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2004年12月

2004/12/31

今年観た舞台のおさらい

2004年に観た舞台のおさらいをしてみたら、なんと59回も行っているのでした。いや、本当はもっと行っているはずなんだけど、スケジュール帳と言うのをつけていないんで。
気が遠くなります。1回1万円として60万円くらいじゃん。

内訳ですが、ストレートプレー3回(全部新感線。新感線をストレートプレーを呼んでいいかわからんけど)。ミュージカル6回。残りがバレエ。バレエといっても、ほとんど演劇みたいなマシュー・ボーンのも含んでいます。昔はストレートプレーばかり観ていたのに。そして、最近ようやく気付いたことは、実はミュージカルがあまり好きではないということです。アンドリュー・ロイド・ウェーバーの作品は別にして。

海外で観たのはABT(15回!)とヒュー・ジャックマンの「The Boy from OZ」。

2005年は、すでにマシュー・ボーンの白鳥を6回と、お正月のアンヘル・ジリアン(牧阿佐美)、ハンブルク2回、新春東京バレエ団、新国立白鳥などのチケットを取っているので、すでに12回。あと、取れているかどうかわからないけどロイヤルの来日も申し込んであるし。さらにABTの来日とかもあるので、極力他は絞り込まないと、と自分に言い聞かせて見ます。収入がすごく少ないのに、やばいよこれは。

1月17日 東京バレエ団&ロベルト・ボッレ 白鳥の湖(東京文化会館)
2月13日 ニーナ・アナニアシヴィリの「白鳥の湖」(アプリコ蒲田)
2月14日 レッツゴー忍法帖(サンシャイン劇場)
2月14日東京バレエ団中国の不思議な役人(ゆうぽうと)
3月3日 マシュー・ボーンのくるみ割り人形(東京国際フォーラム)
3月13日 マシュー・ボーンのくるみ割り人形(東京国際フォーラム)
3月21日 マシュー・ボーンのくるみ割り人形(東京国際フォーラム)
4月1日 東京バレエ団ベジャール・ガラ(ゆうぽうと)
4月16日 ロメオとジュリエット(新国立劇場)アンヘル・コレーラ&アレッサンドラ・フェリ
4月17日 マシュー・ボーンのくるみ割り人形(ゆうぽうと)
4月18日 マシュー・ボーンのくるみ割り人形(ゆうぽうと)
4月24日 マラーホフのジゼル(東京文化)
4月25日 ロメオとジュリエット(新国立劇場)デニス・マトヴィエンコ&シオマラ・レイエス
4月29日 マラーホフAプロ(東京文化)
4月29日 オン・ユア・トウズ(ゆうぽうと)
5月2日 マラーホフBプロ(東京文化)
5月4日 髑髏城の7人 劇団新感線(新国立劇場)
5月8日  マラーホフBプロ(東京文化)
5月15日 オン・ユア・トウズ(ゆうぽうと)
5月16日 ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ(パルコ劇場)
5月30日 ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ(パルコ劇場)
6月6日 眠れる森の美女(新国立劇場)イーゴリ・ゼレンスキー&スヴェトラーナ・ザハロワ
6月13日 ベジャール・バレエ・ローザンヌA(ゆうぽうと)
6月15日  ABT白鳥の湖マルセロ・ゴメス&ヴェロニカ・パールト(メトロポリタン・オペラ劇場)
6月16日昼 ABT白鳥の湖デヴィッド・ホールバーグ&ミシェル・ワイルス
6月16日夜 ABT白鳥の湖マキシム・ベロツェルコフスキー&イリーナ・ドヴォロヴェンコ
6月17日  ABT白鳥の湖アンヘル・コレーラ&アシュレー・タトル
6月18日  ABT白鳥の湖フリオ・ボッカ&ニーナ・アナニアシヴィリ
6月19日昼 ABT白鳥の湖イーサン・スティーフェル&ジリアン・マーフィ
6月19日夜 ABT白鳥の湖マルセロ・ゴメス&パロマ・ヘレーラ
6月23日 ベジャール・バレエ・ローザンヌB魔笛(ゆうぽうと)
6月25日 ベジャール・バレエ・ローザンヌB魔笛 (ゆうぽうと)
6月26日 ABTコッペリア マルセロ・ゴメス、ジリアン・マーフィ
6月28日 ABTロミオとジュリエット アンヘル・コレーラ、アレッサンドラ・フェリ、
6月29日 ABTロミオとジュリエット アンヘル・コレーラ、アレッサンドラ・フェリ、
6月30日 ABTロミオとジュリエット マキシム・ベロツェルコフスキー、イリーナ・ドヴォロヴェンコ
6月30日 The Boy From OZ ヒュー・ジャックマン
7月1日 ABTロミオとジュリエット マルセロ・ゴメス、パロマ・ヘレーラ
7月2日 ABTロミオとジュリエット アンヘル・コレーラ、アシュリー・タトル
7月3日 ABTロミオとジュリエット イーサン・スティーフェル、シオマラ・レイエス
7月4日 ABTロミオとジュリエット マキシム・ベロツェルコフスキー、イリーナ・ドヴォロヴェンコ
7月18日プレイ・ウィズアウト・ワーズ(シアターコクーン)
7月19日ルグリと輝ける仲間たちA(ゆうぽうと)
7月24日ルグリと輝ける仲間たちB(ゆうぽうと)
7月25日プレイ・ウィズアウト・ワーズ(シアターコクーン)
8月15日ブラスト!(オーチャードホール)
8月22日東京バレエ団創立40周年記念ガラ@東京文化
9月4日東京バレエ団ドン・キホーテ@東京文化
9月24日ニューヨークシティバレエCプロ@オーチャード
9月25日ニューヨークシティバレエBプロ@オーチャード
9月26日ニューヨークシティバレエAプロ@オーチャード
10月2日ルジマトフのすべて@東京芸術劇場中ホール
10月11日髑髏城の七人@日生劇場
10月16日ライモンダ@新国立劇場 イーサン・スティーフェル&吉田都
10月17日ライモンダ@新国立劇場 アンドレイ・ウヴァーロフ&スヴェトラーナ・ザハロワ
10月22日ライモンダ@新国立劇場 イーサン・スティーフェル&吉田都
10月30日牧阿佐美バレエ団リーズの結婚@青山劇場
11月9日ウラジミール・マラーホフ&東京バレエ団白鳥の湖
12月25日くるみ割り人形@新国立劇場

