白いトリ再び
神戸での3回の舞台は泣きっぱなしで大変だったけど、ここではあまり泣かなかった。大好きなジェイクリコンビでも、王子の死のところで涙を流したくらいで。
というのも、一つには観客の質の違いというのがある。2年前にここで観た時も感じたのだけど、ここの観客はものすごく一つ一つのことに反応する。おかしい時には激しく笑うし、たとえば執事が銃を取り出して撃った時にはびくってびっくりする。4羽小白鳥の踊りや、スペインの踊りでダンサーたちがヘンな顔をして踊るところはみんなどっかんどっかん笑っている。するとこちらもつられて必然的に笑っちゃって、そうすると、笑いを取る細かい芝居に目が行ってしまったりして。しみじみと感動するという見方がしにくいところだ、と思ってしまった。多分踊る側にしてみれば、反応が大きくて嬉しいんだろうけど。舞台の内容は良いのに、泣けない。
舞台が非常に狭い。 ホセは体が大きいこともあってか、4幕の一羽ずつ登場するシーンで飛び出すコーディやアダム(1番スワンの位置)にぶつかられていた。ダンサーもみんな、ここは踊りにくいって言っていた。
が、観客のノリのよさに引っ張られてか、白鳥たちは元気いっぱいに踊っていた。2幕の4羽の大きな白鳥の踊りのパワフルさには圧倒される。サイモン・ウィリアムズが一度も出なかったのは残念だったが、ピーター・ファーネスの大きな白鳥のダイナミックでパワフルな動きには釘付け。彼のビッグスワンを4回見られたのはすごくよかった。大クリスも大スワンを踊らなかったのが少し物足りなかったけど、その分ピーターに集中できた。4羽の小さな白鳥の踊りでは、アダム、ベン、ショーン&コーディというコーディ以外極悪小白鳥組が飛び跳ねる。特にベンの動きがとてもいい。
そしてなんといっても、3幕の通称“ウェストサイドストーリー”こと男女対抗ダンス合戦のノリの良さといったら。日本公演でも東京の楽や神戸では、群舞のところで男性陣のHey!というかけ声が聞けるようになったけど、ここでのうぉーって咆哮のようなかけ声はすごかった。本当に楽しそう。
勢いという意味では、4幕の白鳥たちがザ・スワンに襲い掛かるところの迫力と攻撃性もより一層増した気がする。特にザ・スワンの羽根をむしり噛み付き頭突きを食らわすピーターさん、すごいよ。公演回数を相当重ねてきたからか、このあたりのアンサンブルの一体感はすごい。ベッドに大勢乗っかった白鳥たちとザ・スワンが対面するところのユニゾンの動きはまさしく鳥肌もの。
ピーター&カースティの過激イタリアコンビも3回登場して、本当にピーターファンには満足度が高かった。この最高に笑えるイタリアはもちろんここでもとても受けていた。エリザベスのイタリアや、ヴィッキーのドイツ、そしてトレイシーのガールフレンドなど女性陣のキャストはかなりシャッフルされていたけど、やっぱりカースティ&ピーターのイタリアコンビは最強。ピーターのユーモラスな演技と、カースティのキュートなセクシーさ。ピシャっとキマる顔面平手打ち。
アクシデントもいろいろあった。
前述の4幕ホセに小白鳥衝突。2幕冒頭、ニール王子が入水自殺しようと遺書を書いている最中に、ホセが早く出すぎて、飛び込もうとする前にザ・スワンがいるものだから自殺未遂できない王子。一瞬素に戻って驚いているニールと、何事もなかったかのように悠然と翼を広げるホセ。ホセらしいわ。
3幕の女王とザ・ストレンジャーの黒鳥PDD。ここで女王が黒い手袋を脱ぎ捨てて投げ、白い腕を露にしてセクシーな踊りをストレンジャーと踊るわけだが、イザベル女王の投げた手袋が高く飛びすぎて、柱の途中に引っかかってしまい、白い柱に黒い手袋が引っかかったままの状態で踊りとドラマが繰り広げられるのはちょっとだけ間抜けだった。
1幕のコーギー(わんこですな)散歩シーンが2回なくてはならないのに、散歩係のショーンが2度目に出てこなかったことがあった。そのため、ガールフレンドとコーギーとのからみもなくてちょっと寂しかった。
女王はニコラ・トラナが帰国してしまったのでキャンディスとイザベルの二人体制。キャンディスはいつもはハンガリーの王女を演じている長身の絶世の美女。若くて恐ろしいほど美しくてちょっと冷たい感じの女王だ。多分身長が180cmくらいあるので、ホセニールのデカコンビの時にしか出演できないのだろう。一方、イザベルの方は背はあまり高くなくて、ちょっと重そうである。もちろん太っているわけではないんだけど、ホセもジェイソンもリフトするのに苦労していた。
肝心のジェイソン&クリス、ホセ&ニールについてはまた日を改めて。
« 5/3 白鳥の湖神戸公演その4 | トップページ | 「白鳥の湖」韓国公演キャスト一覧 »
「マシュー・ボーン」カテゴリの記事
- マシュー・ボーンin シネマ「赤い靴」2月11日劇場公開(2021.02.11)
- 2月6日マシュー・ボーン出演『赤い靴』オンライントークイベント開催(2021.02.03)
- 『マシュー・ボーン IN CINEMA/ロミオとジュリエット』6月5日より公開(2020.06.05)
- 【公演中止】マシュー・ボーンの『赤い靴』日本公演決定(2019.12.12)
- マシュー・ボーンの「白鳥の湖」新演出版、2019年7月に来日(2018.10.04)
なおみさん。こんにちは。
あれ?っと思いつつ読み進んだら・・・
韓国行ってたのですね~さすがです!
