東京フィルメックス「SPL<殺破狼>」
毎年、映画祭「東京フィルメックス」ではかなりの本数を観ているんだけど、今回は23日からバンコクに行くこともあって2本のみ。そして一本目は香港映画「SPL<殺破狼>」
ウィルソン・イップ監督、出演はいまやハリウッド・スターのサモ・ハンとドニー・イェン、そしてサイモン・ヤムだ。舞台挨拶がなく、代わりに冒頭、メッセージビデオが流れた。監督は若くてなかなかの甘いハンサムで一瞬俳優かと思った。ドニー・イェンは世界のアクションスターなので英語でメッセージだ。そしてサモ・ハンはなんだかちょっとふざけている。さすがデブゴン。
いわゆる香港ノワール系刑事モノである。サイモン・ヤムが脳腫瘍のため1週間後に退職を控えた刑事チャン、その後任がドニー・イェン。そしてサモ・ハン演じるポーはチャンの同僚刑事の家族を殺した憎き黒社会のボス(しかし子煩悩)である。潜入捜査官の部下を惨殺されたチャンはあらゆる手段をとってポーを逮捕しようとし、証拠まででっち上げようとしちゃうのだ。しかしチャンの部下は一人一人、ポーの手下により血祭りにあげられるのだった…
女性の登場人物は(ちょっとだけ登場するポーの妻と、チャンの幼い養女以外は)一切登場しない、アナクロなまでに男の世界である。サイモン・ヤムも、ドニー・イェンも、サモハンですらもやたらカッコよくセクシー。中でもサイモン・ヤムのスーツ姿はいつ観ても萌え~だ。ひたすら彼らをカッコよく映すことに注意を払った映画で、ついでに"父の日”というモチーフを使って泣かせようとしている。少しだけど登場する3人の部下たちのエピソードと 彼らの凄惨な死、そしてラストの海辺のシーンにはこみあげるものがある。
それと、この映画を観る人のほとんどが期待するだろう、サモ・ハンとドニー・イェンという新旧アクションスターのマーシャルアーツ合戦。これはすごい!あんなヤクザの組長でしかも小太りの初老のオッサンが、シャープでどこから見ても強そうなドニーと互角に張り合っているというのには感動した。ドニー・イェンはクールな持ち味を発揮していて相変わらずいかしている。そして残虐なナイフ使いの男とのアクションシーンも、死ぬほど痛そうだけど凄いね。 ドニー・イェンっていつも誰かに似ていると思うんだけど誰なんだろう。布袋寅泰?
新味はほとんどないアナクロさだし、ストーリーだってあってないようなものだけど、夜ばかりのダークな映像はスタイリッシュだし、非常にほろ苦い終わり方には不思議な余韻がある。マーシャルアーツは存分に楽しめてお腹いっぱい。香港アクション映画に求めるモノは揃っている。(来年春、新宿オスカー他にて公開)
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