『YUMENO』鎌田義孝監督作品
http://www.netcinema.tv/yumeno/
出演者も監督も無名な作品(しかも暗い話)ってすごく宣伝が大変だと思うけど、こういう映画には頑張ってほしい。まず、撮影が素晴らしい。最初は南北海道のちょっと荒涼とした小さな町で始まり、ラストには北北海道の白い世界と流氷へ。川の中に横たわる青年を捉えたロングショットが映画、って感じでいい。ヒロインのユメノが赤い上着を着ているのは、真っ白な雪の中で存在を際立たせるためだろうか。ロングとアップの使い方をわきまえているシネマトグラフィだ。
実は人殺しを正当化するようなところもなきにしもあらず…という映画は好きじゃない。なので最初のうちは「げ~」と思ったわけだけど(なぜヨシキが夫婦を殺したのか、時制をバラバラにしていることもあって全然わからなかった)、そのあたり、映画が進むに連れてちゃんと事の次第がわかるようになる。時制をばらす手法は、一歩間違えたらディザースターになるんだけどこの映画ではうまくいっているし、ひとりよがりにもならず、難しいことは何もない。
ヨシキとユメノとのストーリーはややありふれた面が感じられなくもなかったが、そこへ、父親に自殺されたばかりの男の子が登場して、この三人が北へ向かうというサブプロットが非常に効果的だ。別に3人の魂が触れ合っているわけではなく、子供にこんな邪悪なことをさせちゃっていいんだろうか、というくらいのことをさせてしまって、さらに最後の方ではその子供にさらに追い討ちのように悲しい出来事に遭遇させて。子供の母の新しい夫役の寺島進、出番が少ないけどさすがの演技。子供役の役者がすごくいい。幼いなりに、すでに世界に絶望している感じが良く出ている。将来かなりの美少年になりそう。ヨシキとユメノ役の二人の俳優も、演技がちゃんと観られるものになっている。日本映画に出ている最近の若い俳優の演技ってひどいものが多いけど、彼らはうまい部類に入る。
共感できない部分もある(監督もトークショーで、ヨシキには共感できないって言っていた)けど、共感を求めていない、ただどうしようもなく荒んだ心象風景が広がっている。そこも含めてよくできた映画だと思った。全体を覆う荒涼とした寂寥感がいい。渋谷シネパレスでレイトショー公開中。
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