「モンスター」
休み明け、またまた体調が悪くなってしまったのだけど、今週末で「モンスター」終わってしまうと聞いてなんとかふんばって映画館へ。 渋谷のシネマライズまで行く元気がなかったので丸の内TOEIへ(劇場名は変わったけど改装はしていないのね)
ジャーニーのDon't Stop Believin'が、リーとセルビーが出会った翌日のスケート場のシーンで印象的に使われていた。実は2、3日前に家人が家で聞いていたばかりだったのだ。 エンドロールでももう一回流れたけど、歌詞の意味を考えると余計切ない曲だ。
本作でオスカーを獲ったシャリーズ・セロンの化けっぷりは言うまでもなく凄い。デ・ニーロ的だなあと思った。外見だけじゃなくて、品のない喋り方とか、どかっとした座り方とか、ホワイトトラッシュな娼婦になりきっていたのは見事。セルビーと知り合ってどんどん男前になっていくし。最初に殺した客にひどいことをされた時の反応も決して過剰ではなく、ちゃんと、こんな目に遭わされたときに取るであろうリアクションとなっている。
だが、それよりもクリスティーナ・リッチがいい演技を見せていたのでは、と思った。出会ったときには孤独な心を潤すような言葉をかけるのに、相手に依存し思い通りにならないと拗ねてみせてまるで相手を遠隔操作するかのように振舞うイヤ~な女を存在感たっぷりに演じていた。あの無邪気を装った上目遣いはちょっと忘れられない。
アイリーンとセルビーの恋愛を中心軸にしているとはいえ、実際に起きた事件をそのまんま描いているような、意外性のない映画ではある。アイリーンの不幸な生い立ちについては、最後の犠牲者を殺すところで触れているくらいで、ことさら彼女に同情的に描いているわけではないしドラマティックに仕上げているわけじゃない。下品で粗野な女で、最初のうちは殺人はやむにやまれないことだったのに次第に、金と車を得るために、そして快楽としての殺人まで犯すことになっていってしまう(=モンスター化)。「神様許して」と言いながらも、優しいなおじさん相手に銃をぶっ放す時には快感を感じているのがわかるから。
でも、考えてみれば、そんな育ち方をすれば誰でも彼女のようになってしまう可能性はあるのかもしれない。そんなアメリカの暗部を感じた映画であった。彼女が住んでいたテキサスはブッシュのお膝元で、死刑執行数全米一なんだよね。
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この映画は、実際の事件がまだ記憶にしっかり残っていて
どうしても観に行く気になれなかったんです。
けど、なおみさんの記事を読んだら、
やっぱり観ても良かったかな・・・とも思いました。
体調のいいときに・・・レンタルかな(笑)
投稿: chishi | 2004/11/08 21:29
実話モノって難しいですよね。
現実の方が実際のところ生々しく、映画というのはやはり脚色を加えているものですから。
「モンスター」はラブストーリーを中心軸に据えているので、その辺でちょっと美化しすぎ、と思う人もいるかもしれません。
すごく切ない話なんですよね。ビデオでは、実際のアイリーンのドキュメンタリーも出ているみたいです。
投稿: なおみ | 2004/11/09 01:11