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« ABTライモンダを観ようと思ったら地震。 | トップページ | ABT涙の追っかけ記(大阪編) »

2005/08/05

7月23日 ABTライモンダ

ライモンダ(ドリス伯爵の一人娘) : ジリアン・マーフィー
ジャン・ド・ブリエンヌ (ライモンダの恋人) : アンヘル・コレーラ
アブデラフマン (サラセン人の騎士キシ) : ヘスス・パストール
アンリエット (ライモンダの友人) : マリア・リチェット
クレマンス (ライモンダの友人) : エリカ・コルネホ
ベルナール (ライモンダの友人/吟遊詩人) : サッシャ・ラデッキー
ベランジェ (ライモンダの友人/吟遊詩人) : ゲンナジー・サヴェリエフ
シビル・ド・ドリス伯爵夫人 : ジョージナ・パーキンソン
白い貴婦人 (ドリス家の守護者シュゴシャ) : カルメン・コレーラ
家令 : カーク・ピーターソン
サラセンの踊り : ミスティー・コープランド
バック・コリンズ
スペインの踊り : クリスティー・ブーン
ダニー・ティドウェル
ハンガリーの踊り : マリア・ビストロヴァ
ジャレード・マシューズ

ようやく本題に。

ABTによる「ライモンダ」のプロダクションを見るのは初めて。セットが非常に豪華。パステルカラーで、まるでディズニー映画に出てくるおとぎの国のようだ。「ライモンダ」はジャン・ド・ブリエンヌが十字軍に出征するという設定から(注意:このプロダクションでは出征しない)、中世のお話のはずなのだが、時代考証はあってないようなものである。まずはライモンダのお友達クレマンスとアンリエット、吟遊詩人のベルナール&ベランジェらが舞台に。この4人に着いてはベスト・キャストといってもいいと思う。特に女性二人はABTでもプリンシパルになってもおかしくない実力の持ち主で可愛らしい。

そこへライモンダのジリアン・マーフィ、そして次にジャン・ド・ブリエンヌのアンヘル・コレーラが登場。この時点ではライモンダとジャンはまだ婚約者ではないって設定みたいだ。

つぎにアブデラーマン登場。今まで写真で見てきたアブデラーマンって長身のマルセロ・ゴメスのだったから、小柄なへススが着るとまるでマントが踊っているみたいだ。しかも真っ赤でなんだか半分ギャグみたい。ヘススは顔がエキゾチックなのでサラセンの騎士という役は似合っているけど、それにしても踊りにくそうである。アブデラーマンはやたら目がマジに愛を訴えていてなかなか暑苦しい。あんな風に見つめられたらドキドキするのは確かだ。が、ジャンもアンヘルなのでかなり暑苦しく、それに対してクールなジリアンなのであった。

高価そうな首飾りをアブデラーマンがプレゼントすると、ライモンダは「まあ~嬉しいわ♪」って表情を見せるが、母である伯爵夫人に「そんなに軽薄に物欲しそうな顔をしてはいけません」とたしなめられ、慌てて断る。あれ?次に、アブデラーマンが献上するのは子供二人。キャー人身売買。でもアブデラーマンは目がマジで、こんなにいい贈り物をあげるんだから、って感じ。ライモンダはそれぞれの男性と踊り、「どっちのオトコがいいのかしら?」とちょっと迷う。あれ?「ライモンダ」って婚約者が不在中にアブデラーマンが乗り込んできても心を奪われずジャンを思いつづけた貞女物語じゃなかったかしら?嵐のようにアブデラーマンは走り去って行く。インパクトは確かにあるキャラクターだ。

夢のシーンに移って行くときの場面転換が、これまたディズニーランドっぽくて、建物の書割が上に上がっていくとなぜか根っこが生えている。暗い空に紫色の花々の咲き乱れている紗幕は美しい。幻想的な照明、コール・ドの白い衣装もまさに夢の世界だ。家の守り神であるところの白の貴夫人の像が下に下がっていくと、生身の姿となった白の貴婦人が登場。白い長いベールをかぶっていてこれまた踊りにくそうだ。踊るはアンヘルの姉のカルメン。長身でスリムなのだが、白の貴婦人を踊るにはちょっと品がない踊りをする人である。ジャンにプレゼントされた白いヴェールを持ち、竪琴に合わせてのライモンダのソロ。う~んややヴェールの扱いが雑なのでは?ジリアンは可愛らしいんだけど。

ジャンの幻が現れてのPDDは、アダージオのみなのでアンヘルとジリアンという派手な回転得意な二人にしてはとても地味な感じ。貴婦人の後ろにジャンが去っていくと、今度現れたのは同じく白い衣装のアブデラーマン。こってりとねばっこい踊りを見せてくれる。でもヘススはリフトが苦手、かつジリアンが大柄なのでかなりてこずった感じがした。なんとかこなしたって感じで一安心(注:この後びわ湖公演でまさにこのシーン、ヘススはパロマを落っことしてしまう)白の貴婦人の像がまたするすると出現する。ちょっとこのあたり笑ってしまう。

