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2025/06/06

マチュー・ガニオも出演、ソウルでのBallet Gala of ETOILES in Paris 2025公演 7月30日-8月1日開催

昨年の夏に開催されて好評だった、パリ・オペラ座のエトワールたちが集結した豪華な公演、Ballet Gala of ETOILES in Paris 2025が今年の夏も7月30日、31日、8月1日にソウルの芸術の殿堂にて開催されます。エトワール10人を含む11人のダンサーという華やかさです。

パリ・オペラ座のエトワール、パク・セウンがプロデュースした舞台です。昨年の公演は私も足を運び、演目のセンスの良さ、出演者の素晴らしさ、スタイリッシュな構成でとても楽しみました。

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出演者が大変豪華です。

オニール八菜(Hannah O’Neill)パク・セウン(Sae Eun Park)レオノール・ボーラック(Léonore Baulac)
アマンディーヌ・アルビッソン(Amandine Albisson)ブルーエン・バティストニ(Bleuenn Battistoni)
マルク・モロー(Marc Moreau)、ジェルマン・ルーヴェ(Germain Louvet)ギヨーム・ディオップ(Guillaume Diop)
ポール・マルク(Paul Marque)マチュー・ガニオ(Mathieu Ganio)フロラン・メラック(Florent Melac)

久山亮子(パリ・オペラ座専属ピアニスト)

特に、3月1日にパリ・オペラ座を引退したマチュー・ガニオが踊る舞台というのは大変貴重です。(マチューはAプロのみの出演)

そして演目も非常にセンスが良くて観たい作品ばかりです。特にジェルマン・ルーヴェとマルク・モローが踊る「さすらう若者の歌」や、マチュー・ガニオはじめ豪華メンバーを取りそろえた「イン・ザ・ナイト」、Bプロの《眠れる森の美女》– ハイライト抜粋は贅沢この上ない舞台ですね。
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イン・ザ・ナイト(C)YOONPHOTO

プログラムA

7月30日(水)、7月31日(木)午後7時30分 芸術の殿堂オペラ劇場


《さすらう若者の歌》 Le Chant du compagnon errant

振付:モーリス・ベジャール(Maurice Béjart)
音楽:グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)
出演:マルク・モロー(Marc Moreau)、ジェルマン・ルーヴェ(Germain Louvet)


《眠れる森の美女》第3幕 –《オーロラとデジレ》グラン・パ・ド・ドゥ
La Belle au bois dormant – Acte III : Grand pas de deux classique (Aurora et Désiré)

振付:ルドルフ・ヌレエフ(Rudolf Noureev)
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(Piotr Ilitch Tchaïkovski)
出演:オニール八菜(Hannah O’Neill)、ギヨーム・ディオップ(Guillaume Diop)


《イン・ザ・ナイト》 In the Night

振付:ジェローム・ロビンス(Jerome Robbins)
音楽:フレデリック・ショパン(Frédéric Chopin)
ピアノ:久山亮子(Ryoko Hisayama)
出演:パク・セウン(Sae Eun Park)、ポール・マルク(Paul Marque)
    レオノール・ボーラック(Léonore Baulac)、マチュー・ガニオ(Mathieu Ganio)
    アマンディーヌ・アルビッソン(Amandine Albisson)、フロラン・メラック(Florent Melac)


休憩 Entracte


《ラ・エスメラルダ》– パ・ド・ドゥ
La Esmeralda – pas de deux

振付:ニコラ・ベリオゾフ(Nicolas Beriosov)
音楽:チェーザレ・プーニ、ロムアルド・マレンコ(Cesare Pugni, Romualdo Marenco)
出演:ブルーエン・バティストニ(Bleuenn Battistoni)、ポール・マルク(Paul Marque)


《ソナタ》 Sonata

振付:ウーヴェ・ショルツ(Uwe Scholz)
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ(Sergueï Rachmaninov)
ピアノ:久山亮子(Ryoko Hisayama)
チェロ:イ・ギョンジュン(Kyung-Jun Lee)
出演:レオノール・ボーラック(Léonore Baulac)、マチュー・ガニオ(Mathieu Ganio)


《コンチェルト》– パ・ド・ドゥ
Concerto – pas de deux

振付:ケネス・マクミラン(Kenneth MacMillan)
音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(Dmitri Chostakovitch)
出演:アマンディーヌ・アルビッソン(Amandine Albisson)、マルク・モロー(Marc Moreau)


《ソナチネ》 Sonatine

振付:ジョージ・バランシン(George Balanchine)
音楽:モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel)
ピアノ:久山亮子(Ryoko Hisayama)
出演:オニール八菜(Hannah O’Neill)、ジェルマン・ルーヴェ(Germain Louvet)


《3つの前奏曲》 Three Preludes

振付:ベン・スティーヴンソン(Ben Stevenson)
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ(Sergueï Rachmaninov)
ピアノ:久山亮子(Ryoko Hisayama)
出演:ブルーエン・バティストニ(Bleuenn Battistoni)、フロラン・メラック(Florent Melac)


《くるみ割り人形》第2幕 –《王子と金平糖の精》グラン・パ・ド・ドゥ
Casse-Noisette – acte II : Grand pas de deux (Danse du Prince et de la Fée Dragée)

振付:ルドルフ・ヌレエフ(Rudolf Noureev)
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(Piotr Ilitch Tchaïkovski)
出演:パク・セウン(Sae Eun Park)、ギヨーム・ディオップ(Guillaume Diop)

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プログラムB
8月1日(金)午後7時30分 芸術の殿堂オペラ劇場


《オベール グラン・パ・クラシック》 Le Grand Pas classique d’Auber

振付:ヴィクトール・グゾフスキー(Victor Gsovsky)
音楽:ダニエル=フランソワ=エスプリ・オベール(Daniel-François-Esprit Auber)
出演:ハンナ・オニール(Hannah O’Neill)ポール・マルク(Paul Marque)


《クロマ》– パ・ド・ドゥ
Chroma – pas de deux

振付:ウェイン・マクグレガー(Wayne McGregor)
音楽:ジョビー・タルボット(Joby Talbot)
出演:レオノール・ボーラック(Léonore Baulac)、ギヨーム・ディオップ(Guillaume Diop)


《パキータ》–「結婚式」パ・ド・ドゥ
Paquita – pas de deux de mariage

振付:ピエール・ラコット(Pierre Lacotte)
音楽:ルートヴィヒ・ミンクス(Ludwig Minkus)
出演:ブルーエン・バティストニ(Bleuenn Battistoni)マルク・モロー(Marc Moreau)


《プルースト》–「囚われの女」パ・ド・ドゥ
Proust – pas de deux de "La Prisonnière"

振付:ローラン・プティ(Roland Petit)
音楽:セザール・フランク、カミーユ・サン=サーンス(César Franck, Camille Saint-Saëns)
出演:アマンディーヌ・アルビッソン(Amandine Albisson)、フロラン・メラック(Florent Melac)


《シルヴィア》–「シルヴィアとアミンタ」パ・ド・ドゥ
Sylvia – pas de deux d’Aminta et Sylvia

振付:マニュエル・ルグリ(Manuel Legris)
音楽:レオ・ドリーブ(Léo Delibes)
出演:パク・セウン(Sae Eun Park)、ジェルマン・ルーヴェ(Germain Louvet)


休憩 Entracte


《眠れる森の美女》– ハイライト抜粋
La Belle au bois dormant – extraits

振付:ルドルフ・ヌレエフ(Rudolf Noureev)
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(Piotr Ilitch Tchaïkovski)
出演:パク・セウン(Sae Eun Park)、アマンディーヌ・アルビッソン(Amandine Albisson)、
    レオノール・ボーラック(Léonore Baulac)、ハンナ・オニール(Hannah O’Neill)、
    ブルーエン・バティストニ(Bleuenn Battistoni)、ジェルマン・ルーヴェ(Germain Louvet)、
    ポール・マルク(Paul Marque)、マルク・モロー(Marc Moreau)、
    ギヨーム・ディオップ(Guillaume Diop)、フロラン・メラック(Florent Melac)

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チケットはこちらでお求めいただけます。

https://www.sac.or.kr/site/eng/show/show_view?SN=76132

https://www.ticketlink.co.kr/global/ja/product/56270

https://triple.global/en/ticket/places/17000398/products/25006585

日本からのお客様もお待ちしていると主催者からご連絡をいただきました。

また、マチュー・ガニオからのメッセージもあります。


日本からのお客様が多く来てくださる場合には、主催者の方からの特典もあるとのことなので、もしご興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひ私の方にもご連絡いただければと思います。

主催 Etoile Classic  http://www.etoileclassic.com/

2025/05/28

NBAバレエ団『海賊』久保紘一芸術監督、勅使河原綾乃、山田佳歩、宮内浩之、新井悠汰対談(その2)

 6月7日、8日NBAバレエ団「海賊」公演新国立劇場中劇場で開催されます。

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(c)瀬戸秀美

Part1に続き、久保紘一芸術監督と主演ダンサーの皆さんにたっぷりと語っていただきました!

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左から新井悠汰、山田佳歩、勅使河原綾乃、宮内浩之

―勅使川原綾乃さん、山田佳歩さんは本当に素晴らしい プリシパルのお2人です。山田さんが演じられるギュリナールはこのプロダクションの中で、大きな特徴ですね、普通の「海賊」だとパシャと仲良くなって、ウキウキしているみたいな軽いキャラクターですが。

久保:「海賊」は、一般的には内容があまりない。昔のABTの映像にも。ダンサーのインタビューか入ってありました。

―それのABTの映像でジュリー・ケントやいろんな人がこの海賊について語っているんですが、自分で何言っているのかわからなくなっているんです。あれ?これこういう話だっけ?みたいな。いかに作品としてはばかばかしいかっていうのを(笑)。

宮内:それだけバレエが形式だというイメージはありますよね。

久保:その形式をやっぱり表現にしたいよね。

―「海賊」だから内容を考えなくて、ただ派手な踊りがいっぱいあって楽しいな、みたいな。そんなのが多いので。そういった中で、楽しいけど、また深みもあるのがこの『海賊』ですね。

久保:だからやりがいがあったのです。その中で有名なパ・ド・ドゥが二つありますね。だから作りやすかったです、有名なものをしっかり見せればお客さんには満足してもらえるし、他はオリジナルで作りました。

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(c)瀬戸秀美

―このプロダクションのギュリナールってとても切ない役ですね。報われない愛があります。こういう役を演じるって、なかなかのものですよね、

久保:最後は彼女は死ぬことによって自分の尊厳を守るんですよ。。自分らしくあることっていうのを貫き通すから、

―そういう意味では今っぽいですよね。

久保:より現代的に再解釈したんです。それが、ただの男女の愛じゃないっていうのもポイントで。コンラッドも結局。自由に振る舞っているけど、実は彼の内面は自由じゃないんですよ。で、そこをギュリナールは見抜くのです。

―先ほどのパ・ド・ドゥはとても見応えがあって。ドラマチックでちょっと切ないみたいなところがあって。ここを踊られていていかがでしたか?

山田:今回ギュリナール役が2回目で、前回初めて演じさせてもらいました。その時は主要キャストに入ったのも初めてで。だから、ただがむしゃらに先輩たちの踊りを見て、ただひたすらにやって、やることはやったけど、客観的にこうだったかな?と考えるところまではできませんでした。今は前回の課題だったり、リハーサルをしていくごとに、もっとここはこうした方がいいかな、音と合うよねと考えたり話し合ったりしながら演じているので、楽しくリハーサルは進めていられます。

―結構パートナー役の方とやっぱり話し合っていますか。

山田:話し合っていますね。キャストによってパ・ド・ドゥの間だったり、演技の間だったりもと全然違う、なるほどと思うし、それは本当、キャストごとに違う。どのキャストも楽しめる作品になっています。

―だから見たい方はぜひ全キャストを観ましょうっていう話ですよね。皆さん違った魅力が。先ほど見ていても、それぞれ演じ方の違いがあったので、すごく面白いなと思いました。自分を貫くんだけど、でも愛のために命を捨てるみたいなところがありますよね。

久保:実際にできるのですかね(笑)。いざその立場になったら、撃たれちゃった、すまんってなりそうで(笑)。

―ギュリナールの愛は尊いですよね。

久保:実際もそうなれるようにね。悠汰に何かあったら(笑) 悠汰は襲われても負けなさそうですよね。

―一網打尽にできそうです。ここのバレエ団の男性は皆さん強いと思うので負けないと思います。NBAバレエ団のみなさんはテクニックが強いですね、男女問わず素晴らしくて見ごたえありますよね、皆さんやっぱり夜な夜なトレーニングしているのですか?