自殺未遂が未遂とは!(笑)
平然とするホセと、とまどうニール。
想像するだけでも、楽しめましたよ。
続きも楽しみにしています(//∇//)
投稿: みぎじょ | 2005/05/20 14:16
みぎじょさん、こんにちは。
そう、こっそり海を渡っていたんです。冬ソナツアーの皆様に混じって。
土曜マチネでいきなり自殺未遂未遂なのにはひっくり返ってしまいました。
ホセってやっぱり天然ですね。そこが好きなんですが。すごく自由で優雅なところが。ニールも一瞬素に帰ったものの、ちゃんとその後は白いトリに遭ってびっくり~な演技を見せてくれていましたよ。さすが演技派。
投稿: なおみ | 2005/05/21 13:21
なおみさん、こんばんは。
ちょっとご無沙汰しています。
久しぶりに覗かせていただいたら、何と内緒で(?)韓国に行かれてたとは〜!
韓国のお客様はノリが良いので、ダンサーの皆も色々とやり甲斐があるかもしれませんね〜。
で、いきなり自殺未遂未遂…それはないでしょ、って感じですが。笑えます。
舞台の奥(ホセ側)から、素でびっくりするニールの顔が見てみたかったわ。
通算3回しか見る事ができなかったニール王子ですが、あの凄まじい演技が
目に焼き付いています。
どうも私は濃い演技が好きみたい…なので、今回の3王子は私的には、
全員合格(笑)
投稿: く〜てん | 2005/05/22 00:29
く~てんさん、こんばんは。
神戸ではどうもでした~。
やっぱり今回の白鳥にはまってしまった理由の一つは、王子の素晴らしさだと思うんです。クリスも首藤さんもニールも、それぞれに「王子の物語」というものを背負っていて、演技も踊りもレベルが高く、本当に素敵でした。
ニールの壊れ演技も色々といわれてはいるようですが、私は好きですよ。
最初からこの人はチョットやばい…というのをあの端正なお姿で表現できるのはすごいと思います。東京後半はチョット不調でしたが、神戸と韓国で完全に取り戻しましたね。
ホント、今回のメンバーでまた日本公演をやって欲しいものですが、それは叶わぬ夢ですね。
投稿: なおみ | 2005/05/22 02:36
あ、韓国にいらしてたんですね。
もしかして、19日のジェイソンの白鳥の後、12時近くになって楽屋からジェイソンと一緒に出て来た日本の女性というのもなおみさんのことですか。こちらのファンサイトに書いてありましたよ。
こちらでもすごい人気で、チケット全然ないですよね。一回見た人がまた何回も見ているし、口コミっていうのはやはりすごいですね。
月曜(23日)の夜に出演者が集まるパーティーがあるんだそうです。スタッフの誰かの誕生パーティーを兼ねたカジュアルなパーティーだそうで、ファンなら誰でも来てもいいということですが、あいにく私はものすごい風邪でずっと寝込んでて、行くことが出来ません。
もうジェイソンの白鳥を見ることは出来ないんでしょうね。でも、次またどんな素敵な白鳥が現れるか、それも楽しみです。
投稿: HESS | 2005/05/22 16:14
HESSさん、こんにちは。
19日には私は日本には帰っていたので、その人は私じゃないですね。ジェイソンのファンも本当にたくさんいるようですからね。
お風邪は大丈夫ですか?日本でも天候が不安定で風邪を引いている人がたくさんいます。ファンパーティは残念ながら中止になってしまったんですね。
そしてもう今回は観られないのはとても悲しいことですが、またきっとマシューは新しい、素晴らしい鳥を連れてきてくれると思います。本当に彼の才能を見分ける目は凄い。
韓国のお客さんは日本の観客より情熱的で反応も良いから、多分ダンサーの皆さんも楽しく踊っているんじゃないかと思います。
また今度のスワンでお会いしましょう!
投稿: なおみ | 2005/05/24 02:13