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2005年1月

2005/01/30

レニングラード国立バレエ『海賊』

Pht0501291921Kバレエの「白鳥の湖」のチケットと「映画芸術」のベストテン号が届く。「映画芸術」は対談に参加しているわけなんだけど。でもやっぱり『ユダ』が1位なのってどうなんだろう、と思う。劇場で一回、ビデオでも1回観ているんだけど、それでもこの映画はわからないから。やりたいことはよくわかるし、意欲的な作品なんだけど、淡々としすぎているし、知的障害者を天使に見立てているというのも好きじゃない。こういう映画が作られるから、日本映画って面白くないと言われちゃうんだと思う。その上ビデオ撮りだし。

評論家の方が挙げられている映画のタイトルを観ていると、本当に私って最近映画を観ていないんだな、と反省することしきり。今月も終わろうとしているのに、まだ2本しか映画を観ていないし。 映画を観る習慣が体から抜けてしまった気がしてしまう。

東京文化会館でレニングラード国立バレエ『海賊』。秋に観たガラ公演『ルジマトフのすべて』のルジマトフの『海賊』PDDが良かったので。しかし今日のルジマトフは心なしか元気がなくて、前回の気迫が感じられなかった気がする。得チケで取った4階右サイド一番後ろの席だったというのもあるのかもしれないけど。『海賊』は奴隷アリが主役ではない作品なのでルジマトフの踊りももともとそんなにあるわけではない。しかしマネージュで全然飛んでいなかったのにはちょっとショック。

一番印象に残ったのは、キャラクターロールが得意なビルバンド役のクリギン。濃厚な演技で観ていて楽しい。1幕の終わり、財宝を盗み出そうとして捕まってしまうところの目を見開いている姿などには大笑い。役者だのう。メドーラ役のペレンはキビキビと踊っていて清潔感と勢いが感じられる。パ・ド・トロワのヴァリエーションでもトリプルを入れたりしてずいぶん回っていたけど、たまにちょっと傾いている気がしなくもなかった。しかし全体的にはかなり綺麗。ギュリナーラ役のミリツェワは可愛らしかった。
そしてコンラッド役のシェミウノフ。身長195センチとのことで、でかい!顔はかなり濃い目。メドーラとのラブシーンはなかなかセクシーだったし、きちんと踊っていていい雰囲気のダンサーだけど、まだスターのオーラが足りない。アフメット(他の版の役名ではランケデム)のシェヴァコフは、奴隷商人にしてはちょっとかわいすぎだったけど、台の上での踊りは迫力があった。

『海賊』という作品自体の問題なのかもしれないけど、3幕の群舞が長すぎて作品のエキゾチックな雰囲気にもあっていなくて退屈。3幕は男性ダンサーの踊りがほとんどないし、パ・ド・ドゥやパ・ド・トロワも2幕でほとんど終わり。1幕、2幕の東洋的な怪しくてイケイケさが続けばすごく楽しいのに、ちょっと物足りない感じだった。

マールイ(レニングラード国立バレエ団)の舞台を観るのはすごく久しぶりだったけど、各ダンサーの技量は揃っていて、カンパニーのレベルは高いのではないかと思った。もう少し派手になってもいいと思うんだけど。
(写真は、会場ロビーに展示されていたメドーラの衣装。実際にはもっと鮮やかなブルー)

2005/01/20

『ネバーランド』&腹部激痛

親が試写会で観たらしく、お正月に実家に行ったら「この映画すごくいいわよ」と前売り券とプレスまでくれたので、観に行く。

多分「ピーターパンの誕生秘話」という予備知識では観に行かなかっただろう映画だけど、よい映画だった。最近年のせいか、涙腺が弱くなって困る。

舞台好きとしては、映画のオープニングがジョニー・デップ扮するバリの舞台初日から始まるところが嬉しい。その舞台が不評で落ち込むバリを「舞台(play)は遊び(play)じゃないか」と慰める劇場主(ダスティン・ホフマン)。載っていた酷評が切り抜かれて穴が開いた新聞を通して、公園に佇む未亡人シルヴィアと4人の子供たち一家が見えるところも洒落ている。(思えば、自分の舞台を覗き見するファーストシーンから、ラスト近くの舞台シーンまで、穴からのぞいたり、扉から外やファンタジーの世界に飛び出るところまで、“穴”のモチーフが多用されている)

妻とのギクシャクした関係から逃避するように、自分も子供のようにシルヴィアの子供たちと無邪気に一生懸命に遊ぶバリが楽しげ(だけど痛々しい)。インディアンに扮していたり(ジョニー・デップにはネイティヴ・アメリカンの血が流れている)、海賊を演じてみたり(もちろん、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の役とそっくり)、ジョニー・デップファンはにやりとするところも用意されている。
ジョニー・デップって比較的演技が大げさな人かな、と思っていた。が、この映画では抑え目で、彼本来の演技のうまさが光っている。バリは妻にちゃんと向き合うことができず、虚構の世界に逃避しがちな変人だけど、“ちょっと変わった少年っぽい人”で魅力的に描かれている。

