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2005年4月

2005/04/30

定期券盗難&ベルギー象徴派展

新宿なんか大嫌いだ。
落としたというのは正確じゃなくて、券売機で、JRに接続する切符を買おうと思って定期券を入れて切符を買って、定期券を一瞬取り忘れたらどうやら盗まれたらしい。
もともと嫌いな街だったけど、これからも避けて生きていこう。
駅も渋谷より全然混雑しているし人のガラも悪くて、近寄りたくないような人ばかり。駅員も凄く対応が悪い。
まだ憔悴していて、集中力が著しく落ちているみたい。 貧乏に拍車がかかっちゃう。まだ2か月分も残っていたのに。

本当はまた白鳥のレビューの続きを書こうと思っていたけど、落ち込んでしまって。また今夜にでも。

朝は池尻のヘアサロンに行って、乗り換え地の渋谷で降りBunkamuraザ・ミュージアムで「ベルギー象徴派展」。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/event/belgium/sakuhin.html大好きなクノップフが観られるということで楽しみにしていたのだが、水曜日に白鳥さんたちとお別れをしてきたばかりなので、ブンカムラに足を踏み入れるのはかなりつらかった。あたりまえだけどもう垂れ幕も写真パネルもないし、ショップにもグッズは売っていない。

展覧会の方は面白かったんだけど、クノップフの絵が意外と少なかったのは残念。フェリシアン・ロップスのエッチングが凄く悪魔的で怖くてよかった。http://www.ciger.be/rops/
「好奇心の強い女」とか「生贄」とか悪い女性がいっぱい登場する。
あとはジャン・デルヴィルの美しく幻想的な「死せるオルフェウス」を見られたのは良かった。

渋谷を歩いていて、セガフレード・ザネッティとかドン・キホーテの前とか、白鳥さんたちをよく見かけた場所で思わず「どこ?」っと4幕のクリス王子状態で探してしまうけど、いるわけないし。

夜はテアトル新宿で園子温監督の「夢の中へ」の試写会のお手伝い。大盛況。そして定期券を新宿駅で紛失したわけだ。終電も逃がして遠くの駅からとぼとぼ帰る。

2005/04/28

「白鳥の湖」も東京公演終わり(4月27日)

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今日は会社を休み(今の仕事を始めてから休みを取るのは初めて)「白鳥の湖」楽のマチネとソワレへ。

昨日からちょっと目が痛いと思っていたんだけど、(11時ごろ)起きたら右目がすごく腫れている。ものもらいができていた。こんなひどい顔では人前に出られない。電子レンジで蒸しタオルを作ってあてておく。ものもらいには愛メイクはご法度なのに、目の腫れをカバーするためにひときわアイラインとマスカラに気合を入れる。渋谷のマツキヨで目薬を買い、ブックファーストでダンスマガジンを買う。(が、このダンマガ、勢いで某ダンサーにあげてしまった。高い雑誌なのに)予告ではスワンは第二特集だったのに、蓋を開けてみれば4ページしか使っていなくて、しかも首藤メイン。愛しのクリちゃんの写真は一枚のみ、しかも横を向いていて全然顔がわからない。5人の主役の中で一番気の毒な扱い(涙)

さて、舞台の方はまた落ち着いたらゆっくり内容を書くとして、言うまでもなく素晴らしかった。マチネは自分の半身が引き裂かれるがごとく悲痛な演技をしていた4幕のジェイソン。静かな情熱と繊細さに拍車のかかった首藤康之。ソワレは、しびれるほどカッコよくて淫靡なストレンジャーを見せてくれたホセ。今まででも一番の壊れっぷりで、彼らしい王子を熱演したニール(ホセの唇に思いっきりキスをしていたよ…)。ラスト、スワンが死んだ後のニールの叫び声、耳について離れない。やっぱり東京公演は最後ということで色んな感慨が起きて、ものもらいで腫れてしまった顔がさらにひどいことになってしまうほど泣いた。さすがのファイバーウィッグのマスカラも落ちてしまって。知り合いもたくさん来ていたんだけど、みんなに「こんなに憔悴しちゃって大丈夫?」って言われてしまったほど。ああ、みっともない。

あとは、3幕のイタリアンエスコートのピーターさん(イタリア王女のエッチさ加減にキレてコミカルな大暴れ)の演技があまりにも可笑しくて大笑い。

カーテンコールでは金色のテープと白鳥の羽根が舞った。ひしと抱き合うホセとニール。そして終演後、白鳥のぬいぐるみ(大)を買う。抱きごこちがとてもいい。友達に「抱かせて欲しい」と言われて、このスワンぬいぐるみは色んな人に抱かれていた。思わず帰宅する時も抱いて帰る。(傍から見ると、すごくアブナイ人のようだ)残念ながらうちはダブルベッドなのでさすがにベッドには持ち込めない。

言葉にできない。(4月26日)

「白鳥の湖」も明日で終わり。今日も観に行って来た。凄かった。クリスもジェイソンも演技が素晴らしかった。3幕のタンゴ、チャルダッシュの緊張感と駆け引き、4幕の王子とザ・スワンの間に流れる感情、スワンと王子の死。クリスの驚くべき柔らかく情念を感じさせる身体と激しい感情表現。このあたりのことを言葉にしようと思ってもたやすいことではない。でも、言葉にしないと、指と指の間をすり抜けていってしまうような、そんなとても儚く透明な感情を味わった。

泣いても笑っても東京は後一日。でも人生はその後も続いていくんだよね。

素晴らしいものを見て感動に震えると同時に、かなり鬱も入ってしまっている。周囲に自分の価値が認められていないんじゃないか、好かれていないんじゃないかという王子の気持ちが、痛いほどわかってしまって胸にきてしまう。生きにくい、という感覚。自分の中の地獄というのは自分が作り上げてしまうものなのだ、ということはこの作品の中でも描かれているけれども、些細な周囲の反応とかに対して過敏になっているんだろうな、自分。友達とは何か、とか色んなことを考えちゃった。

2005/04/25

4/24「白鳥の湖」マチネとソワレ。

マチネはジェイソン・パイパーのザ・スワンと首藤康之の王子。ソワレはホセ・ティラードのザ・スワンとクリストファー・マーニーの王子。

すっかりエネルギーを使い切ってしまったのでとりあえずは簡単に。
マチネも素晴らしかったけど、ソワレのホセ&クリスがあまりにも凄かったので、印象が吹き飛んでしまった。マチネとソワレを一日で見るのももったいなくて、考え物かもしれない。

それにしても、今まで20回くらい観たけど(もう恐ろしくて数える気にもならなくなっている)今日ほど舞台が素晴らしくて泣いた日はなかったかもしれない。どれくらい泣いたかって、終演後会場のお手洗いに入って、声を上げて泣いてしまったくらい。自分がスワンメイクになってしまうんじゃないかと思ったほど。(ファイバーウィッグのマスカラは泣いてもパンダ目にならなくて優れものだわ)4幕でクリス王子泣きすぎでメイクが流れまくりだった。

クリスが踊りが上手で演技も非常にエモーショナルで素晴らしいことはもちろんわかっていた。でも、今日の彼には神が降臨していたよ。スワンクバーを追い出された後のソロの美しさはいうまでもなかった。ぐにゃぐにゃに体が動いていて、王子の地を這う感じがすごく良く出ているのに、綺麗なのだ。そして2幕。ホセがどんどん調子を上げて大きく雄雄しく美しかったのだが、ザ・スワンと王子の踊りがシンクロするところ、二人とも柔らかくクラシックなダンサーであるため、気持ちいいほど合っていて調和が取れた美を感じた。大柄なホセを小さなクリスが軽々と持ち上げている。そしてコーダ!一瞬目の前で何が起こったか理解できないほどの、驚異的なえびぞりジャンプを見せてくれた。2年前にへススがザ・スワンを演じた時の跳躍を思い出したけど、彼よりも柔らかくて、足先が頭の上まで上がっていて、凄かった。思わず息を呑んだ。

