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2016/08/24

クラシカ・ジャパン9月に「ルドルフ・ヌレエフ~Dance to Freedom~」とスティーヴン・マックレーのインタビュー放映

クラシカ・ジャパンでは、9月に注目のドキュメンタリー番組を放映します。

http://www.classica-jp.com/feature/201609/06.html

まずは、「ルドルフ・ヌレエフ~Dance to Freedom~」。これはBBCが製作したドキュメンタリー・ドラマで、1961年に起きたルドルフ・ヌレエフ亡命事件を扱ったもの。
http://www.bbc.co.uk/programmes/b06t3j8q

再現ドラマ部分では、ヌレエフ役はボリショイ・バレエのプリンシパル、アルチョム・オフチャレンコが演じています。そして、当時キーロフ・バレエのプリマだったアラ・オシぺンコ、ヌレエフと同室だったユーリ・ソロヴィヨフの未亡人タチヤーナ・レガート(ロイヤル・バレエのサラ・ラムの師)、パリでヌレエフと親しくなったピエール・ラコットとギレーヌ・テスマー夫妻などが証言しています(ドラマ部分でギレーヌ・テスマーを演じているのは、やはりボリショイのアンナ・チホミロワ)。そしてヌレエフの亡命事件を手助けした当時パリ社交界の花形だったクララ・セイントも声のみですが登場しています。

初回放送は、9月13日(火)21:00~22:40 (リピートあり)
この興味深い番組を日本語字幕付きで観られるのはとても嬉しいことですね。

ネットで視聴した時の私の感想
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2015/12/bbcrudolf-nurey.html


そしてもう一つ、興味深い番組としては、

クラシカ・音楽人 <びと>
「英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル
スティーヴン・マックレー ~僕がSNSで伝えたいこと」

初回放送
9月3日(土)20:30~21:00

チャンネル独自の視点で、音楽に身も心も捧げる話題の音楽人の本音に迫るインタビュー番組。英国ロイヤル・バレエのプリンシパル、スティーヴン・マックレーが登場します。

バレエファンの間で話題になっているのがマックレーのインスタグラム。そこには、ダンサーの身体能力と厳しい鍛錬、公演の舞台裏、そして父として夫として、プロの厳しさや孤独を抱えながら家族を愛する一人の人間の姿が発信されている。なぜ彼は動画や写真で毎日赤裸々な姿を発信し続けるのか。アーティストやバレエ団にとってのSNSの効用を、マックレーが独自の視点で語る。

スティーヴン・マックレーが日々の鍛錬の様子や、愛らしい娘オードリーちゃんを写したInstagramをフォローされている方も多いと思います。フォロワーは現在6万7千人。彼が語るSNSの効用、大変興味深く見逃せませんよね。クラシカ・ジャパンのために収録された独占インタビューです。


また、9月はルドルフ・ヌレエフ特集ということで、もう一つドキュメンタリー、「ドキュメンタリー『ルドルフ・ヌレエフ~その魅力は天上の光』」、さらには2013年にパリで行われた「ルドルフ・ヌレエフ生誕75周年ガラ」、オシポワとサラファーノフが主演したミラノ・スカラ座のヌレエフ版『ドン・キホーテ』(ちょうど9月にミラノ・スカラ座の来日公演『ドン・キホーテ』公演もあり、サラファーノフが出演します)、そしてヌレエフとフォンテーンの伝説のパートナーシップが観られる『白鳥の湖』と豪華なラインアップです。

http://www.classica-jp.com/feature/201609/02.html

このほかにも、パリ・オペラ座バレエの様々なバレエ作品などバレエ関連の番組がたくさんあるクラシカ・ジャパン、私も加入していますがとてもお勧めです。

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2016/08/20

7/21、22(朝)新国立劇場バレエ団『こどものためのバレエ劇場「白鳥の湖」』

公演から日数が経ってしまったけど、大変優れた公演だったのでご紹介します。

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/kids-swan/

子ども向けに、『白鳥の湖』をわかりやすく構成した作品。といっても、基本的な作品の骨格はそのまま残しており、いくつかの場面を省略したり、幕の前にナレーションを挿入した程度の変更であり、子どもっぽい作品にはなっていない。ベースは、現在の牧阿佐美振付版ではなく、その前に上演されていたセルゲイエフ版で、衣装もセルゲイエフ版のものを使用しているようだ。

具体的な変更箇所としては、1幕をかなり短縮していてパ・ド・トロワや道化のソロがないこと。ワルツもとても短い。2幕は、大きな白鳥のヴァリエーションと、オデットのヴァリエーションの省略。3幕は、ディヴェルティスマンがスペインとナポリのみでチャルダッシュなどを省略。4幕はオデットが出てくるまでの前半部の省略。ストーリーに関係のない部分が省略されているというわけだ。その分、オデット役のダンサーがあまり休む場面がなくて大変そうである。

パ・ド・トロワやオデットヴァリエーションがないのは少し残念だけど、多くの人が退屈だと感じる1幕が短くされていて、2幕はそれほど省かれていないので、「白鳥の湖」を観たという気持ちになることができる。特に、4幕については、牧阿佐美版で王子が何もしていないのにロットバルトが自滅するという、あまり盛り上がらないエンディングではなくて、しっかり王子が闘ってロットバルトの翼をもぐというのがあるので、わかりやすくて良い。

子ども向けといっても、本物を見せることが、バレエに興味を持ってもらうためにはとても大切なことだと思う。そして、この公演はクオリティも高くて大人が観ても楽しめるうえ、「白鳥の湖」の本質はしっかり伝えられていたので、とても良かった。ナレーションも落ち着いた感じで、子どもっぽくなく聞きやすい。満席の客席を埋めた子どもたちも楽しんでいたし、また子どもたちの観ている時のマナーも大変良く、いい雰囲気の舞台となった。

4キャストあったのだけど、観たのは2キャスト。キャスティングはかなり贅沢でプリンシパルもたくさん出演していた。ただ、残念だったのが、キャスト表にはオデット/オディール、王子、そしてロットバルト、王妃、道化を演じたダンサーの名前しか出ていなかったこと。子ども向けの公演だからと言って、こういうところでは手抜きをしてほしくない。お子さんに、あの役をやったのは誰?と聞かれるお父さんやお母さんもいることだろう。