シルヴィア役のケイト・ウィンスレットがとても良い。貧しくても誇り高く、死に対しても毅然と立ち向かっている心の通った女性を好演。一方、シルヴィアの母親で、どちらかといえば憎まれ役のジュリー・クリスティもさすがの存在感。バリを家から追い出そうとするのに、実は彼がこの家に欠かせない存在だと知っていく過程を見事に演じている。バリの妻役のラダ・ミッチェルは、芸術家の妻とは何たるべきかを理解はしていないけど、彼に向かい合ってもらえず心が通わなくなる寂しさを漂わせていてシンパシーを感じられるキャラクターだ。ピーターパン役のケリー・マクドナルドが可愛い。

父親の死そして母親の病に傷ついている子供たちを取り囲む現実がつらく厳しいだけに、そんな中でも人の心は自由で夢を見ることのできるという幸福が胸にしみる映画。想像力の中では人は幸せであるというところで、なんだかすごく泣いてしまったよ。一瞬しか出ないネバーランドの光景が素敵。子供向け、とするにはかなりほろ苦い映画で、ことさら無理やり感動的に仕上げようとしないところが気に入った。人によってはそれが物足りなく感じるかもしれないけど。

プレスを読んだら、シルヴィアの4人の子供たちは実際にはその後かなり不幸な人生を送ったみたいで、ちょっと悲しかった。でも、「ピーターパン」の初日にバリに話し掛けた老婦人がシルヴィアの孫なのだそう。

映画を観終わって家に帰ろうとバスに乗ったところ、突然腹部の激痛に襲われて死ぬかと思った。バスの中で何度も気を失いかけて、だんなにも救急車を呼ぼうかと言われたほど。自分にしては珍しく10時前に寝たのだけど。

で、翌日念のために医者に行ってきて、超音波とレントゲンを取ってもらった。
血液検査の結果はまだなんだけど、とりあえず(たぶん)大きな病気ではないようだ。

しかし、医者に言われたのが
「胃が異常に大きく膨れていて、胃と腸にガスがたまっていますね」
「食べ過ぎみたいなんで、食事を控えてください」(アルコールなどはもってのほか)
また日を改めて胃カメラも飲もうとは思うのだけど。最近は胃カメラも進化していて、鼻から入れられるのだそうだ。

食べすぎですか。

なんか情けない。 レントゲン写真で見た自分の胃、脳みそくらいの大きさだったよ。

2005/01/16

新国立劇場『白鳥の湖』1/10

怒涛の連休の〆は新国立劇場での「白鳥の湖」(酒井はな&山本隆之主演)。同じ日にやるレニンググラード国立バレエの「白鳥」と迷ったんだけど、会場(だだっぴろくて「シカゴ」を観てからもう二度と行かないと思った)とチケット代が安いのでこちらにしてしまった。

で、この4日間でバレエ観劇3回のオールナイト飲み1回、前の日も新年会で終電帰り…というわけで疲れていたこともあり、なんとマヌケなことに開演時間を間違える。間違えていたことに気がついたときには、すでに開演時間が迫っているのにまだ家にいた!というわけで1幕1場を観ることができなかった。なんという愚か者。贔屓のダンサーの一人であるグレゴリー・バリノフ君を観ることができなかったよ。

はなさんの舞台を観るのは一昨年の「マノン」以来。良かった。一昨日にジリアン・マーフィのテクニシャンだけどデカイ白鳥を観ていたので、違いが際立っていた。とても繊細で儚げだが、上半身がしっかりしていて(ごついくらい)腕は細く筋肉質で意志を感じさせる。腕の表現力が素晴らしい。ホール・ド・ブラもきれいで、白鳥の“人間ではない、でも幻影ではなくてしっかり生きている”感じがした。あえて難を言えば、化粧が濃いこと。オリーブのモデルをやっていたくらいで美人なのに、その顔がわからないくらいキツいアイメイクで、オデットなのにどうよ、と思ってしまった。
オディールの彼女は一転、とても妖艶で力強く悪~いイメージ。コーダでは、さすがにジリアンほど回ってはいないけど、軸が一本通っていてまったくぶれない。

王子役の山本さんは、とにかく端正。この人はちょっと回転系が弱くてテニクック的にはもう少し頑張ってほしいところもあるが、ノーブルで美しく、素敵なのである。「白鳥の湖」の王子は基本的に情けなくて優柔不断、ダメダメでしかも根暗というカッコ悪い要素が強いのだが、山本さんは白鳥の王子にしてはカッコよすぎるくらい。新国立劇場の「白鳥」は王子が悪魔を倒すパターンなのでますます頼りがいがあるように見える。

ロットバルトの市川さん。体の線も踊りもきれいだけど、少し力強さに欠けるかも。それよりも、ヴィジュアル系のミュージシャンみたいな白塗りに黒紫の口紅(おちょぼ口)というメイクが強烈だった。2幕では長いラーメンパーマで笑ってしまいそうだった。一昨日観た牧版よりもロットバルトは戦うし活躍するしオデットをリフトするし、見ごたえはあると思う。道化役の吉本さん、私の中ではけっこう不安定なダンサーだったのだけど、今回はかなり頑張っていて、やや大げさな演技もアクセントになっていて好印象。

