あけましておめでとうございます。
一年が経つのは早いような遅いような。今年前半と去年後半がなんだかごっちゃになっていて、苦労しました。
とりあえず、さくっと自分が気に入ったベスト10を挙げてみよう。
6月18日 ABT「白鳥の湖」フリオ・ボッカ&ニーナ・アナニアシヴィリ
10月22日「ライモンダ」新国立劇場 イーサン・スティーフェル&吉田都
6月16日 ABT「白鳥の湖」マキシム・ベロツェルコフスキー&イリーナ・ドヴォロヴェンコ
7月24日ルグリと輝ける仲間たちBプログラム(ゆうぽうと)
5月2日 マラーホフの贈り物 Bプログラム(東京文化)
4月25日 「ロメオとジュリエット」(新国立劇場)デニス・マトヴィエンコ&シオマラ・レイエス
5月16日 ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ(パルコ劇場)
6月28日 ABT「ロミオとジュリエット」 アンヘル・コレーラ、アレッサンドラ・フェリ
10月2日 ルジマトフのすべて 東京芸術劇場中ホール
アメリカン・バレエ・シアターの「白鳥の湖」やっぱり本場まで観に行った甲斐はあったと思う。ボッカの王子様というのはすごく意外だったけどこれが良い!濃い!台詞が聞こえてきそうな熱演。ニーナもノリノリで全開バリバリで回転しまくり。白鳥の時のマイムの雄弁さ。黒鳥の時の大輪の華のような艶やかさ。本当は小柄なのに、とても大きく見える。ラブラブ光線出しまくり、キスしまくり。さらにすごいのが、なんとロットバルト役にマルセロ・ゴメスだったこと。セクシーな悪の魅力にやられっぱなし。主役三人が良いと、それ以外の出演者も引っ張られて大熱演になる。「白鳥」なのにこんなに熱いとは!愛の力で悪魔にも勝てそうな感じだった。
「ライモンダ」は吉田都さんが初めての全幕ライモンダとは思えないほどの繊細さ、品のよさ、高貴さ、なめらかさを見せてくれて、本当に素晴らしかった。一瞬でも見逃してなるものかと見入ってしまった。イーサンもいつになくノーブルで丁寧に踊っていて好サポート。
同じABTでも、マックス&イリーナの夫婦コンビによる白鳥は、一種の究極の「白鳥の湖」で、ニーナ&ボッカのような熱い白鳥ではなくひんやりと透明感があって澄んだ美しすぎて悲しすぎる白鳥。イリーナのアラベスクの美しさといったら! イリーナは現役のダンサーの中でも美しさは一番ではないか。
ルグリガラは、若手はまだまだ弱いと思ったものの、ルグリの円熟味が芳醇なワインのようで見事だった。ルディエールとの美しく哀しい「椿姫」、イレールとの「さすらう若者の歌」の魂を奪われる感じ、そして若手と共演した「フー・ケアーズ」の軽妙さと色んな魅力を発揮してくれた。若手ではヤン・サイズがいいね。蟹”男くんはまだまだこれからなので頑張って。
マラーホフはなんといっても、「コート」。目の錯覚を利用したとはいえ、目に見えるすべての瞬間、空中に浮かんでいるかのように重力をまったく感じさせない跳躍というのは驚異的。人間がある頂点まで達した時の陶酔感を感じて、それだけで涙が出てキた。マラーホフはこの他にも、2004年末にも「白鳥」「ジゼル」を踊っているし、今年はベルリン国立バレエ団の来日もあるしその精力的なところにただただ尊敬の年。
新国立の「ロメオとジュリエット」はアンヘルとフェリの日も良かったけど、急遽代打で登場したシオマラのジュリエットの可愛らしさにはやられた。フェリのジュリエットは最初から死の匂いをさせていて、純粋だけど死に向かって一直線、強い意志を秘めている。一方シオマラのジュリエットは可憐で無垢で人生の最後の数日で急に成長しちゃって、でもその成長に追いついていない部分がとても切ない。バルコニーのPDDだけでもう号泣。
唯一バレエではない「ヘドウィグ~」は三上博史のなりきりっぷりと歌唱力に驚いた。ちゃんと役を自分のものに昇華していて、メイクにも衣装にもオリジナリティがある。何かを極めている人の迫力を感じられた。
というわけで、アンヘル&フェリのロミジュリはABTのほうを選んでみた。アンヘルは高速回転ばかりが取り沙汰されているブンブン丸という印象が強い人だけど、まっすぐで熱情的でロミオという役にはとても合っていると思う。フェリのジュリエットという役への理解は凄まじく深くて、特に偽装自殺を決意するあたりの強さと純粋さは怖いほど。この二人の相性は素晴らしく良い。今回メトロポリタン・オペラ劇場で観た時は、マキューシオ役がエルマン・コルネホ。コルネホは愛嬌のあるキャラクター性、疾走感のある動き、軽やかで妖精のような跳躍で、非常に小柄だけど若手ナンバーワンの実力の持ち主で、マキューシオ役にはぴったり。演技力を磨けばロミオもいけるだろう。
ルジマトフは特別好きなダンサーではないけど、このガラ公演の内容はとても充実していた。ルジマトフ自身もう若くはないのに、同じ幕で「薔薇の精」「海賊」のPDDを驚異的な粘り腰で踊ってしまうのだから、やっぱりすごい人だ。体も柔らかいし、彼自身にしか出せない男らしくかつ妖艶な色がある。一方「レクイエム」ではとてもスピリチュアルな踊りを見せていて、芸術性が高い。「アダージェット」そして「ムーア人のパヴァーヌ」で共演したシャルル・ジュドも円熟味があって美しくよかった。いうまでもなく、「シルヴィア」を踊ったマキシム・ベロツェルコフスキー&イリーナ・ドヴォロヴェンコも最高。(このときすでにイリーナは妊娠中だったというのが信じられない)
10番目に何を入れるかはすごく迷うところだ。残念なことにABTでの最後の舞台となってしまったアシュリー・タトルとアンヘル・コレーラが共演した「ロミオとジュリエット」も良かった。ジュリエットの強さと儚さを両方見せてくれて。やはりこのシーズンで引退したティボルト役のイーサン・ブラウンは、まるでシェイクスピア役者のような存在感があって、これまた非常に印象的だったし。
仕事の関係で途中からしか見られなかった東京バレエ団のベジャール・ガラも、「ギリシャの踊り」そして首藤康之のラスト・ボレロが非常に良かった。
マシュー・ボーンのくるみ割り人形はあまり期待していなかったけど、とても楽しく、キッチュで怪しく面白い舞台だった。
今ひとつ面白くなかったのはアダム・クーパーの「オン・ユア・トウズ」だろうか。アダムのお茶目さはよかったけど、ちょっと退屈してしまった。でも彼には頑張ってほしい!
という感じで振り返ってみました。今年もいい舞台にたくさん出会えるといいな。
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