3幕はホセのストレンジャーが恐ろしくカッコよかった。ロシアの踊りのスピード感とピルエットの正確な美しさ。女王とのパ・ド・ドゥのソテ(姿勢を変えない跳躍)が大きくてダイナミック。女王のスカートの中にまで手を入れるエロさ。今までは寡黙な色男って感じだったのが、前よりも凄く悪~い感じで素敵だった。王子とストレンジャーのタンゴのゾクゾクするような官能性と残酷さ、その中にかいま見える優しさ。かっこええ。ホセのストレンジャーは、鞭を振るう音、革パンツを叩く音がバシッと決まっているのもスタイリッシュでいいな。

4幕はなんといってもクリスの演技!もちろん今までも素晴らしかったけど、今日は本当に特別だった。どうしてこんなに切ないんだろう。彼が声を上げて叫んでいるのが聞こえた。これほどまでに絶望的に誰かを求める気持ちを舞台上で感じたことがあっただろうか。4幕の最初のシーンの王子の「ママ、お願い、助けて」という悲しいまでに母親の愛を求める気持ちが心に突き刺さる。看護婦たちによってたかられてロボトミー手術をされてしまう時の苦しみ方。ザ・スワンへと必死に伸ばした手。全身を震わせた、あまりにも激しい慟哭。残された力、感情のすべてを使い切って、愛を叫んでいた。「ザ・スワンが欲しい」と体中で求めていた。ふっと命を終えた瞬間、視界が涙で曇った。

あと、特筆すべきなのは、いつものギャヴくんと違って、幼年王子がデヴィッド・リース、木こりがドミニク・ノースだったこと。デヴィッドの王子は、冒頭のうなされるところのうなされ具合が激しい上、白鳥のぬいぐるみをちぎれるんじゃないかと思うくらい抱きしめていた。すらりと長身なところへ、おどおどと体を窮屈そうに丸めている。(でも、成人後のクリスより背が高い)。ドミニクの木こりはすごく端正で、脚がすらりとして美しく、コーダのグランフェッテが綺麗だった。デヴィッドはスワンズやスクールボーイ、スペインのエスコートなど、ギャヴ君並の働きだった。

あああああ、あと東京も3回だ。もう死にそう。とりあえず私の今回のナンバーワンはジェイソンを抜いて、クリスだな。舞台を降りたクリスも見たけど、鬼可愛い…。

ああ、自分がおばさんであることを認めたくないけど(気分は「あたしはまだまだイケているわ」のオクサーナ女王)おばちゃんになってきてしまった。クリスと10歳くらい年が離れているだもん。

2005/04/24

白鳥な日々も後わずか。

東京では最後の週末なのよね。なのに、私は今日のソワレのチケットを持っていない…一番好きなジェイクリコンビの日なのに(号泣)。クリス王子は明日のソワレで観られるからいいけど、素晴らしすぎるジェイクリコンビにもう二度とあえなかったらどうしょう。

こう考えること自体が病気の証拠である。とりあえず26日ソワレのチケットを買い足した。

観たのはホセ・スワンとニール王子のマチネ。感想はまたのちほど。
4幕でニールのパジャマのズボンがずり落ち、肌色パンツが見えていた。3幕の女王とストレンジャーに割って入った後、王子がストレンジャーに思いっきりキスをしたのに驚いた。ホセが3幕の女王テーブル回しのところで一回目失敗。カーテンコールの時に小さく照れくさそうに手を振るホセが可愛かった。
2幕のPDDでちょっとぐらっときた以外は、ホセは調子が良くて、相変わらずジュテが惚れ惚れするほど高くて綺麗だ。3幕の女王とのPDDでのソテも高くてカッコいい。(このPDDはジェイソンより断然ホセのほうがいいね)オーケストラが入っているのにブチュッと音が聞こえるキスを女王の首筋にしていたホセ、素敵だわ。


さて、17日の感想最終回。
満身創痍のザ・スワンが這い出て後ろ向きになってから王子の方を振り返って見つめる、その時の慈しみと悲しみの混じった視線。これを見るともうたまらない気持ちになる。ズタボロにされたけど君を助けるために、帰ってきたよと潤んだ瞳で訴えかけている。ザ・スワンの足元に寄り添い視線を交わす王子は、とても無防備で子供のようだ。が、二人は白鳥たちに引き離され、王子はボコボコに攻撃される。それを見ても自身が弱っていてなす術のないザ・スワンは腕をベッドに叩きつけて、地団駄を踏むように悔しがり、体を震わせる。いてもたってもいられなくなったザ・スワンは渾身の力で白鳥たちと戦い、一旦は追い払った後、天を仰いで激しく慟哭する。幼い子供のように体を丸めた王子を抱きかかえる。ジェイソンと首藤は身長の差があまりない。その上、ジェイソンのザ・スワンは鳥というよりは半獣半人を思わせるため、ここにはエロスを含んだ根源的な愛が感じられる。

一度はいなくなった白鳥たちが、一羽一羽ベッドの上に飛び乗ってくる。シャーっと音を立てながら。白鳥たちが群れになって翼をはためかすのと、ザ・スワンの腕の動きがシンクロする演出にはいつも鳥肌が立つ。美しくも恐ろしい場面だ。ベッドの上で白鳥たちとザ・スワンが戦い、無残にもザ・スワンはかじられたり、羽根をむしられたり(ピーターさん、いつも楽しそうにザ・スワンを噛んでいるね)。突如立ち上がって翼を広げたザ・スワンは殉教者のようにたちすくみ、神々しいまでの光を放つ。が、白鳥たちに襲撃され、王子に向けて腕を伸ばして彼に少しでも近寄ろうとするのに届かず、そのままベッドの中に吸い込まれるように消えていく。

スワンが消えた瞬間の王子の演技。首藤は、クリスほどの、わが身が引き裂かれてしまったかのような激しい演技は見せない。だが、ザ・スワンがこの世から永遠に失われてしまったという事実をにわかには信じることができず、ひどく動揺しているのがわかる。なんということだ、生きていく上での唯一の支えが消えてしまった…。ベッドの上、ザ・スワンの姿を捜し求める。ザ・スワンが死んでしまったことに気がついた彼は、大きな瞳に悲しみを湛えて泉のように涙をあふれさせる。そして、あの世にぼくも連れて行ってと強く願う。死というのが、王子の積極的な選択であるという風に私には感じられた。首藤の王子は芯が強くて決意を秘めた存在であるから。その願いをかなえるかのように、死のスワンが介錯人を務めて王子は絶命する。(が、ちょっと死ぬタイミングが早すぎるよ、首藤さん)ジェイソン・首藤コンビを観るのはこれで4回目だけど、いつ観ても、この二人の終わり方は悲しい。あんなに魂が結びついているのに、この世では二人は結ばれなかった、死ななければ一緒になれなかったことが感じさせられるからだろうか。

やっと終わった…。
あと東京5回、神戸3回。

2005/04/23

まだまだ続く>4月17日「白鳥の湖」

金曜日はまたジェイソン&首藤だったのに、あまりにも疲れてオーチャードホールまで近づけなかった。お金がないって言うのもあるんだけど。でも行きたかったよ~。えーん。


では、17日続き行きます。

ザ・ストレンジャーは王子に対して容赦なく、ひときわ手荒く接する。それなのに、時々王子に身を預けるようにもたれかけたり、熱い視線を送ったりするものだから王子は激しく混乱する。天使と悪魔の二面性を同時に露にした存在に、さらにザ・スワンの姿が二重写しになる。王子には、愛、苦悩、誰にも理解されない孤独や悲しみ、母親に裏切られた気持ち、自己嫌悪…いろいろな感情がいっぺんに押し寄せてくるのが見える。ついに彼は母親に銃を向けるにいたるのだった。ガールフレンドが王子をかばって射殺され、引きずり出される王子の目に映ったのは母親と抱き合い、不敵にほくそえむザ・ストレンジャー。