新国立劇場は群舞の美しさに定評があるが、今回もその長所は遺憾なく発揮されていた。特に4羽の小さな白鳥の踊りは一糸乱れずきびきびしていて可愛らしかった。ここは女性ダンサーがみんな背が高いので小さくないんだけど。

全体的に充実した舞台だと思うけど、音楽の演奏のテンポが遅いので1幕2場や3幕は少し退屈に思えるところも無きにしも非ず。3幕は他の版よりも長いから、もう少しテンポを速くして、と思ったが。

最近バレエを語りだすと長くなりすぎだわ。

2005/01/13

『カンフーハッスル』功夫

朝帰り後、少し仮眠して洗濯をして新宿へと出撃。新春『カンフーハッスル』オフなのだ。

実は新宿ミラノ座で映画を観るのって超久しぶり。どれくらい久しぶりかと言うと、最後にここで観たのって『ハンニバル』。大体そもそも新宿には極力行かないというのがあるんだけど。椅子が新しくなっていてゆったり配置されているのには驚いた。でも、劇場ロビーに入ってすぐ喫煙所があってとても煙たいのはNG。今時は室内でタバコなんて吸えるほうが間違っている。映画の予告編前に「映画鑑賞マナー講座」と映像をかけていたのはいいことだと思うけど、“携帯はオフかマナーモードにしましょう”ってマナーモードもダメじゃん、と思うわけだが。

さて、映画の方。私はチャウ・シンチーの映画って昔から好きで、『ゴッドギャンブラー』シリーズはDVDボックスを持っているし『少林サッカー』は香港盤と日本盤両方持っているし『食神』は映画館で3回観てこれももちろんDVDを持っている。マウスパッドは『喜劇王』だし日本未公開の『千王之王』までDVD持っている。
当然、『カンフーハッスル』もものすごく期待していたわけだ。

その期待は、というと半分叶えられ、半分裏切られたという感じか。「豚小屋」と呼ばれるボロ長屋の、いかにもダメダメそうな住民たちがすごく強いのにはうれしくなっちゃう。中でも3人のカンフー達人がしびれるほどカッコいい。赤いパンツを透けさせている仕立て屋なんかもう最高。市井で地道に貧しく暮らしている人たちが実は凄腕、という設定は私好み。そして彼らを上回るカッコよさなのが、この長屋の管理人夫妻!後半の彼らがカジノに乗り込むシーンなど、マカロニウェスタンっぽくてしびれる。(彼らを演じた俳優たちは、かつてのカンフー映画のアクションスターだったということを後で知ったわけだが、こういうオマージュの捧げ方、いいね) あと、『少林サッカー』では歌手志望の青年として爆笑を誘った青年が、いつも半ケツの理髪師で今回も笑わせてくれる。

一方、街を支配しているギャングたち。冒頭、彼らが少しずつ勢力を増すのに比例して、ダンスする彼らの人数が増えていくという演出が洒落ている。俯瞰からのダンスシーン、面白い。前半はすごく凶悪で強いのに後半だんだんヘロヘロに情けなくなっていくというギャップが楽しい。

欠点としては、やや残酷なこと。香港武侠映画なんて残酷なものだ、といわれれば確かにそうなのかもしれないけど、愛すべきキャラクターの一人がアッサリ暗殺者に首ちょんぱされるのはちょっと悲しい。あと、主人公であるはずのチャウ・シンチー演じる男がなかなか活躍せず、後半拳法の極意を身につけて強くなっても、アクションがCG使いすぎで生味感がない。前半の達人たちのアクションが凄いだけに、しょぼく見える。そのCGだって今のハリウッド映画にも多用されているものと変わりないし。このあたりもう少しオリジナリティを出してほしかった。『マトリックス』のユエン・ウーピンをアクション監督に使っているから仕方ないのか。(アクション演出の一部はサモ・ハン・キンポーだが)

しかし大ヒットを飛ばした後の次回作でも、下ネタ系の下品でくだらないギャグを使っている点は愛すべきところだ。蛇に噛まれてシンチーが唇ビローンとなるところなんて死ぬほど笑った。多分一般ウケという点では『少林サッカー』の方が上だろうけど、これだけ自分のコダワリであるところのカンフーに対する愛情とお下劣ギャグをマニアックなまでに入れているシンチーってたいしたものだと思う。

観終わった後は、歌舞伎町のドン・キホーテの隣のビルにある香港料理の店へ。火鍋と点心食べ放題。ここの点心は食べ放題なのに相当おいしい。店員が少なくてなかなか注文にこないけど、値段も安いしお得。気がつくと終電になってしまった。新宿は遠いよ。

アンヘル&ジリアン「白鳥の湖」再び

この連休は息つく暇も寝る暇もなかった。遊んでいて、だけど。

札幌から帰省中の友人や大学関係の友達と東京駅でお茶した後、また東京文化会館で牧阿佐美バレヱ団「白鳥の湖」。アンヘル&ジリアン3連発の最終日。

大体は前回書いてしまったので詳しくは書かないけど、違いとしては、まず2回目の舞台なので、アンヘルもジリアンも役に対する解釈が深くなったのでは、と思った。アンヘルは暗い情熱を秘めた王子。だが3幕の花嫁候補たちを品定めする場面では魂ここにあらず、という感じで苦悩の表情を浮かべながら重く沈んでいた。途中から彼女たちに見向きもしないで目を伏せる。オディール登場の時に顔をパッと明るく輝かせ、嬉しそうに笑うところは、ノーブルさを保ちつつ陰影を際立たせている。