勅使河原:してないですね(笑)

―綾乃さんは、最強ですもんね。毎回見るたびに、なんでこの人こんなに回れるんでしょうと思っているんです。勅使川原さんの素晴らしいテクニックの秘訣は何だろうっていつも思って見ています。

久保:家で体幹を鍛えるトレーニングはしているの?常にプランクしながらご飯食べる?休むのも大事ですよ。

勅使河原:プランクも逆にしなくしたんです。自分の踊りの、いい部分と悪い部分を、指導していただくので、その中でうまく変化をさせていかなくてはいけないっていうところで、今までやってきたことを少し変えて。役やキャラクターによってもそうなのですけど、それを出せるようにということで、ブランクは今はやっていません。

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(c)瀬戸秀美

―メドーラも大変な役ですね。

勅使河原:今回演じるのは2回目です。1回目に初めて演じた時には、見ているのとやるのと全然違っていました。どうしてああいう動きになっているのだろう。どうして今はこんな風に少し悲しんでいるのだろう。弱い部分がメドーラにもあると思っていて、そこが一瞬見えるのに、また心が開き直って、コンラットに手を置くとか、ちょっとしたところで、もうわけがわからなくて、メドーラの心を理解できているのかわからないのですが。

久保:さっきのABTの話じゃないけど、うちの歴代の主役もこれをどう持っていったらいいのだろうか、というのをよく聞いていたそうです。

勅使河原:そこはもう1回目で、自分のその最大限の思考を使って、自分の中でストーリーが成り立ってないと。手出しただけでバレてしまうと思うんです。どう思っているかっていうか、途切れていることを感じてしまいます。だからそこはその時の最大限でやってきました。今二年経って、自分の映像を見て、また新しいメンバーが加わって、メドーラを客観的に見させてもらって、感じるものが新たにありました。いただいた新たな紘一さんの言葉でのメドーラの印象、人柄から深掘りして、メドーラ像をまた作りたいっていう気持ちがあります。

―綾乃さんならではのメドーラ像がそこにあるという。メトーラはいい役ですよね。

勅使河原:女性の鑑みたいな。

久保:強さもあるわけですよ。

勅使河原:その強さがないと、コンラッドの相手にはいられないですね、

久保:帰ってきたと思ったら、またすぐ行っちゃうわけですよね。もしかして死ぬかもしれない。

―「海賊」はバージョンによっては、最後に難破して、最後2人だけ生き残るとか、そういうバージョンもありますよね。

久保:原作ではメド―ラは身を投げて自殺したわけです。悩んだんですよ。どうやって終わりさせようか。原作に寄せすぎても、これ救いがないよねってなって。それで後半少し変えたのです。

―メド―ラはそういった意味で強さがある役ですよね。

勅使河原:ゆるぎない強さ、

―やっぱり揺るぎないテクニックを持っていらっしゃるから。

勅使河原:グラン・パ・ド・ドゥは、いろんなとこでやっているし、いろんな人が踊っていて。でも全幕で見たことがない人は多いです。さっき言ったように役で踊ると違ってきますね。初めて私も全幕を見た時に、こういう人がこのグラン・パ・ド・ドゥを踊っていると思ったので、踊りで見せないと全幕の意味、その役は通して伝えないといけないと思っています。

久保:あとは、ロングランできるようにね。

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(c)瀬戸秀美

―本当に面白いので、見れば良さがすごく伝わる作品なのでたくさんの方に見ていただきたいと思います。いろんなキャラクターがいるから面白いですよね。

久保:他にも、キャラが立っているビルバンドとかそうですよね。アリは今回は感情的に何かがあるわけではないのだけど、テクニックで見せるキャラクターだし。ビルバンドがまたクセが強いのです。

<リアリティがあって、ワクワクするバレエ>

―この作品のおすすめポイントをお話してください。

宮内:バレエ団の作品全般ってなっちゃうけど、でも『海賊』はさっき紘一さんがおっしゃったように、原作からもう一から作り直しているしリアリティがあります。古典バレエの形式を残しつつ、伝わりやすいリアルなバトルとか音で、リアリティっていう部分も兼ね備えている。飽きないバレエ。賛否両論あるかもしれないけど、僕はすごく賛成派、すごく好きですね。このNBAの『海賊』もリアリティを強く作っている海賊です。僕、新垣さんの曲が大好きで。聞いているだけで、ワクワクしてくるんです。最初のパ・ド・ドゥ、あそこ一番緊張してやりづらいです。突然。メドーラが踊り出して、僕が出てって、コンラッドとパ・ド・ドゥやって、そこからあの新垣さんの音オープニングの曲になります、本当はあれ、最初に聞きたいんですよ。うわーってなる。

久保:最初の一発目も新垣さんの曲です。

宮内:盛り上がり的にメインテーマ。カッコいい曲のやつ。あれ聴いてからだったら、出ているから、そういうシーンを、全体を想像して盛り上がるところ、喜怒哀楽全部が入っていると思います。こんな感じだっていうのを想像しながら、一発目、マント持って出ていけたら。そこから積み上げていきたいですね。目の前の一個一個。

―ああいう最初にこう、舞台の上にパンって出てくる役って大変ですよね。

宮内:でも僕は好きですね。マントつけているし。ワクワクします。

音楽の新垣隆さんを迎えてのリハーサルの模様もある動画です。新垣さんによるオリジナルの音楽は非常に美しいです。

【NBA 海賊】久保紘一 × 新垣隆|『海賊』音楽の舞台裏

<愛が駆け巡っている>

勅使河原:今ぱっと浮かぶのは、ドラマです。ドラマ。愛が駆け巡っている。ドラマを感情移入してもらえるように作品を伝えたいっていうのが一番。なかなかない女性同士の場面。それを起こしたのはなぜだっていうのまで、見せられたら。だからNBAの『海賊』ならではの世界観をお出ししたいですね。

宮内:メドーラって難しくない?って思うのですけど、僕はコンラッドで良かったみたいな。

勅使河原:秘めている役ですね。

宮内:サンチョ・パンサみたいな役ではない(笑)。

勅使河原:手を出すだけで、感情を表現するのが一番難しいんですよね。それで伝えないといけない。パとパの間の間って、自分の思考で考えないと生まれないと思っているんです。

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2024年『ドン・キホーテ』公演より(勅使河原綾乃、北爪弘史、山田佳歩)

―教えてもらう部分以上のものがあるんですね。

勅使河原:自分で矛盾がないように作らないといけない。そこが自分の中ではメドーラのキーとなっている部分だと思っています。そこを大切に。

久保:最後、ギルナールがメド―ラを殺そうとした時に、彼女はギュリナールさえも包み込むわけですね。

勅使河原:そのぐらいの人なのですね。

久保:そこが彼女の強さなんですよ

宮内:これは弱さじゃなくて。

久保: どんな困難にも屈せず、愛と自由のどちらも諦めない、その芯の強さです。

勅使河原:メド―ラに学びます。

久保: 知らないうちに転がされそうだよね。気づいたら全部彼女の言う通りになっているな。実は彼女の意思のままに家庭が作り上げられていた(笑)

山田:ギュリナールってこの海賊のキーパーソンだと思うのです。2時間の作品の中で、ギュリナールの感情の変化がすごく現れている作品でもあって。ギュリナーラの感情の変化によっていろんなことが起きます。コンラッドに恋したり、パシャから裏切られる場面だったり、そこからコンラッドに惹かれていく場面だったりという、その変化がすごく激しい。いきなり変わってしまっても、物語がつながらなくなってしまうので、さっき勅使河原さんもおっしゃっていたんですが、動きと動きの間や、演技と演技の間をもっと大事にしていきたいって思います。最後の女同士の最後の戦いに、なんでここで今争っている、戦っているんだろうって、すんなりお客さんが物語に入ってくれるように、これからもっと演じ、修正していきたいと思います。演技の変化だったり間だったりという部分が見どころです。

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(c)瀬戸秀美

―残り一ヶ月半に細かく詰めていくっていう感じですよね。

勅使河原:結構1回やっただけでも感情が伝わってくるんですよ。この時に何を言っているのかって、こっちはこっちの想像ですけど、言葉ではもらってない。でも、それが伝わっているのを会話でお見せしないといけないので。

―女性同士のそういう感情のところの部分っていうのもこれから深めていかれるのですね。

久保:ただ女性同士がコンラッドを奪い合う戦いというわけじゃない。もっと深いところがあります。

新井:NBAの『海賊』、どの作品もそうなのですが、テンポ感が大事です。長い作品をギュッと濃縮した公演、作品を出しているので、そこが見どころの一つだと僕は思っています。だからこそ、ダンサー一人一人が生きているのも表現しなきゃいけないし、それは難しいんですが、みんなで切磋琢磨して、一丸となって作り上げることをこれからしていきたいと思います。

―踊りの部分はもう皆さん完成しているので、そこから先のところですね。見ている人にどう伝わるか。

久保: とても大変だと思いますよ。僕も踊っていたからわかるのですが、踊るだけでも大変なのに伝えるのはさらに大変です。

―そこからさらにいろんな感情を乗せていっているわけですね。

久保:ダンサーも言っていたけど、伝わらない場合もあるわけじゃないですか。そこがすごく難しい。独りよがりになって、俺はこう感じるんだって言っても、お客さんが感じなければ意味がないわけで。見せ方の研究をしないといけません。だからこそ、お客さんも対価を払って見に来ているので、感動して帰ってもらえるよう、最後まで挑戦し続けないといけませんね。

―本当に面白い作品なので、ぜひ皆さんに観ていただきたいと思っています。楽しみにしています。いろんなキャストを見ないと。若手の方も今回、たくさん出ていらっしゃいますし初めてこの役を演じられる方っていうのもいらっしゃるので、それも楽しみにしています。

 

久保紘一芸術監督に密着した映像。久保監督のリーダーとしての考え方、バレエ団の方向性の考え方など、大変素晴らしいビジョンを持っていることが感じられます。公演数を増やして、ダンサーがバレエ団の仕事だけで生活できるようになれたら、という夢が実現しますように。

日 時

2025年6月7日(土曜日)
2025年6月8日(日曜日)

時 間

6月7日(土)開演14:00(開場13:30)/開演18:00(開場17:30)
6月8日(日)開演16:00(開場15:30)

チケット料金

S席9,900円 、車いすS席5,000円、障がい者S席7,900円、学生席2,000円(25歳以下)


※2歳までのお子様の入場はご遠慮ください。
※車いすS席・障がい者S席ご購入の方は、
直接バレエ団宛( ticket@nbaballet.org )にお問い合わせください。
※学生席・障がい者席ご購入の方は、当日学生証・障がい手帳などの証明書を拝見させていただきます。
※チケットご購入後のキャンセル・変更は承ることができません。

 

NBAバレエ団『海賊』久保紘一芸術監督、勅使河原綾乃、山田佳歩、宮内浩之、新井悠汰対談(その1)

 6月7日、8日NBAバレエ団「海賊」公演新国立劇場中劇場で開催されます。
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(c)瀬戸秀美
リハーサル取材に続き、久保紘一芸術監督と主演陣の勅使河原綾乃、山田佳歩、宮内浩之、新井悠汰の5人にインタビューをさせていただきました!和気藹々とした雰囲気で、楽しいお話をたっぷりしていただきました。

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(左より、新井悠汰、山田佳歩、勅使河原綾乃、宮内浩之。勅使河原さんと宮内さんはご夫婦です)
<バイロンの原作からインスパイアされた、物語性のある『海賊』>

―久保紘一版『海賊』は、『海賊』の固定概念を覆されるようなドラマチックな独自なバージョンで、とても面白い作品ですね。久保さん、この作品の魅力を語ってください!