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
原振付:マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ
原台本:ウラジーミル・ペギチェフ/ワシリー・ゲリツェル
構成・演出:大原永子
装置・衣裳:ヴャチェスラフ・オークネフ
照明:鈴木武人
音響:仲田竜太

7月21日(木)11:30
オデット/オディール 小野絢子
ジークフリード王子 福岡雄大
ロットバルト  貝川鐵夫
道化   八幡顕光
女王   本島美和
四羽の白鳥 寺田亜沙子、柴山紗帆、細田千晶、広瀬碧
スペイン 宝満直也、林田翔平
ナポリ 木下嘉人、飯野萌子

小野絢子さんのオデット/オディールは2年ほど前に観たのだけど、その時には彼女はこの役には向いていないように感じられた。技術的には素晴らしいけれども、どうしても小柄で腕が短めなので、表現が届かない印象があったのだ。ところが、今回小野さんは、大きな成長ぶりを見せてくれた。体型的なハンディを感じさせず、オデットもとてもドラマティックで研ぎ済まされた美しさを感じさせる。一つ一つのポジションがとても正確でアラベスクも長いし、動きもとても滑らかで、特に首の使い方に感情があふれていた。悲しい運命を背負わされたオデットだけど、気高さもあり、運命と戦う凛とした強さも感じさせる。オディールは小悪魔的で魅惑的、高笑いする姿も似合っていた。グランフェッテもダブルを入れてとても安定していた。カンパニーを引っ張っていくスターオーラも身に着けており、もはや小野さんには怖いものは何もないように思える。

福岡さんの王子は小野さんとのパートナーシップがよくサポート上手、そしてソロでの技術も素晴らしい。彼はいつでもきれいに5番に降りることができるし跳躍も高い。王子を演じるにはもう少しノーブルさが欲しいけどそこまで要求するのは贅沢だろう。4幕でロットバルトに敢然と向かっている姿は凛々しかった。

キャスト表には載っていなかったのが残念だったけど、八幡さんの道化は盤石。1幕はソロがカットされてしまってあまり出番はないけれど、3幕の最初にはしっかりと見せ場があって、軽やかで愛嬌に溢れていてプロの仕事。2幕、4幕の白鳥は18人だっただろうか。通常よりは人数は少なめであるけれども、少ないという印象はない。ただ、いつもよりは揃い方が足りないかな、と思ったところがあった。4羽の白鳥は、普段の「白鳥の湖」では実現しないような、ソリストを3人投入したなかなか豪華な顔ぶれで小さな白鳥のはずなのに小さくなかった。この4羽のシンクロ具合は見事だった。


7月22日(金)11:30
オデット/オディール 長田佳世
ジークフリード王子 奥村康祐
ロットバルト  小柴富久修
道化   八幡顕光
女王   本島美和
四羽の白鳥 寺田亜沙子、柴山紗帆、細田千晶、広瀬碧
スペイン 池田武志、林田翔平

長田さんのオデットが圧倒的に素晴らしかった。とても悲劇的なのだけど、気品に溢れていて一つ一つの動きが圧倒的に美しく、どのポーズも完璧にアカデミック。白鳥の姿でもとても高貴な姫だったのが見て取れる。若くひたむきな奥村さんの王子との組み合わせもよく、ドラマを感じさせた。オディールも、エレガントな大人の魅力で魅せると同時に、妖艶な中でもどこか悲しげで影のある黒鳥だった。こういう大人の成熟した踊りは、新国立劇場バレエ団でもっともっと観たいし、若い人にとってはとても良い手本となることだろう。奥村さんは、3幕ではオディールが現れたのが嬉しくて仕方のない模様で、ソロも軽やかなこと。彼はとても端正な踊り手で、その中で若々しい情熱も見せてくれて観ている側も思わず頬も緩んでしまう。クラシック・バレエの中でも日本最高峰と言えるようなパートナーシップの公演を思いがけず観ることができて、とても幸せだった。

4日連続の8公演で、コール・ド・バレエはさすがに昼公演と夜公演は別のダンサーが踊っていたようだけど、ダンサーたちにとっては大変なスケジュールだったと思う。しかしこのような低価格で、しっかりとした本物の舞台を観ることができたのは素晴らしい。これがきっかけで、子どもたちが他のバレエ作品を観てくれるようになったら良いことだ。大人の私たちもこの価格で観てしまうのが申し訳ないような気持ちになるほどで、子供向けもしくは親子券は安い値段で据え置いて、大人だけで観る人にはもっと値段を上げてもいいのではないかと思うほど。あと、せっかく公演数が多いので、もっと若手を抜擢してみるとか、冒険してもいいのではないかと思った。正直、現行の牧阿佐美版より、以前のセルゲイエフ版の方が演出はずっと優れていたと改めて感じた次第であった。

こちらは牧阿佐美版の「白鳥の湖」

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牧 阿佐美(新国立劇場バレエ団・芸術監督)

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2016/08/17

8/7 横浜バレエフェスティバル2016

昨年の横浜バレエフェスティバルは素晴らしい公演だった。今年も引き続き、ここでしか観られないような作品やこれからのホープに出会えて、楽しめてバレエの未来にも想いを馳せることができる、気持ちの良いパフォーマンスの揃った素敵なガラだった。

http://yokohamaballetfes.com/

昨年の出演者のうち、オーディションで選ばれた永久メイさんはマリインスキー・バレエのファテーエフ芸術監督に見込まれて今年のマリインスキー国際フェスティバルの「ラ・バヤデール」にゲスト出演し、マリインスキー・バレエに入団することが決定。
また、同じくこのガラに出演して「ジゼル」を踊ったロイヤル・バレエの高田茜さんが、晴れてロイヤル・バレエのプリンシパルに昇進した。それだけ、このガラの芸術監督である遠藤康行さんの目利き力が優れているということである。