ジリアンの白鳥は大きく若々しく、意志を感じさせながらも愛らしい。一昨日より調子は良さそう。黒鳥のPDDの回転の速さは言うまでもないけど(また4回転!?)、長い脚をダイナミックに上げていて、強く自信に満ち溢れている。

さて、終演後食事をして新宿へ移動。映画マスコミ関係の大新年会。いろいろと小説の話とか格闘技の話とか“ちょい悪親父”の話とかしてとても楽しく盛り上がるが、体力がなくて3次会のカラオケでは沈没。結局バスを3本乗り継いで朝帰り。早朝は寒いね~。

2005/01/12

『ダーク・レディ』

新潮文庫
リチャード・ノース・パタースン作

「このミステリがすごい」の2004年度海外ミステリ7位作品。
“ダーク・レディ”と異名を取る検事局殺人課の課長ステラ。寂れた鉄鋼の街で、街の起死回生を狙った野球スタジアムの建設計画推進派市長と、反対派の黒人対立候補。開発会社の幹部と、ステラの元恋人である弁護士が殺された…。

被害者たちがセックスとドラッグにまみれた不名誉な殺され方をした一方、実はステラも現在の地位は元恋人のコネで手に入れた、というわけでリーガルサスペンスというよりは人間の欲望を描いた作品。か、と思いきやどちらかというとポリティカル・サスペンスというか政治と裏社会の利権構造を描いている。

美人でエリート、出世のために自分の感情を押さえて生きてきた孤独なヒロインなのだが、今ひとつ女性として共感しづらいキャラクターだ。男から見て絵に描いたような部分があるというか、いかにもありがち、という感じだから。個人的に、恋愛関係を社会的地位獲得のために利用するヤツはキライだし。“ダーク”という異名を取るほど人間の暗黒面は感じさせない、ダークというよりアイス、という存在。彼女と部下の刑事との淡く切ない恋の描写はなかなか良かったが、彼女にはもったいないよ、彼は。

斜陽の街の寂寥感ある描写と、野球スタジアムに希望を託した人々の夢と野望、ヒロインがWASPではなくポーランド系だったり人種問題に踏み込んでいたりすること、悪役であるはずの開発会社若社長がとても魅力的であることなど、いい点もあるし、筆力がある作者であるのはよくわかる。上下2巻一気に読める。だけど、やっぱりヒロインの描写が浅いし、苦悩が今ひとつ伝わってこなくて共感できない。登場人物が多くて、名前を覚えるのが大変。

で、よくよく、何でこの小説が好きになれないのかを考えたら、ヒロインがカトリックであるというところに行き付いた。つまりは、ガーターベルトにハイヒール姿で殺されたことがどんなことよりも不名誉であるということを強調しているということ。途中で、清廉潔白そうな別の登場人物にも女装癖や同性愛志向があったことが明かされる。そういった倒錯的な性癖を徹底的に否定している、カトリック原理主義的なヒロインが気に食わないということだ。自分の欲望を認めようとしない、あまりにも禁欲的な彼女は冷たい印象を与える。著者あとがきで友人のジョージ・ブッシュに感謝する、とあるがまさかあのブッシュ?

いかにもハリウッドで映画化されそうな感じの話ではある。

2005/01/11

牧阿佐美バレヱ団新春特別ガラ

続いて金曜日の牧阿佐美新春特別ガラ。3部構成。

1部はバランシンの「セレナーデ」。去年のNYCB来日公演で本場モノを観たわけだけど、NYCBの男性ダンサーがいくらもっさりしている人が多いとは言え、ダーシー・キースラーやマリア・コウロフスキーがいるわけで、さすがに日本人が踊るのとは違う。決して悪くはなかったし、逸見智彦はやっぱり美しい。でも違和感は拭えなかった。

2部の1作品目はまたまたバランシンのチャイコフスキー・パ・ド・ドゥ。菊地研と佐藤朱実。う~ん一言で言えば音に乗り切れていない。バランシンは身体で音楽をいかに表現するかが一番大事なので、それがないとつらい。
「ル・コンバ」。吉岡まな美と逸見智彦。兜をかぶった男と女が、恋人同士とは気付かず刺し違えてしまうというストーリーからは、たしかに顔が見えていてはまずい設定なのだけど。でも、兜をかぶったままで顔が見えず、しかも前半は延々と馬に乗っている(実際に乗っているわけではない)描写が続くのですごく退屈。後半はさすがにドラマティックにはなるけど、ガラで、二人しか登場しなくて、この演目というのはちょっと面白くないのでは?
「アルルの女」草刈民代とイルギス・ガリムーリン。ローラン・プティの作品だけど、やっぱりこの部分だけの抜粋ってちょっとわかりにくいし女性の見せ場がほとんどないので…ガリムーリンはちゃんと踊れているけどムチムチしすぎ。新国立でアブデラーマンを演じた時はよかったんだけど。