久保:実は独自というわけでもないのです。バイロンの原作があり、逆になんでこんなに原作とかけ離れた話をやっているのか、と考えたのが創作したきっかけです。従来の作品は、割とコメディですよね。海賊っていう割には、なんでもありみたいな感じです。だから、もっとバイロンの原作をしっかりオマージュした方向に振った方が面白いと思いました。やろうと思ったら、まず音楽がないのです。ちょうどその時、新垣隆さんと『死と乙女』という作品を創作していたので、音楽をお願いしました。

―音楽に統一感があるっていうのは素晴らしいですよね。「海賊」っていうと、適当な音楽を集めたところがありますが、作曲家も。統一感のある音楽があるのは素晴らしいですね。

久保:作業は大変でしたけど、でもやってよかったです。


―ソードファイトの場面もオリジナリティがあります。

久保:これも僕は、よくある気の抜けたような、たまにジャンプひょい、みたいなファイトシーンを見ていても全然燃えないし、ワクワクしない。そこはリアリティ持たせて、たとえ踊りじゃないファイトシーンであっても、お客さんにはずっと集中していて欲しいのです、ここは手が抜けないと思うのです。ファイトシーンは、人を殴る場面なので、リアリスティックにやりたかったというのもあり、新美智士さんという専門家の方に入っていただきました。

―気合の入ったファイトシーンは、見応えがありましたね。

久保:宝満さんの振付もすごく良くて。演出と、振付、音楽、そのディテールがすごくいいバランスで融合していると思います。そもそも僕は一人が全部やるっていうのは無理だと思っています。バレエの人って全部一人でやりたがりますよね。脚本演出と、そんなマルチの人はいないと思うのです。映画みたいに分業、総監督がいて、監督がいて、脚本がいて。で、全部違うスペシャリストが揃うのが一番いいスタイルだと思っています。だから今回、いろんな才能が一つにまとまった作品になったと思います。

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(c)瀬戸秀美

<主要な役の設定シートを作ってダンサーに読みこんでもらいました>

―ドラマチックですよね。特にギュリナーラの役柄がフィーチャーされた作品になっています。

久保:キャラクターの深掘りした設定を僕が。ダンサーに渡したんです、各キャラクターってこういうキャラクターだよっていうの(詳しいキャラクター設定は公式サイトに掲載されています)。今までは自分たちで想像をふくらませていました。みなさんは原作読みましたか?読んでないのですね。バイロンの原作は読みづらいんですよね。いろんな研究は進んではいるのですが、難解で昔の言い回しだから。翻訳されても、よくわからない書き方をしています。読むのは大変だったのだけど、それを読み解いて。話としては火曜サスペンスみたいな話じゃないですか。

で、結局コンラッドっていうのはもともと、オスマンの官僚側、支配する側に最初いて、抑圧されたものから彼も自由になりたいって言って、オスマン帝国に対抗するギリシャの義勇軍として立ち上がったのです。

原作ではメドーラは、コンラッドがオスマンの捕虜になっていて、もう死んだと勘違いして塔から身を投げて自殺してしまうのですね。ギュリナーラは、捕まった捕虜のコンランドの世話をします。キャラクターの説明がやっぱり大事なのです。

―一貫した物語があるというのがこの版の特徴で、本当に画期的ですよね。

久保:『海賊』が本当はこういう話で、バックグラウンドを知った上で演じないと、ということでそれぞれのキャラクターを深堀りした説明を皆さんに渡したんですよ。ダンサーの皆さん、今度、ちゃんと感想を聞きますからね。感想文400文字ぐらい書いてください、宿題ですから(笑)

―ドラマチックで物語性があり、私も最後の場面を初演で見た時、泣きました。再演にあたって、変えた部分はありますか?

久保:前回、所沢ミューズで上演した時には、団員の岩田雅女に僕が振り付けた振り付けのところを、あなたの才能で何とかしてくれって頼んで変えてもらいました。でもそれぐらいですね。最後に好きな男をかばって撃たれるとかね、昭和ですねとか言われたこともあって。

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(c)瀬戸秀美

―アリが出てこない『海賊』も結構ありますよね。エルダー・アリエフ版や、ルグリ版も出てきません。

久保:うちのアリは元気いっぱい。若手の皆さんで。原作は実はアリが出てこないんです。

僕も、エルダーのバージョンをアメリカにいる時に踊る予定だったのです。次は海賊だよって言われていたのですが、僕はその年だけ辞めていたのです。バレエ団に、せっかくお前のために持ってきたのにと言われてしまって、やり損なってしまったのです。僕自身はアリ役を踊ったことがないのです。

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(c)瀬戸秀美

<ダンサーの皆さん、演じる役について熱く語る>

―皆さんもそれぞれこの『海賊』に対する思いがいろいろ思っていると思います。これだけの豪華メンバーが一同に集まったので。この作品の魅力について、自分が演じる役の魅力について、お話を聞かせてください。

宮内:僕は初演から出演しているので、今回で4回目です。鮮明に明確に煮詰めていく作業はとても多いですし、ここをもっとこういう風にしたかったなというところが多々あって。全幕としてもっと改良していけるっていう冷めない気持ち。戦っているところよりも、バレエバレエしているところ、グラン・パ・ド・ドゥ、クラシックバレエ、古典の形式とか型というところをやっている時に、僕は一個のパでも演技でありたいという気持ちがあるんです。ヴァリエーションでも演技を心がけたいので。形式をずっとやっていると、気持ちが冷めてきってしまうのですね。リハーサルから気持ち入れていく、音楽をよく聞いて、こんな音だったんだみたいな。そこに対して熱くなれる材料を、自分を奮い立たせる材料を見つけながら。再々再演だけど、一番情熱を入れてできたらいいと思っています。

―このコンラッドだといろんな気持ちが揺れる部分もあります。

宮内:そこは初演の時、紘一さんとすごく話し合ったのですけど、僕は揺れたくないって言って、紘一さんはギュリナーラに対してちょっと揺れてほしい、僕は揺れたところをお客さん見せたくない、という意見を言って、でも紘一さんはいや、お客さん的にやっぱりそこ、恋に揺れるところも見せたいっていうことで。

久保:結構原作のオマージュもあったからね。

宮内:そのような話し合いもありました。

久保:ほら、男ってさ、弱いじゃない。だから誘惑に駆られた時にみたいな話を男同士でしたいと思ったんだけど、今は奥さん(勅使河原綾乃さん)が隣にいるし(笑)と思って。実際にそういう時になった時には、絶対動かない人も。それは揺るがない、

勅使河原:やっぱりそれは人それぞれです。

宮内:バレエの主人公の男ってみんな最低じゃないですか(笑)。『海賊』くらいはカッコよくないと。

久保:揺れ動くけど、やっぱりメドーラへの貞操は守り抜くっていう。

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(c)瀬戸秀美

―一般的にコンラッドって珍しくバレエの男の中でカッコいいじゃないですか。ダメなところが全然ないっていうか、男らしいですね。

宮内:真の目的を果たすために行動していく、その熱さ。

久保:でも何の弱みもないのもつまらないし(笑)。今回、実は宮内さんは悪役もやるんですよ。コンラッドだけじゃない。彼はパシャもやるんですよ。

―このパシャがまたカッコいいのです。これは珍しいですよね、普通「海賊」のパシャって、こんなおじいさんですよね。

久保:だから似合うだろうなと思っています。

宮内:今回はそこの対比もあって、自分の中で二つできるので演技が楽しくなると思っています。

久保:二つの役の対比があってのコンラッド作れるかもしれないですね。

―もう一人コンラッドがここにいらっしゃいます。新井悠汰さん。

新井:僕は、お客さんに「アリじゃないんだ」とよく言われますね。すみません、コンラッドです(笑)。初演からアリを2回やらせていただいて、前回初めてコンラッドで今回2回目のコンラッド役ということで。アリと違った男らしさ、みんなをまとめて引っ張る。船長としてのその魅力にも自分の気持ちを乗せて、みんなを引っ張っていきたいです。

久保:絶対人間って弱い部分を持っているから、部下を率いているとはいえ、自分の中で葛藤もあるはずです。自分の理想のために人を殺してきているわけだから。決して綺麗ではない、でも自分の成し遂げたいこと、自分自身で解放されたいという欲求もあるわけです。そういうものを表現できたらいいよね。深いものがあるわけで。各キャラクターごとに、抱えている悩みがあるわけで、それをどう表現できるか、お客さんにそれをどう共感させられるか。

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―さっきほどリハーサルをしたシーンは、ドラマチックでやりがいはあるでしょうしね。踊りの中に感情を込めるところがあって。

久保:ギュリナーラだって、ただ好きになるわけじゃない。

山田:「瞳の奥に。宿る炎」

久保:炎っていうのは、「自分と同じものを持っていることを誰よりも早く気づいたのがギュリナーラだった」ってキャラクター説明に書いてありますよね。

―こういう役は、新井さんにとっては新境地ですよね、今まで演じられていた役とはまたちょっと違う。

新井:前回より表現面だったり、自分の通った道と、罪の意識だったり、いろんなコンラッドの気持ちを音楽と合わせて表現できたらいいと思います。リハーサルの時も紘一さんから言われて、音楽を聞くと、ああ、こういう表現の仕方もある、自分もこうしてみようとか、そういう思いが生まれてくるので、それを積み重ねていって、いいコンラッド船長を目指して頑張りたいと思います。

―音楽も、新垣さんの、オリジナルの素晴らしい音楽なのでいいですよね、他にない、この作品のために作られていますし。

久保:こういう作品、本当はあと二つ、三つあるといいと思います。

―音楽に触発されるっていうか、そういった部分がすごく大きいという感じがします。

新井:あとはファイトシーンも見どころですね。

久保:あれも新美さんレベルまで行けばもっとカッコいいんだけどね。

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(c)瀬戸秀美

―NBAバレエ団って、男の人がすごいっていうイメージがあるので、その魅力が『海賊』だと爆発することを期待します。

宮内:やっぱりバレエって、音楽とかバレエが教えてくれる部分はありますよね。ああ、こういう感じなんだみたいな。

―やはり踊っていくうちに自分の解釈がいろいろ出てきますもんね。元々の解釈はあるけど、演じられる方によってもだいぶ違うと思います、このキャスト違いで楽しむっていうやり方も、もちろん大きいと思います。皆さんの個性のそれぞれの違いがありますし、新井さんの新境地が見られますね

新井:自分も楽しみですし。それをお客さんに見てもらいたい。感動してもらいたいし、喜んでもらいたいので、日々精進です。

(続きます)

【NBA 海賊】バレエ×アクションの舞台裏|ファイトディレクター 新美智士

迫力のソードファイトシーンはどうやって実現しているのか、というお話が面白いです。

2025/05/24

NBAバレエ団『海賊』リハーサルを取材しました

 6月7日、8日NBAバレエ団「海賊」公演新国立劇場中劇場で開催されます。
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新井悠汰、山田佳歩、勅使河原綾乃、宮内浩之

 

私も初演の時に観たのですが、今までの『海賊』の血沸き肉躍る冒険活劇の楽しさはそのままに、ドラマ性が加わって、海賊として矜持を持って戦う男性たち、愛を貫く女性キャラクターたち、それぞれの強い想い、胸を締め付けるような感情が迫ってきて、とても見ごたえがある素晴らしいスペクタクル作品でした。

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(c)瀬戸秀美

久保紘一演出、宝満直也、久保紘一他の振付に躍動感と美しさがあって素晴らしく、音楽はアダンに加えて新垣隆のオリジナル曲を加えました。バイロンの原作を新解釈し、それぞれのキャラクターに深みがある、壮大でドラマティックなバレエになっています。
また、剣術シーンは西洋殺陣師の新美智士による指導で、バレエとは思えないほどの迫力が満点です。もちろん、オリジナルのプティパ版の『海賊』の人気の場面ーパ・ド・トロワや奴隷のパ・ド・ドゥ、オダリスクのパ・ド・トロワや美しい花園の場面はそのままあり、NBAバレエ団の誇るテクニックに優れたダンサーたちの大活躍がふんだんに観られます)
(ぜひ公式サイトのキャラクター紹介をお読みください!とても面白いです)

『海賊』と言えば冒険活劇で、有名なパ・ド・トロワに代表される男性ダンサーの華麗な超絶技巧や花園の場面の美しい女性群舞が見どころ。物語性は二の次の作品と言えますが、本作はこれらの見せ場、ダンスはもちろんありますが、様々な愛が交錯しており、そのドラマが魅力的です。
オスマン軍のパシャ・サイード(通常この役は太って年老いた男性ですが、ここでは颯爽とした将軍)に捕らえられたギュリナールを救出したコンラッドを、彼女が愛してしまう。だが、コンラッドにはメド―ラという妻がいて、コンラッドは揺れながらもメド―ラへの忠義を守る。一方報われない愛に苦しむギュリナールは、命を懸けて愛する人を守り抜こうとする。またメド―ラも凛とした強い女性として描かれているなど、原作に基づきながらも現代に通じるキャラクターたちになっています。ギュリナールという役が他の『海賊』よりも大きくフィーチャーされ、物語のカギを握っているところが特徴です。

 

4月に、所沢にあるNBAバレエ団の「海賊」リハーサルを取材し、また久保紘一芸術監督と、4人のダンサー(勅使河原綾乃、山田佳歩、宮内浩之、新井悠汰:敬称略)にインタビューをさせていただきました。インタビュー記事はまたこの後アップしますが、まずはリハーサルの模様をご紹介します。

 

<リハーサルの場面>
2幕冒頭、傷ついたコンラッドを手当てするギュリナール。ここから、ギュリナールとコンラッドのお互いを意識した、揺れる想いが繊細に伝わるパ・ド・ドゥへとなっていきます。“There is a fire in his eyes that tells of other worlds.”コンラッドの瞳の中に燃える炎を見つけたギュリナールは、気持ちを押さえられなくなって情熱が溢れていきます。非常に切なくて美しい場面です。

 

 

コンラッド 新井悠汰/ギュリナール 山田佳歩
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コンラッド:北爪弘史 ギュリナール 須⾕まきこ
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ギュリナールの秘めていた想いが、切々とした愛をコンラッドへと伝えていく場面へと繋がり、切なくも美しいパ・ド・ドゥへと。
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コンラッド:宮内浩之、ギュリナール:市原晴菜 (宮内さんは別キャストではパシャ・ザイードも演じます)
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そして『海賊』と言えばおなじみのパ・ド・トロワでは、バレエ団の誇るスーパーテクニシャンたちの華麗な踊りをたくさん見ることができました。迫力たっぷりです。こちらは、一般的なプティパ版『海賊』のトロワになっています。メド―ラ役の⽶津美千花、渡辺栞菜も見事なグランフェッテを決めました。
コンラッド:北爪弘史、メド―ラ ⽶津美千花 アリ:中⼭諒
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同じ作品でもキャスト違いで観ると、それぞれ異なった魅力があります。NBAバレエ団のダンサーはみな瞬発力があってテクニックも素晴らしく、トロワの場面の2人のアリ(栁島皇瑶、中⼭諒)ともスーパーテクニシャンです。

 

NBAバレエ団の公式YouTubeでは、バレエ団内での「回転」「つま先」「ジャンプ力」ランキング動画という楽しい企画を行っているのですが、回転3位、ジャンプ力2位が柳島さんです。(一位は鈴木恵里奈さん)

 

NBAバレエ団のカンパニーが一丸となり、総力を結集して届ける『海賊』、ぜひ劇場でその迫力、ドラマ、バレエの美しさ、ドラマティックで壮大な世界観を実感してください。

詳しいキャスト表


「海賊」本編、オリジナルのオープニング映像。特殊効果を駆使してまるで映画のようで、見ごたえあります!

