結している。西宮北口の駅前自体、とても広々としていて建物もすべて新しい。震災の被害が大きかったこともあるのだろうけど。

大ホール、中ホールそして小ホールを兼ね備えているのだが、三つのホールの間のロビーのような空間が吹き抜けになっていて、とてもゆとりがある。1階のエントランスは立派だけど駅から来る人はデッキを通じていくのであまり使われないんだろうな。
小さなショップがあって、かわいいポストカードとか、なぜかNYCBのTシャツとか、新書館のバレエカレンダーとか、フェアリーで売っているバレリーナ柄タオルとかグッズが色々と売っていた。

内部は木目調の落ち着いていてシックなインテリア。やはり吹き抜けを多用していており、一面はガラス張りで明るく開放感がある。エレベーターで4階まで上がれる。そして1階だけでなく3階にもビュッフェがあるので、上層階の席になっても下に降りていく必要がないのは便利。有名レストランのイグレッグが入っているのだが、そこのクッキーなどが売っている。ただしコーヒー500円は高い。トイレの数も多く、しかも扉の上部のマークを見ればどこが空いているのか一目瞭然となっている。お手洗いもウッディで落ち着いた空間だし3階ともなると空いていてストレスがたまらず良い。

さて、肝心のホールだが、4階席まであり、1階は28列。横は54席と幅が広い。1階席には行かなかったので傾斜がどれくらいあるかは不明。この会場のコンセプトなのか、ホール内もウッディなインテリアで、さすがに新しいので気持ちよい。私が座ったのは3階席の正面だが一番右端。足元はとても広く、手すりも細くてあまり気にならない。しかし、残念ながらちょっと上手側が欠けるし下手側は見切れてしまう。その代わり、舞台との距離感はあまりなくて比較的近くに感じられた。新国立劇場の3階席と同じような感じだろうか。サイド席は、びわ湖ホールなどと同様、やや斜め方向に舞台を向いているので観やすそうだ。音の響きはとても良いし、舞台はとても広くて奥行きがある。

「本日の当日券はありません」完全にソールドアウトだ。

そしていよいよ開演。

2005/11/11

フェルナンド・ブフォネス死去

オーランド・バレエの芸術監督を務めていた、元ABTの大スター、フェルナンド・ブフォネスが癌で昨日(11月10日)亡くなられたそうです。
http://www.bradenton.com/mld/bradenton/13133797.htm
まだ50歳の若さでした。


私は生では世界バレエフェスティバルでしか観たことがなくて、
そして映像もABTの「ベスト・オブ・アメリカン・バレエ・シアター」での黒鳥、「レ・シルフィード、シルヴィア、トライアド、パキータ」の「パキータ」くらいしか観ていないんですが、正確な踊りで、端正でスターの輝きがありましたね。
ご冥福をお祈りします。

http://www.fernandobujones.com
素敵な写真がたくさんありますが、著名人と写ったギャラリーでは、高円宮殿下、ダイアナ妃、レーガン元大統領、そしてヌレエフとこの世にはもういない人たちが数多くいました。

2005/11/10

イーゴリ・コルプ!

プチバレエ強化週間になっていて、全然ゆっくり感想を書く余裕がない。またちゃんとした感想はのちほど書くことにするのでお許しください。実は書き始めると2,3時間平気でかかってしまうんでそんなことすると睡眠時間が減ってしまうのだ。明日も「オネーギン」行くし。

ルジマトフのすべて2005
得チケ7000円はお得。ただし、割り当てられた新宿文化センターの2階席は最悪だった。今後は、絶対ここの2階席ではバレエを観ないことにする。いや、普通に考えれば観やすい席なのよ。2階4列目サブセンターって通常はS席にしないと思うけど。何がダメって、暗転しているはずなのに会場内が明るくて明るくて、キャスト表もパンフレットも読めてしまうし他の観客の姿が視界に入ってしまう。最初、後ろの扉が開けっ放しになっているのかと思ったほど。なぜこんなに明るいかと言うと、足元灯が明るいのもあるんだけど、ピンスポの光が漏れて2階席を照らしてしまうのだ。特に「シンデレラ」と「カルメン」のときがひどかった。この明るさでは、非常灯を消していることなどまったく意味がない。こんなにひどい会場のコンディションでバレエを観たのは初めてだ。せっかくの良い公演なのに非常に悔しい。しばしショックから立ち直れなかった。

今回の公演は、なんといっても怪しい存在感を発揮しまくりのイーゴリ・コルプに尽きるでしょう。彼の妖しくも禍禍しい『薔薇の精』は「Kirov Celebrates Nijinsky」のDVDで観ていて、今回チケットを買うことを決意したのもこの作品ゆえだったわけだけど、映像で観るのの数倍すごい!彼の薔薇の精はほとんど物の怪の領域だと思ったけどね。そうでなければ死神。腕に一体いくつ関節があるのかと思ってしまうほどの柔軟性。長くしなる脚。重力を無視したような跳躍。でも、少女が見ている夢はきっとエロティックな悪夢だろうな、なんて思わせてしまう。最初の作品がコレだったけど、ずっとこの薔薇の精が頭をぐるぐる飛びまわっている一日になってしまったよ。