ニールやクリスが演じた王子と違い、首藤の王子は狂気に陥ってからも服装の乱れが少なく折り目正しく、背筋がきちんと伸びていてしゃんとしてる。心の底からの苦しみにのた打ち回っている時ですら、ナルシスティックなまでに優雅で美しい。だからこそ、その千々に乱れ引き裂かれた脆い精神性が際立ってくる。怯えきった表情から、彼が静かに狂っているのがわかる。

4幕の精神病院のシーン。王子はなぜ自分がこんなところに連れて行かれたのか理解できていない。母親の姿を見て一瞬だけ喜んだのもつかの間(彼は明らかに母親に性的な感情を抱いているのだ)、彼の内に潜む、自分自身が生み出してしまった魔物が彼を苛む。ロボトミー手術を施されてふらふらとベッドへと歩いていく。ベッドの下から白鳥たちが出てきたのに気付いた彼が、混乱のうちに繰り広げるソロ。さすがザ・スワン役を経験しただけあって、白鳥の2幕の動きを模倣するところは力強いが、その踊りの中にまた様々な感情が混濁していくのが見える。王子らしい品を保ちながらも、隠し切れない優雅さのある柔軟な動きを見せながらも、彼は内なる悪魔と格闘している。ベッドの中から傷ついたザ・スワンが這い出てくる。駆け寄る王子。

(まだ続く)

2005/04/22

もうだめだ>4/20マシュー・ボーン「白鳥の湖」

一旦17日の感想は後回しにします。すみません。

17日の続きとか書かなくちゃいけないのに、ついつい当日券狙いでまたオーチャードホール行ってきちゃったよ。金もないのにやばすぎ。本当は今日はバレエのレッスン日だったのに、さぼって、しかも月謝を使い込んでしまった。

オーケストラつきの「白鳥の湖」が昨日から始まって、行ってきた人の話を聞いたら行きたくなっちゃって、5時半ちょうどに会社を出る。私が定時きっかりに帰ることは滅多にないというのに。

猛スピードで駅からBunkamura向けに走ったら、ドンキの手前にジェイソンがいたよ。でも、当日券を買うことのほうが先決とほぼ素通りしちゃって走り続ける。到着したのが6時10分頃で、発売開始になっていたが売り場にはかなり(15人くらい?)人が並んでいた。すると、幸運にもチケットが余っているんです~と声を書けられて入手できたチケットがなんと2列目(端っこだけど)。

感想を書き始めるとまた延々と終わらないのでまた別の日にでも。とにかくクリスが素晴らしかったよ~~~。ドラマティックだった。スワンクバーを追い出された後の踊りの柔らかく美しいこと!一体この人にいくつ関節があるのか、と思うほどの柔軟性と、そこから漂う哀しみ。ゾクゾクするほどだった。夜の公園に一人佇む時の泣きそうな思いつめた表情から寂しげな微笑の演技。4幕の死ぬまでの演技も今まで以上にすごかった。激しく狂ったようにザ・スワンを求め、体中を震わせて魂を引き裂かれた苦しみを表現し、そして炎がふっと消えるように死んでいった。あんなに泣き叫んでいる王子を見るのは初めてだった。

ジェイソンももちろん良かったけど、多分この間の週末の方ができが良かったと思う。調子は良かったと思うが、2幕の終わりは若干お疲れ気味。4幕、王子が白鳥たちに攻撃されている時に地団駄を踏んで悔しがる、その悔しさ、王子が痛めつけられているのがわが身を切り刻まれるごとく感じてしまう苦悶の表現が圧巻。兄のように優しく王子に寄り添う姿には胸が締め付けられる。

あと、驚いたのは、3幕でザ・ストレンジャーが女王に上着を脱がされた時、ベストを着ていなくてシャツだけだったこと。ご自慢のドレッドヘアが額に垂れていたこと。
クリスは4幕でパジャマの前がはだけていて、胸が剥き出しになっていた。実は胸毛があるのねw)

生の音の迫力とグルーヴ感はいいね。4幕のクライマックスもこっちの方が圧倒的に盛り上がると思う。 音外されるとちょっとキィってなっちゃうけど。金管系(オーボエとか)はときどきミスっていたけど、ヴァイオリンはよかった。スワンクバーとか、黒鳥のPDDの曲は速いのでちゃんとテンポに乗り切れるかな、と思ったけど大丈夫だった。ただ、2幕のアダージオの音楽はジェイソンの踊りとオケが全然合っていない気がしたけど。

2幕のスワンズの踊りは、生のときのほうが断然良かった。特に大きな4羽の白鳥の踊りとコーダは最高!

家に帰った後、なぜかEGO WRAPPIN'が無性に聴きたくなってアルバム「満ち汐のロマンス」を聴く。いや~「サイコアナルシス」は何べん聴いても疾走感があってカッコいい。歌謡曲っぽくてアシッドジャズっぽくてもう4年前のアルバムなのに全然古さを感じない。

2005/04/20

「白鳥の湖」4/17その3(まだまだ続く)

3回目だというのにまだ終わらないよ。いい加減このネタを引っ張らないで他のことを書けって感じだ。

しかし映画も見ていないし本も読んでいないし、この状況で極端に貧乏なため飲みにも行けない。(まあ、お酒も飲めないからだな訳だが)
ご飯だってろくに食べていないよ。今日は久しぶりに麻婆豆腐を作った。料理するのは久しぶりだ。主食はサプリメント(ビタミンB、E,CQ10)と野菜ジュースにヨーグルト、気が向いたときにうどんか蕎麦、それと水とハーブティをたくさん飲んでいるくらい。胃が悪いのでアルコールとカフェインは厳禁である。昼ご飯はたまにはちゃんとした弁当を食べているが。会社のデスクの上に2リットルのペットボトルを置いてグビグビ飲んでいたら、会社のおやぢに行儀悪いと怒られた。

映画も観に行きたいけど、日本映画テレビ技術協会の会員証が切れてしまって更新する金がなく、1000円で観られないのでなかなか行けない。とりあえず「アビエイター」と「海を飛ぶ夢」だけは観たいのだが。「阿修羅城の瞳」は松竹系でやっているので株主招待で行こう。

映画ネタといえば、土曜日に渋谷に行ったときに「ハイド・アンド・シーク暗闇のかくれんぼ」という映画の宣伝で、ダコタ・ファニングたんのフィギュア(?)ストラップを配っていた。なんだか太っ腹だが、ダコタたんとは全然似ていいないし、怖い映画だからなんだろうけどこのフィギュア自体怖い。

というわけで、4月17日の感想の続き、行きます。

3幕。
ジェイソンのザ・ストレンジャーは舞踏会をかき乱すことを一つのゲームとして捉え、どれだけ自分が愉しめるかを第一に考えている。本気で女王や王子を誘惑して落とそうなんてこれっぽっちも考えていない。ただただ、自分の魅力にどれほどの人たちが惹きつけられるかを見て、同時に身分の高い着飾って気取った男女が欲望を剥き出しにするか、その仮面を引き剥がされた姿を暴露して笑っている。
しかし、彼の人懐っこい笑顔は天使そのものだ。ありあまるほどの陽性の魅力をパーティ中に振りまいて、誰もを夢中にさせてしまう。ハンガリーの眼帯王女はサディスト的な嗜虐趣味を発揮し、ドイツの王女は押し倒されて唇を求める。ルーマニアの王女は彼の股間から胸にかけてタッチし、身をくねらせる。イタリアの王女は
脚を舐めさせストリッパーさながらのエッチな舞いをテーブルの上で見せつける。

彼女たちの欲望にちゃんと応えながらも、愛嬌を振りまきながらも、彼が唯一本当に気にしているのは王子のことだけ。女王が若い男を寝室に引っ張り込んでいることを知っているザ・ストレンジャーにしてみれば、彼女を落とすことなんて朝飯前だし、それは王子を陥れるための策略の序曲に過ぎない。