2004/12/29

人体の不思議展と『刑事まつり』

東京国際フォーラムで「人体の不思議展」国際フォーラム近辺は凄い人で、まさかこれがみんな人体の不思議を観にきたのかと思いきや、ミレナリオに来ている人たちだったのだった。しかしミレナリオの会場で大音量で流れている音楽がすごい不気味。ホラー映画とかに流れてきそう。

「人体の不思議展」私こう見えても実はグロイもの苦手なんです。実は『ヴィタール』も解剖のシーンはちょっと怖くて死にそうだったのよ。しっかし大盛況で、デートできている方とか、ルミナリエのついでに来ているカプールとかいっぱいいて、趣味がいいんだか悪いんだか。だって死体の大展示会だよ。しかも5センチ単位でスライスされていたり、意味もなく弓を引いていたり、跳躍していたりヘンなポーズとっていたり。死んだ後どうやって体を動かしてああいう体勢を取らせたのか。どうやってこの標本を作ったかよりもそっちの方が知りたい。血管を固めているのは本当に綺麗だけど、コレが自分の体に中にあるんだよね。ササミのように骨からスライスされて広げられた筋肉を見ると、しばらく肉やモツ系は食べられない。あとはガンとか肝硬変とか脳腫瘍のグロ内臓系とか、胎児とかトラウマになりそうなものがたくさん。自分の体の中身がこうなっていると知ることができたのは貴重だけど、夢に出てきそうな気持ち悪さ。

ルミナリエと仕事納めが重なって食べるところはどこも満員。スタバでカフェラテを買って、有楽町のニッポン放送の中にあるイマジンシアターで「年忘れ 刑事まつり スペシャル!」。
http://event.1242.com/f-theater/ こんなところで上映されているとは、知らなかった。実は下北沢で「刑事まつり」が上映された時には満席で観られなかったのだ。今日の上映は黒沢清監督「霊刑事」青山真司監督「NOと云える刑事」田中要次監督「窯岡刑事」そして篠崎誠監督「忘れられぬ刑事」24分ヴァージョン。どれも面白かったよ。不気味な黒沢ワールド展開の「霊刑事」。その黒沢清が主演で「いや」としか言わない「NOと云える刑事」。中でも、BOBAさんの「窯岡刑事」は大杉漣の怪演ぶりと、ずっと引っ張ったオカマ&カミングアウトネタ、謎の英語字幕でおなかの皮がよじれそうになるほど笑った。BOBAさん、映画監督としてもいけるかも。篠崎さんのは、製作費全部持ち出しとは思えないほどの豪華版で、キャストからしてなかなかすごい。大森南朋が二人出ていたり、故青木冨夫さんも登場したり、原口智生による生首造形も(人体の不思議展を見たばかりだけに)味わい深いものがある。篠崎さんのトークショーがあったり、「NOと云える刑事」主演の寺島進の生写真がもらえたりとけっこうお得な気分だった。
あと二日間の上映が残っているので、時間のある方はぜひ。29日と30日、8時半からの上映。