もう一つのコルプ作品『白鳥』がまたすごかった。私が観たのは3日目で、すでにネットですごい、すごいという噂が飛び交っていたのだが、どうすごいのかわからなかった。言葉にもなかなかできないほどのすごさだったよ。
彼のために振付けられた作品ということもあり、イーゴリ・コルプというダンサーの面妖な個性を生かしきっていた演目だった。彼は自分が良くわかっている人なんだと思う。フードのついたボロボロのコートでよたよたと背中を曲げて入ってきた彼がフードを外し、前をはだける。口髭、目の下には隈。上半身は裸で、腰のあたりにヘンなビラビラが下がっている。踊り始めると…これがすごいんだな。クラシックな踊りではないんだけど、クラシックなダンサーじゃないと踊れない作品であることは間違いない。確かに白鳥を思わせる腕の使い方。やがて見せる雄雄しい鳥のようなワイルドな跳躍。音楽はサン=サーンスの「瀕死の白鳥」の曲だというのに、全然無視して踊っているし不気味な笑い声は上がるし、目をギラギラさせて、邪悪な表情は見せているし。まるでジャンキーのようなのに、ひどく美しくて、魅力的なんだよね。醜悪さと美しさは紙一重のところにあるんだと思った。表現者としての底力を見た気がする。不安や恐怖を抱えうまくいかない人生を生きている男が、心の中で音楽が響いて、目の奥で美しく誇りに満ちた鳥が力強く翼を広げ始める、という筋書きなのだそうだが、まさしく、コルプはそれを体現していたと思う。カーテンコールの時ですら、完全に役に入り込んでいて、怪しい色気と狂気を振りまいていた。 この白鳥はしばらく忘れられそうにない。コールプが今度日本に来たら万難を排して劇場に駆けつけなければ。

遅くなったので今日はここらへんで!

2005/11/08

パリオペラ座無念

12月のパリ行き、オペラ・バスティーユで、ちょうどヌレエフ版の「白鳥の湖」が上演されるので、楽しみにしていた。マシュー・ボーンの白鳥も観るので、見比べると楽しいだろうな、と思った。ところがパリオペのサイトでも、いろいろなチケットサイトでも、観ようと思っていた16日はどこもソールドアウト。しかも今年からシステムが変わったらしく、ネットでほとんどのチケットを売ってしまって、当日券は戻り券くらいしか売らなくなったらしい。

さて、実は今日から電話での発売が始まったというので、パリオペに国際電話をかけてみた。サイトに載っている電話番号に2時間かけつづけたがずっと話中。そこで、「おとなのパリ」というムック本に載っている電話番号にかけたら、5分程度待てとのメッセージ。国際電話代が気になりながらも待ったら、フランス語でまくし立てられたので英語を話せる人を、とリクエストしたらまた2分くらい待たされる。そして、ようやく出たお兄さんなのかおじさんに、16日のチケットが欲しいと伝える。この人、あまり英語が得意そうじゃない。

「16日と18日はテレビの収録があるので、アナタがチケットを手に入れられる可能性はありません」

...orz_| ̄|○

某チケットサイトで一瞬16日のチケットが売られているのを見たことは見たので、まったく売っていなかったわけではないようだが、収録に伴いチケットを売る枚数を減らしたってことなのだろうか。
まあ、当日券には一応かけてみようと思うのだが、ダメだったらマシュースワンの3回目を観るしかないだろう。16日は、ガルニエでの「ドガの小さな踊り子」の公演もないのだ。

今まで毎日のようにパリオペのサイトを見て戻り券がないか眼を皿のようにしていた努力が水の泡。14日はチケットがあるというが、マシュースワンのチケットを買っちゃったし。これで、アランがザ・スワンを踊っていたらもう泣くに泣けない。パリオペなんか大嫌いだ。

2005/11/07

東京国際映画祭アジアの風『ミッドナイト、マイ・ラブ』

ここ数年タイ映画のレベルが飛躍的に上がったといわれているが、タイ映画のみならず、一本の映画としても間違いなく優れた作品だと思う。主演のぺッタイ・ウォンハムラオは、『マッハ!』で主演のトニー・ジャーの相棒を演じた人で、今バンコクにいるうちの(だ)によると、タイでは大変人気のあるコメディアンで北野武的な地位にいる人のようだ。

主人公は寡黙で孤独な中年のタクシー運転手。人気の少ない夜に商売をする。唯一の友はAMのラジオと、その深夜ラジオから流れてくる懐メロ。自分しかこの世の中に存在しないかのような、深い孤独。路面が自分に語りかけてくる。そんな彼が、若い娼婦を毎晩職場から家まで送ることになる。もちろん彼は、田舎に住む家族を養うために働く純真そうな彼女に惚れるのだが、不器用なため、彼女から好意を寄せられてもどうすることもできない。抱きしめられても体を硬くさせることしかできない。キスを求められても、顔を背けてしまう。ただただその想いを、ラジオのDJ宛ての手紙に書くだけ。