で、やっと待望のゲスト、アンヘルとジリアンの「ライモンダ」。ここまでが長かったよ。
アンヘルのジャン役ってちょっと想像しづらいのだが、悪くなかった。端正な騎士にはどうしても見えない部分はあるものの(白いマント似合わないだろうし)溌剌としている踊りは観ていて気持ちがいい。どうしても10月新国立劇場の吉田都があまりにも優雅で流麗だったので、その分ジリアンは大雑把に見えやすい。強靭なポアントを生かしてヴァリエーションは非常に安定しているけど、上半身のアラが目立つ。柔らかさは十分なのだが。特に胸が大きくてユサユサ揺れるのが。もちろん、フェッテはすごくよく回っていて、テクニシャンぶりは見せ付けていた。

そして待っていました!トリはドン・キホーテのグラン・パ・ド・ドゥ。ABTガラのDVDでもう何十回も観ているアンヘルのバジル。あれも7年前になるので、今回のガラでの彼を観て、格段に進歩していることを実感。もともと「自分はスペイン人だし、スペインの男としてバジルは大好きな役」と語っているとおり、彼の個性に本当に似合っている。ほとんどのお客さんもこの演目での彼の回転を楽しみにして来ている訳だし。

いや~すごいものを見せてもらいました。すごい回数を回るのはもちろんだけど(いやあ、本来の振付を相当変えているはず)、速い速い!ちょっと髪が伸びすぎているのだが、髪の毛もブンブン回って乱れまくり。彼特有の見得の切り方(後ろから振り向いて100万ドルの笑顔を見せる)も魅力的。これを見れば元気百倍って思う。
ジリアンのキトリもおきゃんな感じで似合っていた。ここでもアンヘルに負けじと回転しまくり。盛り上がること盛り上がること!
ホント、自分たちの役割を心得ていてサービス精神満点。これぞスター。

楽屋口で見かけたアンヘル、ちょっとやつれた感じで頬がこけていたのが気にかかる。体調は大丈夫なのか?ジリアンは舞台メイクがちょっとキツくみえるのだが素顔はベビーフェイスでとても可愛いらしい。

2005/01/10

牧阿佐美バレヱ団「白鳥の湖」1/6

オデット/オディール:ジリアン・マーフィ
王子:アンヘル・コレーラ
悪魔ロットバルト:森田健太郎
パ・ド・トロワ:逸見智彦、田中裕子、佐藤朱実
王子の家庭教師:小嶋直也

この週末、バレエ鑑賞4回の新年会2回、映画鑑賞1回という充実しているけどへとへとになる日々だった。

ABTアンヘル・コレーラとジリアン・マーフィをゲストに迎えての牧「白鳥の湖」。牧は去年「リーズの結婚」を観たくらいで実はほとんど観たことがないのだった。

振付はウェストモーランド版。白鳥はいろんなヴァージョンがあるが、今回はマイムの多用、3角形のモチーフを使った群舞が特徴的だったと思う。1幕は乾杯の踊りではあまり踊りがない、道化もしくは王子の友人も登場しないというのが物足りない感じ。パ・ド・トロワはとてもよくて、特に逸見智彦が王子以上にノーブルで美しい(スタイルもアンヘルよりいいし)。 家庭教師役の小嶋直也が老けメイクでよたよた演技をしつつ、王子と小芝居をしていて、観ていて楽しかった。

2幕は、コール・ドについては足音がやや大きい以外は非常に揃っていて美しい。だが音楽のテンポが少し遅すぎた。4幕のオープニングは円形のフォーメーションから少しずつ白鳥が起き上がり、息を呑むばかりの幻想的なシーンとなっている。3幕は、各国の民族舞踊が、それぞれの花嫁候補の応援団的になっているのが微笑ましい。ナポリの踊りは、タンバリンを使用していてかなり複雑な動きをきびきびと踊った橘るみ、今勇也がとてもよかった。スペインで再び登場の逸見さん、今回はかっこいい!本当にこの人は踊りが綺麗。

さて、肝心のゲストふたり。実はアンヘルの王子も、ジリアンの白鳥も去年ニューヨークで観ていたんだが、その時はそれほどよくなかった。特にアンヘルはどうしちゃったのか、と思うくらいの不調で。しかし、今回、二人とも見違えるくらい頑張っていた。

ジリアンは、4階から観るととっても胸が大きいのが気になる。手足がとても細く長いし顔も小さいのだが、カラダがしっかりしていて背が高いこともあって大柄に見える。(アンヘルが背が高くないので、アンヘルの相手役を務めるにはちょっと大きい?)
が、ひとつひとつ丁寧に踊っていて好感度大。特に2幕の登場のところでのマイムは上手で、スワンに変えられてしまった悲しい境遇がよく伝わってきて、切ない。可憐でありながら、白鳥たちの中に入っても飛びぬけた存在感と華があり、テクニックもある。つま先がとにかく強靭。
が、やっぱり本領を発揮したのが3幕の黒鳥のパ・ド・ドゥ。オーラが強く王子を誘惑しようとしながらも、近寄られるとぴしゃっと撥ね付ける強さ。満ち溢れた自信。そしてなんといっても、回転がすごい。(いや、METで観た時も回転のすごい人だとは思ったのだが)32回転のところ、最初はひょっとして4回回った?シングルの間にトリプルを2回ほど入れて、最後にも仕上げにトリプル。会場では「一体目の前で何が起こったのか」とみんなが驚いて、ブラボーの嵐へ。