2004/12/26

今年最後の観劇 新国立劇場『くるみ割り人形』

クリスマスの風物詩、バレエ『くるみ割り人形』が今年最後の観劇。「くるみ」といえばお子ちゃま向けのしょうもない作品といわれることが多いのだけど、やっぱりチャイコフスキーの音楽は素晴らしいなと改めて思った。それと、この間ロイヤルの「くるみ」をDVDで観て、この作品って実はちょっと怪奇風味もあって面白いんじゃないかと。
新国立劇場のワイノーネン版は面白みに欠けると言われていて、なるほど、たとえば東京バレエ団の生き生きとした感じとか、ロイヤルの華麗な部分というのはなかった気もするけど、期待しなかったせいか、かなり満足度は高かった。

王子役は初主役のマイレン・トレウバエフ。一応ワガノワ主席卒業、ペルミバレエコンクール入賞、元マールイ劇場ソリストという華麗な経歴の持ち主の割にはわりと地味な存在。ルックスも日本人の間に混じって違和感ないし。しかし!さすがに指先や足先まで細かく行き届いて美しく滑らかで安定した踊りを見せてくれる人で、実力派なので密かにファンだった。応援しているダンサーの初主役を観るわけで観る側としてもけっこう緊張してしまう。課題の表情の堅さが取れないところがあるけど、サポートもうまいしラインはきれいだし、いつもよりもスタイルも良く見えて主役デビューは合格でしょう。マーシャ役の西山裕子もかわいらしく正確な踊りでよくやったと思う。他は道化のグレゴリー・バリノフ、この人もとても上手できれいなダンサーなのにキャラターロールが多いね。人形っぽい存在感はこの役にピッタリだけど。トレバック(ロシアの踊り)の市川透も喝采を浴びていた。東洋の踊りは反面振付があまりにもつまらなくて一瞬意識が遠のきそうになった。

マイレン、次の主役の白鳥の湖は観に行けないんだけど、来シーズンも主役をいっぱい踊ってくれるといいな。

いずれにしても、全体的にはとてもよかった!
それから新国立劇場のパティオのクリスマスツリーがとてもきれいだった。いいクリスマスのすごし方ができたと思う。

2004/12/24

LIVE AIDに号泣

リージョン1盤を注文したのと(国内盤に比べて半分の値段)一緒に洋書を注文してしまいアマゾンの対応が悪かったこともあって、注文してから3週間経ってようやく昨日届いた。
1985年7月13日の伝説的なライヴ。ロンドンのウェンブリーアリーナに出演したフィル・コリンズが、今は亡きコンコルドで移動し、フィラデルフィアの会場にも出ているというのが凄い。

10時間分も入っていて4500円はお得。一家に1セット、家宝にすべきものでしょう。神棚に入れてもいいかもしれない。 安いリージョン1盤を扱ってくれているアマゾンに感謝しなければ。

実はまだ半分しか観ていないんだけど、もうすでに涙で画面が雲って見えないほど。なんといってもクイーンのパフォーマンスが凄すぎる。クイーンといってもカメラは95%フレディの雄姿を映しているわけだが。圧倒的な歌唱力は当然のことながら、パフォーマーとしての雄雄しくセクシーでカリスマ性あふれる動きが素晴らしい。ひとつの究極の、理想的なシンガー。彼だけだろうな、[We Are The Champions]を歌って許されるのは。本当に彼がいなくなってしまったのは人類の損失だ。

あと印象的だったのは、ものすごく若くてカッコよくておまけに惚れ惚れするような声で『ロクサーヌ』を歌ったスティングと、懐かしいスパンダー・バレエ。意外とスパンダー・バレエってライヴが良かったバンドだったんだ。ビーチ・ボーイズの『グッド・ヴァイブレーションズ』のわけわかんない感じも楽しそうでいい。ブライアン・フェリーはヘロヘロだ。バックにマーカス・ミラーとピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアを従えているのに。前半はロンドンのウェンブリーアリーナでのコンサートなので、今は一体何をしているんだろう、というイギリスのニューロマンティックス系のバンドがいっぱい出てきて、どことなくチープなシンセサイザーの音が心を和ませてくれ、ださい髪型に少し笑う。20年前の自分を思い出させてくれる。

残りの2枚、5時間分でどれくらい泣くんだろうか。

非公式だとここが詳しいと思う。
http://www.live-aid.info/

2004/12/20

アミューズCQNで『ヴィタール』

新しくできた渋谷の映画館アミューズCQNへ。CQNってまるでDQNみたいじゃない、なんて読めばいいんだろう。PICASSO347というビルの7階8階に位置している。とてもオシャレな建物で自分などが入るのには少し躊躇してしまうほど。おまけに映画館への入口が非常にわかりづらい。3階までエスカレーターで上がらないとエレベーターはないし、3台あるエレベーターのうち映画館に行くのは一台しかないので要注意。映画館そのものは開放感があって明るく、座席に段差があり落ち着いた色彩でいい感じ。女子お手洗いの洗面スペースが少なくて化粧直しがしづらいけど。新しい映画館だったらお手洗いまで気を使ってほしいもの。