「今日、初めて友達ができました」

「娼婦とタクシー運転手はどこか似ている。自分の行き先を自分では決められず、客の言うとおりに進むしかない」

話が進むにつれ、なぜ彼がひとりぼっちなのか、その理由が語られる。タクシー運転手は強盗に遭うなどトラブルに巻き込まれて、彼女の仕事が終わっても迎えに行くことができなくなった。若くて美しい彼女には金持ちの旦那がつく。職場に行っても、彼女の名前を覚えている人すらいない。二人は永遠にめぐり合うことができなくなったように思えたが…。

なんといっても主演のペッタイ・ウォンハムラオが素晴らしい。ラジオしか友達のいない、孤独で冴えない中年男の悲哀が、人の良さそうな風貌から滲み出ている。彼女と一度だけデートした時「花嫁衣裳屋さんを開くのが夢なの」と持ち帰ったパンフレットにいとおしそうに頬擦りする姿も、彼がやると気持ち悪くなく、とても健気に思えてくるから不思議だ。娼婦の彼女のことが愛しくてたまらないのに、自分のことを振り返ると到底彼女にふさわしい相手ではないと思って引いてしまう。そう、映画の中で明らかにされるけど、実は彼は妻の不倫現場を目撃し、その相手を殺してしまった前科者なのである。更正して一生懸命真面目に生きているのに、幸せは永遠にやってきそうもなくて、寒寒としたボロアパートで夜明けに眠りにつく生活。すれ違い。さらなる不幸の連続。タクシーを失い、補聴器を使い、脚を引きずるような状態にまでなってしまった。この世の中に神様はいるのだろうか。

でも、神様はいたのだ。それが映画というものが持つ魔力だ。

ラストシーンは、レオン・ライとマギー・チャンが共演した「ラブソング」を思わせる。真面目に誠実に一生懸命生きていれば、いいこともある。現実の社会ではそうも行かないけど、映画はこういう素敵な嘘をついてくれる。

これだけ心に染みた作品は、今年観た映画の中でもこの映画だけかもしれない。本当にいい作品だ。ヒロインのウォランチ・ウォンサワンはとても美しく、娼婦の役を演じていてもまったく汚れたところを感じさせない。

監督:コンデイ・ジャトゥララスミー 出演:ぺッタイ・ウォンハムラオ ウォランチ・ウォンサワン ('05タイ)105分

2005/11/06

新国立劇場バレエ団「カルミナ・ブラーナ」

カール・オルフの曲「カルミナ・ブラーナ」(映画「オーメン」のテーマといえばわかりやすい)を元に、バーミンガム・ロイヤルバレエ芸術監督のデビッド・ビントレーが振り付けたバレエ。インタビューとか記事とか見たらなんだかとても面白そうだったので。当初行く予定はなかったけどNY行きもダメになっちゃったし、とヤフオクでチケットを落札していくことに。

いやはや、面白かった。最初は十字架のビジュアルとか、神学生とか言うからとても真面目くさった作品かと思ったらかなりユーモラスでブラックで風刺が利いていた。全然知らなかったんだけど「カルミナ・ブラーナ」って歌詞がとても下世話で面白いのよね。英国王妃を抱きたい、とか酒とか色欲とかのことばっかり。昔の神学生はこんなことばっかり考えていたのか。大作というよりは、異色の作品で、面白いんだけど後世に残るものかどうかはちょっと判断が難しいところ。

冒頭は、あの印象的な合唱に乗せて、目隠しをしてハイヒールを穿き、黒のボディコンドレスに身を包んだ運命の女神フォルトゥナが登場。かっこいい。とてもシャープな動きで、あまりバレエっぽくないといえばそうかもしれない。しかしここでのつかみは重要。

第1部「春」神学生たちが例の白い襟をつけて踊る。ジュッテ、ジュッテとかなり素早い動きで迫力とインパクトがある。ただ、個人的に日本人なのに赤だの金髪に近い茶髪だのに染めているのはどうかなと思う。神学生1のバリノフ君、神学生3のイアン・マッケイはさておき。後で彼らが派手なアロハのような衣装に着替えて登場するのだけど、どう見てもヤンキー集団。一応神学生なんだからさ。

神学生1(グレゴリー・バリノフ)は純真で真面目そうな青年だけど、金髪の頭の悪そうな女の子(役名は恋する女、さいとう美帆。美人だね)を好きになって追い掛け回したり傾いたイスの上に乗ったりするけどあえなく振られて愕然とする。神学生2(吉本泰久)は色欲と信仰に引き裂かれて苦悩するが結局は色欲の方に引きずられ、目の前のロースト・スワン(焼かれた白鳥)に同情しつつも、豚のような男たちとともに食べてしまう。そして神学生3(イアン・マッケイ)は運命の女神を前に服を脱いでパンツ一丁にまでなって追い掛け回しパ・ド・ドゥを踊るけど、最後には審判が待っていた。娼婦たちと大騒ぎを繰り広げたものの、実は彼女たちはみな運命の女神のクローン人間だったのだ!デヴィット・ビントレー曰く彼らは皆地獄に落ちたとのこと。ひえ~。