ロシアの曲でジェイソンが、3人の王女とそれぞれ踊った後に見せるソロ。ここにザ・ストレンジャーの魅力が凝縮されているといえる。曲は違うが古典版で言えば黒鳥のPDDでのオディールのヴァリエーションに該当する個所だ。
彼のダンスは決してバレエではない。ごく短いソロの時間のうちに持てる魅力の全てを爆発させ、その場にいるものすべてを魔法にかける。シャープな腰のひねりとグラインド。リズミカルで軽やかなステップ。悪徳と美徳の混じった、不敵なのに愛嬌のある笑み。慣れた手つきの投げキッス。スパニッシュ・ダンスでもリズムに合わせて手拍子を送る遊び心と茶目っ気があるのが、ジェイソンの魅力の一つだろう。

一方、首藤王子は、ザ・ストレンジャーに気付いた瞬間から、彼から目が離せなくなっている。愛しいザ・スワンの面影を感じながらも、胸騒ぎが押さえられない。母親の厳しい視線にびくびくしている。パーティの主役のはずなのに、王女たちはうわべを取り繕いながらもよそよそしい。その上、その母親がスパニッシュ・ダンスの間に若い男、フランスのエスコートを寝室に引っ張り込んでいるところを目撃してひどく傷つく。首藤は脆く傷つきやすい、でも精一杯背筋を伸ばして優雅に振舞わなければならない王子の悲哀を体現している。チャルダッシュでザ・ストレンジャーはガールフレンドの手を強引に取り、王子はフランスの王女と踊る。が、王女のことなど眼中になく彼の目はザ・ストレンジャーの一点に集中している。それをわかっていて、ガールフレンドと戯れながら、死の天使のような禍禍しくもあり崇高ですらある妖しい視線を王子に送って挑発するジェイソン。王子を手玉に取ることなんて、赤子の手をひねるよりも簡単だと言わんばかりに。彼にとっては、怖いものなんてこの世に一つもない。だって、彼は死の天使なんだから。

女王とザ・ストレンジャーのパ・ド・ドゥ。黒鳥のPDDの曲に乗り、手袋を脱ぎ捨てて白くしなやかな腕を露にした女王。さっきエスコートと満足度いっぱいの表情で戻ってきたばかりなのに、ここでさらにエロさを満ち溢れさせ、女としての自信たっぷりに振舞っている。ザ・ストレンジャーの上着を脱がせる仕草の色っぽいこと。だが、ザ・ストレンジャーに完全に魅入られて理性を失ってしまっていることに彼女は気がついていない。空高く舞い上がり、しまいにはくるくるとテーブルの上を回らされている女王。内面のエクスタシーを象徴させるようなシーンだ。そんな時もザ・ストレンジャーは余裕たっぷりで、女王を手のひらで遊ばせるお釈迦様とでもいうべきか。

この幕のクライマックスは、王子とザ・ストレンジャーのタンゴ。優しく王子に微笑みかけたかと思うと、次の瞬間には驚くほど冷酷に王子をあしらい、いじめる。どうしてぼくにこんな思いをさせるの?と思いつめた瞳で聞き返す王子。アグレッシヴに、攻撃的なステップを踏み王子の心をズタズタに引き裂くストレンジャー。追い討ちをかけるように額に黒い線を引き「オレはここにいるよ」とにやりと笑いながら白鳥のしなやかで強靭な振りを見せる。禍の神が降臨した瞬間だ。タンゴのシーンは完全に王子の妄想の場面だが、自分で自分自身のことを傷つけずにはいられない王子の悲しさ、居場所のなさ、よるべなさが伝わってくる。首藤の限界いっぱいまで思いつめ、傷つき苦悩する表情を見るにつけ、ガラスの心が砕け散る音が聞こえた気がした。

(さらに続く)

2005/04/19

「白鳥の湖」4月17日ソワレその2

昨日の続きです。まだ1幕までしか書いていなかったorz

ザ・スワンが飛び出してくる。ジェイソン・パイパーのザ・スワンは目の光が鋭く、ステージをまさに"走る狼”のように駆け抜けていく。振り返って王子をにらみつける。
鳥というよりは半獣半人の、ギュスターヴ・モローの絵画「オイディプスとスフィンクス」のスフィンクスを思わせる、神話に出てくる魔物のような、野獣的なのに神秘的な美しさがある。
群れのリーダーではあるが、他の白鳥たちとは明らかに違う種族であるのがわかる。ザ・スワンは「レダと白鳥」の白鳥のように、ギリシャ神話の神が白鳥にその姿を変えて人間を誘惑しているようだ。
その美しさに初めは畏れおののく王子。白鳥たちの群れに威嚇され、異界にさまよいこんでしまったことに怯えている。夜の公園が異界か魔界に思えてくるのはこのジェイソン/首藤のコンビのときだけかもしれない。それは、首藤という孤独感、異物感のあるダンサーだからこそ実現できて作り上げることのできた世界観だろう。

やがて少しずつザ・スワンと王子の心が触れ合い始める。力強く戯れる白鳥たちを見て、ザ・スワンに挑発されるように導かれて王子は自分の中に眠っていた美しさに目覚める。一羽で踊るザ・スワンの野生の、生命力を感じさせる躍動に惹きつけられるうち、おずおずと、模倣するかのように王子も踊り始める。1幕の地を這うような踊りとは対照的に、天に近づこうとするイカロスのごとく舞い上がる。

ジェイソンと首藤の踊りはまったく異質のものだ。腕や上半身が柔らかく、手先まですっと伸びてしなやかな首藤。一方でワイルドで肉体性を感じさせて躍動する力と官能に満ち溢れていながら、同時にとてもイノセントでピュアな精神性が宿っているジェイソン。異質の二人の踊りが奏でるハーモニーは、まったく違う世界に存在していた二つの魂が共鳴しあう様子を表しているかのようだ。二つの魂が響きあい、コーダでは見事なまでにシメントリーな動きを見せてくれるまでにいたる。

首藤の踊りが素晴らしいのは言うまでもないことだ。だが、驚いたのはジェイソンの進歩。ヴァリエーションでの弾むような、生き生きとぴちぴちとした動きを見て、彼はザ・スワンの新しい地平を切り開いたのだと確信した。流麗な首藤とは異なり、一挙手一投足に溜めがあり、それが彼の存在感に重みとカリスマ性を与えている。ぴんと張り詰めた筋肉。リズム感。小柄なジェイソンだが、他のどの白鳥にも似ていなくて際立った魅力がある。さらに王子を見つめるその視線!背筋に電流が走りそうな色気と、少年のような純粋さ。王子とザ・スワンの間に流れる感情は、お互いへのリスペクトの気持ちがこもった愛なのだと思う。クリス王子に対するジェイソンは兄貴のような、brotherhoodに近い感情で、もっとやんちゃな番長みたいな感じだったのだが、今回はザ・スワンも王子に対して対等の感情を持っているところが見て取れた。それに答えるように、途中から輝くばかりの笑みをこぼす王子。

コーダで、いつもジェイソンは王子を何度も振り返って視線を送る。ぼくについておいでよ、という暖かい気持ちが感じられて、そこがすごく好きだ。スワンたちが去った後の王子の至福の表情。体中が幸福感に打ち震えているかのようだ。遺書を書いたときと同じ場所にいるのに、その佇まいの差はなんだろう。同じ人間とは思えないほどだ。

そして3幕。王子は、この宴に誰がやってくるのか気になって仕方なくて落ち着かない様子。そこへ黒い天使、白鳥に瓜二つだが悪徳の匂いを漂わせたストレンジャーが舞い降りる。その鋭い魔性の視線に王子は射すくめられ、静かに狂い始める。

(また続きは明日)

2005/04/18

さらに白鳥な週末

ここ数日、白鳥の話題しか書いていなくて映画目当ての方には本当に申し訳ない…。完全に世界が白鳥を中心に回っている。やばすぎ。

昨日はマチネとソワレに行って、すっかりパワーを使い切ってしまい、今朝起きたらなんと昼の2時!えらいこっちゃ。慌てて洗濯掃除をして、(だ)が不在なのでしめしめと出かける準備。