アンヘルは、1幕では疲れが見えて体がちょっと重かったし、やや踊りが雑に見えた。だが少しずつ踊っていくうちに調子を上げていっているのがよくわかる。イケイケのラテンの男♪というイメージが強いので王子役がどこまで彼に似合っているかは難しいところだけど、一生懸命暗い顔をして苦悩する王子を演じていた。この日の彼は、2幕で“暗い情熱”とでも言うべきものを発揮していて、ちょっと演技面で一皮剥けた印象があった。
が、やっぱりそんな彼が人が変わったように生き生きするのが3幕黒鳥PDD。「こんな振り付けだったっけ?」と思うほど最初からびゅんびゅん回る。コーダでは舞台の床がえぐれるのではないかと思うほどの凄まじい高速回転で、もう笑っちゃうほど。ジリアンも回転が得意なので、ほとんど意地になって回っていたのでは?ピルエット、9回転くらいしていたよ。フィギュアスケート並。今まであまり踊るシーンがなかった分、ここで思い切り踊れて本当に楽しそう。

その時の元気さで勢いがついたのか、4幕の登場シーンではいきなり大きなジュテでぴょーんと上手から登場して、びっくりしてしまった。MET公演ではヨレヨレで、登場しつつ転んでいたのに…。こんなに元気いっぱいの4幕の王子は初めて。

4幕の演出の難点は、悪魔ロットバルトがあまり強くない上、白鳥たちがオデットと王子の味方として敢然とロットバルトに立ち向かい勝利する流れになっているのに(この白鳥たちの抵抗には感動したけど)、白鳥と王子は湖に身を投げて死んでしまうことである。この演出だったら、正義が勝つパターンの方はあっているのでは、と。ロットバルトがほとんど踊らず迫力もないことに問題があるように思える。せっかく3幕で盛り上がったのに、4幕で地味に終わってしまい感動も薄い。

いずれにしても、アンヘルにもジリアンにもプロ根性というものを見せてもらった気がする。一生懸命踊る人を観ると気持ちいいね!感動したというより面白かった舞台だった。

2005/01/05

『僕の彼女を紹介します』

一言で言えば、すごくヘンな映画だった…。

前半は、チョン・ジヒョンが『猟奇的な彼女』以上に猟奇的な婦人警官を演じる。非番の日にひったくり犯と間違えて主人公の男を逮捕しようとし、だけど誰にも相手にされていない。しかしいつのかにか二人は恋に落ち、彼女はお弁当を作って彼の勤務先の学校に持っていったりする。(『猟奇的な彼女』のパターンを踏襲ですね)その後は彼女の死んだ双子の姉妹の話とか、自殺未遂2回とか落石事故とかいろいろあって、死をもくぐりぬけて涙、涙の感動シーンがあり、ラストではあらまびっくり!という展開となる。

『ラブストーリー』に出てきたハイミスおねえさんとか、『猟奇的な彼女』の5つ子のおじさんとか、お楽しみもあり。 逆にいえば初めてクァク・ジェヨン監督作品を観る人にとってどれくらい楽しめるか、が問題なのだが。

詳しく書くとこれから観る人の楽しみを削いでしまうのでこのへんにしておくけど、この恐ろしいまでの盛りだくさんな内容と怒涛の「ありえない」展開はすごい。映画としてはツッコミどころ多すぎだし偶然もありすぎだし穴だらけなのに、最後は泣かされたり笑ったりするから不思議だ。鍵盤がすべて白いピアノは素敵だったけど、ぐるぐるまわるカメラワークには悪酔いしてしまうかも。
X-JAPANだったりサティのジムノベティだったり音楽のベタベタな使い方も確信犯的で、悪趣味の一歩手前で踏みとどまっている。

しかしチョン・ジヒョンってすごくスタイルがいいし手足も長くて細いのになんで二重あごにすぐなっちゃうんだろう。それがなければアイドル映画としても完璧だったのに。チャン・ヒョクってもっと二枚目のイメージがあったんだけど。ソン・スンホンと同時期に徴兵に行ってしまっているはず。

2005/01/04

東京文化会館ニューイヤーガラコンサート

今年のお正月休みは短かった上、年末に体調を崩し、昨日も起きたら3時過ぎ、今日も1時半過ぎとダメダメで何もできない間に終わってしまった。ようやく年賀状に手をつけ始めた次第。

一応お正月のメーンイベントとなるはずだった東京文化会館での新春ガラ。3時開演なのに寝坊した上、箱根駅伝のゴールを見てしまったら一曲目に間に合わないし。開演と同時に到着したのに自分の席はおろか4階席なのに4階にもあがらせてくれないし。 4階席だけど、A席なんだよね。