日 時

2025年6月7日(土曜日)
2025年6月8日(日曜日)

時 間

6月7日(土)開演14:00(開場13:30)/開演18:00(開場17:30)
6月8日(日)開演16:00(開場15:30)

チケット料金

S席9,900円 、車いすS席5,000円、障がい者S席7,900円、学生席2,000円(25歳以下)
※2歳までのお子様の入場はご遠慮ください。
※車いすS席・障がい者S席ご購入の方は、
直接バレエ団宛( ticket@nbaballet.org )にお問い合わせください。
※学生席・障がい者席ご購入の方は、当日学生証・障がい手帳などの証明書を拝見させていただきます。
※チケットご購入後のキャンセル・変更は承ることができません。

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(c)瀬戸秀美       

2024/11/22

11/27 公開 映画「コール・ミー・ダンサー」主演、インド出身のダンサー、マニーシュ・チャウハンにインタビュー

11月29日より、傑作ドキュメンタリー映画『コール・ミー・ダンサー』が劇場公開されます。

https://callmedancer-movie.com/

ストリートから誕生した、遅咲きのインド人バレエダンサー・マニーシュが
数々の困難に立ち向かいながらも<ダンサーになる>という固い決意を胸に、
年齢、境遇に向き合いながら、プロを目指す可能性を諦めないで進み続けます。

ドラマチックな人生がNetflix「バレエ:未来への扉」として映画化、
その生き様にさらに深く迫り、世界の映画祭を席巻中の感動のドキュメンタリーがついに日本でも公開されます。

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(C)2023 Shampaine Pictures, LLC. All rights reserved.

プロモーションのために来日したマニーシュ・チャウハンさんに、単独インタビューを行いました。

ご覧の通りとても明るくチャーミングなマニーシュさん、ダンスに対する愛や師匠であるイェフダさんへの思いなどをたっぷり語ってくださいました。

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「コール・ミー・ダンサー」は世界中の映画祭で上映され、また劇場公開されて大きな反響がありました。この映画に対する反響をどう感じていますか?

マニーシュ「おかげさまでこの映画は多くの映画祭やダンスフェスティバル、映画館でも公開されてきました。観客の反響も素晴らしいです。この映画がここまで観客の心を打つとは僕も思っていませんでした。スタンディングオベーションをたくさん受けて、日本に来る二日前にもサウスカロライナ州でのフェスティバルで上映されました。400人の観客がスタンディングオベーションで大きな拍手をしてくれました。一人のお年寄りがやってきました。彼はインドネシア出身だそうですが、映画を観て泣いていました。彼もダンサーになりたかったけど、様々な障壁があってなれなかった。ビジネスで成功していたけど本当はダンサーになりたかったし夢をあきらめなければよかったと言っていました。たくさんの絶賛評も出ました。そしてあるダンサーもシンシナティでの上映後僕を待っていてくれました。コロナ禍でダンスをやめてしまったけど、明日またクラスに行ってみようと思うと話してくれたのです。このような反響を聞いて、僕はとても嬉しく思いました」。

ドキュメンタリー映画の撮影は長期にわたりましたが、自分の生活を撮影されているのはどんな気持ちでしたか

「この映画の撮影には5年かかりました。途中で、Netflixの映画『バレエ:未来への扉』の撮影もあったのですが、こちらは大きなプロダクションなので、面倒を見てくれるスタッフの方もいて、メイクもしてくれるし撮影スケジュールも決まっていました。ドキュメンタリーにはそのようなことはないけれど、でもこの映画の中にいる人たちは本物で演技は一切なくて、そういうところが僕はいいと思いました。いつ撮影が終わるのか先が見えなくて、5年撮影をした後、編集に一年もかかりました。撮影した映像素材がたくさんあったからです」

「ドキュメンタリーを撮ると聞いてもちろん驚きましたが、嬉しかったです。でも最初これはYouTubeで公開される5分か10分の映像だったと思ったのです。僕なんかを対象にドキュメンタリー映画が撮影されるなんて夢にも思わなかった。だから実際に映画の撮影がうまく行って本当に感謝しています。プロモーションのために日本に行くこともできたのですから。想像もしなかった場所へ、この映画を撮ったことで行くことになったのですから幸運でした」。

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(C)2023 Shampaine Pictures, LLC. All rights reserved.

<インドにクラシックバレエのカンパニーはありませんが、古典舞踊は8種類もあるなど、舞踊文化は盛んです>

ダンスを始めたきっかけについて教えてください。

「僕は最初はブレイクダンスを踊っていて、テレビのオーディション番組で賞をもらってダンス学校のスカラシップをもらったのですが、そこの学校ではバレエのクラスが必修でした。欧米ではバレエは女の子のものだと思われていますが、インドでは男性もダンスを踊るのが当たり前です。ダンス学校でバレエを観た時に、とても力強い踊りだと思いました。回転したりジャンプしたりするといったテクニックが僕も大好きだったのです。また、ブレイクダンスはストリートで踊るので危険なこともありますが、バレエはスタジオでやるので安全です。フリップができるなら、回転はもっと簡単だろう怪我もしないだろうと思いました。バレエは運動として高度なものであって、女の子だけのものではないと感じたのです」。

「ダンスはインドでは重要な文化です。バレエ団はないのですが、ボリウッドダンスもありますし、古典舞踊はなんと8種類もあるのですよ。インド古典舞踊の歴史はバレエよりも長いのです。インドでは州ごとに異なった民族舞踊があります。インドには様々な舞踊がありますが、バレエは入り込む余地がありませんでした。『バレエ:未来への扉』が公開されたときに、インタビューをした記者が、トウシューズで踊ったりしないのですか?と聞いてきたほどです。それからバレエとベリーダンスを混同した人もいました。君はベリーダンスを習っているのか?って」。

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 「実は子どもの時はダンスをしたいと思ったことはなかったのです。僕は絵を描くのが好きでした。勉強は得意ではなかったし、スポーツもしていませんでした。僕の家は貧しいので、学費を払うので精いっぱいで習い事をする余裕がなかったのです。通っていた学校はカトリックの学校なので合唱隊があり、その後少し校庭で踊るのですが、踊りたくないのでトイレに30分も隠れていたことがあったほどです。でも高校に行って、ちょっと目立ちたいと思っていました。そのときに映画を観て、バック転をする人を見て自分も目立つためにバック転ができるようになりたいと思いました。自分で練習してバック転ができるようになったらもっとできることを増やしたい、と思ってブレイクダンスを踊り始めたのです」

あなたはNetflixの『バレエ:未来への扉』での演技が評価されて、映画に出演しないか、というオファーもありました。もともとボリウッドの映画を観るのも好きでしたよね。でもボリウッドに入ろうとは思わなかったのですね。

「ボリウッドの映画は好きですが、自分自身がそれを踊りたいと思ったこともありませんでした。ボリウッドに入るにはお金持ちでないといけないと思っていたし、かなえられるはずのない夢でした。僕の両親は、ダンスは金持ちの子どものための趣味であって自分たちの子どもには関係ないことだし、夢を見過ぎたら勉強も将来も失ってしまうと言っていて、ダンスを習うことも許してもらえませんでした。父はタクシー運転手なので、僕は勉強してMBAを取って就職してオフィスで働けと言われていました。ダンスを学ぶことは選択肢の中にはなかったのです」。

「最初はダンスには興味がなかったのですが、踊るようになったときにとても幸せな気持ちになりました。18歳になるまで、何かをして幸せになることはなかったのです。そしてダンスを始めたら、奨学金をもらえるようになりました。学業においては学費を払わなければならず、ローンで学費を払っていました。ダンスでは奨学金をもらえたから、それが正しい道だとも感じていたのです。そして僕にとって、特に様々な国の人たちが客席にいるところで、様々な国から来たダンサーたちと踊るのは大きな夢となりました。ダンスを通してみんなが一つになるからです」。

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(C)2023 Shampaine Pictures, LLC. All rights reserved.

家族の反対だけでなく、様々な障壁を乗り越えられたのはなぜですか?

「どんな世界にもたくさんの障壁があるのですが、戦ってみる価値があるし、やがてそんなに大きな障壁ではないと感じるようになりました。僕にはバレエシューズを買うお金もなくてそれを嘆いていました。バレエシューズなしで踊ることはできましたが、シューズなしではクラスに入れてもらえなかったのです。でも、イェフダのように僕を助けてくれる人がいました。彼は僕にご飯を食べさせてくれましたし、スポンサーを見つける手伝いもしてくれました。何かに対して一生懸命で情熱的であれば、 誰かが必ず助けてくれます。そして何か悪いことが起きても、もっといいことが起きるに違いない、と僕は楽天的に考えています」。

「インドで踊ったら観客はインド人しかいませんが、今の僕のようにニューヨークで踊ると、ステージの共演者でも観客でも、日本人や韓国人、いろんな人たちが舞台を共有していて一つになっています。とても幸せな気持ちになりますが、舞台に立つたびに、インドでダンスを学んでいた時のことを思い出します。たくさんの障壁がありましたし、ここまで来ることができるなんて夢にも思っていなかったからです。僕はワシントンD.C.のケネディセンターで踊り、しかもソロを踊ることができました。インドで、住むところがなくて地下室に住んでいた時のことを思い出しました。だから人生が動き出し、ダンスによってここまで僕は行くことができたということにとても感謝しています」。

<コンテンポラリーダンスには、独自の美しさがある>

イスラエルではコンテンポラリーダンスが盛んで素晴らしい振付家もいます。あなたはイスラエルでコンテンポラリーダンスに出会いましたが、いかがでしたか?

「僕はインドではコンテンポラリーダンスは学びませんでした。バレエが僕にとって最も美しい踊りでした。イスラエルに行ってダンスを観たら、醜かったり奇妙だったりしました。でも、このダンスは独自の美しさがありました。変な表情をしていたり、抽象的なことをしていたのですが、僕はそれに独特の美しさがあると感じました。今まで踊っていたものとは違っていて、違ったやり方で物語を語っていると思いました。イスラエルでは、ダンサーたちは動物的でした。ムーブメントが垂直ではなくて、もっとリアルで強い感じでした。感情をそこから見出すことができたのです。美しくあるだけでなく、アグレッシブになったり、悲しくなったり、様々なものを撮りだすことができました。バレエでは、とにかく非常に美しくなければなりません。でも、ここでは醜くてもいいのです。ダンスは自分自身を表現する素晴らしい方法だと思っています。醜くなることを恐れなくていいのです。自分の感情を内に秘めるのではなくて、表に出しています」。

イスラエルではどのような振付家と仕事をしましたか?

「僕はキブツ・コンテンポラリー・ダンス・カンパニーで、バットシェバ舞踊団のレパートリーをいくつか踊りました。キブツのレパートリーも踊りました。カンパニーの振付家の作品も踊りましたが、ニューヨークのプロのカンパニーのようにオハッド・ナハリンの作品も踊っていました。それからアルヴィン・エイリーの作品も踊ったり、様々な作品との出会いもありました。ガガももちろん学びました」。

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(C)2023 Shampaine Pictures, LLC. All rights reserved.