おかっぱ頭の妊婦&不気味な赤ちゃんを背負った女、乳首と陰部が透けた黒シースルーレースのドレスの娼婦たち、前述のヤンキーのようなアロハシャツの若者たち、そして第3部「求愛」では一見全裸にも見えるような乳首や性器を描いたボディスーツ状の衣装を一同が身につけたりと、なかなかヘンな衣装のビジュアルセンスが楽しい。裸ボディスーツは、日本人で胸とか全然ないからかえってやらしい感じ。

中でもすごくブラックでビジュアルセンスが抜群なのは第2部「居酒屋にて」。七面鳥が出てくると思いきや、登場したのはロースト・スワン。真忠久美子がショーガールの扮装をして、白い大きなセンスを持ってお皿の上に乗っている。きれいなはずのあたしが焼かれて豚のような男たちに食べられようとしている。なんでこのあたしが、って感じでラストの表情は爆笑モノ(でも笑っている人は全然いなかったけど)男たちの扮装もホント豚のような醜いかぶりものしちゃっているし、食欲なのか性欲なのかローストスワンにがつがつとむしゃぶりついている。その中でおこぼれに預かろうとしている神学生2はやっぱり地獄に落ちるべきだよね。

ダンサーたちもよかった。特に神学生1,2、3は皆とても力の入った踊りでよく訓練されている感じがする。バリノフ君は普段から非常に安定しているので安心して見ていられるし、キャラクターがこの役にとても合っていた。吉本泰久は、今までは全然評価できないダンサーだったけど、一皮向けたようで、ピルエットの回数も多かったし、倒立するような難しい動きにも果敢に挑戦していた。イアン・マッケイはなんといってもルックスが抜群にいい。顔も可愛いし、体の線の美しさといったら、もう鼻血モノ。後半はずっとパンツ一丁で踊るのだけど(脱いだ服をきちんとたたんで持ちながら踊るところは非常に可笑しかった。きっと躾がいいんだね)、このギリシャ彫刻というかカルヴァン・クラインのアンダーウェアのモデルのような体を見せてくれるのだから眼福。実際彼のショーツはカルヴァン・クラインだったし。(そんなところまで見ているなって>自分)あ、もちろん踊りのほうもばっちりで、運命の女神とのカラミもよく合っていた。

運命の女神役のシルヴィア・ヒメネスは手脚が長くて、カリスマ性を感じさせるシャープなダンサー。かっこいい。難しいことをやっているのに難しさを感じさせないところがいいね。アンヘルやタマラ・ロホ、ヘススと同じヴィクトル・ウリャテバレエ学校の出身。ローストスワンの真忠久美子さんはそのびっくりした表情が可愛かった。体のラインも綺麗で、ショーガールにぴったり。

1部の男性群舞は迫力があったけど、途中のちょっとミュージカルっぽい振付でのヤンキー集団踊りはやや退屈だったし、コール・ドのレベルとしても今ひとつ、この作品の世界観が体現できていない感じがしたのは残念。髪の毛を染めたって、堕落した神学生には見えないのよ。娼婦たちの踊りも、いまいち娼婦っぽくなくて、体つきの貧弱な日本人のお姉ちゃんが踊っているって感じで、ここは今ひとつ。でも、クライマックス、運命の女神と彼女のクローンたちが独特の鋭い動きで踊るところには、ぞくぞくするほどの高揚感があった。男性ダンサーたちもハイヒールを穿いてボディコンスーツで踊る踊る。

高揚感といえば、音楽。カルミナ・ブラーナはなんといっても音楽そのものに圧倒的な力がある。狭いオーケストラピットに合唱団がずらりと座り、その前にソプラノとバリトンとカウンターテナーが鎮座。オーケストラの演奏に合唱、独唱が聴けるというのは本当に素晴らしいし、ソリストたちの歌のレベルも恐ろしく高い。バリトンの河野克典の声域の広さや声の使い分けには驚いた。オーケストラピットで歌っていると少し音がこもってしまってもったいない。演奏の方も及第点。ややもすればこの音楽の力にダンスが負けてしまいそうだけど、斬新な演出にダンサーの気合が加わって、いい勝負になっていたと思う。

余裕があればもう一回くらい観てみたかった。ぜひとも再演して欲しい作品。 踊りのほうもだけど、こうやって素晴らしい歌手による独唱、合唱、オーケストラが一緒になって作り上げられた芸術が、このお手ごろな価格で味わえるのは嬉しい。

追記:第一部として「ライモンダ」1幕の夢のシーンが上演された。厚木三杏の踊りはとても音楽的で、上品かつ綺麗だ。後半のヴァリエーションでの前アティチュードがちょっと雑だったのと、未見にしわを寄せてしまうこと以外は良かったと思う。彼女は手足が長くて顔が小さくとてもスタイルがいいから映える。デニス・マトヴィエンコも調子が良かったようで、トゥール・ザンレール・アン・トゥールナンも飛ばしていた。絵になる二人だが、厚木さんが誇り高い姫君には見える反面、ジャンへの思いというのが見えにくかったかもしれない。コール・ドも綺麗に揃っていたし、衣装もブルーが夢のシーンに合っていてとても素敵だった。ただ、「カルミナ・ブラーナ」の前座としてこの作品が良かったのかどうかはちょっと疑問。