今年は、オーディションでは中島耀さん(シンフォニーバレエスタジオ)、縄田花怜さん(梨木バレエスタジオ)が選ばれて出演。二人とも、大変注目されているバレリーナの卵でこれからの飛躍が期待される。

エトワール・ガラ最終日との掛け持ちをしようとしたら、思ったよりエトワール・ガラの公演時間が押してしまい、終わってすぐに横浜に移動したものの第一部には間にあわなかった。しかし第2部、第3部の内容が非常に充実していたので、大満足の公演となった。


◆【第2部】 World Premium 1
■新作「Measuring the Heavens」 振付:高瀬譜希子
高瀬譜希子
演奏:佐藤健作

ウェイン・マクレガーのカンパニーで活躍し、ユニクロのダウンのCMや、トム・ヨークと共演したプロモーションビデオでも知られている高瀬譜希子さん。この高瀬さんが、和太鼓の佐藤健作さんの演奏による新作を発表したのだけど、彼女のダンスのものすごさをライブで実感してしびれた。驚くべきしなやかさ、強靭さ、表現力と鮮烈な個性。今まで観たことがない存在感。第2部が終わった後ロビーに本人が現れたのだけど、舞台上ではとても大きくダイナミックに見えたのに、実物は意外にも小柄で華奢だった。顔が小さく手脚が長いので長身に見えたのだった。日本ではまだ踊る機会があまりなかった、こういう国際級に凄い人を見せてくれたのがとても嬉しい。

なお、高瀬さんは、来年2月にパリ・オペラ座バレエで上演されるウェイン・マクレガー振付「Tree of Codes」(ウェイン・マクレガーカンパニーとの合同公演)に出演する予定。


瀕死の白鳥
倉永美沙(ボストン・バレエ団)

エトワール・ガラ最終日でドロテ・ジルベールの踊る「瀕死の白鳥」も観たので、今日で2回目の「瀕死の白鳥」。ワガノワ出身、ウクライナのドネツク・バレエで踊っていたボストン・バレエのバレエ・ミストレス、ラリッサ・ポノマレンコ直伝の倉永さんの白鳥はロシア的で、繊細で詩的、ゆったりとしたポール・ド・ブラ、さざ波のようなバ・ド・ブレ、正統派でリリカルで美しかった。死と闘うのではなく、気高くて死の運命を受け入れるような。

■新作「SOLO²」 振付:遠藤康行
みこ・フォガティ
二山治雄(白鳥バレエ学園)

若い二人のために遠藤さんが振付けた愛らしく音楽的な小品。のびのびと踊る二人が初々しい。二山さんの柔軟性、そして浮かび上がって静止するような跳躍は、一瞬目を疑うほど圧倒的。


Lilly 振付:+81
柳本雅寛(+81主宰)
青木尚哉

2011年の震災チャリティ公演「オールニッポンバレエガラ」で上演された作品の再演。コント的な要素が強くてユーモラスな+81の世界再び。絶妙の間が笑わせてくれるコントではあるけど、身体能力の優れた二人の男性ダンサーが組んでのパ・ド・ドゥもあって見ごたえたっぷり。音楽もなくて台詞もないやりとりの場面でも、絶妙なおかしみの中にダンスがある。


「ライモンダ」第1幕より夢のパ・ド・ドゥ ヌレエフ版
米山実加 (ボルドー・オペラ座バレエ団)
高岸直樹(元東京バレエ団)

ヌレエフ作品の権威であるシャルル・ジュドのボルドー・オペラ・バレエの米山実加さん、そして高岸さんによる『ライモンダ』。ヌレエフ版ならではのゴージャスな衣装と典雅さ。夢のパ・ド・ドゥなのでそれほど派手さはないシーンなのだけど、難しいリフトもスムーズなのはさすがの高岸さん。米山さんも、この華麗なコスチュームに負けないプロポーションの良さと気品、長く美しい脚で作品の世界観をしっかりと伝えてくれた。

◆【第3部】 World Premium 2

■新作「埋火 UZUMIBI」 振付:遠藤康行
米沢唯(新国立劇場バレエ団)
遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト・ 振付家)

遠藤さんがこのガラのために振付けた新作2作品目。クラシック作品の印象が強い米沢唯さんが、クールでスタイリッシュ、それでいて官能性も漂わせた作品に挑戦。身体能力の高さ、美しさの中にも現代性があって新しい彼女の魅力を見せてくれた。こういう、男女の駆け引きや感情も絡めた大人っぽい作品を踊る米沢さんをもっと観たいと切に思う。


ヴァスラフよりソロ 振付: ジョン・ノイマイヤー
菅井円加(ハンブルク・バレエ団)

菅井円加さんも、とてもテクニックと柔軟性に優れているダンサーで、ノイマイヤー独特の舞踊言語もしっかりと自分のものにしていることを感じられた。短めのソロの中でも、作品の中にある精神性を伝えようとしているのがわかるけど、もう少し長く観ないと流石に伝わらない感じではあった。


「エスメラルダ」よりダイアナとアクティオンのグラン・パ・ド・ドゥ
近藤亜香(オーストラリア・バレエ団)
チェンウ・グオ(オーストラリア・バレエ団)

世界有数のトップバレエカンパニーのプリンシパルであるペアだけあって、見せどころをしっかりと押さえていて客席を沸かせてくれた。特に、学生時代に「小さな村の小さなダンサー」で主人公の少年時代を演じていたチェンウ・グオの跳躍は、目を瞠るほど高くてダイナミック。コーダの540の3連発も大迫力だった。近藤さんも技術がとても高く、きっちりと見せているだけでなく華やかさもあった。オーストラリア・バレエ、そろそろまた来日してほしいと思う。


ロメオとジュリエットより死のパ・ド・ドゥ 振付:アンジェラン・プレルジョカージュ
津川友利江(バレエ・プレルジョカージュ)
バティスト・コワシュー(バレエ・プレルジョカージュ)

