WALKABOUT 美しき冒険旅行
今飲んでいる薬のせいか、やたら眠い。映画を観に行っても寝る確率は50%近い。この間は2度目の「華氏911」と「マッハ!!!!!!!!」を観に行って、「華氏~」の方はほとんど寝てしまった。「マッハ!!!!!!!!」は2回観ても面白くて、さすがに大丈夫だったけど。映画が面白いとかつまらないとか関係なく、とても眠い。昨日も昼間から眠くて伊勢丹のトイレの中で寝てしまい、帰宅後即寝てしまったのだ。本当に情けない。
しかし本当に素晴らしいものを観る時には一秒でも見逃してなるまい、とスクリーンに吸い寄せられるものだ。テアトルタイムズスクエアでレイトショー公開中の「WALKABOUT美しき冒険旅行」。ニコラス・ローグの71年の幻の作品。オーストラリアの未踏の砂漠、そして動物たちなど自然を捉えた撮影が素晴らしい。ピクニックの最中に父親が自殺し、取り残されて砂漠をさまよう姉と弟。やがて二人は、成人となる儀式=WALKABOUTの最中のアボリジニの少年と出会う、という話。突如挿入される動物や虫のクローズアップ、不穏な音楽がアヴァンギャルドで時代の気分を伝えている。食糧も水もないのにさほど切迫感のない姉弟。アボリジニの少年は姉に恋をするが、性的な意味で彼女に恋していないのは、彼女が全裸で泳ぐ美しい姿を見ても何ら行動に出ないことからも明らか。対して彼女は、砂漠の中でも制服姿で(ミニスカートから覗くすらりとした脚には、ストッキングまで穿いて)日傘のようなものまで作って歩き回ることからも、西洋文明から逸脱しきれない。水が欲しいと少年に訴える時でも、英語でWaterとしか表現できない彼女に対し、たやすくアボリジニの言葉も覚えてしまう弟。少女に狂おしく恋したアボリジニの少年は、廃屋の外、化粧をして一晩中求愛のダンスを踊るが彼女はおびえるばかり。やがて、まるでギリシャ悲劇を思わせるような幕切れへ。
銃で自殺した父親を彼らの流儀で葬るアボリジニたち。槍で巧みに動物を狩る彼らに対し、銃でたやすく動物たちを楽しみのために殺してしまう西洋人たち。姉に純粋な愛を抱き家庭を持つことを切望する少年に対し、女性にあからさまに性的な視線を投げてしまう研究者たち。銃と槍、純粋な愛と性的な視線。さまざまなメタファー。でも、そんなことよりも、いつまでも見ていたいと思う、夢のように美しいオーストラリアの風景と3人の少年少女たちの姿が鮮烈に目に焼きついた。言葉で表現しきれない陶酔感。
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