Shevaさんの素晴らしいレポートはこちら

「カルミナ・ブラーナ」11月5日
佐藤美枝子(ソプラノ)、ブライアン・アサワ(カウンターテナー)、河野克典(バリトン)
運命の女神フォルトゥナ :  シルヴィア・ヒメネス
神学生1 : グリゴリー・バリノフ
神学生2 : 吉本泰久
神学生3 :  イアン・マッケイ
恋する女 : さいとう美帆
ローストスワン : 真忠久美子
http://www.nntt.jac.go.jp/season/s271/s271.html

2005/11/05

『ティム・バートンのコープスブライド』

成り上がりの富豪(魚屋)の息子ヴィクターは、没落した貴族の娘ヴィクトリアと結婚させられることになる。お互い一度も会ったことがないけど親の思惑で。ピアノを美しい音色で弾くヴィクターにヴィクトリアは好感を持つが、結婚式のリハーサルで緊張のあまりヴィクターは失敗を繰り返し式は延期に。結婚式の誓いの言葉の練習を夜の森で行っていたヴィクターは、間違って死体に永遠の愛を誓ってしまう!そしてその花嫁エイミーに、死後の世界に連れて行かれたのだが…

ヴィクターの声は言うまでもなくジョニー・デップがあてているのだけど、顔はというとエイドリアン・ブロディにそっくりなのはなぜなんだろう。ヴィクトリアはグウィネス・パルトロウ似?ジョニー・デップの神経症的な演技がナイス。

さて、ティム・バートンらしいなと思ったのは、地上の世界はモノクロームで陰鬱で主人公二人以外の人間はどいつもこいつもすごく嫌なヤツばかりなのに、地下の死後の世界はカラフルでポップで楽しそうだし、死人の皆さんもいい人たちばかりなのであること。ガイコツや首だけになった人たちによるミュージカルは楽しい。ヴィクターは地上に帰ることを望んで何回か逃亡を企てるけど、こっちの世界のほうが絶対にいいと思うんだよね。

コープス・ブライドであるエイミーは、親の反対を押し切って花嫁姿で駆け落ちしようとしたところ、結婚相手の裏切りにあって殺された可哀想な娘。果たせなかった幸せな結婚の夢を実現しようと必死に(もう死んでいるけど)なっているので、心優しいヴィクターは同情する。ヴィクターがピアノを弾いているところにエイミーが参加して、熱中するあまり手首が体から離れて弾きまくるところなんてちょっとせつない。モテるためには、ピアノが弾けないとね(w

地上に死者たちが結婚式のために上がってきて、そこで生きている人たちとの再会を果たすシーンはすごく素敵。ガイコツになっても、愛する人にはそれが誰だかわかるのよね。 この映画にはいっぱい愛がある。

ヴィクターもヴィクトリアもエイミーもみんなとってもいい人柄で、お互いの幸せを願っていて、彼らの優しさによって、とても素敵でちょっとうるうるしてしまう物語に仕上がった。

東京国際映画祭アジアの風『浮気雲』(邦題:『西瓜』

ツァイ・ミンリャン監督の新作。ツァイ・ミンリャンといえば、去年の映画祭で上映された『さらば、竜門客桟』が彼の作品としては珍しく日本で公開されていないのよね(補足=後に『落日』のタイトルで公開されました)。その年の台湾No.1ヒット作品らしいんだけど。まあ、たしかに延々とキン・フーの映画が上映されている映画館の一日を映しただけの映画だから日本ではきついかもしれないけど。そして、今回の作品、強烈に面白いんだけど別の意味で一般公開は難しいかも。

位置付け的には、前々作『ふたつの時、ふたりの時間』の続編ということのようだ。極端な水不足となり、人々は水の代わりにスイカの水分を頼りにしたり、トイレの水を利用したりと散々な苦労をしている。主人公のシャオカンと、パリから帰国したシアンチーが再会するが、なんとシャオカンはAV男優になっていた!すれ違いを繰り返す二人は果たして…

ツァイ・ミンリャンの作品といえばワンシーンワンカットだったり、極端に引いたカメラで映し出されることが多いわけなのだけど、今回は「Hole」同様、ミュージカルシーンがいくつか挿入されていてカラフルでポップな味わいがある。ミュージカルのぶっ飛び方は相当なもので、シャオカンが女装してスイカ柄の傘を持った軍団の中で歌い踊ったり、ペニス型の帽子をかぶってトイレで女性陣にどつかれながら踊ったり、謎の水棲生物に化けたり、怪しさ炸裂でとっても楽しい。「Hole」でも歌い踊っていたヤン・クイメイがここでも、艶姿を披露。さらにスイカを使ったギャグの数々。AV男優になったシャオカンのスイカプレイは、なんと頭にスイカの皮をかぶったりする面妖なもの。

この映画のクライマックスは、AV撮影のクライマックスシーンなのである。公開されるかもしれないので詳しくは言わないけど、こうきたか!って感じ。このシーンをぼかしなしでは日本では公開できないだろうけど、ある意味とても美しいシーンだしぼかしてしまってはまったく意味がないだろう。シアンチーはよくこのシーンを撮ることに同意したものだ、と感心した。非現実的なまでの巨乳の持ち主である日本人AV女優、夜桜すももの存在感もなかなかのものだった。

観る人を選ぶ作品だとは思うけど、面白かった!