このガラのハイライトといってもいい、打ちのめされるような圧倒的なパフォーマンスだった。プレルジョカージュの『ロミオとジュリエット』は、階級差によって結ばれない男女の悲劇を描いた作品で、世界バレエフェスティバルのガラ公演でオーレリー・デュポンとローラン・イレールが踊ったのを観たことがある。今回は、最後の墓所でのシーンで、暴力的な中に悲痛な感情の生々しい炸裂があって鮮烈だった。パートナーを文字通り投げ飛ばす作品の力も強いけど、少女のようなイノセンスを漂わせた津川さんの叫び声が聞こえてくるような表現力、見事だった。一シーンだけだったのに全幕を観たように感情が揺り動かされた。津川さんが日本で踊るのは11年ぶりとのことだけど、これからもっと観られるといいな。


(このシーンは含まれていなけれど、津川友利江さんとバティスト・コワシューが主演している映像)


「くるみ割り人形」第2幕より金平糖の精と王子のグラン・パ・ド・ドゥ
倉永美沙(ボストン・バレエ団)
清水健太(ロサンゼルス・バレエ団)

トリにふさわしい華やかな「くるみ割り人形」のグラン・パ・ド・ドゥ。倉永さんの金平糖はキラキラ輝き、一つ一つの動きから音符が見えるようで軽やかなこと。小柄な彼女なのにその小ささは感じさせず、手脚も長く見える。コーダで見せた回転などスーパーテクニックの煌めきは、まさにプリマ・バレリーナ。清水さんもきっちりと5番に綺麗に着地して、初めて組んだというのにとても良いパートナーシップだった。

フィナーレは、「オールスター・バレエ・ガラ」と同じくテーマとヴァリエーションの音楽に乗って、出演者がそれぞれテクニックを披露してくれた。ここでの二山治雄さんの踊りが凄かった。マネージュでの脚の開きは200度くらいあって、前脚が完全に上を向いているし、重力など存在しないかのようにふわっと浮かび上がり静止する瞬間がある。オーストラリア・バレエのペアも、ここで魅せてくれた。


オーディションで選ばれたバレリーナの卵から国際コンクール入賞者の若手、グローバルに活躍するスター、そして独特の世界を築いているダンサーたちまで人選も演目も個性的で見ごたえがあり、とても充実した公演だった。現代作品も多いけど、バレエ/ダンスにそれほど詳しくない人でも楽しめただろうと思う。

来年の第3回目は6月の公演となり、プログラムもAプロ・Bプロの2公演行われるとのこと。今後も続けられるというのは素晴らしいこと。2公演あるということは、さらにいろんな作品が見られそうなので楽しみ。

2017年6月9日(金)夜開演
横浜バレエフェスティバルAプログラム
2017年6月10日(土)午後開演
横浜バレエフェスティバルBプログラム


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2016/08/14

第5回上海国際バレエコンクールの結果

第5回上海国際バレエコンクールが開催され、8月12日に結果が発表されています。
出場者の多くは中国からですが、日本などからもエントリーしています。

http://www.shanghaiibc.cn/en/detail1.aspx?id=276

https://www.facebook.com/sibcchina/

グランプリ アレクサンドル・オメルチェンコ(ウクライナ、モスクワ音楽劇場バレエ)

ジュニア部門 金賞 ハン・ユー于航(中国、上海戯劇学院) 今年のローザンヌ国際コンクールで1位 
             XU Jingkun (中国)
         銀賞 Cheon Jeongmin, An Se Hyun (韓国)
         銅賞 BAI Dingkai (中国), LIAO Fangqiao (中国), Yoo Hyeonjeong (韓国)

シニア部門 金賞  QI Bingxue, YUAN Anpu  (中国)
        銀賞 Chisako Oga (米国、シンシナティ・バレエ)、GONG Liwei (中国)
        銅賞 Javier Monier (キューバ), MENG Fanyu (中国)


審査員特別賞 プリスカ・ザイセル (オーストリア、ウィーン国立バレエ)

振付賞 Cheon Jeongmin (韓国)

パ・ド・ドゥ賞 Anujin Otgontugs, Gantsooj Otgonbyamba (モンゴル)

奨励賞 佐々木麻菜 (日本、エスバレエスタヂオ) TU Hanbin (中国), Anastasia Miliachenko (ウクライナ)


上海国際バレエコンクール成人部門 各国バレリーナが優勝争い
http://japanese.china.org.cn/culture/2016-08/12/content_39076397.htm

アレクサンドル・オメルチェンコは、昨年のモスクワ音楽劇場バレエの来日公演でも活躍しており、現在ファースト・ソリスト。モスクワ国際バレエコンクール、ペルミ国際バレエコンクールなどでも受賞しています。

ハン・ユーは、今年のローザンヌ国際バレエコンクールでの一位、大変プロポーションの美しいバレリーナで、9月より英国ロイヤル・バレエスクールに留学する予定です。

Chisako OgaさんはYAGPの2012年のファイナリストで、サンフランシスコ・バレエスクール、サンフランシスコ・バレエの研修生を経て今年よりシンシナティ・バレエの所属となりました。

プリスカ・ザイセルは、ウィーン国立バレエのハーフ・ソリスト。今年のヴァルナ国際コンクールにも出場しました。

佐々木麻菜さんも、アジアン・グランプリ国際バレエコンクールやイタリア・バーリでのインターナショナルバレエアンドコンテンポラリーダンスコンペティションの受賞歴があります。

ちなみに、このコンクールのオープニングセレモニーとして、Memories of a Kissと題したガラ公演が8月3、4日に開催されました。
http://www.shgtheatre.com/programInfo.do?programBean.programId=7880

マニュエル・ルグリ、イザベル・ゲラン、マチアス・エイマン、リュドミラ・パリエロ、ウラジーミル・シクリャーロフ、リュドミラ・コノヴァリョワ、橋本清香、木本全優、マリア・ヤコブレワ、パトリック・ド・バナなど豪華出演者が参加しての公演でした。