<実は『くるみ割り人形』の王子を踊って、クラシックバレエの王子様も踊ることができたのです!>

映画の中であなたはクラシックバレエのダンサーにはなれないと言われていましたが、実際のところクラシックのテクニックも持っていらっしゃいますよね。

「僕の先生は僕はクラシックバレエ向きではないと言っていました。脚の柔軟性が足りなくて、バレエを始めたのも遅かったからです。僕は先生方を信頼しているので、その先生方にそのように言われたのは悲しかったです、でも去年、僕は今所属しているペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニーで芸術監督のイガール・ペリが振り付けたクラシックの「くるみ割り人形」の王子役を踊ることができたのです。女性はトウシューズで踊る作品で、僕はパ・ド・ドゥも踊ったのですよ。この後イタリアはパレルモでのツアー公演があるのですが、ニューヨークに戻ったらまた12月の「くるみ割り人形」の準備に入ります。今年も王子を踊ります。だから結局クラシックバレエも踊ることができています。コンテンポラリーもクラシックも踊ることができるのは、自分が新鮮な気持ちを持ち続けられるので楽しいです。一つのことにこだわらず、何でも経験したいと思っています」。

「それに、このカンパニーは世界中からのダンサーが集まっています。僕はインド人で、ブラジル、韓国、イタリア、米国、カナダ、日本人の女性が2人と、幅広い国籍のダンサーがいます。イガール・ペリは日本でコンクールの審査員をしたり、サマースクールで教えたりしていて、日本のダンサーにスカラシップを贈呈もしています」。

先生のイェフダさんについて教えてください。映画の中でも、温かい人柄でとても素晴らしい教師として描かれていましたね。

「彼はとても寛大で愛に溢れています。そしてこの映画もとても気に入ってくれています。ニューヨークのリンカーンセンターのDance on Cameraフェスティバルで行われた米国プレミアにも来てくれて、映画の出来栄えもとても良いと言ってくれました。実際に撮影をしたのは67年前なので、彼は撮影したことも忘れていました()。「私はこんなに嫌な奴じゃないよ」「私はこんな人じゃないからここはカットして」と言っていましたが。撮影し始めた頃、彼はとても厳しい先生だったのですが、今ではずいぶん優しくなったと思います」。

「撮影するのに幸いしたのは、このドキュメンタリーの監督も元々はダンサーで、  しかもイェフダの教え子だったのです。だから、彼の生活についても撮影することが許されました。彼はココナッツみたいな人で、外側は堅いのですが、内側は柔らかく優しいのです」。

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(C)2023 Shampaine Pictures, LLC. All rights reserved.

<イェフダ先生は本当の家族のよう>

彼が厳しすぎると言う生徒はいましたか?

「インドでは年長者は敬われているので、彼もとても尊敬されています。昔の教師は厳しかったです。生徒に対して厳しくて叫んでいるような教師は、生徒のことを思っているから厳しくしているとみんな考えていたのです。米国に初めて行ったときに、米国の先生はみんな優しいと思いました。ミスをしてしまっても、「大丈夫ですよ」と言います。イェフダだったら、ちゃんとできるまで何回も何回もやり直しをしなければなりません。でも僕は、厳しいことは大事だと思います。厳しくされることで正しいやり方を学ぶからです」。

「彼がインドに来たのは、年を取っていて、他の国で彼を雇ってくれるところはなかったからです。西洋では若い先生が求められていましたが、インドでは年長者が敬われているので、彼は仕事を得ることができました。だから彼はインドが大好きですし、彼にはたくさんの教え子がいて、彼らは彼の子どもたちのようです。イェフダは一人ぼっちでしたが、今はインドに自分の本物の家族がいるような感じになりました」。

ご家族はこの映画をご覧になりましたか?

「家族は英語があまり話せないのですが、インドの国内のフェスティバルでこの映画の上映会があったので、大きなバスをチャーターして観に来てくれました。家族だけでなく、村の人々がみんな観に来てくれたのです。字幕がついていなかったので、台詞の意味が分からないところもたくさんあったようで、他の観客に内容を聞いていました。そして自分たちが映画に映っているのを観て笑い、英語がわかる観客が映画の中のジョークを聞いて笑うとつられて笑っていました。その笑いの中に僕は愛を感じました」。

「あなたの息子は何をしているの、と親戚に聞かれても答えづらかったのが、僕を主人公にした映画ができたことで、彼らは僕をスターだと誇りに思ってくれるようになったのです。僕の家族はまだ誰もパスポートを持っていないので、まだアメリカで踊る僕を観たことはありません。家族の中で僕が最初にパスポートを持ったので、みんなにもパスポートを取るように言ったのですが、家族にはお金がないので、彼らはインドから離れることを考えたこともなかったのです。インドではバレエ団がないので、僕の公演を見せる機会もありませんでしたが、いつかカンパニーを連れてインドで公演ができればいい、これが僕の次の夢の一つです」。

コロナ禍の時にも、ロックダウンに遭って踊ることも人に会うこともできませんでしたよね。

「コロナ禍の時には僕はイェフダと過ごしていました。彼は年を取っていて助けが必要だったからです。僕の家族は皆一緒に住んでいましたが、イェフダは一人ぼっちだったのです。 彼はインドの言葉を話すことができなかったし、年を取っていて外に出られなかったので、僕が食べ物を用意したり世話をしたりしました。今まで彼が僕を助けてくれて多くのものを与えてくれたので、今度は僕が彼を助ける番だと思ったのです。僕の家族も、一緒に生活している自分たちより、一人暮らしのイェフダがあなたを必要としているから、彼のところに行ってやりなさい、と言っていました」。

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(C)2023 Shampaine Pictures, LLC. All rights reserved.

<自分が今取り組んでいることを一生懸命やってほしい。そして夢の実現に至るまでの過程を大切にして>

アーティストとして、ダンサーとしてこれから何に挑戦したいですか?

「今はもちろんより良いダンサーになれるように頑張りたいです。過去に経験したブレイクダンスもまたやりたいと思うのですが、同時に映画を撮影することや、映像編集といったことも勉強し始めています。映像で物語ることも素晴らしいと思っていて、特にドキュメンタリー映画を撮影されてカメラと過ごす時間が長かったので映像に興味を持ちました。もちろんいまはできるだけ踊り続けて、その後は映画を勉強して、もしかしたら俳優にも挑戦したいと思っています」。

「踊れる時間は限られているので、今はダンスが最優先ですが、そのキャリアが終わったら振付家や教師も良いのですが、映像の中のダンスの振付家も良いと思っているし撮影についてもっと知りたいです。いろんなことを学べたらと思っています。また、インドに戻ってインドの若い人たちにダンスを教えることもできたらと思いますが、それはまだ先のことになると思います」。

「今までのことを振り返ってみると、それは旅路だったと感じています。今まで僕の前に立ちはだかった壁、犠牲、けがなどが僕という人間を作り上げてくれました。お客様がみんな拍手をしてくださった時に、一番良い経験はここに来るまでの過程だったと実感します。これから僕がどんな人になっていくのか、何が起こるのかはっわかりませんが、今僕に起きていることのすべてが、僕を成長させてくれると感じています」。

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(C)2023 Shampaine Pictures, LLC. All rights reserved.

あなたの物語は日本の子どもたちにも大きなインスピレーションとなると思います。今日本の若者も、貧困など様々な問題を抱えていますが。その若い皆さんへのメッセージはありますか?

「自分が今取り組んでいることを一生懸命やってほしいと思います。そして夢の実現に至るまでの過程を大切にして時には楽しんでほしいと思います。成功をつかむにはいくつもの犠牲を払う必要がありました。僕は妹の結婚式に参列できませんでした。その日にケネディセンターでの舞台に立っていたからです。 インドの結婚式はとても長時間にわたる大切な行事です。この道を選んだため、大切な家族と過ごす時間、一緒にできなかったことがたくさんありました。だから犠牲を払うことはありますが、舞台で踊ってお客様から拍手をされることが、僕が一番大切にしていることなので、後悔はありません」。

マニーシュさんの好きなダンサーは誰ですか?

ミハイル・バリシニコフです。彼のように踊れるようになるのが夢ですね。彼は素晴らしすぎて、そこまですごく踊れるようにはならないと思いますが、目標です。あとはダニール・シムキンが憧れですね。ワディム・ムンタギロフも好きです。 いつか僕も日本の観客の前で踊る機会があったら嬉しいなと思います。ペリダンスのイガール・ペリに、日本ツアーはしないの?と聞いてみたいと思います。日本に来たのは今回が初めてですが、とても楽しく過ごしています!」

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『コール・ミー・ダンサー』

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1129() 新宿シネマカリテシネ・リーブル池袋 T・ジョイPRINCE品川 テアトル梅田 ほか全国公開

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出演:マニーシュ・チャウハン イェフダ・マオール
監督:レスリー・シャンパイン、ピップ・ギルモア

★予告動画URL

https://youtu.be/D-6j7pkk1Qw

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2024/06/12

韓国でパリ・オペラ座バレエのエトワールたちの公演、Ballet Gala of Etoiles in Paris 2024開催

7月20日~24日に韓国ソウルの芸術の殿堂オペラ劇場で、パリ・オペラ座バレエ団のエトワール(パク·セウン、オニール八菜、レオノール・ボラック、ヴァランティーヌ・コラサント、ポール・マルク、ギョーム・ディオップ)、ロクサーヌ・ストヤノフ、トマ・ドキール、ジェレミー・ルー・ケール、アントニオ・コンフォルティと所属ダンサー10人が出演する

パリ・オペラ座バレエ団エトワールガラ2024inソウル公演が開催されます。

https://www.sac.or.kr/site/eng/show/show_view?SN=66985

Parisoperaetoilegala

予告編

日本からチケットを購入する場合には、Global Interparkが買いやすいと思います。

https://www.globalinterpark.com/en/product/24006769

 

Aプログラム l 720()21()

Delibe Suite Pas de deux ドリーブ組曲 パ··ドゥ

出演:ロクサーヌ·ストヤノフ、ギヨーム·ディオップ

振付ジョゼ·マルティネス 音楽:レオ·ドリーブ

 

Rhapsody Pas de deux ラプソディ パドドゥ

出演:パク·セウン、ジェレミー·ルー=ケール

振付:フレデリック·アシュトン

音楽:セルゲイ·ラフマニノフ

ピアノ:ソン·ジョンボムLive

 

Bedroom Pas de deux from Carmen カルメン 寝室 パ・ド・ドゥ

出演:オニール八菜、アントニオ·コンフォルティ

振付:ローラン·プティ 音楽:ジョルジュ·ビゼー

 

Diamonds Pas de deux from Jewels ジュエルズより「ダイヤモンド」

出演:ヴァランティーヌ·コラサント、トマ·ドキール

振付:ジョージ·バランシン 音楽:ピョートル·チャイコフスキー

 

Trois Gnossiennes 三つのグノシエンヌ

出演:レオノール ・ボラック、ギョーム ディオップ

振付:ハンス·ファン·マネン 音楽:エリック·サティ

ピアノ:ソン·ジョンボムLive

 

Bedroom Pas de deux from L'Histoire de Manon 「マノン」寝室のパ・ド・ドゥ

出演:パク·セウン、ポール·マルク

振付:ケネス·マクミラン 音楽:ジュール·マスネ

 

休憩

 

The Man I Love from Who Cares 「フー・ケアーズ?」より「私が愛した男」

出演:レオノール·ボラック、ジェレミー·ルー=ケール

振付:ジョージ·バランシン 音楽:ジョージ·ガーシュウィン

 

Pas de deux from Cendrillon Act 2 シンデレラ第2幕パ・ド・ドゥ

出演 :ロクサーヌ·ストヤノフ、アントニオ·コンフォルティ

振付:ルドルフ·ヌレエフ 音楽:セルゲイ·プロコフィエフ

 

The Vertiginous Thrill of Exactitude 精密の不安定なスリル

出演 : パク·セウン、ヴァランティーヌ·コラサント、オニール八菜、ポール·マルク、トマ·ドキール

振付:ウィリアム·フォーサイス 音楽:フランツ·シューベルト

 

プログラム l 7 月 23 ()24 ()

 

Pas de deux from Don Quixote Act 3 ドン·キホーテ3幕パ・ド·ドゥ

出演:ヴァランティーヌ·コラサント、ギヨーム·ディオップ

振付:ルドルフ·ヌレエフ 音楽:ルードヴィヒ·ミンクス

 

Pas de deux from Le Parc Act 3 「·パルク」3幕パ··ドゥ

出演:パク·セウン、ポール·マルク

振付:アンジュラン·プレルジョカージュ 音楽:ヴォルフガング·アマデウス·モーツァルト

 

Pas de deux from Signes 「シーニュ」パ・ド・ドゥ

出演:オニール八菜、アントニオ·コンフォルティ

振付:カロリン·カールソン 音楽:ルネ·オーブリー

 

Tchaikovsky Pas de deuxチャイコフスキー·パ・ド・ドゥ

出演:レオノール ボラック、トマ·ドキール

振付:ジョージ·バランシン 音楽:ピョートル·チャイコフスキー

 

A la manière de, pas de deux 『ボロディン風に』 パドドゥ

出演:ロクサーヌ·ストヤノフ、アントニオ·コンフォルティ

振付:ジャン·ギヨーム・バール 音楽:モーリス·ラヴェル

ピアノ: ソン·ジョンボム (Live)

