『ボーン・スプレマシー』The Bourne Supremacy
マット・デイモン苦手である。やっぱり“ジミー大西”の刷り込みが効きすぎたせいだろうか。『リプリー』の時の気持ち悪い役づくりが印象に残りすぎたからだろうか。しかし顔が良くないのにこの人は売れている。『オーシャンズ12』にも出ているし、『インファナル・アフェア』をマーティン・スコセッシがリメイクする企画にも、アンディ・ラウの役で出演するとのこと。ちなみにトニー・レオンの役で出演するレオナルド・ディカプリオは数年前にフィリップ・シーモア・ホフマンに似ていることに気がついてから、フィリップ・シーモア・ホフマンにしか見えなくなった。
でも、この映画はちょっと観てみたかった。前作の『ボーン・アイデンティティ』も面白かったし、本作の監督は『ブラディ・サンデー』のポール・グリーングラスだしすごく評判も良い。
渋い映画である。凄まじいカーチェイスがある以外は、アクションも派手ではない(武器ではなく、素手と頭を駆使したもの)、台詞も非常に少ない。デイモン演じるボーンはすげえストイックで、まさに殺人マシーンって感じだ。静から動への一瞬の切り替えが緊迫感を生む。顔には難ありだが体はマッチョに作りこんであって、体の動きの切れが実によい。感情もほとんど表に表さず、それだけにラストのネスキーの娘とのエピソードがエモーショナルなクライマックスへと収束させることに成功している。
撮影も彩度を落としていてスタイリッシュなんだけど、問題はカーチェイスやアクションシーンのカット割が非常に細かいこと。あまりにもめまぐるしくて観ている側が、一体何が起こっているのかわからなくなってしまう。クライマックスのカーチェイスは迫力がとてもあるので、ここまでカットを割らなくても十分疾走感や緊迫感を伝えられるのに、と思った。
それにしても、スパイというのは本当に一瞬の判断力がモノを言う職業なんだな、ということがよく描かれている。乗っている車が川に転落したら、車内の上部に残った空気を吸う。一緒に転落した恋人の息がもうないことを確認したらキスをして手を離して永遠の別れをする。窮地に追い込まれたときに身近にある意外なものを武器として使う。
一方、CIAの人々はボーンに振り回されっぱなしだし相当マヌケ。その中でジョアン・アレンは自分なりの正義を貫き通そうとしていて好感の持てるキャラクター。相変わらずカッコいいおばさんである。ジュリア・スタイルズって前にもまして不細工になっているなあ。フランカ・ポテンテも老けたし、綺麗な女の人はラストに登場するネスキーの娘だけ。(ロシア人のバレリーナらしい)
あと、ボーンを追跡するエージェントのお兄さん、どこかで見た顔だと思ったら『ロード・オブ・ザ・リング』のエオメルの中の人(カール・アーバイン)だった。濃い目の顔立ちがちょっとワイルドでセクシーなんだけど、ニュージーランド人とは。(ドイツ語やロシア語も喋っていた)
スパイ関係の映画ってヨーロッパを舞台にしているのが多い。悪役に東ヨーロッパ、特にロシア系という設定が一番無難なんだろうな。でも、ヨーロッパの街の風景を映画の中で観られるのはいい。思わず日本を捨てて移住したくなる。
細かすぎるカット割りという問題はある。恋人を殺され、ヌレ衣を着せられたり記憶の断片に悩まされながらも、終始クールなボーン。そのクールさが、内面に抱える闇の深さを感じさせるけど、3部作のうちの2作目ということで、まだ彼自身の決着は先に延ばされたという感じが強い。
でも、この禁欲的な雰囲気は割と好き。
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