さらにクロージング・ガラもあり、こちらには入賞者の他、ロイヤル・バレエよりローレン・カスバートソン、リース・クラークが出演したようです。

Chisako Ogaさんのインスタグラムより


2016/08/12

Noism0 『愛と精霊の家』 8/20、21に彩の国さいたま芸術劇場で上演

昨夏新潟で一夜限り上演した Noism0 の話題作 『愛と精霊の家』が、 8/20、21に彩の国さいたま芸術劇場で上演されます。

http://www.saf.or.jp/stages/detail/3603
http://noism.jp/npe/noism0_2016_saitama/

Noism0(ノイズムゼロ)は、りゅーとぴあ 新潟市⺠芸術⽂化会館の専属舞踊団として 2004 年に設⽴されたNoism の芸術監督・⾦森穣が、新潟市で開催された「水と土の芸術祭 2015」を機に⽴ち上げたプロジェクトカンパニーです。

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(c)Kishin Shinoyama


『愛と精霊の家』は、この新プロジェクトの第一弾として、昨夏新潟で初めて開催された「NIDF2015­新潟インターナショナルダンスフェスティバル」で初演し、好評を博しました。⾦森穣と井関佐和子によるプライベートユニットであるunit-Cyan(ユニットシアン)が 2012年に発表した『シアンの家』を基に、人類普遍のテーマ、永遠のテーマである愛と死を描いた作品です。

1人の俳優と3人の舞踊家は男の愛の多面性を、人形・舞踊家・妻・母になれぬ女を演じる舞踊家は、女の愛の孤独を象徴する。そして4人の男と女の4役はシ(死)のメタファーとして、この作品に通底していく。果たして死んでいるのは男か女か。終わり無き始まりと、始まり無き終わりの輪廻の中で、永劫回帰を繰り返す男と女の魂は、夢幻の境を彷徨いながら、愛を求めて1人さすらう。

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(c)Kishin Shinoyama

井関佐和子さん、小㞍健太さん、山田勇気さん、SPAC­静岡県舞台芸術センター所属俳優の奥野晃士さんに加え、⾦森穣さんも自ら舞台に⽴つということで、2015 年の初演時は大きな話題となり、この一夜限りの作品を⾒届けようと全国各地から観客が新潟に集まり、劇場は熱気に包まれました。

unit-Cyan では、公私混同・虚実混同で生み出された作品が、2 人の舞踊家と 1 人の俳優を迎え、さらに⾦森さんが 20歳のときのデビュー作『Under the marron tree』が組み込まれたことで、より普遍的で誰しも共有可能な作品へと飛躍し、ラヴェルの《亡き王⼥のためのパヴァーヌ》やマーラーの《交響曲第 5 番第 4 楽章(アダージェット)》といったロマン主義の音楽と、イヨネスコ原作の『椅子』のテキストで豊穣に描かれる愛と死の物語は、大きな反響をよびました。初演から 1 年、今年秋に新潟で初めて開催されることとなった「BeSeTo 演劇祭 新潟」の企画のひとつとして、早くも再演が決定しました。8 月にはプレ公演として埼玉で、10 月にはホーム新潟で上演します。

Noismの新作『ラ・バヤデールー幻の国』の素晴らしさも記憶に新しいわけですが、新潟での初演が金森穣さんの最高傑作の一つとして大きな評判を呼んだこの作品、必見です。

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(c)Kishin Shinoyama

Noism0『愛と精霊の家』
演出/振付︓⾦森穣
美術︓須⻑檀
衣裳︓中嶋佑一
映像︓遠藤龍
照明︓伊藤雅一(RYU)、⾦森穣
舞台監督︓尾﨑聡
出演︓井関佐和子、山田勇気、小㞍健太、奥野晃士、⾦森穣
原案︓シアンの家(初演︓2012.9.1 ⾼知県⽴美術館)

埼玉公演 第 23 回 BeSeTo 演劇祭 新潟プレ企画
日時︓2016.8.20(土)18:00, 21(日)15:00 *全 2 回
会場︓彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉
入場料︓一般 6,000 円 / U25(25 歳以下)5,000 円(全席指定・税込)
取扱︓▸彩の国さいたま芸術劇場チケットセンター(電話・窓口・オンライン)
電話 0570-064-939(彩の国さいたま芸術劇場休館日を除く 10:00-19:00)
PC http://www.saf.or.jp/
Mobile http://www.saf.or.jp/mobile/
▸チケットぴあ 0570-02-9999(P コード 452-595)http://t.pia.jp/(PC&MB)
主催︓BeSeTo 演劇祭新潟実⾏委員会 共催︓公益財団法人埼玉県芸術⽂化振興財団

新潟公演 第 23 回 BeSeTo 演劇祭 新潟
日時︓2016.10.7(⾦)19:00 *全 1 回
会場︓りゅーとぴあ 新潟市⺠芸術⽂化会館〈劇場〉
入場料︓一般 5,000 円 U25(25 歳以下)4,000 円(全席指定・税込)
取扱︓▸りゅーとぴあ(窓口・電話・オンライン)
チケット専用ダイヤル 025-224-5521(11:00-19:00、休館日除く)
オンライン・チケット http://www.ticket.ne.jp/ryutopiaticket/
▸チケットぴあ 0570-02-9999(P コード 453-272)http://t.pia.jp/(PC&MB)
チケット発売日︓8 月 11 日(⽊祝)
主催︓BeSeTo 演劇祭新潟開催実⾏委員会 日本 BeSeTo 委員会

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(c)Kishin Shinoyama

なお、金森穣さんが「愛と精霊の家」について語っているインタビューが埼玉アーツシアター通信で読むことができます。
http://www.saf.or.jp/press/2016/064/

danceditionでの金森穣さんが「愛と精霊の家」について語るロングインタビュー
http://dancedition.com/post-515/

2016/08/10

8/3、6 「エトワール・ガラ2016」Aプログラム

エルヴェ・モローの降板に伴うキャスト変更、プログラム変更はあれども、ジェルマン・ルーヴェ、レオノール・ボラックという伸び盛りの若手を加え、パリ・オペラ座バレエの現在の形を見せてくれた「エトワール・ガラ」は充実した公演となった。