2幕に再び現れたアブデラーマンは今度はオレンジ色の派手派手な衣装だ。視線でバチバチ火花を散らすがジャンは一緒にいたくないと退席。まず吟遊詩人二人のソロがあって(ゲンナディはかっこいいね。こんな役にはもったいない。翌日にはアブデラーマンを踊るんだけど)、それからアブデラーマンがサラセンの踊りとスペインの踊りを献上する。ふたつともやっぱり衣装が派手派手。サラセンのバックとミスティ、スペインのクリスティとダニー、二人とも良かった。ABTの人たちは群舞は苦手だけどこういうキャラクターダンスでは弾けていて魅力を発揮できるのだ。サラセンの踊りの時には子供たちも踊るけど、この子供たちもなかなか良く踊っている。次にジャンがハンガリーの踊りを献上。いわゆるチャルダッシュなので、そんなに見ていて面白いものではない。

そしてある意味クライマックス。アブデラーマンが愛を告白する。ソテやジュテを組み合わせたソロは、なかなかダイナミックかつヘススらしい柔らかさもあって色っぽかった。混乱するライモンダ。気持ちの揺れを象徴するように、シェネの高速回転、目にも止まらぬ速さでくるくるくるくる回る回る。いよいよジリアンの本領発揮って感じだ。アブデラーマンは半分拉致するような勢いでライモンダに選択を迫る。舞台の奥まで強引に連れて行き、ライモンダに寄りかかる。なかなかセクシーで熱情的なシーンだ。半分くらい、ライモンダの気持ちはアブデラーマンに傾いているって感じだ。だがジャンの姿を目にしたライモンダは拒絶し彼のもとへと走っていく。「なぜだ~」っと今度はアブデラーマンが混乱し取り乱す。ジャンに襲い掛かり、後ろからジャンの首を締め上げる。

家令が決闘を宣言し、ジャンは刀、そしてアブデラーマンは半月刀で戦う。チャンバラのところは正直なんだか迫力がない。決着は比較的すぐについてしまい、ジャンの剣がアブデラーマンの横腹を切り裂き、そしてとどめの一撃が下腹部に突き刺さる。けっこう残酷。倒れこんだアブデラーマンはじりじりとライモンダの方に這って熱いまなざしを彼女に向けたまま、がくんと絶命。ただただライモンダを一途に思い続けた結果がこれだ。(が、役としては派手で、演技力も発揮できるし、とてもおいしい)
恋人の思いがけず残忍な側面を見てしまったライモンダは走り去る。そりゃそうだろう、こんなことで殺されちゃったアブデラーマンはかわいそうとしかいいようがない。でも簡単に立ち直ってしまうところが、何にも考えていないって感じでいい。

次の場面ではすっかり気を取り直して、ライモンダとジャンの華やかな結婚式が執り行われる。グラン・パ・クラシックで、4組の男女X2(クレマンス&アンリエット、ベランジェ&ベルナールも入れて)の華やかなダンス。男性ダンサー4人がそれぞれ一人ずつトゥール・アンレール。キャスト表にはグラン・パ・クラシックのメンバーは載っていないが、金髪美青年&美脚のデヴィッド・ホールバーグがその中の一人として登場。ライモンダがまた例によってすごいスピードでダブルやトリプルを入れたピルエット&ピケターン。軸が正確で力強い。
8組のカップル&ジャンが一斉にリフトをしている様子は壮観だ。 ハンガリー風の、手を頭のところにやるポーズがなかなかカッコいい。

そしてガラ・コンサートでよく見る、手を打ち鳴らしながらのピアノ伴奏のライモンダのヴァリエーション。ジリアンのポアントワークは強くて正確だけど、去年の秋、新国立劇場での吉田都さんのあまりにも精緻で上品なヴァリエーションが頭にこびりついているので、ちょっと物足りない。上半身の柔らかさ、軽さが足りないのかもしれない。
ジャンのヴァリエーション。今まで、比較的抑え目に踊っていたアンヘルのスイッチがぱちっと入る音が聞こえた気がした。ジャンはコレまでは踊りに見るべき部分があまりなかったので、水を得た魚のように、親の敵でも取ったかのように踊りまくる、踊りまくる。二人とも高速ピルエットをギュインギュインと披露しまくり。最後は、家の守り神である白の貴婦人に一同、一礼。

やっぱりライモンダは結婚式のシーンの、無意味でイケイケな派手派手しさが盛り上がって楽しい。退屈な1幕を我慢し観続けた甲斐があるってわけだ。異教徒なら残酷な扱いをしてもいいとか、政治的に正しくない、中身のない(しかもライモンダは結構尻軽なマテリアル・ガール)作品だけど、とりあえず華やかだもんね。

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コメント

楽しい解説ありがとーございました!

プリントアウトしてプログラムと一緒に保存します!

それにしても同じものを見た人とは思えないほど(もちろん知識が雲泥の差だけど)よく、刻銘に覚えていらっしゃいますよねー
頭のできも違うんだきっと。。

すっかり忘れちゃってたこととかあーそっだったーなんて思い出して、とても楽しかったです。ありがとう!

そうかライモンダはマテリアル・ガールなのね。なんかジリアン、マドンナに似てたかも。。

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