5/3「白鳥の湖」神戸公演マチネその2
3幕。今回は舞踏会の出席者を演じるダンサーたちのキャストが大幅にシャッフルされていた。いつもはドイツの王女を演じている長身のエリザベス・ミシュラーがエッチなイタリアの王女。(エリザベスはスタイルが良くて美人なのだが、イタリアの王女の時のメイクはちょっとおかまっぽい)。メリアムが怪我をしているらしく、蛾の精とフランス王女はピア。
クリス王子は母のことが大好きなので、母と一緒に踊れるのも嬉しくて仕方ない。でも、ここでも母親にダメ出しをされる。さらに、先日彼を裏切ったガールフレンドが招待されてもいないのに、図々しく出席している。ニール王子だったら「ぼくに近寄るんじゃない、クソ女」って感じなのだが、クリスだと「どうしてぼくにあんなにひどいことをしたのにここに来ているの?」と悲しげに怒っている感じだ。そして王子は、思わずザ・スワンの姿を来客の中に探してしまう。そんなところへ、ザ・ストレンジャー登場。彼の姿を見つけて、雷に打たれたようなショックを王子は受ける。彼から目を離すことができない。しかし、姿かたちはザ・スワンに似ているものの、このザ・ストレンジャーは天使の姿をした悪魔であり、魅惑的な笑いを浮かべながら、あけすけなエロスでその場にいる者全員を誘惑していく。心乱される王子。しかも母親はまた例によって男癖の悪さを発揮し、フランスのエスコート(これがまた、詰襟の高校生みたいな若いドミニク・ノース君が演じているのだから余計やらしーって感じ)とともに奥の部屋へと消えていく。母が若い男喰いまくりなのはもちろん前からわかっていたことなんだろうけど、ナイーブな王子はそのたびに深く傷つく。
そしてなんとこの日、憤然としたクリス王子は母親に対抗すべく、フランスの王女の手を取って奥へと消えた。まさかそんなことをするとは…。
この日のジェイソンは体調が悪そうで、特に3幕ではいつもの軽やかで邪悪な笑いを浮かべつつキビキビとした動きが見られない。スペインの踊りの時には、いつもはジェイソンのストレンジャーが茶々を入れたり、投げキッスを投げたりするのが楽しいのだが、舞台袖に姿を消してしまっていた。
ただし、チャルダッシュの時のガールフレンドとの踊りはとてもよかった。このシーンでは、ガールフレンド役のソフィア・ハードリーの演技力が際立っている。ガールフレンドは本当は王子のことが好きで、お金のために彼を騙してしまって本当に申し訳なく思っている。なんとかして仲直りをしたい。でも、王子は彼女のそんな気持ちを受け容れてくれない。ストレンジャーに無理やり引きずられて踊らされ、意に反して王子の目の前で誘惑されキスされる。王子に向けて「助けて」と手を伸ばしてもそれは届かない。心は王子の方を向いているのに体は裏切っているのが見えるのが悲しい。
王子の方はと言うと、ガールフレンドのそんな気持ちなどまったく気がつかずに、ただただストレンジャーへ目が釘付けになっている。ガールフレンドを弄ぶストレンジャーは、そのことによって同時に王子の心も踏みにじっているのだ。王子は「どうしてこんなことをぼくにするの?あなたはあの時の白鳥だよね。それなのにどうして?」とその大きな瞳で泣きそうな表情を浮かべている。
(つづく)
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