ショスタコーヴィッチの「ジャズ・バンドのための組曲1番」。ショスタコーヴィッチ好きのオットのせいで、うちにショスタコーヴィッチのCDはゴロゴロしているのに、知らない曲名。それに、オーケストラだと思ったら小編成で拍子抜け。曲はハワイアン調だったりタンゴだったり、妙に牧歌的。考えてみるとバレエ「黄金時代」に使われている曲だった。 思わず黒Tシャツのウヴァーロフの姿が目に浮かぶ。

で、今回の売り物のオーケストラ→バレエへの舞台装置転換。オペラ座の怪人の扮装をした人が有名なテーマ曲をシンセで弾くと、舞台の後方がずりずりと下がっていき、オーケストラピットの部分も下がっていく。演奏の方は即興となっていく。と同時に天井から床らしきものが降りてきた。時間にして約15分。だが、途中で幕が降りてしまって、最後まで転換を見守ることができなかったのが残念。35分も休憩を取るんだったら、もう少し先まで見せてくれたっていいのに。

バレエは、東京バレエ団の「春の祭典」「ボレロ」。生贄役は初役の中島周と、吉岡美佳。二人ともとてもよかったと思う。生贄役は井脇さんの印象が強いのだが、吉岡さんも凛としていて激しく美しかった。中島さんの生贄は怯えと高まりといった感情が良く伝わってくる。今日は4階席で観ていたのだが、この演目は上から全体を見ると非常に面白い。最初に上半身を起こすのは若者役の大嶋正樹。2人ずつ上半身を起こすところを観ると、こっちの気分も乗ってくる。大嶋さん、リーダー役の木村和夫もとてもきびきびした動きでよかった。東京バレエ団は残念ながらかなり多くのダンサーが退団してしまったのだが、男性陣はかなり粒が揃っているし、充実していると実感。

「ボレロ」。メロディ役(真中の赤いちゃぶ台みたいなのに乗って踊る役)の上野水香、私やっぱりこの人はダメだ。マラーホフとの「白鳥の湖」を観て、ニ度と観るまいと思ったのにそれを観る前に今日のチケットを取ってしまって。今日は「春の祭典」のためにチケット代を払ったと思ってあきらめるしかないか。なんといっても力強さがなく、へなへな~という印象。音と動きが合っていなくて(全体的に遅れ気味)、しかも細かな動きを省略する悪い癖。軽い。足を高く上げさえすればいいというものではないだろう。女性ダンサーがメロディを踊る時は男たちを従えた女王様のように演じなくてはならないと思うのに、小娘が分不相応のことをやっているようにしか見えない。やっぱりギエムは偉大だった。リズム役のダンサーたちのほうについつい目が行ってしまう。ボレロを何回も観ている人の話では、振りの間違いも多かったよう。
あと、スキンヘッドも眩しい飯田先生が今回リズムの中に姿がないのは寂しい。 さっき「春の祭典」で踊りまくっていた木村さん大嶋さんがここでも奮闘。演奏は、ときどきホルンがこけたりしていたが、後半は俄然盛り上がってくる。生で聴く「春の祭典」「ボレロ」はいいな。これでメロディ役さえ良ければ…。

口直しに早く別の舞台が観たいよ。次は金曜日に牧阿佐美バレエ団withアンヘル&ジリアンだ。

2005/01/01

舞台ベスト10

あけましておめでとうございます。
一年が経つのは早いような遅いような。今年前半と去年後半がなんだかごっちゃになっていて、苦労しました。

とりあえず、さくっと自分が気に入ったベスト10を挙げてみよう。

6月18日  ABT「白鳥の湖」フリオ・ボッカ&ニーナ・アナニアシヴィリ
10月22日「ライモンダ」新国立劇場 イーサン・スティーフェル&吉田都
6月16日 ABT「白鳥の湖」マキシム・ベロツェルコフスキー&イリーナ・ドヴォロヴェンコ
7月24日ルグリと輝ける仲間たちBプログラム(ゆうぽうと)
5月2日 マラーホフの贈り物 Bプログラム(東京文化)
4月25日 「ロメオとジュリエット」(新国立劇場)デニス・マトヴィエンコ&シオマラ・レイエス
5月16日 ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ(パルコ劇場)
6月28日 ABT「ロミオとジュリエット」 アンヘル・コレーラ、アレッサンドラ・フェリ
10月2日 ルジマトフのすべて 東京芸術劇場中ホール

アメリカン・バレエ・シアターの「白鳥の湖」やっぱり本場まで観に行った甲斐はあったと思う。ボッカの王子様というのはすごく意外だったけどこれが良い!濃い!台詞が聞こえてきそうな熱演。ニーナもノリノリで全開バリバリで回転しまくり。白鳥の時のマイムの雄弁さ。黒鳥の時の大輪の華のような艶やかさ。本当は小柄なのに、とても大きく見える。ラブラブ光線出しまくり、キスしまくり。さらにすごいのが、なんとロットバルト役にマルセロ・ゴメスだったこと。セクシーな悪の魅力にやられっぱなし。主役三人が良いと、それ以外の出演者も引っ張られて大熱演になる。「白鳥」なのにこんなに熱いとは!愛の力で悪魔にも勝てそうな感じだった。