オペラ座の伝統を構成するヌレエフ作品、ミルピエ前芸術監督が積極的に導入したものの以前からも上演されているバランシンやロビンス、加えてマクレガー、ビゴンゼッティなどの現代作品、ハンブルグ組によるノイマイヤー作品。バラエティに富んだプログラムではあるが、作家性の高い作品が多いところにペッシュの矜持を感じる。

http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/16_gala/

『グラン・パ・クラシック』Grand Pas Classique
振付:ヴィクトル・グゾフスキー、音楽:フランソワ・オーベール
出演:ローラ・エケ&ジェルマン・ルーヴェ

ジェルマン・ルーヴェの日本デビューは、鮮やかなものだった。つま先まできれいに伸びた脚、特にシソンヌの時に開いた脚のラインが見事で、着地音もなく軽やか。特にアントルシャ・シスの時の足さばきが鮮やかで美しい。サポートはこれからの課題だけど、彼はまだ22歳のスジェ。一方、ローラ・エケはエトワールの貫録を見せてくれた。特にヴァリエーションでの連続バロネとエカルテは強靭で余裕と安定感があった。エケのエポールマンやポール・ド・ブラは典雅なパリ・オペラ座スタイル。


『スターバト・マーテル』Stabat Mater
振付:バンジャマン・ペッシュ、音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ
出演:エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

「スターバト・マーテル」とは、キリストが十字架にかけられた横での聖母マリアの様子を歌った13世紀のラテン語聖歌の歌詞「悲嘆にくれるも聖母は立ち尽くす」という意味の一節とのこと。同じタイトルの曲は、ハイドンやプーランクなども作曲しているけどこちらは司祭でもあったヴィヴァルディによる作曲。薄いピンクの衣をまとったエレオノラ・アバニャートがフードを持ち上げて顔を出すところから始まる。流れるような美しい振付で、歌の入った音楽にもとても合っている。ラストはまさしく「ピエタ」のように、再びフードをかぶったアバニャートが横たわるペッシュを抱きかかえるところで幕。


『シンデレラ・ストーリー』A Cinderella Story
振付:ジョン・ノイマイヤー、音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
出演:シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ

この『シンデレラ・ストーリー』、ハンブルグで2007年に観ている。従来の『シンデレラ』のイメージと違って派手なところはなく、シンデレラが王子の愛を受け入れられずきらびやかな生活も自分のものとは感じられない。王子は旅に出て時が過ぎたのちに再びシンデレラに求愛するという物語。叔父役を初演したのはマニュエル・ルグリ。舞台装置もシンプルで、シンデレラが少女時代、母が亡くなった時に植えた木が、終幕では大きく育っているのが印象的だった。このパ・ド・ドゥは、物語の終盤、王子が変わらぬ愛を告白するところ。寂しく自信を失っているシンデレラの元に王子がやってきて愛をはぐくんでいく。シルヴィア・アッツオーニが少しずつ心を開いていき、最後には幸福に輝くようになる心境の変化を踊りで表現しているところが見事だし、リアブコはソロでは輝かしいクラシックの技術も見せてくれる。ドラマティックな表現では、このペアに並ぶものはいない。変わらぬ愛の象徴としてのオレンジを、カーテンコールでも大事そうに持っているところが素敵だった。


『カラヴァッジョ』Caravaggio
振付:マウロ・ビゴンゼッティ Mauro Bigonzetti
音楽:ブルーノ・モレッティ(クラウディオ・モンテヴェルディの原曲に基づく)
出演:レオノール・ボラック、マチュー・ガニオ

『カラヴァッジョ』は、2008年にベルリン国立バレエのためにビゴンゼッティが振付けた作品でDVDにもなっている。画家カラヴァッジョの波乱万丈の生涯を描くというよりは、彼が生み出した光と影による劇的な表現をバレエの世界に持ち込んだ。「ローマのカーニバル」と題したこのパートでも、カラヴァッジョ的な照明の使い方、それが肉体に陰影を作っていく様子がとても美しい。モンテヴェルディによるバロック音楽にもとてもよく合っている。最小限の衣装を身に着けたマチュー・ガニオとレオノール・ボラックの身体は研ぎ澄まされ、ゆっくりとした動きも一つ一つがとても洗練されていてほのかな官能が立ち上る。コンテンポラリーが得意というボラックの強靭さ、ガニオの存在感、このガラで初めてペアを組むというふたりだが、良いパートナーシップだった。


『三人姉妹』
Winter Dreams
振付:ケネス・マクミラン、音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
出演:アマンディーヌ・アルビッソン、オードリック・ベザール
ピアノ:久山亮子

マクミランの『三人姉妹』はオペラ座のレパートリーには入っていないのだけど、アルビッソンとベザールのたっての願いでマクミラン財団の許可を得てエトワール・ガラでの上演が実現した。全幕を踊ったことがないダンサーが一部を切り取ってガラで上演するのはなかなか難しいことだと思うが、二人とも役の中には入り切って頑張っているのはわかる。アルビッソンは、不倫の恋に苦しむマーシャの心情を丁寧に掬い取り、彼が去った後に残されたコートの残り香を嗅ぐところも情感たっぷりに演じていた。『オネーギン』のタチヤーナ役でエトワールに任命された時には、この作品で任命されたことに対する賛否があったのだが、少なくとも今なら良く演じることができるだろう。ベザールは長身でハンサムな容姿はヴェルシーニン役が似合うはずなのだが、怒り気味の肩にあまり軍服が似合っていないような。オペラ座の洗練されたダンサーには、ロシア人の役は合わないのかもしれない。まっすぐで不器用な想いを伝えようとしているのはよくわかったが。久山亮子さんのピアノの音色はクリアで素晴らしかった。


『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』 Tchaikovsky Pas de Deux
振付:ジョージ・バランシン、音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
出演:ドロテ・ジルベール、ユーゴ・マルシャン