2005/11/04

「空中庭園」

豊田利晃監督が覚醒剤で逮捕されたため、公開規模が小さくなってしまった気の毒な作品。でも、豊田監督の演出力がみなぎっていてすごく面白かった。

http://kuutyuu.com/

多摩ニュータウンを思わせる郊外の街の瀟洒な団地に住む絵里子と夫、高校生の娘と中学生の息子。家族の中では秘密を持たないのがこの家のルールで、一見、オープンで理想的な家族に見える。ところが…

豊田監督の作品というのは、いつも、社会にうまく折り合いがつけられない人間の激しいルサンチマンを感じさせる。一見幸せそうな家庭を営んでいる平凡な主婦絵里子が、貼り付いたような完璧な笑顔の裏で、憎しみ、トラウマ、満たされないものを、様々な闇を抱え、だけどそれをどこにも吐き出すことができない沸沸とした想いで爆発しそうになっている様子を、小泉今日子が恐ろしいほど易々と演じている。コンビニで立ち読みしていたところ、思いがけず娘に声をかけられ、振り向いた時の表情の凄みには思わず身震い。パート先を解雇された若い娘に金を無心された時の、フォークで彼女をめった刺しにすることを夢想したりする様子も凄いのだけど、一番怖いのは"完璧な笑顔"の彼女。小泉今日子は大した女優になったものだ。
キョンキョンのみならず、絵里子の母役の大楠道代、夫の板尾創路、娘の鈴木杏、夫の愛人の永作博美、ミーナのソニンと役者陣の充実振りには目を見張る。中でもやっぱり一番凄いのは、ただならぬ凄みを湛えた大楠道代。

普通の平凡な女性の中にも、こんな感情の渦巻きが、抑えに抑えた憎しみや傷、ダークサイドがあるなんて、ここまで描いた映画ってなかったのではないかと思う。原作はまだ読んでいないので、それが持つ力なのかもしれないけど。

(以下ネタバレにつき未見の方は読み飛ばしてください)

絵里子以外の家族は秘密を色々と抱えていた。夫は5年間妻を抱いていない代わりに長年の愛人と、若い娘ミーナの二人とお楽しみ。娘は学校をサボって、彼女が両親によって"仕込まれた"ラブホテル「野猿」にボーイフレンドや初対面の男を連れこんでいる。息子は夫の愛人であるはずのミーナを家庭教師にしている。そして入院中なのにヘビースモーカーで強烈な、殺しても死にそうにない絵里子の母さと子。

そんな一家が、ミーナとさと子の合同誕生パーティに集結!ここからのシチュエーション運びの巧みさといったら見事なものだ。家族の嘘が引っぺがされ、偽りの幸せ芝居がガラガラと崩れていくさまを観て、却って清清しさを感じてしまうなんて。例の元同僚からかかってきた電話に対して一言「死ね」って言い放つキョンキョン最高。
そして、一癖も二癖もある怪物的な母を演じる大楠道代との親子タイマン対決も、凄すぎてブラボーだ。

サバービア(郊外住宅地)が持つ独特の病んだ感じを、ぐるぐると浮遊するカメラで表現して、タイトル通りの"空中庭園"的な、不安定な幸福を象徴させている。酔ってしまいそうになるほどの(私はユーロスペースの最前列で観ていたから余計に)揺れる映像は、監督が覚醒剤中毒になっていたため、なんてことで片付けられないことを祈る。私自身は、こんなにカメラをぐるぐる揺らさなくても、執拗なほどの長廻しで十分に心象風景は描けているんじゃないかと思うのだが。

ラスト近く、帰ってこない家族を待ち続ける絵里子に降りかかるのは、文字通り血の雨。豊田監督らしい世界観がここでも発揮されている。やりたいと思っている演出家は多いと思うけど、実際コレをやってしまっているところが、らしさなんだと思う。血で真っ赤に染まった顔で傷ついた獣のように叫ぶ小泉今日子、凄惨だった。


「映画芸術」の豊田監督のインタビューはなかなか読み応えがあるので、良かったらぜひ。ただし一部ネタバレがあるので観てからのほうがいいだろう。

2005/11/03

東京国際映画祭「雨降る日の水彩画」

映画祭2本目は、「猟奇的な彼女」「ラブストーリー」「僕の彼女を紹介します」のクァク・ジェヨン監督の1作目。「猟奇的な彼女」の前の作品だからそんなに古くないだろうと思ったら、登場人物のメイクや髪型、服装が恐ろしく古臭くて(80年代くらいのものなのでちょっと恥ずかしい感じ)後で調べたら1989年の作品とのこと。