 

La Mort du cygne 瀕死の白鳥

出演:パク·セウン

振付:ミハイル·フォーキン

音楽:カミーユ·サン=サンス

チェロ:ペク·スンヨン ピアノ:ソン·ジョンボム(Live)

 

Suite en Blanc 白の組曲

出演:ヴァランティーヌ·コラサント、ジェレミー·ルー=ケール

振付:セルジュ·リファール 音楽:エドゥアルド·ラロ

 

休憩

 

Black Swan Pas de trois from Le Lac des cygnes Act 3 『白鳥の湖』から3幕の黒鳥 パドトロワ

出演:パク·セウン、ポール·マルク、ジェレミー·ルー=ケール

振付:ルドルフ·ヌレエフ 音楽:ピョートル·チャイコフスキー

 

Mi Favorita ミ・ファヴォリータ

出演:レオノール ヴォラック、ロクサーヌ·ストヤノフ、オニール八菜、ギョーム·ディオップ、トマ·ドキール、アントニオ·コンフォルティ

振付:ジョゼ·マルティネス 音楽:ガエターノ·ドニゼッティ

 

主催者 エトワール・クラシックのホームページ

http://www.etoileclassic.com/

パリ・オペラ座のダンサーが、エトワール6人を含む10人が出演する、豪華なガラ公演です。特に今年2月の来日公演で活躍したダンサーが多く出演しており、またパリ・オペラ座ならではの演目もあったりと、見応えがありそうです。

来日公演『白鳥の湖』で素晴らしかったパク・セウンとポール・マルクのペアは、特に楽しみですね。芸術の殿堂オペラ劇場はとても立派でしかも見やすい劇場です。日本からのお客様もお待ちしているそうです。

2024/01/21

彩の国さいたま芸術劇場で、ノエ・スーリエ 『The Waves』公演とさいたまダンス・ラボラトリ

色々とバタバタしてしまい、しばらくブログ更新をお休みしていました。こちらではご無沙汰してしまいましたが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。年頭、悲しい出来事もあり、なかなか新年を祝う気持ちになれないこともありましたが、前向きに頑張っていきましょう。

リニューアルオープンする彩の国さいたま芸術劇場では、ノエ・スーリエ 『The Waves』公演さいたまダンス・ラボラトリが3月に開催されます。

https://www.saf.or.jp/stages/detail/98247/

2020年よりフランスのアンジェ国立現代舞踊センターのディレクターを務め、ネザーランド・ダンス・シアター2(NDT2)の委嘱で振付を提供するなど、世界のダンス界で注目を集める振付家ノエ・スーリエ

大規模改修工事による約1年半の休館期間を経て、2024年3月にリニューアルオープンを迎える彩の国さいたま芸術劇場では、ダンス公演第1弾としてノエ・スーリエ振付による『The Waves』を上演します。

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 José Caldeira

『The Waves』はわたしたちの身体の記憶や知覚、その複雑に絡み合ったディテールを呼び覚まし、身体の表現に変換しようという試みです。

イギリスの作家ヴァージニア・ウルフが1931年に手掛けた長編小説『The Waves(波)』の一節を淡々と語る1人のパフォーマー。ウルフの小説の中で織りなされる男女6人のモノローグのように、6人のパフォーマーが多様なムーヴメントを緻密に重ねながら、響き合う。

作品を共に導くのは、ローザス作品に数多く参加してきた、現代音楽アンサンブル・イクトゥス。生演奏による打楽器の常に変容するリズムが、パフォーマーの緊張を高め、ムーヴメントと絶えず呼応しながら観る者の記憶を呼び覚ます、濃密なパフォーマンスです。

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イクトゥス(Ictus) ⓒ José Caldeira

2018年の初演以来ヨーロッパでのツアー公演を重ねている『The Waves』の日本初演。感覚が研ぎ澄まされる、新たなダンス体験となることでしょう。日本のダンス公演の殿堂ともいえる彩の国さいたま芸術劇場では、毎回目利きによる優れたダンス公演が行荒れています。与野本町まで足を運ぶ価値があること、間違いありません。

●舞台評
「身体が交差し、跳ね返り、散乱する。まるで原子が衝突するかのように、観る者の心をつかんで離さない、音と動きによる宇宙が生まれた」 ―Roslyn Sulcas(ニューヨーク・タイムズ紙/2018年)

「まるでコルク栓を抜かれたシャンパン、あっという間になくなるバッテリー、
投げ込まれるボーリングのボール。ダンサーのムーヴメントは空間に投げ出された 物体そのものであり、打ち寄せる波というよりも嵐の波に近い」 ―Rosita Boisseau(ル・モンド紙/2018年)

「『The Waves』もまた、ノエ・スーリエの豊饒な振付思考の一例である。悦びの波のような身振りの投げかけ」 ―Philippe Noisette(レ・アンロッキュプティブル誌/2018年)

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ノエ・スーリエ(Noé Soulier)ⓒ Wilfried Thierry-Cndc

1987年パリ生まれ。パリ国立高等音楽・舞踊学校やベルギーのP.A.R.T.S.でダンスを学び、ソルボンヌ大学で哲学の修士号を取得。2010年パリ市立劇場とミュゼ・ドゥ・ラ・ダンスが主催するダンスコンクール「ダンス・エラルジー」で最優秀賞を受賞。2020年よりアンジェ国立現代舞踊センター(Cndc-Angers)のディレクターを務める。ラン国立バレエ団、バレエ・ロレーヌ、L.A. Dance Project 、リヨン・オペラ座バレエ団、ネザーランド・ダンス・シアター2(NDT2)の委嘱で振付を提供するほか、劇場や美術館、書籍などにおいて身振りと身体経験との関係、ダンスへの様々なアプローチを探求する、今注目のアーティスト。

<公演概要>

ノエ・スーリエ『The Waves』

2024年329日(金)1900開演

    330日(土)1500開演

会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(JR与野本町駅より徒歩7分)

チケット料金(全席指定・税込):
一般5,000円(メンバーズ 4,500円)
U-25* 2,500円 *公演時25歳以下対象。入場時要身分証提示。 

●チケット取扱い・お問合せ
[Web] SAFオンラインチケット https://www.saf.or.jp/t/
[電話] SAFチケットセンター 0570-064-939
(月曜日・埼玉会館休館日を除く10:00~17:00)
(2024年1月4日(木)以降:月曜日を除く10:00~18:00)
*12月20日(水)~25日(月)、29日(金)~2024年1月3日(水):受付休止
[窓口] 彩の国さいたま芸術劇場(2024年1月4日(木)以降。月曜日を除く10:00~18:00)
埼玉会館(休館日を除く10:00~19:00)
○イープラス https://eplus.jp ○チケットぴあ https://t.pia.jp

また、彩の国さいたま芸術劇場では、「さいたまダンス・ラボラトリ」の第7弾を3月に開催します。ノエ・スーリエを講師/ナビゲーターに迎え、『The Waves』を素材に新たな振付法を見出していく6日間。本作の音楽を手掛け、演奏を務める現代音楽アンサンブル・イクトゥス2人、パフォーマーとして作品に関わる船矢祐美子と共に、スーリエの創作メソッドを体験します。最終日には公開リハーサルを予定しております。

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 Olivia Bee for Dance Reflections by Van Cleef & Arpels

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船矢祐美子(Yumiko Funaya)ⓒ Takao Iwasawa

また毎日のクラスでは、初回からさいたまダンス・ラボラトリのナビゲーターを務める湯浅永麻よりカウンターテクニックを学びます。

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湯浅永麻(Ema Yuasa)ⓒ 柘植伊佐夫

<開催日程>

2024年3月22日(金)~27日(水)
➀11:00~12:30 カウンターテクニッククラス(湯浅永麻)
<12:30~13:30 休憩>
②13:30~18:00『The Waves』を素材としたアトリエクラス―Action Training~新たな身振りとの出会い~(ノエ・スーリエ(3月25日(月)~)、船矢祐美子)
※3月27日(水)17:00~ 公開リハーサル(予定)

★3月29日(金)あるいは30日(土)のノエ・スーリエ『The Waves』(会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール)の鑑賞もカリキュラムの一部となります(特別価格にてご案内いたします)。

<対象>

18歳以上35歳未満のダンス・舞台経験者、中級以上
※原則、全日程参加できる方。
※ダンス経験のジャンルは特に問いません。対象外の年齢の方は相談可。
※ノエ・スーリエのワークショップは英語で行われます(日本語通訳付)。

【参加費】25,000円(税込)

★応募締切:2月16日(金)

意欲溢れるダンサー、アーティストの皆さま、ぜひご応募を。今までさいたまダンスラボラトリの公開ショーイングを何回か拝見していますが、大変見ごたえのある力強いパフォーマンスで、観客として観てもとても面白かったです。素晴らしい学びの機会になるはずです。

さいたまダンス・ラボラトリ詳細、応募方法等はこちら

https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/90426/

<お問い合わせ先>

彩の国さいたま芸術劇場(舞踊担当)
Email: workshop@saf.or.jp 
Tel: 048-858-5506(毎週月曜日・12月28日~1月5日を除く10:00~18:00)

2023/07/14

ル・グラン・ガラ 2023 マチュー・ガニオとドロテ・ジルベールからの贈り物 2023年7月31日より開催

豪華絢爛な、美の饗宴!バレエの殿堂、パリ・オペラ座バレエトップダンサーたちによる特別公演「ル・グラン・ガラ 2023」が7月31日より開催されます。
http://le-grand-gala.com/

今年の夏は、久しぶりにバレエのガラ公演が多数開催され、バレエファンは嬉しい悲鳴を上げていますが、どの公演を観たら良いのか迷っている方も多いはず。素敵な公演、海外からのスターダンサーが出演する公演はたくさんありますが、 「ル・グラン・ガラ 2023」は中でも、極めつけの華やかなスターの数々、そしてパリ・オペラ座の今を伝える魅力的な演目で構成され、おすすめできる公演です。

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世界の頂点に燦然と輝くパリ・オペラ座バレエのなかでも、格別の人気と実力を誇るダンサーが集結し、フランス・バレエのエスプリを伝えるバレエ公演-それが『ル・グラン・ガラ』

2018年1月に開催した第1回公演では、マチュー・ガニオ、ドロテ・ジルベール、ユーゴ・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェ、オニール八菜の5名が出演し、気鋭の振付家ジョルジオ・マンチーニによるワーグナーの優美かつ官能的な世界を描いた『トリスタンとイゾルデ』『ベーゼンドンク歌曲集』を日本初演し、バレエの新時代を切り開いた、と大きな話題になりました。

翌19年7月に開催した2回目の公演では、その5名に加え、レオノール・ポラック、アマンディーヌ・アルビッソン、オードリック・ベザールという人気ダンサー3名が参加し、クラシックの目くるめく美しいパ・ド・ドゥから新進気鋭のコンテンポラリーダンスまで、レパートリーが幅広いオペラ座ならではの演目を披露し、絶賛を博しました。

そして、4年ぶりの公演開催となる2023年。

円熟期を迎え、ますます演技や表現にも磨きがかかる麗しきエトワール、マチュー・ガニオとドロテ・ジルベールが座長となり、さらにオペラ座を代表するエトワール6人から未来のエトワールが期待される若手まで、出演者陣も充実しています。演目も、今のオペラ座を伝える、パリ・オペラ座ならではのヌレエフ作品からコンテンポラリー。新作、そしてドラマチック・バレエまで多岐にわたります。オペラ座で活躍しているピアニストの久山亮子さんが演奏する『ソナタ』(ラフマニノフ)、『三つのグノシェンヌ』(サティ)も楽しみです。

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出演者(パリ・オペラ座)

エトワール
 アマンディーヌ・アルビッソン
 レオノール・ポラック
 マチュー・ガニオ
 ドロテ・ジルベール
 ユーゴ・マルシャン
 リュドミラ・パリエロ
プルミエ・ダンスール
 オードリック・ベザール
スジェ
 トマ・ドキ―ル
 クララ・ムーセーニュ
 ビアンカ・スクダモア
コリフェ
 ニコラ・ディ・ヴィコ

特別出演

シュツットガルト・バレエ プリンシパル
 フリーデマン・フォーゲル

マチュー・ガニオからの動画メッセージ

パリ・オペラ座の首席エトワールとして円熟期にあるマチュー・ガニオは、ガラ公演での上演が滅多に許可されない『オネーギン』を、同作でエトワール任命となり、今やオペラ座を代表するエトワールとなったアマンディーヌ・アルビッソンと踊ります。やはりアーティストとして成熟して高い芸術性を持つドロテ・ジルベールは、名パートナーシップを築いている人気エトワールのユーゴ・マルシャンと、共に今年のブノワ賞にノミネートされた『マイヤーリング』(うたかたの恋)、『マノン』『ル・パルク』そして『赤と黒』とドラマティックな作品で共演。美脚とエレガンスで名高いリュドミラ・パリエロはその美しい脚と定評のある音楽性を存分に見せてくれる『カルメン』、マチュー・ガニオとの『ダイヤモンド』での純粋なクラシックでの輝きに期待が高まります。