さて、観たのは塚本晋也監督の新作『ヴィタール』塚本は実はDVDBOXを持っていたり、TOKYO FISTはアメリカ盤のDVDなんかも持っていたり。今回は解剖がテーマなだけに、医大の解剖実習シーンはグロ系苦手な自分はどうしようと思った。やっぱり自分は医者にはなれないなって。『オールドボーイ』の歯を折ったり舌を切るところは平気でも、自分と同じ人間が解体されていくところをみるのは不慣れで神経を逆なでさせられる。しかし解剖される人間と主人公の医大性とのつながりを見ていくと、どこか崇高なものすら感じられてくる。究極の肉体性と精神についての話だと思った。そしてこれはまた一種の凄絶な愛の形だと。

二つの世界を行き来して、現実ではどんどん抜け殻のようになっていく浅野忠信はいうまでもなく良い。そして今回のヒロイン二人も良かった。塚本の女性の好みというのは一貫しているな、と思うんだけど日本映画に出ているほかの女優たちとは違った個性を感じられる。死んだ恋人役の柄本奈美は牧阿佐美バレエ団のダンサー。(調べてみたら、私が今度観る予定のお正月のガラにも出演するらしい)バレリーナというのは、普通の俳優や女優と並べてもさらに細くて筋肉質できれいな体型をしているものだ。肉体性を伴っているということでは、今回の役にはうってつけだと思う。途中で披露するダンスは大島早紀子振付によるコンテンポラリー系のもので、砂の上で激しく体を投げ出す、非常に難易度の高いもの。クラシック中心のダンサーにとっては特に大変だろう。これだけ質の高い踊りなら、もう少し長く見せても良かったかもしれない。顔も目が大きくて可愛いし、これからまた映画に出演する機会があるかも。もう一人のKIKIは、いかにも塚本好みの美女で過去のヒロインを思わせる無機質でクールな感じがそそる。知的な医大生役にぴったり。

最近の日本映画は観念的なものが多いのでは、と思っていたけど塚本のように肉体を感じさせるものを観ると、ホッとする。ノイズの使い方とか交通事故の再現の仕方は相変わらずのパンクな塚本節。

パンフレットは内容は充実していたけど(撮影時のルポとか解剖学者との対談とか布施英利、宮台真司の評など盛りだくさん)1500円は高いでしょう。色のきれいな映画なのに写真はほとんどモノクロだし。装丁をあんなに立派にしなくていいから、せめて1000円以内に納めてほしい。さすがにこの値段では躊躇するのか、買っている人はほとんどいなかった。

2004/12/19

市川雷蔵祭 『眠狂四郎 炎情剣』

99年の恵比寿ガーデンシネマでの特集上映の時に3本くらいしか観られなかったので今回はもう少し観たい、と思っていたのに結局忘年会シーズンだったり仕事が忙しかったりで今まで行けず。
シネスイッチ銀座、予想していたけどやっぱり混雑していた。日本映画テレビ技術協会の会員割引が使えないのはどうかと思うが(だってニュープリントというわけでもない旧作なのに何様のつもり)。

隣の『ホワイトライズ』はガラガラだったようだけど、たしかにジョシュ・ハートネットじゃ銀座に来るおばさんは呼べないだろう。いっそのこと雷蔵2館上映にした方が客は入るのでは?今回の映画祭は期間も短いし、上映作品も(快楽亭ブラックさんも毎日新聞で書いていたけど)99年と代わり映えがしていない上、逆に前回は上映して普段は立ち見を出さない恵比寿で立ち見まで出た美空ひばり作品などはかかっていない。雷蔵出演映画はみんな面白いので、もっと色んな作品が観たい。

それと、シネスイッチはたくさんチラシを置いてくれているありがたい劇場なのだが、チラシを見るにつけ改めて近日上映の映画の本数が多いことに驚く。宣伝する側は大変だろう。ほとんどの映画は、パブリシティも広告もほとんど見ないから、きっとすぐに打ち切られてひっそりと消えていくのだろう。時間に余裕がある人はいいけど、普通の人はここまで見切れないだろうし。

さて、三隅研次監督作品の『眠狂四郎 炎情剣』、“女は数限りなく犯してきた”という“悪い男”狂四郎の陰の魅力。夫の敵を討とうとした女ぬいの助太刀を買って出たことから、命を付け狙われることになった狂四郎の話だ。ぬいという女が実はとんでもない悪い女。色香で男をたぶらかしては地獄へと誘う女を、中村玉緒がセクシーに熱演している。着物の上からとはいえ、緊縛シーンまでも披露した玉緒は、出産直後だったとのこと。「明日になればもうお前に興味はない」と冷たく言い放ってぬいを抱く狂四郎、その残酷な魅力がたまらない。でも、何も知らない下女の娘かよにはとても優しい。男でも女でも惚れずにはいられない、そんな危険な魅力を秘めた男なのだ。ラストの一振りでぬいを無情に斬って捨てて立ち去る姿には惚れ惚れ。鳴海屋の食えない主人を演じた西村晃も印象的。