身長193cmという長身のユーゴ・マルシャンだが、大柄な彼でも着地音がしないのがすごい。ダイナミックな跳躍、つま先もとてもきれいできちんと5番に降り、音楽性もよく活きの良さを感じさせた。ヴァリエーションでの左右にシソンヌする動きでは、脚をスゴンドに振り上げる前にバットゥリーも入れるなどテクニックも素晴らしい。ドロテ・ジルベールと彼は『ロミオとジュリエット』『ラ・バヤデール』『マノン』と共演していて相性はとても良いはずなのだけど、この作品においては少し身長差を感じさせてパートナーシップは万全とはいかないところがあった。ジルベールの方が余裕を感じさせたけど、余裕がありすぎて音楽を思いっきり引っ張っているところには好き嫌いが分かれるかもしれない。技術的には彼女には非の打ちどころはない。



『くるみ割り人形』より
 Casse Noisette
振付:ルドルフ・ヌレエフ、音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
出演:レオノール・ボラック、ジェルマン・ルーヴェ

バスティーユでの『くるみ割り人形』でも共演した、若くてキラキラしている二人。愛らしいボラックは華やかなチュチュがよく似合うし、ルーヴェも童顔ながらまさに夢の王子様。ヌレエフの振付は非常に難しく、クララのコーダはアン・ドゥダン(内回り)中心だし、王子のコーダも方向転換が多用されてとても複雑だけど、二人は見事にこなしていた。複雑な足捌きがあることと派手さというのは両立しないので、ワイノーネン版やライト版のような盛り上がりはないけれども、パリ・オペラ座バレエならではのアカデミックな技術を二人とも備えているのがよくわかった。


『クローサー』 *日本初演 Closer
振付:バンジャマン・ミルピエ、音楽:フィリップ・グラス
出演:エレオノラ・アバニャート、オードリック・ベザール
ピアノ:久山亮子

フィリップ・グラスのミニマルなピアノ音楽に合わせて、寄せては返す波のように男女の距離が縮まっては遠ざかる、そんな様子を描いたミルピエの作品。男性が背後から女性を抱きかかえ、女性がやや脱力したようにうずくまっては離れたり、男性が女性を高く、そして低く持ち上げ振り回したり引きずったり、弛緩と伸長という動作が反復される。フレーズはほとんど同じものの、ピアニッシモとフォルテッシモがあることで感情の動きを繊細に表現している久山さんの演奏が見事。白い下着のような衣装の女性、男性も白いタイツのみ。サポートされている女性の身体能力の高さが求められており、コンテンポラリーに定評のあるエレオノラ・アバニャートは流石に素晴らしく弛緩しているポーズですら美しい。途中まではスタイリッシュで魅力的な作品だと感じたのだが、そろそろ終わるかな、と思ってもまだ続き、少々長すぎるように感じられてしまった。

これはバレエ・ドルトムントで上演された時の映像


『Sanzaru』 *日本初演
振付:ティアゴ・ボァディン、音楽:フィリップ・グラス
出演:シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ

フィリップ・グラスの音楽を使ったコンテンポラリー作品を2つ続けて上演するのは構成上のミスだと思ったが(中には眠気に襲われている方もいた)、この作品はユニークだった。ハンブルグ・バレエの元プリンシパルで、今はNDTに所属しているティアゴ・ボァディンの作品。『Sanzaru』とはまさに、見ざる、聞かざる、言わざるの「三猿」のことで、振付の中にも、手で目、耳、口を覆うしぐさが出てくる。非常に精緻なパートナーリングを必要としていて、驚くべきようなバランスやリフトも登場してスリリング。アッツオーニとリアブコの技術の高さを堪能できた。


『瀕死の白鳥』 Dying Swan
振付:ミハイル・フォーキン、音楽:カミーユ・サン=サーンス
出演:ドロテ・ジルベール

ドロテ・ジルベールの瀕死の白鳥は凛としていて、静謐さを感じさせながらも、とても強い。腕はなめらかに波打つような動きを見せながらも生命力に満ちていて、運命と闘いながらもやがてそれを受け入れる。


『感覚の解剖学』より L’Anatomie de la sensation
音楽:マーク・アンソニー・タネジ(「Blood on the Floor」より)
振付:ウェイン・マクレガー
出演:ローラ・エケ、ユーゴ・マルシャン

Aプロはコンテンポラリー作品が多かったのだが、その中で、フランシス・ベーコンの絵画にインスピレーションを得た『感覚の解剖学』は異色の作品だった。マクレガーらしいうねうねとくねるようなポーズの応酬、けだるいようなジャズの音楽、オフバランスや低い重心、複雑なパートナーリング、音楽とはまるであっていないムーブメント。中には少し乾いたようなユーモアも感じられる。ベーコンの作品の中にある恐怖や寂寥感はないけれども、美しい肉体の賛歌ではある。高度な技術を必要とすることは言うまでもなく、特にローラ・エケのシャープさと現代性が光る。ユーゴ・マルシャンはパンツ一枚で、見事な肉体美を披露してくれた。こういう作品を観ると、マクレガーは振付家としてミルピエよりはオリジナリティがあって面白いと感じられる。


『アザーダンス』  Other Dances
振付:ジェローム・ロビンズ、音楽:フレデリック・ショパン
出演:アマンディーヌ・アルビッソン、マチュー・ガニオ
ピアノ:久山亮子

昨年の世界バレエフェスティバルでもこのアルビッソン、ガニオのペアで上演された作品だが、その時はこのペアはちぐはぐなところがあり、あまり合っているとは思えず、やや退屈してしまっていた。だが、今回、この二人が見違えるように良くなっていたのに驚いた。二人の間に気持ちが通い合って抒情性も感じられ、ストーリーはなくとも心に染み入るようだった。マチューのソロはとても鮮やかだし(足捌きの美しさ、パ・デ・シャの高さ!)、美しさの中に作品の中に込められたユーモアもしっかり表現。アルビッソンの音の使い方もよく、とても丁寧に踊られていた。久山さんの演奏はここでもきらりと光った。『アザーダンス』は来年3月のパリ・オペラ座バレエの来日公演でも上演される予定なのだが、このペアを目当てにチケットを買う方も多いことだろう。マチューが本物のスターの輝きを手に入れたのを実感した。


『ル・パルク』より“解放のパ・ド・ドゥ”   Le Parc "Abandon"
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
出演:エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

