ティム・ウィロックス『ブラッド・キング』
財布を紛失(多分盗難)して困るのは、お金がないことはもとより、キャッシュカードも使えなくなったので貯金を下ろすのも面倒(某みずほ銀行にいたっては、口座がある支店まで出かけていかないとカードが再発行できないという。勤め人が平日の3時までに銀行の窓口に行かなければカードを手に入れられないってどういうサービスの悪さなんだろう…)で、手元に現金がなく、さらにクレジットカードも使えないので本当にどうしようもないことだ。
仕方ないので、オットにお金を借りて仮の仕事に出勤中(とりあえず昼間は映画業界から足を洗ったのである)。でも、交通費だけでもバカにならない。派遣OLなので通勤経費は自腹だし。それなのに、手元には借りた1300円しかなかったのに、ついつい本屋に寄って840円もする本を買ってしまったりして。
先月の失業以来、ミステリー関係の読書がマイブームで、サラ・ウォーターズの『荊の城』の妖しくて耽美的な雰囲気に魅せられてから同じ作者の『半身』を読み、それからライターのMKさんに勧められたティム・ウィロックスの『グリーンリバー・ライジング』にハマった。ウィロックスは日本では2冊しか出ていないが、独特のどろりと濃厚な人物描写が悪魔のように心に絡みつくような作風。『ブラッド・キング』は『グリーンリバー・ライジング』と訳者が変わってしまったせいか最初のうちはやや読みにくいかと思ったが、途中からページを繰る手が止まらなくなる。暗い情念がどろっと伝わってきて、しかもノワール系のアクション映画を読むようなハードボイルドな感覚もある。恐るべし。執拗に仔細に描きこまれた人間が血と肉を持って、皮膚感覚に訴えてくる。
ウィロックスを読んだらノワール系の小説を読みたくなり、ちょっと前にマイブームだったジム・トンプソンの、買ったまま読んでいなかった「真夜中のベルボーイ」に着手。そして今日本屋でお金もないのに買ったのは、IRAのテロリストも登場するピート・ハミルの「天国の銃弾」。現実逃避に、ミステリー小説はいい。
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