2004/12/17

『ニュースの天才』(Shattered Glass)

久しぶりに川崎のTOHOシネマズに行ってきた。『21グラム』以来。困ったことに、チネチッタでも川崎TOHOでも、お正月映画一本で何スクリーンも占めていて、観たい映画があまりやっていないのだよね。最近都会が怖い(苦笑)で休みの日に渋谷とか新宿とか行きたくないし。

単館系ではこの『ニュースの天才』くらいしか川崎ではやっていないのだ。それにしても、チッタがいつも長蛇の列でチケットを買うのに15分くらいは平気で待たされるのに、TOHOはこの映画に限らず空いていること。街づくりっぽいコンセプトのチッタに対して、TOHOはさくらやとパチンコ屋の入っているビルの9階というのが敗因なんだろうか。音響はチッタ以上だろうし椅子も良くて非常にきれいな劇場なのにもったいない。

この映画、トム・クルーズが(仕事上のパートナーであるポーラ・ワグナーと)プロデュースしていると知らなかった。トム製作作品といえば『NARC』が地味ながらとてもいい映画だった。去年の秋にニューヨークに行ったときに公開されていて、新聞やTimeOutなどにも好意的な批評が載っていたので観に行った。

「New Republic」誌の若手記者が捏造記事を書きまくって、新編集長によって真相が明らかになるという実話を元にしている。主人公のスティーヴン・グラスの人物描写が秀逸。ヘイデン・クリステンセンがダサいメガネをかけて、いい演技を見せている。同僚の女性たちを巧みにソツなく褒めて編集部内での好感度をアップさせる一方で、ちょっと調べたらすぐわかるようなウソ記事を書いては目立とうとする青年。大胆な捏造をやっているわりには、突っ込まれると泣き言を言ったり「助けてくれよ」と頼ったりと人間の弱い部分を見せている。次から次へとウソを重ねても平気でいられて、半ば病的な嘘つきなんだけど、「こういう人、いるわあ」と思わせる。メガネの奥のヘイデンの大きな瞳がうろたえたり必死に訴えかけたり、本当はとてもハンサムなのに情けなくてカッコ悪くてちょっと同情しちゃう。ピーター・サースガード演じる新編集長の方は人望がなくて、かなり冷たい感じのする人で、実を言うと自分はこういう人は苦手だ。グラスに向ける憎しみのこもった冷ややかな目が相当やな感じ。更迭されてしまった元編集長派の編集部員が多くて、組織の人間関係の中で「仕事ができる人より、面倒見が良い親分肌の人のほうが好かれる」という困ったところを容赦なく描いている。こういうことってどこの会社でもある部分なのかも。ジャーナリズムに従事していなくても、この人間の弱さの部分というのは思い当たる節がある人が多いのでは。けっこう痛い。

『ロード・キラー』などでいつも「しょうがないダメな兄ちゃん」を演じることが多いスティーヴ・ザーンがライバルネットマガジンの編集者役。事件が起きた1998年当時の、紙媒体に比べてネット媒体は低く見られている部分が現れている。彼の同僚にロザリオ・ドーソン。そしてロザリオ・ドーソンと『KIDS』で共演したクロエ・セヴィニーがグラスの同僚役。人間味のある元編集長にハンク・アザリア(モデルとなった人物はイラクに従軍取材して犠牲になったそうだ)。演技陣の充実振りは賞賛に値する。

なぜグラスが捏造記事を書いたのか、というところはあえて描かないで、彼の天性の嘘つきぶりと、捏造が発覚する過程に集中して描いている。なので物足りなく感じる人もいるかも。上映時間も90分ないし。でも、演技が火花散る様子や事件の顛末は非常に迫力を持って描かれているので、観ている間は緊張感を持って面白く観られる映画。

それにしても最近はホントに映画を観ていないなあ。多分『ハウル』とか観ないだろうし、観たいと思わせる映画が少なすぎるよ。

2004/12/14

トヨタカップも今年が最後か…

トヨタカップの決勝はポルト対オンセカルダスと割と地味な顔合わせだったけど、120分+PK戦、堪能したよ。

ポルトが終始押し気味だったけど、決定的なチャンスにGKのエナオのスーパーセーブが!(そしてゴールポストにあたるシュートも多いが)ポルトの果敢にゴールを狙う積極的な攻め(ロングシュートが多い)に対するオンセカルダスの堅い守り。ポルトの華麗なパス回しにはクラクラするほど。でも守護神エナオがカッコよかった!やたら熱い。(ルックスもロンゲおやじで暑苦しくて好み)南米選手権のボカジュニオルス戦ではPK戦で全部阻止なんてこともやってのけたらしい。
http://www.sponichi.co.jp/soccer/kiji/2004/12/04/06.html