ソワレのキャストがジェイソン・パイパーのスワンと首藤康之の王子だと聞いたので、当日券に並ぶ。4時半頃Bunkamuraに着いたのだが、すでに30人くらい並んでいた。当日券の列の中には、某バレエ団のプリンシパルの方もいらっしゃった。こういう人でもちゃんと並んでチケットを買うんだ、と驚く。キャスト発表があったときに、列の人々から喝采の声が。チケットが自分のところまであるのかと一瞬不安になったが、結局1階4列目の端というのをゲット。

昨日のマチネも最高だったけど、今日のも素晴らしかったよ!もう神が降りてきたって感じ。もう死んでもいいかも、と思ったほど。

1幕。首藤王子はひりひりするような緊張感、焦燥感の持ち主と見受けられた。登場シーンで手を振るところの、魂ここにあらずという表情。贈り物の彫像(実はザ・スワン役がふんどし一丁で演じている)を目にした時の驚きと戸惑いの混じった表情。女王が今夜のお相手を品定めする時の怒りがこもった傷ついた表情。寝室での母親=女王とのパ・ド・ドゥはものすごく悲しい。王子も、女王も、お互いへの愛情をどうやって表現すればいいのかわからない。王子はすがりつくように女王を激しく求める。しかし心はすれ違うばかり。前回の首藤王子を観た時も思ったけど、彼が演じた時が一番背徳的でエロティックで熱情を感じさせる。首藤の王子は一見自信なさげでおどおどしているように見えるが、すっと伸びた背筋と強い瞳の輝きで、折り目正しく凛としており、内に強い意志を秘めていることが見受けられる。母に拒絶された時の深く傷を負って復讐心すら感じさせる瞳。

スワンクバーを追い出された後のソロは相変わらず恐ろしく美しい。クリスが演じている方が内省的な感じで王子の役柄に合っているのではないか、と思えるのだが、王子自身が意識していなくとも内面に持っている美しさがあふれ出ているシーンだ。

さて、まずこの王子が素晴らしいと思ったのは、この後のシーン。暗闇に一人佇む王子の後ろに、翼をはためかす白鳥たちのシルエットが浮かび上がる幻想的で美しい場面だ。ここでの演技は、3人の王子が三様でとても面白いと思うのだが、首藤王子の張り詰めたような、思いつめて崖っぷちに立っているかのようなぎりぎりな感じが、ずしんと胸に響く。ぼくを受け容れてくれるところはこの世のどこにもないと訴えかけているようだ。2幕は、王子の死に際に見た夢なのかもしれない、とこのシーンですでに訴えている。遺書を書く手がぶるぶると小刻みに震えている。感情の奔流が激しい王子は、震える手で書きなぐるように素早く別れの言葉を書く。そして入水自殺しようとした瞬間…。

ここまで書くのに2時間(呆)続きはまた明日。

2005/04/17

またまた白鳥な週末&カイリー・ミノーグ

昨日の夜に続き、今日もマチネ、ソワレと白鳥三昧。ソワレの頃にはすっかり疲労困憊で死にそうになったけど、2幕で復活。やっぱり何度観てもいいわ。感想はまたのちほど。反芻するだけですごいエネルギーを使いそうなんで。ソフィアのガールフレンドの演技がすごく良かった。ジェイソン・クリスは安定感抜群。クリスの全身で泣いているような凄まじい演技に打たれた。ホセの3幕ストレンジャー演技が濃くなっていて、すげえかっこよかった。上半身が相変わらず綺麗だし、3幕のピルエットが速くて軸がしっかりしていた。ラストの瀕死ぶりも良い。ファンダンサーがやたら体格がいいとおもったらヴィッキーだった。ヴィッキーはハンガリーの王女役でアイパッチ姿でも登場していた。重そう…。

で、ジェイソンがダンサーとして出演しているカイリー・ミノーグの2002年ツアーDVD「KYLIE FEVER」がアマゾンUKから届いていたので早速観る。ジェイソンは多分ずっと出ているんだと思うけど、衣装が全身タイツ(モジモジ君系)だったり、ロボットみたいなサイバーなやつだったりで顔もろくにわからないのが多く、判別できたのは半分くらい。「ON A NIGHT LIKE THIS」では豹柄のガウンで、カイリーがいるストリッパーのような丸舞台の上の横で体をクネクネ。「LOCOMOTION」では豹柄パンツ一丁&網タイツ&ハイヒール。「IN YOUR EYES」では前の曲の衣装に巻きスカートをひらひら。いや、本人はカッコいいんだよ。今より多少髪が長めな以外はあまり印象も変わらない。しかし衣装の強烈さには絶句。メイキングでは、リハーサルのシーン(やっぱりピンヒールを穿いている)&メイクのシーンにちょろっと出ていた。

ジェイソンのファンなら必見だけど、ある意味踏み絵かも。あのクネクネは夢に出てきちゃうかも。

あ、カイリーのコンサート自体もエンターテインメントとして非常に凝っているので面白い。凝りすぎと言ってもいいかもしれないけど。カイリーはセクシーなんだけど健康的。

2005/04/14

「白鳥の湖」4月9日ソワレ

この間の調子で書いていたらいつまでたっても書き終わらないと思うので、できるだけ簡潔に…と思ったけどそうも行かない。

4月9日18時~
ジェイソン・パイパー&クリストファー・マーニーのコンビ。クリス王子を観るのは一ヶ月ぶりである。で、実は3人の王子の中でクリスが一番好き、と改めて思った。もちろん、首藤王子もニール王子もそれぞれ素晴らしいのだが。
今日は最前列センターという席。リピーター濃度の濃い席だ。ジェイソンにきっと釘付けだろうと思っていたら、意外にもクリスに目が行くことの方が多かった。

クリス王子は、純粋すぎて最初から歪んでいて狂っているニール王子と違っていて、等身大の若い男の子って感じの人物像だ。もともとはイノセントでまっすぐ。王室での窮屈な生活のせいでちょっとひねくれており、いじめられキャラではあるが。女王にガールフレンドとの交際を反対されて一番反抗的なのが彼である。感情を顔にすぐ出す直情的な王子。踊りはとても繊細で柔らかく、いくつ関節があるのか、と思うくらいだ。女王との(ちょっと近親相姦的な匂いのする)パ・ド・ドゥは 「ママ、もっと僕のことを愛して!」と叫んでいるかのようだ。そして酔ってバーを追い出された王子のソロは柔らかくて哀しげで静謐でいい。ガールフレンドが執事に金をもらっているところを目撃した時の、裏切られた悲しみの表情。背景に白鳥たちが幻のように浮かび上がるシーンでのすべてを観念したような寂しげな微笑。目がパッチリと大きいクリスは、瞳の演技がとてもエモーショナルだ。

2幕のザ・スワンとのシーン。夢の中に迷い込みスワンの幻影を追いかけているニール王子に対して、クリスは実態としてのザ・スワンを追っているように思える。本当は白鳥たちは幻なのかもしれないけど、間違いなく王子にとってはそれが現実のものとして感じられているように見えた。おそるおそるザ・スワンに近づこうとして、おずおずと歩み寄る王子。ザ・スワンと一緒にいれば、王室での息が詰まるような日々を忘れることができて、普通の男の子のようにのびのびと戯れることができる。初めて知る自由におののきながらも、生まれて初めて王子という立場を忘れてその甘美さを味わい尽くそうとしている。とても切ないのが、日ごろのプレッシャーから開放されているというのに、その自由を満喫するために全身全霊を傾けて、すごく一生懸命になっていること。常にいっぱいいっぱいで生きている彼を象徴しているかのようだ。それでも、少しずつ呪縛から解放され、瞳をキラキラと輝かせて幸せそうな、柔らかく無邪気な表情へと変わっていく王子。やがて彼の踊りはザ・スワンと完全な対をなして、音楽と一体化して軽やかに愛を奏でていく。走り去っていくザ・スワンへと差し出したその手は、生きる意味をつかみとった、と語りかけているようだった。