「ライモンダ」は吉田都さんが初めての全幕ライモンダとは思えないほどの繊細さ、品のよさ、高貴さ、なめらかさを見せてくれて、本当に素晴らしかった。一瞬でも見逃してなるものかと見入ってしまった。イーサンもいつになくノーブルで丁寧に踊っていて好サポート。

同じABTでも、マックス&イリーナの夫婦コンビによる白鳥は、一種の究極の「白鳥の湖」で、ニーナ&ボッカのような熱い白鳥ではなくひんやりと透明感があって澄んだ美しすぎて悲しすぎる白鳥。イリーナのアラベスクの美しさといったら! イリーナは現役のダンサーの中でも美しさは一番ではないか。

ルグリガラは、若手はまだまだ弱いと思ったものの、ルグリの円熟味が芳醇なワインのようで見事だった。ルディエールとの美しく哀しい「椿姫」、イレールとの「さすらう若者の歌」の魂を奪われる感じ、そして若手と共演した「フー・ケアーズ」の軽妙さと色んな魅力を発揮してくれた。若手ではヤン・サイズがいいね。蟹”男くんはまだまだこれからなので頑張って。

マラーホフはなんといっても、「コート」。目の錯覚を利用したとはいえ、目に見えるすべての瞬間、空中に浮かんでいるかのように重力をまったく感じさせない跳躍というのは驚異的。人間がある頂点まで達した時の陶酔感を感じて、それだけで涙が出てキた。マラーホフはこの他にも、2004年末にも「白鳥」「ジゼル」を踊っているし、今年はベルリン国立バレエ団の来日もあるしその精力的なところにただただ尊敬の年。

新国立の「ロメオとジュリエット」はアンヘルとフェリの日も良かったけど、急遽代打で登場したシオマラのジュリエットの可愛らしさにはやられた。フェリのジュリエットは最初から死の匂いをさせていて、純粋だけど死に向かって一直線、強い意志を秘めている。一方シオマラのジュリエットは可憐で無垢で人生の最後の数日で急に成長しちゃって、でもその成長に追いついていない部分がとても切ない。バルコニーのPDDだけでもう号泣。

唯一バレエではない「ヘドウィグ~」は三上博史のなりきりっぷりと歌唱力に驚いた。ちゃんと役を自分のものに昇華していて、メイクにも衣装にもオリジナリティがある。何かを極めている人の迫力を感じられた。

というわけで、アンヘル&フェリのロミジュリはABTのほうを選んでみた。アンヘルは高速回転ばかりが取り沙汰されているブンブン丸という印象が強い人だけど、まっすぐで熱情的でロミオという役にはとても合っていると思う。フェリのジュリエットという役への理解は凄まじく深くて、特に偽装自殺を決意するあたりの強さと純粋さは怖いほど。この二人の相性は素晴らしく良い。今回メトロポリタン・オペラ劇場で観た時は、マキューシオ役がエルマン・コルネホ。コルネホは愛嬌のあるキャラクター性、疾走感のある動き、軽やかで妖精のような跳躍で、非常に小柄だけど若手ナンバーワンの実力の持ち主で、マキューシオ役にはぴったり。演技力を磨けばロミオもいけるだろう。

ルジマトフは特別好きなダンサーではないけど、このガラ公演の内容はとても充実していた。ルジマトフ自身もう若くはないのに、同じ幕で「薔薇の精」「海賊」のPDDを驚異的な粘り腰で踊ってしまうのだから、やっぱりすごい人だ。体も柔らかいし、彼自身にしか出せない男らしくかつ妖艶な色がある。一方「レクイエム」ではとてもスピリチュアルな踊りを見せていて、芸術性が高い。「アダージェット」そして「ムーア人のパヴァーヌ」で共演したシャルル・ジュドも円熟味があって美しくよかった。いうまでもなく、「シルヴィア」を踊ったマキシム・ベロツェルコフスキー&イリーナ・ドヴォロヴェンコも最高。(このときすでにイリーナは妊娠中だったというのが信じられない)

10番目に何を入れるかはすごく迷うところだ。残念なことにABTでの最後の舞台となってしまったアシュリー・タトルとアンヘル・コレーラが共演した「ロミオとジュリエット」も良かった。ジュリエットの強さと儚さを両方見せてくれて。やはりこのシーズンで引退したティボルト役のイーサン・ブラウンは、まるでシェイクスピア役者のような存在感があって、これまた非常に印象的だったし。
仕事の関係で途中からしか見られなかった東京バレエ団のベジャール・ガラも、「ギリシャの踊り」そして首藤康之のラスト・ボレロが非常に良かった。
マシュー・ボーンのくるみ割り人形はあまり期待していなかったけど、とても楽しく、キッチュで怪しく面白い舞台だった。

今ひとつ面白くなかったのはアダム・クーパーの「オン・ユア・トウズ」だろうか。アダムのお茶目さはよかったけど、ちょっと退屈してしまった。でも彼には頑張ってほしい!

という感じで振り返ってみました。今年もいい舞台にたくさん出会えるといいな。

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