PK戦でも、ボールへの反応がすごくて阻止はできなかったけどエナオ、かなりボールに触っていてたいしたものだと思った。ポルトの方は正GKのバイーアが途中で倒れちゃって大丈夫だったんだろうか。(大丈夫だったらしい。一安心)PK戦でもシュートを打った後にレッドカードで退場した選手もいたし。
いずれにしてもPK戦って緊張するね。

点は入らなかったけど、いい試合だったと思う。やっぱりヨーロッパも南米もレベル高い。
あとポルトの選手、美形が多いね。特に10番クアレスマ!目の保養にもなったわ。(某バレエダンサーのせいで最近はすっかり濃いラテン系好き)

そういえばトヨタカップは親につれられて国立競技場に観に行ったものだった…。来年からは拡大開催で六大陸対抗となり、オセアニア代表とかも出るんだけどそれってけっこう微妙な気が。

2004/12/13

ドッグヴィル

しかし「審判の日が来る」とか「美しき逃亡者がやってきて、一つの村が消えた」という公開当時のコピーって思いっきりネタバレだよね。

約3時間の長尺モノ。この長さでセットはまるで書割。飽きずに観ていられるかなとやや不安だったけど、まるで舞台を観ているかのような緊張感がある感じで、一気に観ることができた。

一言で言うと、ラース・フォン・トリアーは変態だ。ハリウッドスターのニコール・キッドマンに犬につけるような首輪&鎖をつけて田舎町に縛り付けておいてなぶりものにしちゃうのだから。伝説のスター、ローレン・バコールはちょっとしか出番がない存在感のない役だし、ベン・ギャザラもこんなエロじじいな役か!エンディングにデヴィッド・ボウイの「ヤング・アメリカンズ」を使っていることからも、アメリカ社会の批判だと解釈するのはたやすく、ある意味わかりやす過ぎて底が浅いと批判されそうな映画ではある。わざとナレーションを多用したり、チャプターごとに説明を入れているところが、観る側の解釈法に対する悪意のようなものを感じさせる。

ニコールは相変わらず神々しいまでに美しいけど(あごのあたりで切りそろえた髪型と首筋が色っぽい)お人形っぽく“人々の善意を信じるイノセントな聖女”には見えない不穏さを持っているのが、この役に合っていたのかどうか判断が難しいところ。

ポール・ベタニーのキャラクターは魅力的だった。自分だけは他の町の人々とは違うという姿勢を持っているエセ知識人で、でも悲しいかな、凡人。ニコールと寝たいのに自分だけは思いを遂げられないかわいそうな役。
田舎町のいやらしさはビンビンに出ていて、(『エイプリルの七面鳥』でも名演を見せていた)パトリシア・クラークソンなどはぞくぞくするほどうまい。その表現の仕方は実にイジワル。陶器の人形とか、鐘の音とか、小道具の使い方は堂に入っている。

傑作とはいえないけど、ラース・フォン・トリアーの底意地の悪さ、変態性、アメリカ的なものへの憎悪というか愛憎が出ていて面白い。ニコールの役柄は、(結局戦争を止められない)リベラルなアメリカ人ってところか。

2004/12/11

「隣の家の少女」

扶桑社
ジャック・ケッチャム作、 金子 浩訳

1958年、12歳の少年デヴィッドの隣の家に、2歳年上の美しい少女メグと、体の不自由な妹スーザンが引っ越してくる。両親を交通事故で失った彼女たちは、叔母ルースに引き取られたのだった。デヴィッドはたちまちメグに心惹かれ、ルースの息子たちと遊び仲間ということもあって彼女たちの住む家に出入りする。しかしあるときからルースは姉妹にひどい折檻を加え、さらにはルースの息子たちや近所の子供たちも“ゲーム”と称してメグを地下室に監禁し、いたぶり始めるのであった…。

50年代のアメリカ、少年たち、そして初恋。ノスタルジックでみずみずしい描写で始まったこの物語。しかし-
読んでいてつらくてつらくて、何回も読むのをやめてしまおうかと思った。異様な迫力のある文章でやめることができない。ヒロインのメグは無垢で美しい少女で、何も悪いことはしていないのに、言葉にするのも憚られるようなこの上なくむごい目に遭う。生きていく意味や希望も叩き潰されるような。特に同性から見るとあまりにもむごたらしい虐待の数々。さらに虐待の主導権を握って少年たちをけしかけたのは実の叔母であったということ。叔母ルースの徹底的な男性への憎悪、そして自らの性への憎悪と絶望がこのような鬼畜で異常な行動を引き起こさせたのだろうが。

主人公の少年はメグに恋心を抱きながらも傍観するばかりでほとんど手を差し伸べることすらできなかった。その歯痒さ。どこか色っぽいルースに好意すら抱いていて、そのうち終わりが来るだろうと思っていた、でも終わりは来なくて残虐行為は限りなくエスカレートする。何もできなかったことは、共犯者であることと同じ、もしくはもっと罪深いことだろう。そのことに残りの人生の間中苦しめられるのはある意味当然だったと言える。でも彼にこれ以上何ができたというのだろう…。
そんなデヴィッドの叫びが行間に凝縮されたような、巧みな改行の使い方が目を引く。訳もうまい。一行だけで構成された一つの章には、心の底から戦慄させられた。