日本では京都バレエ団の『ジゼル』でカール・パケットと共演して見事な演技を見せた、華のあるオーストラリア出身の若手ビアンカ・スクダモアは、『海賊』『サタネラ』(期待の若手トマ・ドキールと共演)『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』(オドリック・ベザールと共演)など、高度なテクニックを要する演目での活躍が楽しみです。コンテンポラリーが得意なレオノール・ボラックは、フリーデマン・フォーゲルと踊るマルコ・ゲッケの傑作『悪夢』が見もの。そしてアマンディーヌ・アルビッソンオドリック・ベザールの『椿姫』はきっと心をかき乱されるような名演になることでしょう。ヌレエフ版『白鳥の湖』では、アルビッソンが体現するパリ・オペラ座ならではの気高いオデット、長身のベザールとのパートナーシップが観られるはず。

また今回話題を呼んでいるのは、新星クララ・ムーセーニュ。日本人の母を持ち、まだ18歳ながらトップ入団を経て順調に昇進を重ねて現在スジェ。『ラ・バヤデール」の影の王国のソリストや『ジゼル』のドゥ・ウィリなど重要な役を踊り、正統派のフレンチスタイルを身に着け、ジュヌ・エスポワール賞やカルポー賞など若手に贈られる賞を受賞して絶好調です。カール・パケットが振り付けた子ども向け公演My First Swan Lakeでは、全幕でオデット、オディールを踊りました。昨年は横浜バレエフェスティバルやバレエ・アステラスでその才能を見せてくれました。今回は、やはり入団3年目の若手ニコラ・ディ・ヴィコと『ドン・キホーテ』『パリの炎』を踊って若さ弾けるテクニックを披露してくれるに違いありません。3月にプロモーションで来日した時に取材に立ち会いましたが、日本語を流ちょうに話し、輝く初々しさの中に聡明さが感じられて眩しかったです。

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昨年、クララ・ムーセーニュさんにインタビューをさせていただきました。ぜひお読みください!

https://ballenta.net/archives/182336

【Aプログラム】
7/31(月) 19:00開演
8/1(火)  13:30開演
8/2(水)  13:30開演

『ソナタ』
振付:ウヴェ・ショルツ  音楽:セルゲイ・ラフマニノフ
レオノール・ボラック マチュー・ガニオ
ピアノ:久山亮子 チェロ:水野優也

『カルメン』
振付:ローラン・プティ  音楽:ジョルジュ・ビゼー
リュドミラ・パリエロ  オードリック・ベザール

『くるみ割り人形』
振付:ジャン=クリストフ・マイヨー  音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アマンディーヌ・アルビッソン  フリーデマン・フォーゲル

『ル・パルク』
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ  音楽:ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト
ドロテ・ジルベール  ユーゴ・マルシャン

『海賊』
振付:マリウス・プティパ  音楽:アドルフ・アダン
ビアンカ・スクダモア  トマ・ドキール

『ドン・キホーテ』
振付:マリウス・プティパ  音楽:レオン・ミンクス
クララ・ムーセーニュ ニコラ・ディ・ヴィコ

『3つのグノシエンヌ』
振付:ハンス・ファン・マーネン 音楽:エリック・サティ
レオノール・ボラック フリーデマン・フォーゲル
ピアノ:久山亮子

『サタネラ』
振付:マリウス・プティパ 音楽:チェーザレ・プーニ
ビアンカ・スクダモア トマ・ドキール

『白鳥の湖』より第2幕 ★
振付:マリウス・プティパ  音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アマンディーヌ・アルビッソン オードリック・ベザール

『赤と黒』より寝室のパ・ド・ドゥ ★
~ラコットへのオマージュ~
振付:ピエール・ラコット  音楽:ジュール・マスネ
ドロテ・ジルベール ユーゴ・マルシャン

『ジュエルズ』より“ダイヤモンド” ★
振付:ジョージ・バランシン  音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
リュドミラ・パリエロ マチュー・ガニオ

【Bプログラム】
8/2(水)  18:30開演
8/3(木)  18:30開演

『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
レオノール・ボラック トマ・ドキール

『マノン』より“寝室のパ・ド・ドゥ” ★
振付:ケネス・マクミラン 音楽:ジュール・マスネ
リュドミラ・パリエロ  フリーデマン・フォーゲル

『オネーギン』
振付:ジョン・クランコ  音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アマンディーヌ・アルビッソン  マチュー・ガニオ

『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』
振付:ウィリアム・フォーサイス  音楽:トム・ウィレムス
ビアンカ・スクダモア  オードリック・ベザール

『うたかたの恋 マイヤーリング』
振付:ケネス・マクミラン  音楽:フランツ・リスト
ドロテ・ジルベール  ユーゴ・マルシャン

『パリの炎』
振付:ヴァシリー・ワイノーネン 音楽:ボリス・アサフィエフ
クララ・ムーセーニュ  ニコラ・ディ・ヴィコ

『ヴィヴァルディ・パ・ド・ドゥ』
振付:ジル・イゾアール  音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ
リュドミラ・パリエロ  マチュー・ガニオ

『椿姫』
振付:ジョン・ノイマイヤー  音楽:フレデリック・ショパン
アマンディーヌ・アルビッソン  オードリック・ベザール

『マノン』より“出会いのパ・ド・ドゥ”
振付:ケネス・マクミラン 音楽:ジュール・マスネ
ドロテ・ジルベール  ユーゴ・マルシャン

『悪夢』
振付:マルコ・ゲッケ  音楽:キース・ジャレット、レディ・ガガ
レオノール・ボラック  フリーデマン・フォーゲル

『コンチェルト』
振付:ケネス・マクミラン 音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ
ビアンカ・スクダモア トマ・ドキール

クララ・ムーセーニュをフィーチャーした予告編

チラシ画像(クリックで拡大します)

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公演日程
2023年7月31日(月)~8月3日(木)
7/31(月)  Aプロ 19:00開演
8/1(火)    Aプロ 13:30開演
8/2(水)    Aプロ 13:30開演 Bプロ 18:30開演
8/3(木)    Bプロ 18:30開演

会場
東京文化会館大ホール

チケット取扱

販売先 URL その他
TBSチケット https://tickets.tbs.co.jp/grandgala2023/
チケットスペース    
チケットスペースオンライン https://ticketspace.jp/top
チケットぴあ https://w.pia.jp/t/grandgala2023/ Pコード:517-869
ローソンチケット https://l-tike.com/grandgala2023/ Lコード:35406
イープラス https://eplus.jp/grandgala2023/ Family Mart店舗
東京文化会館チケットサービス 03-5685-0650 (オペレーター対応)
https://www.t-bunka.jp/tickets/

お問合せ チケットスペース 03-3234-9999

主催・企画 TBS
企画協力 ベルチエ・アソシエイツ
特別協賛 株式会社エアウィーヴ

〇全国公演
【名古屋公演】
日時 7月30日(日)13:30開演
会場 愛知県芸術劇場大ホール
お問合せ CBCテレビ事業部 052-241-8118
公演詳細は下記をご覧ください。
https://hicbc.com/event/le-grand-gala2023/

【大阪公演】
日時 8月5日(土)17:00開演
会場 フェスティバルホール
お問合せ キョードーインフォメーション 0570-200-888
公演詳細は下記をご覧ください。
https://www.ktv.jp/event/legrandgala2023/

2022/12/06

『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23』、開幕は平野亮一主演「うたかたの恋―マイヤリング―」

英国ロイヤル・オペラ・ハウスで上演されたバレエとオペラの舞台を、特別映像を交えてスクリーンで体験できる「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズンが2022年12月9日(金)~2023年9月28日(木)までの期間中、史上最大のスケールとなる全13演目を、各1週間限定にて全国公開することが決定しています。

http://tohotowa.co.jp/roh/

◆バレエ演目:①『うたかたの恋 ーマイヤリングー』、② 『ダイヤモンド・セレブレーション』、③『くるみ割り人形』、④『赤い薔薇ソースの伝説』、⑤『シンデレラ』、⑥『眠れる森の美女』

◆オペラ演目:①『蝶々夫人』、②『アイーダ』、③『ラ・ボエーム』、④『セビリアの理髪師』、⑤『トゥーランドット』、⑥『フィガロの結婚』、⑦『イル・トロヴァトーレ』

 

②ロイヤル・バレエ『うたかたの恋 ーマイヤリングー』:2022年12月16日(金) 

平野亮一、ナタリア・オシポワ、ラウラ・モレ―ラ、マリアネラ・ヌニェス、フランチェスカ・ヘイワード出演

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⑤ロイヤル・バレエ『ダイヤモンド・セレブレーション』:2023年2月17日(金) 

マリアネラ・ヌニェス、リース・クラーク、ワディム・ムンタギロフ、ジェームズ・ヘイ、マシュー・ボール、マルセリーノ・サンベ、高田茜、金子扶生、フランチェスカ・ヘイワード、ヤスミン・ナグディ、マヤラ・マグリ、ナタリア・オシポワ、スティーヴン・マックレー、アナ・ローズ・オサリヴァン、アレクサンダー・キャンベル、ウィリアム・ブレイスウェル他出演

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⑥ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』:2023年2月24日(金)

金子扶生、ウィリアム・ブレイスウェル、前田紗江、ジョセフ・シセンズ他出演

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⑦ロイヤル・バレエ『赤い薔薇ソースの伝説』:2023年3月24日(金)

マルセリーノ・サンベ、フランチェスカ・ヘイワード出演

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⑩ロイヤル・バレエ『シンデレラ』:2023年6月16日(金)

マリアネラ・ヌニェス、ワディム・ムンタギロフ出演予定

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 ⑫ロイヤル・バレエ『眠れる森の美女』:2023年8月25日(金)

ヤスミン・ナグディ、マシュー・ボール出演予定

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 <上映劇場>

*札幌シネマフロンティア(北海道)
*フォーラム仙台(宮城)
*TOHOシネマズ 日本橋(東京)
*イオンシネマ シアタス調布(東京)
*TOHOシネマズ 流山おおたかの森(千葉)
*TOHOシネマズ ららぽーと横浜(神奈川)
*ミッドランドスクエア シネマ(愛知)
*イオンシネマ 京都桂川(京都)
*大阪ステーションシティシネマ(大阪)
*TOHOシネマズ 西宮OS(兵庫)
*中洲大洋映画劇場(福岡)

<料金:一般¥3,700円 学生¥2,500円(税込)>

 
12月9日(金)より TOHOシネマズ 日本橋 ほか全国公開!

■公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh/   

■配給:東宝東和

 

12月16日より公開される『うたかたの恋―マイヤリングー』につきましては、先日、試写を拝見しました。改めて感想を書きますね。平野亮一さんの鮮烈な大熱演、ナタリア・オシポワ、ラウラ・モレ―ラ、マリアネラ・ヌニェス、フランチェスカ・ヘイワードとプリンシパルが多数出演して、とてもドラマティックで暗い情熱が輝く、重厚で圧巻の舞台となっています。

 

シーズンラインナップ速報のチラシに、新シーズンの見どころをまとめた文章を寄稿しました。この紹介文をアップしますね。

 

英国ロイヤル・オペラ・ハウス・シネマシーズン、202223シーズンは、今までのシネマシーズンの中でも最も充実したラインアップとなった。202122シーズンはコロナ禍の影響もあり、バレエ作品は3作品のみだったが、新しいシーズンはバレエ6作品と倍増。『MJ The Musical』でトニー賞を受賞したばかりのクリストファー・ウィールドン振付、話題の世界初演作品『赤い薔薇ソースの伝説』や、平野亮一主演でプリンシパル5人出演の豪華キャスト『うたかたの恋』、英国ロイヤル・バレエのお家芸アシュトン作品ながら久しぶりの上演、新プロダクションとなる『シンデレラ』など、見逃せない舞台が盛りだくさん、ときめきが止まらない一年になる。

 

シネマシーズンの開幕は、ハプスブルク家、オーストリア皇太子にして皇妃エリザベートの息子ルドルフの心中事件を巨匠マクミランがバレエ化した『うたかたの恋』。シネマに主演するのは、英国ロイヤル・バレエきっての演技派ダンサーとなった平野亮一。ルドルフ皇太子役は多くの男性ダンサーが熱望する難役だが、平野は前回の演技が絶賛され、スコティッシュ・バレエにおいてもゲストでこの役を演じた。当代一のルドルフ役としての地位を確立して、世界が注目するシーズン初日、そして収録公演の主演に抜擢された。ナタリア・オシポワ、マリアネラ・ヌニェス、ラウラ・モレ―ラ、フランチェスカ・ヘイワードと英国ロイヤル・バレエを代表する綺羅星のような女性プリンシパルたちを相手に、死へと至る狂おしい愛欲の罠に堕ちた皇太子を演じる。英国ロイヤル・バレエならではの陰影に富んだ作品だが、唯一ルドルフを癒す存在としてお気に入りの御者ブラットフィッシュを、日本出身のアクリ瑠嘉が演じることにも注目したい。

