ABT涙の追っかけ記(大阪編)
時制が前後して混乱しちゃうかもしれないけど。
びわ湖にマルセロ・ゴメスが出ないショックから立ち直れないまま、飛行機で行こうとしたら京急線で事故発生で15分の遅れ発生。果たして間に合うように着けるのか?羽田空港を猛ダッシュ。チェックイン機がマイレージカードをなかなか認識してくれなくて焦る。なんとか飛行機にギリギリで乗り込むことができて、伊丹空港で友達と合流し、大阪駅へ。ホテルは大阪フェスティバルホールの近くで(注意:隣接しているホテルではない)、歩けない距離ではないけど荷物もあるので地下鉄で行くことにする。しかし、大阪駅、梅田駅のわかりにくいことといったら。梅田の地下を、クソ暑い中何週もぐるぐると回ってしまった。大阪駅からホテルまでの距離よりも長い距離歩いたことは間違いない。
ようやくたどり着いたらちょうど3時だったが、ぼーっとしているうちに開演時間になってしまった。
1部
「テーマ&ヴァリエーション」(振付:ジョージ・バランシン)
出演:ミシェル・ワイルズ、デイヴィッド・ホールバーグ ほか
第2部
ソリストらによる小品とパ・ド・ドゥ
「ばらの精」(振付:ミハイル・フォーキン)
出演:エルマン・コルネホ、シオマラ・レイエス、
「海賊」のパ・ド・ドゥ(振付:マリウス・プティパ)
出演:パロマ・へレーラ、ホセ・カレーニョ
「ロミオ&ジュリエット」のパ・ド・ドゥ(振付:ケネス・マクミラン)
出演:ジュリー・ケント、アンヘル・コレーラ
第3部
「シンフォニエッタ」(振付:ジリ・キリアン)
出演:カルロス・ロペス、ヘスス・パストール、ダニー・ティドウェルほか
大阪公演はガラ。テーマとヴァリエーションはミシェル・ワイルズとデヴィッド・ホールバーグ。それにしてもミシェルはひどい。これでプリンシパルとはとても思えない。体が堅い。重たい。金髪美人でスタイルがいいからみんなごまかされているのか?特に背中の堅さは、何か入っているんじゃないかと思うほどだ。デヴィッドのほうが柔らかいんだもの。足音が大きい。完全にはアンドオールしていないため、足の甲が下を向いている。だめだ~。デヴィッドは東京では今ひとつ調子が良くなかったようだけど、この日は比較的良かったと思う。ほっそりとした美脚の持ち主の割には踊りに湿り気がある人ではあるが。
後半になって男性ダンサーが登場し、ようやく面白くなってくる。でもやっぱりバランシンをABTがやるのは無理がある。音譜と戯れるまでは至っていない。
コール・ドは一応それなりに踊れる人たちを選んで入れているようではあった(これだけ何回も観ると、さすがにコール・ドも半分以上顔と名前が一致するようになってしまう)
ロミジュリ。東京のガラでは、2階の見切れ席だったため、バルコニーが全部見えなかったという痛恨の事態があった演目だ。
やっぱりアンヘルとジュリーのバランスの悪さはちょっといかんともしがたい。が、(正面から見られたというのもあるけど)東京よりはぐっと良くなったと思う。アンヘルの高速回転も抑え目ではあるし、ジュリーもしっとりとした情感がある。(が、あと7~8年前の彼女でこの演目は見たかった。去年のMETは、幸いにも産休中でロミジュリには出演せず)
でもやっぱり、「ABT NOW」でのフリオ・ボッカとフェリのカップルには遠く及ばないし、去年のアンヘル・フェリや、シオマラ・マルセロのほうが胸に来るのよね。バルコニーのシーンで一番大切だと思っている高揚感と、この一瞬を精一杯駆け抜けていく感じが伝わってこないからだろうか?マクミラン・リフトを完璧に再現することの難しさを改めて感じる。
薔薇の精。たとえばルジマトフの薔薇の精はむんむんとむせ返るような色っぽくてかつマッチョな精で、イーゴリ・コールプは妙な色気のある物の怪って感じなのだ。少女の初めての舞踏会の余韻の中で登場するエルマンは、甘さを残しつつもすごく真っ当な感じの、性を超越しながらも少年ぽい妖精。一瞬も止まることのない振付の中で跳躍したり羽ばたいたり、非常に大変な踊りなのだが、6月の薔薇のように新鮮ながくわしさがあり優雅である。シオマラも実年齢33歳とは思えないくらい愛らしい。彼女は演技派だと常々思っている。やっぱり最大の難点は、窓がないこと。だって、最後に精が窓から飛び去っていくところが最大の見せ場じゃない!セットがないなら前の日に徹夜してでも作ったわよ。
海賊。ホセ様のアリはノーブルで気高い。本当は高貴な生まれなのがさらわれてしまって奴隷に身をやつしているけど、その精神性の高さが隠そうとしても隠し切れない。踊りも正確無比で、しっかりとした軸と安定感。自在にスピードを変えるピルエットは、余計な力が一切加わらなくてもすっと美しく回転している。自分の体を完璧にコントロールできているのだろう。甘さとストイックさの完璧なバランス。ところが、パロマ・ヘレーラが絶不調。足元はもつれているし、回転が得意なのにピルエットもシングルしかできていない。上半身もふらふらで、どこか体が悪いようにしか見えない。とても心配だ。
シンフォニエッタ。当初予定されていたマキシム・ベロセルコフスキーとマルセロ・ゴメスが欠場したことが非常に痛い。この二人の長身美脚ダンサーを欠いていることが、この作品の疾走感を減じてしまっている。脚の長い二人が、同じ高さでグランジュテをシメントリーに繰り返す高揚感が、見ていてとても気持ちよかったのに。しかも予定にあったジリアン・マーフィも出演していない。例によって11本のトランペットが出演するがやっぱり演奏はひどい。でも作品自体は、うまくいえないけど面白いのである。草原を駆け抜けていく感じ。ダニー・ティドウェルの踊りが突出していい。それなのに彼は今月いっぱいで退団だということであまりにももったいない。ヘススの柔らかい粘りのある動きは、キリアン作品には向いていると思う。ミスティ・コープランドは踊りそのものはいいのに、明らかに太りすぎなのが困ったものである。男性ダンサーが大変だな、と同情しちゃうから。
さて、大阪で一番困ったのは、喫煙者天国であること。なんと大阪フェスティバルホールは分煙されていないに等しく、区切られていない室内のスペースが喫煙所となっていて、ロビー全体がタバコ臭くてたまらない。喫煙所がお手洗いの出入り口の近くなので、お手洗いに行こうとするとタバコの煙をモロに浴びることになる。しかも中二階も全部喫煙フロア。東京のホールは喫煙所は屋外になっているというのに。タバコのにおいがあるとせっかくの公演も興ざめだ。
そして楽屋口!なんと建物の構造上、楽屋口が隣接しているホテルのロビーになっているのだが、バーゲンセールに群がるおばちゃんのごとくダンサーに群がっている恐ろしい様子を見て、早々に退散。キミたちダンサーだったら誰でもいいのか?
びわ湖編に続く。
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