メグに加えられた陵辱がむごたらしければむごたらしいほど、生き地獄に突き落とされた彼女の存在は美しく光り輝く。

でも、こんなことは現実に決して起きてはならない。日本人だったらみんなあの女子高生コンクリ詰め殺人事件を連想するだろうし、実際には世界では同じことが起きているのだろうけど。悲しいことに、人間にはこういう面もあるのだということなのか。

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2004/12/06

週末は寝て終わり&指つめ&CHANEL

金曜日朝帰りが祟ったのか、土曜日は夕方4時半まで寝てしまい、それだけならまだしも今日も2時まで寝てしまった。土曜日の夜は2時ごろには寝たのに。おかげで、週末だというのに、洗濯くらいしかできなかった…。
夕方からでも映画を観ようと思って家を出たはいいけど財布の中に300円しか入っていない上、みずほ銀行のATMが休止していて別のATMにお金を下ろしに行ったら目的の映画の時間に間に合わなくなり、断念。ああ、西本正特集も雷蔵映画祭も行きたかったのに…。

TSUTAYAがレンタル半額だったので「ドッグヴィル」と「ロスト・メモリーズ」を借りる。でも今日はDVDすら観られず。WOWOWで『ラブストーリー」をやっていたのでついつい観てしまった。何回観てもチョ・スンウの演技は素晴らしいね。彼を観ているだけで泣けてくる。3回目になるとさすがにちょっと長い映画かな、とは思うんだけど。

お皿を洗っていたらまた包丁で指を切ってしまった。痛い。

CHANELの5番の新しいCMが始まったことを友達に教えてもらった。
監督はバズ・ラーマン、出演はニコール・キッドマンとロドリゴ・サントロ(「ラブ・アクチュアリー」やウォルター・サレス監督の「ビハインド・ザ・サン」のブラジル人美形俳優)。もうニコールがこの世のものとは思えないほど美しくて、幻想的な一編。必見!
http://nicolekidmanunited.com/RocketJet/NK4A05_Chanel_ACA_SLIDESHOW-50_D3_Mpeg1.mpg
銀座にできた新しいCHANELのお店には行く余裕はないけど。

2004/12/05

『靴に恋して』

シアターイメージフォーラムでスペイン映画『靴に恋して』。この映画にスペイン国立ダンスカンパニーの芸術監督でダンス界では気鋭の振付家としても有名なナチョ・ドゥアトが出演しているので観に行った。そう、ナチョは大変な美男子なのだ。

5人の女性たちのエピソードを描いたこの映画、ナチョの役柄は、小さすぎる靴を履く資産家の奥様の“足のドクター”。短髪でメガネをかけていたけど、青い目がとても美しく鼻血が出るほどカッコいい。出番は15分くらいだけど。パンフレットに紹介文が出ていないのはどうゆうこと!?
あと、知的障害を持つ若い女性の看護士役で出てきた俳優がちょっと見たことがないくらいうっとりするような美しい黒髪の少年(Enrique Alcides)。目が釘付けになっちゃった。この映画、若くて綺麗な女性はひとりも出てこないのに、男の人はいちいちみんなハンサムなのだ。

映画自体も、周りでの評判も良かったけど想像していたよりずっと良かった。靴フェチの話かと思ったら、靴にセクシャルな意味はあまりもたせていなくて(例の「小さすぎる靴を履く女」が、ナチョの登場もあって一番セクシーなんだけど)、靴を女性の生き方になぞらえているという構造。私自身、足がデカい&外反母趾気味なので小さすぎる靴を履くって気持ちは良くわかる。履き心地よりも見た目で選んじゃって後悔すること、年に5~6回はあるものだから。5人の女性はみな家族など人間関係に問題を抱えているけど、そのあたり、紋切り型ではない描きかたなのが面白かった。群像劇って一歩間違えると散漫でつまらなくなってしまうから。

売春宿のマダムを演じたアントニア・サン・ファンは『オール・アバウト・マイ・マザー』で性転換した女性を演じていただけに、登場した時「ひょっとしたらこの人、男が演じているんじゃないか」と思わせる怪しい魅力がある人だったけど、調べたら一応女性。“靴を盗む女”のナイワ・ニムリは『オープン・ユア・アイズ』から始まって『アナとオットー』『ユートピア』そしてお正月映画の『スパイ・バウンド』まで最近よく見かける売れっ子だけど、微妙なルックスだよな。スタイルが良くて目が大きいんだけど三白眼だからか。