地方の有力者の下に引き取られ、神父になる勉強をしている孤児の主人公は、血のつながらない妹ジヘへの想いを抑えられないでいた。しかし厳格な父親に、二人が愛し合っていることがばれてしまい、彼は寄宿舎に入れられてしまう。同室の男が取り持つ縁で孤児院での幼馴染の女性に紹介されたことで厄介ごとに巻き込まれ、運命の糸はもつれ合うのだが…

一言で言えば「大映ドラマ」的な作品で、奇人としかいいようがない主人公のルームメイト以外には笑いの要素もない。数奇な運命に引き裂かれていく恋人たち=兄と妹のお話で、今観るには正直ちょっときついかな。 あくまでも資料的な価値で観る作品という気がした。
主人公の男は西島秀俊をたれ目にしてさらに不景気な感じにした顔で、ヒロインは山口智子をもっと美人にした感じかな。

でも、執拗なまでに登場する雨のモチーフ、父親役の俳優が「猟奇的な彼女」でチョン・ジヒョンの父親を演じた人だったり、ヒロインの役名ジヘは、「ラブストーリー」でソン・イェジンが演じた役と同じだったり。極めつけは丘の上のラストシーン。かなりドロドロとしたドラマがラストで清清しく浄化された感じで、後味は悪くなかった。

フランス行き手配ほぼ完了

12月のフランス行きの手続きがほぼ完了した。とはいっても完全にできたわけではないんだけど…

12月中旬にパリと南仏のビアリッツに行く予定。パリではマシュー・ボーンの「白鳥の湖」とパリ・オペラ座の「白鳥の湖」、ビアリッツではBallet Biarritzの「くるみ割人形」を観るつもり。

第一関門は飛行機。エールフランスは夜9時55分成田発、朝6時成田着という、会社を極力休まないでいけるフライトがあるのがありがたい。こちらはまだまだ座席にも余裕があった。だが、17日の夜にBallet Biarritzの公演があるのでBiarritz行きの飛行機を取らないといけないんだけど(TGVだと5時間かかる)、ド・ゴールからビアリッツまでが満席だった。なんだか冗談みたいに小さい飛行機である。パリ・ビアリッツ間ってたくさん便があると思っていたのに、直行便は意外と少ないのだ。でもまあなんとか、オルリー空港からの直行便が取れた。エールフランスのサイトは不安定で何回も接続が切れてしまって、予約するのに何時間もかかってしまった。しかも、ビアリッツ便というのはレアなせいか、飛行機代が結構高くついちゃったよ。
パリのホテルと、モガドール劇場のマシュー・ボーン公演は割と楽に取れた。問題は、マシュースワンのファンなら察しがつくかもしれないけど、私はジェイソン・パイパーのザ・スワンは観たいけどアラン・ヴィンセントのは勘弁なのである。なので、当日キャストが発表になってからチケットを取ろうかとも思ったのだけど、ただ良い席が残っていない可能性もあるし、と色々悩んだ。アラン見るんだったら、ちょうどこの時期パリ・オペラ座(ガルニエとバスティーユ両方で)の公演もあるのでそっちを観た方が百万倍いい。しかし、15日はバスティーユもガルニエも公演がないため、マシューのほうを取った。
ところで、16日はパリオペラ座の「白鳥の湖」はどんなものかな、と思ってサイトを見た。どうせ当日券でも大丈夫だろうと思っていたのだ。ニューヨークのメトロポリタンオペラ劇場でのABT公演なんて、ソールドアウトになることはほぼありえないので楽勝なのだ。ところが、サイトを見たら16日の表記がない。ソールドアウトなのだ。しかも、最近売り出し方法が変わって、インターネットで売れるだけ売ってしまって当日は戻り券と立見席しか売らないため、当日券を手に入れるのも至難の業らしい。まじで焦っているところなのだ。本当は3日ともマシューのスワンを観るということだってできたのに。チケットが売切れだと観たくなるのが人情。

ところで、BalletBiarritzのほうは、会場のサイトを見てもチケットの買い方が良くわからない。困り果てて、カンパニーにメールを出したところなんと30分くらいで返事が来て、日本の人がうちのカンパニーに関心を持ってくれて嬉しい。ついてはうちの方でチケットを用意する、というありがたいお知らせがあった。しかもチケット代は20ユーロという激安価格である。さらに、この席が、FNACでの残席状況では考えられないほどのど真ん中前方の良席だったので嬉しい♪
友達がBiarritzのホテルを取ってくれたんだけど、これがまた説明にGay Friendlyって書いてあるのがちょっと笑えた。

それにしても、ビアリッツなんてついこの間まできいたこともない地名だったのよね。そんなところに出かけるとは。イギリス王室御用達の高級リゾートでサーフィンのメッカでもあるらしいんだけど。

とりあえずパリ・オペラ座以外は手配完了。あとはオペラ座のサイトを毎日チェックするのと、電話予約に挑戦するのと、念のために宿泊先のホテルに取ってくれるか?というメールを出すということはやっておいたんだけど。大丈夫かな。まあ、本当に最悪の場合には当日券に並ぶしかないだろうな。