 

「ダイヤモンド・セレブレーション」は英国ロイヤル・バレエのファン組織であるフレンズの60周年を記念してのミックス・プログラム。バレエ団の多様性を象徴する公演として、バラエティに富んだプログラムとなっている。『不思議の国のアリス』のクリストファー・ウィールドンが2006年に当時の4人のスーパースター男性ダンサー(アンヘル・コレ―ラ、ヨハン・コボー、イーサン・スティーフェル、ニコライ・ツィスカリーゼ)のために振り付けた「For Four」の英国ロイヤル・バレエ初演は、バレエ団を代表する男性ダンサー4人(ワディム・ムンタギロフ、マシュー・ボール、セザール・コラレス、マルセリーノ・サンベ)の競演となる。また、ファースト・ソリストのヴァレンティノ・ズケッティ、ヒップホップのジョセフ・トゥーンガ、そして米国で人気の振付家パム・タノウィッツのそれぞれの世界初演新作を上演する。「ダイヤモンド」のタイトルにふさわしく、ジョージ・バランシンの美しい『ジュエルズ』より古典的な輝きの名作『ダイヤモンド』もマリアネラ・ヌニェス、リース・クラークの麗しきペアの主演で上演される。

 

冬の風物詩、『くるみ割り人形』は今シーズンもやってくる。少女クララとハンス・ピーターが縦横無尽に活躍し、大きくなるクリスマスツリー、楽しいお菓子の国での各国の踊り、豪華絢爛な金平糖の精のパ・ド・ドゥとあらゆる『くるみ割り人形』の中でも決定版とされ愛されてきたサー・ピーター・ライト振付の名作。クリスマスの夢と魔法が詰まった、宝箱のような舞台で金平糖の精を演じるのは、シネマでの『眠れる森の美女』のオーロラ役で主演した後にプリンシパルに昇進して以来、輝かしい技術だけでなく、演技力にも磨きをかけてスターへの階段を駆け上った金子扶生。王子には人気上昇中の爽やかな新プリンシパル、ウィリアム・ブレイスウェル。クララ役には、有望な若手として注目を集めている前田紗江が、主要な役への出演としてはシネマに初めて登場する。

 

今シネマシーズン最大の話題は、クリストファー・ウィールドンの新作『赤い薔薇ソースの伝説』。『不思議の国のアリス』『冬物語』と英国ロイヤル・バレエで生まれた作品が今や世界中のバレエ団で人気作として上演されており、さらにブロードウェイミュージカルの『パリのアメリカ人』、そしてマイケル・ジャクソンの生涯を描いた『MJ The Musical』がトニー賞に輝いた ウィールドンが新たに送り出す新作は、メキシコの作家ラウラ・エスキバルの小説が原作。1992年に映画化され、日本でもミニシアターでヒットした。抑圧的な母親に恋愛を禁止されたティタは、姉と結婚した恋人ペドロへの熱い思いを込めて料理を作るが、料理を通して伝わった情熱が様々な出来事を巻き起こす。”マジック・リアリズム“と呼ばれる手法で奇想天外な物語が展開する。ヒロインのティタにフランチェスカ・ヘイワード、恋人ペドロにマルセリーノ・サンベ、姉にマヤラ・マグリ、母エレナにラウラ・モレ―ラ、医師ジョン・ブラウンにマシュー・ボール、さらにアナ=ローズ・オサリバン、セザール・コラレスと豪華なキャスト陣。英国の辛口な批評家たちにも、ウィールドンの巧みな作劇や魔法のようなビジュアルセンスが絶賛された。

 

英国ロイヤル・バレエの礎を築いた振付家、フレディック・アシュトンの代表作『シンデレラ』は今シーズン、初演から75周年を迎える。新国立劇場バレエ団のレパートリーとしても高い人気を誇り愛されてきた本作だが、英国ロイヤル・バレエでは、12年ぶりと久しぶりの上演となる。プロダクションを一新し、舞台美術には、メトロポリタン・オペラやナショナル・シアター、オーストラリア・バレエなどの作品でドラマティックな装置を手掛けてきたトム・パイを起用。英国ロイヤル・バレエの重要なアイデンティティをなす作品であるだけに、待望のリバイバルだ。男性ダンサーが女装して演じる義理の姉妹のコミカルな演技、きらめく星の精の踊りや光輝く馬車、プロコフィエフの魅惑的な音楽、心優しいシンデレラが幸福をつかむまでのドラマと魅力いっぱい。見どころ満載の珠玉の名作。

 

シーズンの締めくくりを飾るのは、クラシック・バレエの名作中の名作『眠れる森の美女』。第二次大戦後の1946年、英国ロイヤル・オペラ・ハウスに現在の英国ロイヤル・バレエが移転した時の最初の演目として上演された、バレエ団にとっては最も重要なグランド・バレエ。チャイコフスキーが振付家プティパの細かい指示に基づいて作曲した音楽は美しくドラマティック。100年の眠りを経て目覚めたオーロラの結婚式は、青い鳥や長靴を履いた猫、赤ずきんちゃんなどおとぎ話の主人公も駆けつけて、絢爛豪華そのもの。邪悪な妖精カラボスの活躍ぶりは、英国ロイヤル・バレエならではの演劇性の高さもあり、見ごたえ十分だ。

 

世界初演の話題の新作ドラマティック・バレエから、英国ロイヤル・バレエの十八番アシュトンやマクミラン作品、クラシック・バレエの決定版や現代作品まで、バラエティに富んだ魅力的な202223のシネマシーズン。世界トップクラスのスターダンサーたちから、日本出身の期待の若手ダンサーやプリンシパルまで、映画館がロンドン、コベントガーデンの英国ロイヤル・オペラ・ハウスとなって観客の皆様を待っている。

2022/11/21

ルグリの最後の舞台、スーパースター・ガラ2022 いよいよ今週末に開催

マニュエル・ルグリ、スヴェトラーナ・ザハロワ、マチュー・ガニオ、マニアネラ・ヌニェス、ワディム・ムンタギロフ、ナタリア・オシポワ……いまバレエ界に君臨する新旧のスーパースターが一堂に会する「スーパースター・ガラ2022」が今週末、11月24日(木)から開幕します。

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https://super-stars-gala.com/

海外からトップスターを集めたガラ公演が、コロナ禍によってなかなか実現が難しかった状況を乗り越えて、昨年夏の世界バレエフェスティバル以来の開催となります。何より注目されるのが、今回の公演で、パリ・オペラ座のエトワールの中のエトワールとして一時代を築いたマニュエル・ルグリが今回、舞台で踊るのが最後となるということ。パリ・オペラ座を引退後、ウィーン国立バレエの芸術監督、そして現在のミラノ・スカラ座バレエの芸術監督に就任した後も、日本の観客の前で美しく踊る姿を見せてきたルグリですが、今回が見納めとなります。

ルグリが踊るのは、パトリック・ド・バナがルグリのために振り付け、多くの舞台で披露されてきた名作「The Picture of…」の新バージョン。そして、パリ・オペラ座の同僚だったエレオノラ・アバニャートと共演し、元パリ・オペラ座のスジェにしてボリショイ・バレエにも作品を提供するなど注目されるシモーネ・ヴァラストロの日本初演作品「Árbakkinn」。ルグリの雄姿を胸に焼き付ける、見逃せない舞台となることでしょう。リハーサル映像も到着しており、期待が高まります。

パリ・オペラ座の首席エトワールとして、ますます充実してきたマチュー・ガニオは、Aプロでは母ドミニク・カルフーニやマイヤ・プリセツカヤによる名演が印象深いローラン・プティの香り高い名作『病める薔薇』、新国立劇場バレエ団に『ジゼル』を振り付けて絶賛を浴びたアラステア・マリオットによる佳品『月の光』、そしてプレルジョカージュの『ル・パルク』と日本で初めて披露する作品を踊り、その成熟ぶりを見せてくれることでしょう。

英国ロイヤル・バレエの至宝、輝かしいスターペアのマリアネラ・ヌニェスワディム・ムンタギロフは、『白鳥の湖』より黒鳥のパ・ド・ドゥ『ドン・キホーテ』『海賊』とクラシック・バレエの定番で会場を大いに沸かせてくれるはず。

また今やロイヤル・バレエを代表するバレリーナとなったナタリア・オシポワは、近年果敢に挑んでいるコンテンポラリー作品で、強靭な身体能力と、類まれな表現力、尖った個性でウェイン・マクレガーの傑作「ウルフ・ワークス」をマクレガーの申し子エドワード・ワトソンと、そして私生活でもパートナーの鬼才ジェイソン・キッテルバーガー振付作品「Ashes」を日本で初披露。さらにワトソンと、奇才アーサー・ピタの世界初演作品「Somebody Who Loves Me」を踊る予定で、これも見逃せません。

ロイヤル・バレエを引退後も、振付指導者として活動しながら、ダンサーとしても柔軟な肉体で唯一無二の個性を放ち続けるエドワード・ワトソンは、オシポワとの共演作のほか、今年の夏のロイヤル・バレエ・ガラで喝采を浴びたピタのユニークな「インポッシブル・ヒューマン」をもう一度見せてくれます。

長身と貴公子的なサポート技術の素晴らしさで、ロパートキナ、ザハロワなど数々の名バレリーナをマリインスキー・バレエで支えてきたダニ―ラ・コルスンツェフが、マリインスキーの同僚ダリア・パヴレンコと共に出演するのも嬉しいことです。『スパルタクス』、『シェヘラザード』と、今ではなかなか日本で生で観ることが難しいロシア・バレエの精髄を見せてくれることでしょう。スヴェトラーナ・ザハロワと踊る「ジュエルズ」より ダイヤモンドも至上の美を見せてくれるはずで、必見です。

新国立劇場バレエ団に『ライモンダ』でゲスト出演して高い評価を得たダリア・パヴレンコは、マリインスキーを退団後もフリーで活動し、2020年にはヴッパタール舞踊団にゲスト出演してピナ・バウシュ作品「青髭」「7つの大罪」を踊るという異色の経験もしており、今回はソロで『ルースカヤ』も踊ります。

 

先週末のパトリック・ド・バナ(本公演芸術監督)の来日に続き、日曜日には、先日まで『マイヤリング』に主演していたマチュー・ガニオも来日。まもなく夢の舞台の幕が開きます。

 

このたび、経済産業省による「イベント割」に「スーパースター・ガラ2022」の下記5公演が対象となることが決定いたしました。購入対象者の方のみ公演のチケットを20%オフにてご購入いただけます。
公演当日には新型コロナ「ワクチン接種証明/陰性検査結果」のご提示が必要となります。

〔日 程〕
11月24日(木)19:00開演 Aプログラム
11月25日(金)13:00開演 Aプログラム
11月26日(土)13:30開演 Aプログラム
11月26日(土)18:30開演 Bプログラム
11月27日(日)13:30開演 Bプログラム

〔出 演〕
マニュエル・ルグリ (元パリ・オペラ座バレエ団エトワール ミラノ・スカラ座バレエ団芸術監督)
マチュー・ガニオ (パリ・オペラ座バレエ団エトワール)
スヴェトラーナ・ザハロワ (ボリショイ・バレエ プリンシパル)
マリアネラ・ヌニェス (英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
ナタリア・オシポワ (英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
エドワード・ワトソン (元英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
エレオノラ・アバニャート (元パリ・オペラ座バレエ団エトワール ローマ歌劇場バレエ団芸術監督)
ダニーラ・コルスンツェフ (元マリインスキー・バレエ プリンシパル)
ダリア・パヴレンコ (元マリインスキー・バレエ プリンシパル)
パトリック・ド・バナ (フリーランス・ダンサー、振付家 本公演芸術監督)
エレナ・マルティン (元スペイン国立バレエ団 プリンシパル)

〔会 場〕 
東京文化会館大ホール

〔料 金〕 全席指定・税込  
S席:19,000円
A席:17,000円
B席:14,000円
C席:10,000円
D席:6,000円


〔チケット取扱〕 

販売先 URL その他
TBSチケット https://tickets.tbs.co.jp/ssg2022/
ローソンチケット https://l-tike.com/superstarsgala/
チケットぴあ https://w.pia.jp/t/super-stars-gala/
セブン-イレブン
Pコード:514-290
ローソン、ミニストップ店内Loppi
Lコード:34986
イープラス https://eplus.jp/superstars-gala/ Family Mart店舗
東京文化会館
チケットサービス
http://www.t-bunka.jp/ 03-5685-0650
(10:00~18:00 休館日を除く)

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