6/20ベルリン国立バレエ「ラ・バヤデール」
ソロル:アルテム・シュピレスフキー
ニキヤ:ポリーナ・セミオノワ
ガムザッティ:ヴィアラ・ナチェーワ
托鉢僧:ライナー・クレンシュテッター
マラーホフって「ジゼル」「白鳥」などを観る限りかなり濃くてロマンティックな愛の世界を描く人だという印象があったので期待していたんだが、意外にも演出もアッサリしていて、女の戦いもさらりとしているし、あっけなくニキヤが死んだり(毒蛇が紐のようで、話の筋を知らない人には蛇だってわからないと思う)、あっさり寺院が崩壊したりサクサク進んでいった。私はロイヤルの濃ゆいダウエル様の大僧正が好きなのでやや物足りなかった。
全体的にドラマティックさに欠けているような。
寺院崩壊の時も、ダンサーたちがセットを引っ張っていったりするのがもろにわかっちゃうし。スペクタクルだと宣伝していたわりにはちょっといまひとつだったかもしれない。人々が押しつぶされて死んでいったかどうかもわからないし。ラストはなかなか良かったけど。
セットも、センスはいいと思うんだけどちょっとがらんとした感じで、シンプルかつ渋くて、地味。衣装にしてもそう。シックなんだけど色味がかなり地味で、主役二人がなかなか引き立ちにくいと思った。東洋のエキゾチズムを出すには、ちょっと悪趣味くらいが好みだけど、このあたりはマラーホフのこだわりなのだろう。
ソロルからニキヤへの贈り物だった白いスカーフの使い方はうまかったと思う。スカーフ、そしてガムザッティの手が血で真っ赤に染まっていくところは、マクベス夫人を思わせてドラマティック。
男性群舞がたくさんあったのはうれしかった。男性陣はさすがにいい男揃いで(結局それかよ(笑))力強い。托鉢僧のライナー・クレンシュテッターもグランプリエがとても深くて動きがキビキビとしており、綺麗。
しかし、影の王国のコール・ドはちょっとこれはないよ、と思った。(こけそうになった人もいるしふらふらしているし、揃っている以前の問題)この演目はこの場面が最大の見せ場の一つなんだから。
アルテム君は、とにかく美しかった。テクニックもあって、背中も柔らかいし、足音もマラーホフ直伝なのかあんなに体が大きいし高く飛んでいるのに全然しないし。素敵。長身で肉体派なのに、男っぽいというよりはアンドロギュヌス的で妖しい美しさで、登場した瞬間に悲劇的な結末まで想像させてしまう。勇壮な戦士にはちょっと見えないが。
もちろんマラーホフの愛にあふれた演技まで到達するには先は長いって感じ。二人の女の間で迷っている様子もわかりにくい。結婚式のシーンでガムザッティを嫌がっているのは良くわかるけど。
ポリーナは非常に綺麗に踊っていた。上半身が素晴らしく柔らかい。清楚で、ニキヤの儚さや哀しさが良く伝わってきていて、良かったと思う。ガムザッティ役のヴィアラ・ナチェーワはなかなか演技が濃くて色っぽく、回転系が得意。踊りもキビキビとしていてうまかったが、ちょっと年食っていたかな。ブロンズ・アイドルは端正だったけどもう少し頑張りましょう。
でも美しいアルテム君を堪能できたので、元は取れたって感じかな。
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