2005/11/01

東京バレエ団《M》

三島由紀夫好きだし聖セバスチャンを踊る大嶋正樹さんのファンだしというわけで楽しみにしていたわん。

三島の作品って結構たくさん読んでいたんけど、自分は三島のどこを知っていたのかってちょっと自問自答したところもあった。この部分はこの作品の引用、とか三島のこういう性向を取り入れた、と部分的にはわかるんだけど。そしてそれをすごく巧みに取り入れてアレンジしているというのもわかるんだけど、情報量がすごく多くて一度では消化し切れない感じ。本当はもう一度ちゃんと観た方がいいんだろうけど。ところどころ難解に思えたところがあった。

私は首藤康之が聖セバスチャンを演じた時の「M」を観ていないので、わりとまっさらな状態で観ることができたと思う。大嶋さんの聖セバスチャンは、体のラインといい、肉体の存在感といい、ストイックさといい、とてもよかったと思う。冒頭の矢を射られている姿はエロティックで美しかったし。(この姿って、下手したらすごく間抜けになってしまうのよ)欲を言えば倒錯的な色気が足りないのが惜しい。セバスチャンというのは三島の憧れの姿であり、同時に彼のコンプレックスの反映でもあるのだけど、そのあたりはちゃんと出ていたと思う。もう少し出番が多ければなあ。

三島を象徴する少年役に、天才少年ダンサーとして一部で有名な福士宙夢(スリム)くん。声を出したり、切腹するところまであってかなり難しい役だと思うけど、良く演じていた。
少年と並んで実質的な主役であるといってもいいのが、古川和則演じるⅣ(シー死)。最初老婆の姿で出てきたときはいかりや長介かと思ったけど(笑)これまた難しい役をよく演じたと思う。でも、演技に関してはもう少し頑張りましょう。初役で初日だったからだと思うけど硬かったし、迫力に少々欠ける部分も。踊りに関しては、文句なし。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲは東京バレエ団のプリンシパル男性陣の充実振りを見せてくれていると思うのだけど、中でも木村和夫さんが一番美しく踊れていて、良かったと思う。後藤晴雄さんも良くなってきているけど肝心なところで時々雑になっている気が。高岸さんはいつもの高岸さんで、安心してみていられる。

禁色のシーンの印象がひどく薄い。どうしても男性陣のほうに目が行ってしまって。致命的に危なさや妖しさに欠けるんだよね。う~む。鹿鳴館の円舞曲の7人は良かったと思う。体の線の美しさが際立つ衣装だ。なかでも平野玲さんがよかった。

女を演じた吉岡美佳さんは、迫力と妖艶さがあってよかったと思うし、海上の月の小出領子さんもやわらかい女らしさと包み込むような温かさがあった。

一番鮮烈だったのは、やはり切腹シーンと、それに続いて桜吹雪が舞い落ちるところ。美しいね。やっぱり日本人は桜だよ。桜吹雪の量が半端じゃなく多くてどかん!って落ちてきたって感じがしたけど。楯の会のメンバーが桜の枝を抱えて横移動する演出は効果的。
そのあとにシャンソンが流れるのはちょっと違和感を感じたけど。

桜というのは、三島のみならず、日本人の美意識の大きな部分を占めるものだと改めて思う。鈴木清順の『ツィゴイネルワイゼン』でも北野武の『DOLLS』でもそうだったし、『櫻の園』もそう。桜が散っていくところの儚さ、美しく散るという美学は、少年三島の切腹シーンと重ね合わされているというところで、ベジャール、ちゃんと日本人をわかっていると思った。

これを言うとベジャールファンに怒られると思うし、ここがベジャールのアイデンティティの部分なのだからどうしようもないんだけど、私はシャンソンが嫌いで、ベジャールの作品はシャンソンを使うことが多いのが気に入らないのだ。

最初と最後が海。「豊饒の海」だね。ベジャールはオリエンタリズムに逃げ込むことなく、ちゃんと三島をわかってこの作品を作っていると思う。

この作品、すごく東京バレエ団らしい(個性に合っている)作品なので、もっともっと上演回数を増やして、踊りこんでいったらすごくいいものになっていくと思う。もっと観たいもの。

少年:福士宙夢
Ⅰ-イチ:高岸直樹
Ⅱ-ニ:後藤晴雄
Ⅲ-サン:木村和夫
Ⅳ-シ(死):古川和則
聖セバスチャン:大嶋正樹
射手:野辺誠治
船乗り:中島周
女:吉岡美佳
海上の月:小出峰子
【禁色】
オレンジ:高木綾
ローズ:上野美香
ヴァイオレット:井脇幸江
【鹿鳴館】
円舞曲:高村順子,長谷川智佳子,西村真由美,高橋竜太,平野玲,辰巳一政,宮本祐宜
貴顕淑女:大島由賀子,坂井直子,矢島まい,村上華奈,野辺誠治,長瀬直義,横内国弘
ソファのカップル:大島由賀子,野辺誠治

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