ドラッグとか同性愛とかいっぱい出てくるのも意外だった。

ラーメン食べて、HMVでDVDとかチェックして、ライターやいろんな雑誌の編集の方他と飲み。ネパールトレッキングの話が面白かった。気がついたら久々にオールナイトすることに。80’sしばりのカラオケなどはちょっと張り切っちゃったりして。朝焼けってきれいだね。朝帰りの翌日はまるで使い物にならなくて夕方5時まで寝ちゃった…。

2004/12/04

『たまもの』@ユーロスペース

ユーロは楽日前なのに立ち見も出る大盛況ぶり。アテネフランセのピンク上映会だってこんなに混んでいなかった世。2週間のみの上映なのはもったいない限り。

ヒロインの林由美香がすごい。寂れたボウリング場に勤める(今私はちょうどボウリングのマーケティングの仕事を請け負っているのでやや受け)若くはない女。化粧気もなく髪もぼさぼさで、まったく喋らない。(裏『悪い男』のチョ・ジェヒョン?)
ひょんなことから知り合った郵便局員の男に恋をして、せっせいと弁当を作って彼の職場に押しかける。部屋はボウリングのマイボウルとトロフィで埋め尽くされている。これだけ取ってみるととても危ない女性みたいだけど。由美香さん服装は中学生の女の子みたいだし、ほっそりとしていて胸も小さめで、大きな目をくるくるさせたり腕をバタバタさせたり、海辺でデートした時は嬉しくて走り回って砂浜で盛大にこけたり、小動物系というか幼女系入っている。メイクをしていないお肌は疲れ気味で、脱いだ後姿に30代らしさがあるけど。ほとんどグロテスクなのに、恋した姿は可愛らしい。(でも怖い) 郵便マーク柄のゆで卵とか作っちゃうし、弁当屋の弁当に見せかけるために業務用の弁当容器を山のように買い込んでいるし、台詞が少ないけど映像表現でうまく語らせている。
恋した相手の男の子が勤める郵便局には不気味なロングヘアの伊藤猛とか、ガングロの川瀬陽太とかいてすごくヘン。
恋に破れた時の、この世がまるで終わってしまったかのような絶望感をかぼそい全身で演じていた林由美香はたいした女優だ。 本番をなさっているらしいが(観た後で知る)、ベッドシーンがやけに生々しくリアルだったけどやらしくない。

いまおかしんじ監督、主演の吉岡睦雄らと終映後軽く飲む。ヒットおめでとう!

2004/12/01

「世界で一番悲しい音楽」

フィルメックスでの大きな収穫はやっぱりガイ・マディンとボーディ・ガボールの特集上映だろう。(もちろん内田吐夢も観たかったけど仕事をしながら、さらに体調不良の中ではその余裕がなく残念)

今回の映画祭でチケットが1,2の人気を誇りソールドアウトになった『懺悔』とか『柔道龍虎榜』なんて忘却の彼方に飛んでいってしまった。しかもボーディ・ガボールは残念ながら39歳の若さで夭折したが、ガイ・マディンは現役バリバリの映画作家なのだ。

2本しか観られなかったけど。

『世界で一番悲しい音楽』なんと、『日の名残り』のカズオ・イシグロの脚本を元にしているというんだけど、カズオ・イシグロってこんなに変態だったの?
大恐慌期のカナダ、ウィニペグ(ガイ・マディンの故郷で、彼はいつもそこで映画を撮っている)。「世界で一番悲しい音楽」コンテストが開催されて、世界各地から賞金を求めて色んな人たちが押し寄せる。しかも「アフリカ」が一つの国扱いにされちゃっているのがなんとも…。勝った人はビールのプールにどぼんと飛び込めるという特典もある。(当時アメリカは禁酒法時代) 
このコンテストを主催している女性を、イザベラ・ロッセリーニが演じている。ロッセリーニはあんなに綺麗な人だったのに、完全にいっちゃっている。両足を切断した、ちょっとフリークスっぽい富豪の役だ。彼女の元愛人がプレゼントしたのは、ガラスでできていて、中にビールを満たした義足。てなわけで、もちろん脚フェチな場面がいっぱい登場する。ガイ・マディンの映画はどうやらみなサイレント映画の形式を模していて(本作は台詞があるが)、大仰な音楽とか、誇張された演技、独特のモンタージュで、古くて新しい感じ。相変わらず年齢不肖な感じのマリア・デ・メディロスが天使のように愛らしい。セルビア人に扮したアメリカ人の男がもう一人の主人公で、そのキャラクターも相当凄い。悲しいということは同時に笑えるということでもあるんだなあ。

切断された脚とか、人種差別ギャグとか、近親相姦ネタとか危ないことばかりやっているのに、ガイ・マディン監督本人はいかにもカナダ人っぽく?なんか善良で真面目そうなお兄さんなので驚いた。「カナダの映画監督だったらガイ・マディンしかないと思って特集上映をやることにした」と語った市山ディレクターの嬉しそうな顔と言ったら!

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