3幕、ザ・スワンが舞踏会にやってきていないので少し残念そうな王子。ザ・ストレンジャーが登場した途端、まるで雷に打たれたかのような表情を見せ、ずっと彼から目を離さない王子。母親である女王とのパ・ド・ドゥを見せ付けられる時にはさすがに耐えられないのか、目をそらすがそれまでは吸い寄せられたかのよう。ストレンジャーとのタンゴのシーンではいいようにいたぶられ、挑発され、怯える。他の王子の時よりジェイソンの王子いじめはマイルドに思えるのだが、クリス王子はニールほど狂気の兆しを感じさせない普通の繊細な男の子っぽいので、かわいそうでかわいそうで。銃を片手に登場した時には、以前とは違ってシャツの前をはだけ、思いっきり暴れてきた形跡があった。ストレンジャーを突き飛ばした時にジェイソンが思いっきり吹っ飛んでテーブルに衝突したほど。怒る時には激しい王子なのであった。

まだ4幕にたどりついていないのに、ジェイソンまでたどり着いていないのに、書いているこちらが王子に感情移入しちゃってもうダメだよ、泣けてきた…。

さて、このコンビが一番光るのが4幕である。冒頭、舞台の裏から何かが落ちる大きな音があったが、一体何が起こったのだろう。精神病院に連れて行かれた王子。母である女王の姿を見ると一瞬嬉しそうな顔をして、「ママ、ぼくを助けて」と助けを求める。女王は一瞬母親らしい優しい表情をする。が、王子の思いは次の瞬間に裏切られる。執事、そして女王の顔をかぶった看護婦軍団を見て恐怖におののく。パジャマのボタンが全部は止まっていないので、背中や腹が露になる。ロボトミー手術された後ですらも、王子は混乱しながらも思考はとてもクリアーなように見える。

ベッドに横たわっていた王子が目を覚ました後、今までの人生のフラッシュバックを体現するように、彼の体は色んな形にぐにゃりと曲がる。あるときはザ・スワンの動きを模倣し、また別の時には3幕でザ・ストレンジャーによって捻じ曲げられた形を再現している。パンフレットでクリス自身が語っているように、そしてここで王子は人々に手を振ってお辞儀をする仕草をする。幼い頃からそうすることを義務付けられていた彼には、この仕草が植え付けられてしまっていることが見て取れて、胸が締め付けられそうになる。彼の頭の中が色んな想いで爆発しそうになっているのだ。

傷ついたザ・スワンがベッドの中から出てきて、王子の嘆きはますます大きくなる。ジェイソンとクリスのコンビが一番、王子とザ・スワンの絆が強固に見える。二人をつなぐ糸がしっかり見えているのだ。つぶらな瞳にいっぱい涙をためて、ザ・スワンにしがみつく王子。白鳥たちに容赦なく襲われるザ・スワンが少しずつ弱っていくのを見て、泣き叫ぶ王子。彼の泣き喚く声が聞こえてくるようだ。クリスは自分の持てるすべての感情をこめ、ぼくを置いていかないでとスワンを求めるが、ついにザ・スワンは力尽きて消えていく。狂ったようにベッドの上を、中を、絶望的にスワンの姿や残り香を捜し求める王子。ザ・スワンが欲しい。体中の水分がカラカラに涸れ果てるまで全身を使って泣いた王子はついに果てて、キラースワンの一撃でこの世に別れを告げる。

クリスの演技は凄絶の一言。もう4幕のベッドのシーンから涙で目が曇ってしまって。誰かを死ぬほど求める気持ち。誰にも愛されなかった寂しさ。世界中のすべての人々が敵であると思い込んでしまうナイーブさ。牢獄のような日々。そんな中でも、たった一つの光に出会えた歓びとそれを永遠に失ってしまう悲しみ。この世に別れを告げなければ手に入れられなかった愛。王子がその短い人生の中で経験してきたであろう思いが、4幕のエモーショナルで繊細な演技にこめられていて、たまらない気持ちになった。

クリス一人についてここまで語ってしまったので、ジェイソンについては簡単に一言。3幕、ザ・ストレンジャーを演じたジェイソンは“死の天使”という表現がぴったりだった。天使のような邪気のない微笑で、その場にいる人間すべてを殺すのだ。美しい姿形の下には、魔物が住んでいるが、それは決して悪魔ではない。その存在自体は悪を志しているのではなく、ただ己に忠実に生きている結果が、禍をもたらしているだけなのだから。それほどまでに魅力的な存在なのである、ジェイソンが演じるザ・ストレンジャーは。

2005/04/12

マシュー・ボーン「白鳥の湖」4月9日マチネ

というわけで「白鳥の湖」土日マチネ&ソワレ終了。本当に疲れた。自分のエネルギーを吸い取られたって感じだ。こんな生活を続けていたら自分自身が抜け殻になりそう。

4月9日13時。ザ・スワンがホセ・テイラード、王子がニール・ウェストモアランド。調子が悪いらしいと聞いていたホセだが、ちょっと驚くくらい良くなっていた。女王と息があっていない部分は散見されるものの、踊りがクラシカルで美しい。2幕のグラン・ジュテが高く、脚がすっと伸びていて気持ちよいほど開脚している。バランスもよくなっていて、片脚でプリエしながらもう片脚をア・ラ・ズゴンドするところのバランス時間も長くてびっくり。3幕のザ・ストレンジャー時のロシアの踊りの時に見せるピルエットが速く、軸がしっかりしていてきれいだった。たまにバランスを崩している以外は合格点といえる。腕がとても長い上、上半身がとても柔らかく、前方に倒した時にぺたんとしなやかに床に落ちている感じがいい。バリエーションの時の踊りは優雅でノーブルで素敵だった。 ちょっと痩せた感じ。

ホセのザ・スワンは大きくて、雄雄しくて、荒鷲のようだ。実際に大柄な長いわけだが、本物以上にひときわ大きく見える。彼には王子の憧れの対象たりえる風格と、父親のような大きな愛情を持っているようだ。寡黙で男らしく強い。他の白鳥たちに一目も二目も置かれていて尊敬されているリーダー。王子に対しては「黙ってオレについて来い」って感じだ。この作品では王子には父親がいない。その父親代わりの存在としてのザ・スワンというわけだ。

3幕のザ・ストレンジャー。ホセはラテン系の割にはフェロモン系ではないのだがクールでエキゾチックでちょっと怖そうでかっこいい。スワンと同じくすごく寡黙で、絶対に自分を安売りしない感じがモテ系のワルな感じでよいのでは。たまに見せる薄笑いが、独特の色気を感じさせてくれる。

4幕のザ・スワンは慟哭の表情がすごく哀しげでいいね。瀕死のはずなのに踊りがきれいでジャンプも高いのは彼の中に残っている風格がそれをさせるのではと思わせる。大きくて立派な白鳥が、小さ目の白鳥たちにかじられたり頭突きされたりして弱ってついには倒れていくところを観るのは悲しい。その死は、巨星墜つって感じだ。

さて、王子役のニールだが、1幕のところはあれれ、ちょっと調子悪いのかと思った。スワンクバーの後のソロがすこしもっさりとしていて若干雑。演技の方は相変わらずうまくて、すらりと背が高くハンサムで育ちが良いのにどこか歪んでいる感じが出ている。
2幕では今までの最初からエキセントリックな部分が消えて、夢見るように踊っているのがわかってきた。ニールは2幕4幕は幻想だと思って演じているとのことだが、確かに王子が死ぬ前に見た夢なのではないかと思わせる。甘く美しい夢で、その夢の中で王子はどんどんザ・スワンに恋していて、うっとりとその甘美な感情に浸っている。現実から完全に遊離している危うさが王子に漂っているところがこの人らしくて。コーダではザ・スワンの動きを模倣するかのように、同じように端正に大きく踊っていた。今まで夢に見てきた美しい白鳥が、本当に現れたという幻想に酔うように。

