対岸の彼女
角田光代著 文藝春秋
本年の直木賞受賞作。
35歳の二人の女性、2歳の娘がいる主婦小夜子と小さな会社の女社長葵。まったく違う境遇にいた二人の女性の出会い、そして葵が高校生の頃体験したひと夏の出来事を描く。
この年代の普通の女性が持つ閉塞感と強迫観念をすごく丹念に、きめこまやかに描いている。“普通に生きる”ってどんなこと?社交的で周りの人の顔色に合わせて生きていかないといけないの?世間一般が決めた幸せのとおりに生きていかなければならないの? 平凡でも自分らしく生きていくって、実はすごく苦しいことなんだよね。
わたしが生きていく上で常日頃考えているような生き方についての疑問にまっすぐに切り込んでいる。
“勝ち組”とか“負け犬”みたいな単純で人に優劣をつけるくくりでしか人をくくれないような世の中に、絶望感を感じる。そんなときに読むと葵の生き方や小夜子の選択に勇気付けられたような気がする。幸せの尺度は人それぞれ。
葵が高校生のときに出会った少女ナナコとの夏の思い出がキラキラ輝いていて、こういう出会いがあって、人は成長していって、感情を豊かにしていくんだな、と思った。
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