『エターナル・サンシャイン』 Eternal Sunshine of the Spotless Mind
私は必ずしも「マルコヴィッチの穴」「ヒューマン・ネイチャー」とチャーリー・カウフマン脚本もしくはミシェル・ゴンドリー監督作品を絶賛しているわけではないので、かなり不安を持ちながらこの作品を観ることに。(「アダプテーション」は面白かった)
でも、ジム・キャリーとケイト・ウィンスレットの組み合わせは絶対に観たかったし。
人間の記憶って曖昧なもので、自分の中で都合よく変えることもできるし、忘れたいことを忘れられることもある。でも、忘れられない記憶が私たちを苦しめたり、いろいろと指図をするってこともある。恋をした記憶は消すことができるのか?消されたと思っていても、自分の中に想い出は刻まれているのかも。そんな記憶の不思議な作用についての映画。
今までのカウフマン作品って、アイディアはとても突飛で面白いし、途中までとっても斬新ですごい、と思っていながらも後半は頭の中でこねくり回したような複雑すぎる構造についていけず、結局一発アイディアで終わっているところがあった。でも、今回は後半、多少ごちゃごちゃしながらも、時系列の切り離し方がわかりやすく演出され、結末までうまく収拾してされていると感じた。何しろ、メーンキャスト、特にジム・キャリーとケイト・ウィンスレットがいい!ジム・キャリーの“気の弱いいい人”ぶりと、ケイト・ウィンスレットの奔放な中に弱さを秘めた部分が非常に魅力的。ジム・キャリーが記憶を消されている最中に目を開き、ちょっと哀しげな表情を浮かべる時には泣きそうになった。
氷の上で二人が横になって夜空を見つめるショットの切り取り方や、冒頭の海岸でケイトを見かけるところのが光の加減がとても美しい。この二つのシーンだけで、いい映画だと直感してしまうくらい。
ジム・キャリー演じるジョエルの記憶を消そうとする際に、二人の恋の記憶が走馬灯のように駆け抜ける。消え去る寸前の思い出のなんと美しくせつないことか。消されていくスピードに追いつかれないように二人が走って逃げていったり、記憶の地図の中にない場所を捜し求めてジョエルの4歳の時の記憶に逃げ込んだりと、思い出の中の二人があちこち飛び回る描写が楽しい。その4歳の時の家政婦に扮したケイトのファッションが可愛い。
ジョエルが書く日記のイラストがシュールで奇妙な味わいがあって面白かった。彼が描くクレメンタインの絵は、体がガイコツだったりするんだもの。記憶消去会社の女性メアリーを演じたキリステン・ダンストの小悪魔ぶりも似合っていた。エンディングのベックの曲が、せつない余韻を残していてよかった。
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