(続き)

3幕ニールはその壊れ方がさらにすごいことになっていた。3幕の登場のところから熱っぽく浮かれていて、現実が見えていないかのような様子。ストレンジャー登場のときには、彼を目で追いかけちゃって大変。嫉妬に心乱れた王子が銃を持って服装も髪も乱れまくりで出てきたときには、体をわなわなと震わせ、ぴくぴくと唇を動かしている。以前はもっと激しい怒りを感じたのに、今回は内に秘めた狂気で、静かに深く狂っていっている感じだ。

4幕では、体は大きいけど窮屈そうに立ちすくむパジャマ姿の彼はすっかり子供にかえっていた(友人弁)。そのまま、ラストのザ・スワンに抱かれる子供時代の王子の姿そのものと言ってもいい。ザ・スワンが死んでベッドの中に吸い込まれていった時、慟哭は魂の死へとつながり、抜け殻となって呆然とベッドの上にへたり込む王子は、とどめを刺される前に死んでいたも同然だった。ザ・スワンの死とともに王子の魂もこの世を去ってしまった。最後の白鳥の一撃は、彼をスワンとの再会へと導く黄泉の国の案内人の役割を果たしていたのだ。父親のように大きく翼を広げたザ・スワンに抱かれた王子は幸せそうだった。この2人の組み合わせが、一番幸せな結末と言ってもいいのではないだろうか。

ニコラ・トラナの女王は、熟年女性の色香を感じさせる。3幕の舞踏会では、スペインの踊りの時にエスコートの男性と奥へと消えて、しばらくしてから満ち足りた表情で戻ってくる。エスコートの男性はご丁寧にシャツの乱れを直しながらでてくるところから、舞踏会場の奥で何があったのかは明らかだ。まあエッチ。ニコラ女王は腕の使い方が本当に美しくて、気品がありなおかつ官能的だ。最初のうちは自分に主導権があると思ってザ・ストレンジャーと踊っているが、いつのまにか完全に彼に操られてしまっている、というところを的確に演じている。演技の方も素晴らしい。厳しいけど王子に間違いなく母親らしい愛情は持っているのがわかるのだ。

4回見たうちの一回目がこんな調子だと、これから先はどうなるのだろう。やばい。

2005/04/07

マシュー・ボーン「白鳥の湖」4月6日

3週間の地方公演が終わってやっと東京に帰ってきた。この日を指折り数えて待ちくたびれた、って感じ。

舞台を観てこんなにぐったりと疲れたのは初めてかもしれない。今日は3列目センターブロックで観ていたのだが、近い分ものすごく集中して観た気がする。一瞬でも見逃してなるものかと食い入るように観てしまったし、観る側のエモーションに激しく訴える作品だから、精を吸い取られたような気分になる。最前列より舞台や低い位置での演技も見えるので比較的観やすい(が、前に座っている人が帽子をかぶって観ていた。逝ってよし)。

今日はなんとジェイソンとニールというレアな組み合わせ。実は今まで9回観たうち、8回までもがジェイソンなのよね。ジェイソン大好きだけど、たまにはホセも観たい。ホセは観客席にいたようだけど。ニールは一時帰国していたらしく、今日が日本に戻ってきてからの第一日目。

そう、この組み合わせは王子役ニールのほうが身長がずっと高いのである。2幕や4幕でザ・スワンが王子をリフトするときにかなり大変そうだった。リフトに失敗していることがあった。ニールが復帰1日目ということもあって、ちょっと調子が悪そう。1幕終わりのソロでの2番のグランプリエは美しかったけど。

しかし思ったより二人の演技のかみ合わせはうまくいっていた。ジェイソンは一生懸命背伸びをしていた。アダムのように長身のスワンやストレンジャーのほうがカリスマ性を感じさせるので、王子よりも小柄なスワンってどうかな、と思っていたがジェイソンはいつもよりも強さ、獰猛さ、獣性を感じさせる演技だった。目の力がものすごく強い。それなのに、すごく無垢で高潔で真っ白で透明な存在に見えた。ニールがほっそりとしていて背が高い分、“なんか無駄に背だけ高いけど弱々しくvulnerableなお坊ちゃま王子”って感じで、それに対して野生の生存本能が発達していて、生きる力がみなぎっている白鳥が別の世界を教えてあげている、という印象があった。白鳥たちが去った時の王子の嬉しそうな、思わず笑みがこぼれている恋しているような、昨夜の恋の余韻を楽しんでいるようなところが印象的。

ニールの本領発揮はやはり3幕の舞踏会からだろう。ガールフレンドを人一倍嫌っている感じで、「触るんじゃない、この女」と台詞が聞こえてきそう。それに対して、ストレンジャーに対しては、見た時から好き好きオーラが全開。さっそくストレンジャーの胸を触りまくり。タンゴのシーンでもストレンジャーに擦り寄り甘えようとして振りほどかれる。その分、ストレンジャーへの王子の邪険な態度はいつも以上で、すごく暴力的だった。ストレンジャーは小さい分、自分をいつも以上に大きく見せようと大きな態度に出ているのだ。

そして3幕の終わりの銃を持ち出したシーンでのニール王子の憔悴しきった演技!シャツの全面をはだけ(ギャランドゥまで丸見えだよ、ニール)髪は乱れ、上着の袖はまくれあがっている。もっとすごいのが目。時には白目を剥き、時にはガラス玉のように澄みきった青い目を見開き哀しみと怯えを表現し、本当に正気をなくしたようだった。4幕のロボトミーシーンのちょっと暴れる感じの狂気の表現もすごい。この人は本当に演技者だな、と思う。ラスト、ザ・スワンが目の前で死んでいくのを見て、悲しみのあまり気が触れてしまい抜け殻のようになった姿は正視するのがつらいほど。白鳥の一人にとどめを刺されて死んだ時、この人にとってこの世界は生きていくのがあまりにもつらかったんだな、死ぬことが彼にとっては救済だったんだな、と思わされる。

3幕のジェイソン=ストレンジャーは、相変わらずノリの軽い、みんなに愛嬌と色気を振りまきながらも実は誰に対しても興味がなく好きなのは自分自身だけって感じの、堕天使のような男だった。いつもに輪をかけて悪くていじめっ子。3幕の終わりで王子に殴られて盛大に吹っ飛んでいったのは驚いたけど。

4幕のザ・スワンは3幕ストレンジャーとは裏腹に、ものすごく優しく哀しい。体に刻まれた赤い傷が痛ましくも美しい。白鳥たちにいたぶられる王子を見て、僕の大事な人に手を出すな、僕が守ってあげないと誰が彼を守ってやれるのか、彼が痛めつけられていると自分も同じように傷を負ってしまう、いまや彼は僕自身の大切な一部分なんだから、彼を守りぬけない自分は生きている価値がない、という絶望的なまでの強い愛を表現していた。
瀕死の白鳥の演技は、胸にきりきり響いてきて、観る側のエネルギーも消耗させる。同じように憔悴した気持ちになりそうだ。

相変わらずスタミナ面ではちょっとはらはらさせるジェイソンではあるが(だって、結局3連投だもんね)、演技も踊りもどんどん良くなっているし、体はどんどん柔らかくなってきていると思う。アームスもしなやかで脚が上がるようになった。背中も柔らかさを増している。コンビネーションとしてはいつものパートナー、クリスとの演技のほうがいいとは思うけど、相手が変わるとやっぱり演技は変わるのか、と実感した。いろんなバリエーションが見られるのは面白い。

今日から登場の女王役、ニコラ・トラナは今までのオクサーナ・パンチェンコと比べて年齢も上の分、落ち着いて威厳があった。すごく厳しい女王様という感じ。踊りはさすがに美しいが、まだ少し不慣れなところもあるかも。3幕の手袋を脱ぐシーン、エロいよな。

2005/04/03

日帰り名古屋&バレエ発表会

名古屋に住む92歳の祖母の様態が思わしくないという連絡を親から受け、せめて意識があるうちに会いに行こうと母と二人で朝名古屋へと向かう。
新幹線に乗るのも久しぶり。2時間もかからないうちに名古屋についちゃうなんて早い早い。でもあまりの高速移動で、寝ようと思ってもなかなか寝られない。その上片道1万円もする。
祖母は、思いのほか元気だった。頭もしっかりしていて、私が小さい時によく喧嘩した話などを鮮明に覚えていて懐かしんでいた。とはいっても、やっぱりやせ細ってかなり苦しそう。切ない。来たことをとても喜んでくれていた。また会いに行かなくちゃ。

名古屋駅で食事をしようと駅隣接の高島屋の13階レストランフロアに行くが、ものすごい混雑で、どの店も30分以上待つとのこと。味噌煮込みうどんが食べたかったが、仕方ないので、カフェでフルーツロールを食べる。高島屋の中も、駅の構内も大変な人出で、東京の不景気な感じとは別世界のようだ。帰りののぞみも大変な混雑で、どうにか座れたけど立っていた人も多かった。

とんぼ返りで4時半には東京に戻る。通っているバレエ教室の発表会を観るためだ。演目は「シンデレラ」「コッペリア」の2幕と3幕ディヴェルティスマン、それからオリジナル振付のタンゴを数演目、指揮者の福田一雄さんを迎えての「白鳥の湖」の解説と歌手による歌、2幕のグラン・アダージオ。発表会とは思えないほどソリストのレベルが高い(一緒にレッスンしている人たちなのに)。ソリストはプロにも負けないくらい。タンゴは日本でもトップレベルのタンゴダンサーを招いて、とてもセクシーで迫力があったし、福田先生によるチャイコフスキーの「白鳥の湖」の逸話は面白かった。(初演は不評といわれていた話は嘘らしい)子供たちの天使が超可愛い!
やっぱりバレエっていいなあ。すごく見ごたえがあった。来年は自分も出られるかな?

しかしやっぱり「白鳥の湖」2幕のグラン・アダージオを今観ると男性白鳥のお化けたちが頭の中にいっぱい出てきて困ってしまう。本当に素晴らしいグラン・アダージオなんだけど。その上、どこかで見慣れた公園ベンチと街灯、ゴミ箱の3点セットも出てきちゃうんだもの。今週水曜からマシュー・ボーン「白鳥の湖」東京公演が再開だ。

2005/04/02

SWAN LAKE関係もろもろ

朝はNHKの「生活ほっとモーニング」で首藤さんのコメント映像&マシュー・ボーン「白鳥の湖」の映像が放映。すごく短かったけど、相変わらず瞳をキラキラさせながらあさっての方角を見て喋る首藤さんは素敵。この人のとてもイノセントなところはこれから先も全然変わらないんだろうな。外国人だらけのキャストの中で踊るのは大変だろうし、そのあたりの孤独感が王子役の演技にも反映されているんだろう。ザ・スワンを踊った時も異質感が人一倍強かったし。
2幕と4幕中心の紹介で、ジェイソンとのパ・ド・ドゥや、狂乱のシーンが観られたのはよかった。でも朝から見るにはいささか刺激が強いかもしれないが…。カツオくんことコーディもバッチリ映っていたよ。

そのままNHKをつけていたら、いつのまにか熊川哲也が出ているよ、と(だ)に言われた。熊川氏と、オデットの衣装をつけた康村和恵さんが生出演している。2幕のオデットのヴァリエーションでのマイム(白鳥に変えられて愛の誓いだけが自分を人間に戻すことができる、あの湖は母の涙でできているのです)を熊川氏が丁寧に解説してくれて、すごく勉強になった。とはいっても、もう家を出ないと遅刻する、という時間だったのでちょっとしか観られなかったけど。一瞬だったマシューの「白鳥」に比べて時間が放送時間がめっちゃ長い気はしたが、こういうところでバレエを紹介して観る人の裾野を広げることはとてもいいことだ。康村さんのオデットは5月に見る予定なので、楽しみ。とても可愛らしかった。

ところで、マシュー・ボーン「白鳥の湖」といえば先の話だけど来年1月からの北米ツアーが決まったよう。
http://www.playbill.com/news/article/92032.html
去年予定されていたのが一度キャンセルされていただけに、よかったね~。というかサンフランシスコあたりまで行って観に行きたいんですけど。
得チケでも何枚か買い足してしまったし、ホント白鳥中毒ぶりは病気以外の何物でもない。来週からの怒涛の一ヶ月、無事に生きて帰れるのか?

2005/04/01

昨日のレッスンと「レジェンド・オブ・メキシコ」

昨日のレッスンは発表会前というわけで出演しない私はバーのみ参加。でも上級者も多かったので比較的大変なパもあり、翌日は内腿がかなり筋肉痛で階段を上がるのも一苦労。

この教室には一人だけ男性がいて、バレエを始められて長くないと思うのだけど貴重な男性ということで、先生とパ・ド・ドゥを踊る。背が高くて容姿の良い人ということもあり、踊りは様になっている。(王子様衣装はちょっと恥ずかしそうだったけど)男性がリハーサルをする場面なんてドキュメンタリー映画でも観ない限り観る機会ないし。

パ・ド・ドゥを踊るので、当然女性のピルエットのサポートとか、軽いリフトもあるわけで。サポートつきピルエットは、男性側の回すテクニックも必要だというのがわかって、観ているのが面白かった。いくら女性がうまくても、男性の方でちゃんと止めてあげないとならないし。

さて、今日は友達に借りたDVDで『レジェンド・オブ・メキシコ』。大傑作『デスペラード』の続編である。『デスペラード』組から監督はロバート・ロドリゲスで、アントニオ・バンデラス、サルマ・ハエック、チーチ・チョン、ダニー・トレホが引き続き出演(アレ、ダニー・トレホって『デスペラード』では死んでいなかったっけ?)。それに加えてジョニー・デップ、ミッキー・ローク、ウィレム・デフォー、エヴァ・メンデス、エンリケ・イギレシアスが出演とキャストは恐ろしく豪華。

しかし!映画自体は恐ろしくつまらないものだった。ストーリーがほぼ全部ジョニー・デップの口から説明口調で話されるのだけど、説明的過ぎるわ、キャラクターの名前は全然覚えられないわ。登場人物が多すぎて全然活躍の場がないわ。バンデラスが主人公のはずなのに、登場シーンが少ない上、ジョニー・デップと一緒の画面に出ていることもほとんどない。いくらこの映画にストーリー性を求める人間がいない、ストーリーなんかどうでもいい作品だとわかっているとはいっても、これでは一体どういう話なのかよくわからない。派手なアクションシーンを見せていればいいってモンじゃない。『デスペラード』のように、もっと単純にするべきだっただろう。その上、ウィレム・デフォーの無駄遣い。彼が出ている必然性がないし、一体何物なのかもよくわからない。サルマ・ハエックは回想シーンにしか出てこない。(前作で死んでいるから仕方ないけど)ミッキー・ロークは整形の失敗で見る影もない容貌に。

ジョニー・デップは楽しそうに演じているし、バンデラスはカッコいいんだけど前作のような茶目っ気はなし。サルサ界のスターであるルーベン・ブレイデスが引退したFBI捜査官として渋い存在感を見せたのが拾いモノなくらいか。

ロドリゲス作品は『スパイ・キッズ』にしても面白かったのに、一体これはなんだったんだろう。無駄に豪華なキャストを揃えた空虚な作品になってしまった。

あ、でも新作ロドリゲスの新作「Sin City」は超・傑作の予感。 ロジャー・エバート先生のレビューをリンク。(おっと、「レジェンド・オブ・メキシコ」褒められていますね。
http://rogerebert.suntimes.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20050330/REVIEWS/50322001/-1/email_headlines これにもミッキー・ロークが出演しているのね。

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