バンジャマン・ペッシュのパリ・オペラ座バレエのさよなら公演でも踊られた『ル・パルク』だったので、万感の想いで踊っているのが感じられた。来シーズンから彼はローマ歌劇場バレエで、芸術監督エレオノラ・アバニャートの右腕となって働くことになる。長年の二人のパートナーシップから来る暖かい気持ちが通い合う、美しいパ・ド・ドゥ。エレオノラの官能的な表現の素晴らしさは言うまでもない。ペッシュは腰が悪いようで、リフトなどは少々苦しそうだが、伊達男の彼はこの作品の衣装や髪型も良く似合い、すべてをゆだね合う男女の心の機微と優しさが伝わってくる。このパ・ド・ドゥの見せ場は、キスしながら女性を遠心力で回転させるフライイング・キスの場面なのだが、最終日、このシーンで拍手が出たのは非常に興ざめだった。「エトワール・ガラ」を続けてきてここまで育ててきてくれたペッシュへの感謝の気持ちを込めて観ていたし、もしかしたら彼が踊るのを観るのは最後になるかもしれないのに…。
ガルニエで観たペッシュとアバニャートが共演した『椿姫』、彼が主演した『オネーギン』や『ジゼル』の舞台を思い出しながらしみじみと感慨にふけった。

エンディングは前回と同じマンボの曲。普通に舞台に歩いていく人もいれば、ドロテ・ジルベールのように白鳥のチュチュなのに大きく腕を広げてゆらゆら踊ったり、意外なことにちょっとおどけるリアブコ、セクシーに踊るアバニャートなど様々。「エトワール・ガラ」はすっかり日本の夏の風物詩として定着した。ペッシュがオペラ座を離れることなど、いろいろと変化は起きてくるだろうが、これからも続けてほしい好企画である。パリでも観られない、贅沢な公演なのだから。

2016/08/05

VOGUE JAPAN エトワール・ガラの舞台裏特集

水曜日から始まった「エトワール・ガラ2016」初日観ましたが、パリ・オペラ座のダンサーたち、そしてハンブルグ・バレエの二人と出演アーティストの素晴らしさに改めて感動しました。

特にユーゴ・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェ、レオノール・ポラックという3人の若手初参加ダンサーたちの輝きにはときめきを覚えずにはいられませんでした。

オペラ座も世代交代の時期となっていますが、フレンチ・エレガンスを正統的に受け継いでいる彼らの美しさを見ると、オペラ座も安泰だと一安心。演目も、オペラ座の伝統を継承しながらも、なかなか日本では観られない現代作品もたくさん観ることができて、バレエの過去と未来に想いを馳せることができます。Bプロも楽しみです。

まだ、土日の公演、さらには名古屋、大阪での公演もありますので、迷っている方は是非足を運んでくださいね。

さて、VOGUE JAPANでは、「独占潜入! パリ・オペラ座バレエ「エトワール・ガラ2016」の舞台裏」と題して、エトワール・ガラのクラスレッスンやリハーサルを取材。美しい写真で舞台裏の彼らに迫っています。こちらの取材を手伝わせて頂きました。ダンサーたちの一瞬の美を捉えた写真の数々、お楽しみくださいね。

http://www.vogue.co.jp/celebrity/stylewatch/2016-08-05


こちらは、初日の映像です。気品に溢れて初々しいジェルマン・ルーヴェと、輝かしい技術のローラ・エケによる「グラン・パ・クラシック」素敵でした。

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2016/08/04

グラフィック・ノベル原作のバレエ映画「ポリーナ」、予告編映像/追記あり

何回かここでも取り上げている、バスティアン・ヴィヴェのグラフィック・ノベル(コミック)「ポリーナ」の映画化の件につき続報です。

ボリショイ・バレエのバレリーナを目指すロシア人の女の子ポリーナを主人公に、恩師のボジンスキーとの交流、友人、恋人との関係を通して、バレエダンサーとして成長していく様を描いた「ポリーナ」は高い評価を得たグラフィック・ノベルで、邦訳も出版されています。BD書店賞、ACBD批評賞という二つの大きな賞を本国フランスで受賞しています。(拙サイトでの書評

この映画「ポリーナ」は、振付家のアンジュラン・プレルジョカージュが、妻の映画監督Valérie Müller-Preljocajと共同監督し、主演にロシア人女優のNastya Shevtzodaを迎え、コンテンポラリーダンスカンパニーの振付家の役にジュリエット・ビノシュ、さらにパリ・オペラ座エトワールのジェレミー・ベランガールが出演しています。

http://www.allocine.fr/film/fichefilm_gen_cfilm=234760.html

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作品はエクサンプロヴァンス、パリ、そしてモスクワで撮影されました。フランスのテレビ局TF1の配給により、11月16日にフランスで公開される予定です。

予告編の映像が公開されています。

プレルジョカージュが振付けたダンス作品の映像もふんだんにあるようで、とても楽しみな一本です。バレエ・プレルジョカージュの津川友利江さんも出演しているとのこと。原作コミックも少しほろ苦く少女の成長を描いた素晴らしい作品ですし、日本でも観られると良いのですが。


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追記:コメント欄で教えていただきましたが、主演のAnastasia Shevtsovaはワガノワ・アカデミーを1年前に卒業しておりマリインスキー・バレエの舞台にも立つ傍ら(正団員ではない模様)、モデル活動をしているようです。

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インタビュー記事がありました。(英語)
http://www.balletinsider.com/en/archive/young_talent/1851

「ポリーナ」は今年のヴェネチア映画祭にも出品されていたようです。
http://www.venice-days.com/film.asp?id=9&id_dettaglio=703&lang=eng

2016/08/03

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2016/17 続報

ロイヤル・オペラハウスで上演されるバレエ作品やオペラ作品を映画館で楽しめる「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」、来シーズンも日本での上映が決定しています。

日本では11月下旬から開幕となるとのことです。そして、今シーズンは6本のオペラと6本のバレエすべてが上映されることとなったそうです。嬉しいニュースですね。

https://www.facebook.com/royaloperahouse.jp/photos/a.1625770967682715.1073741827.1624851621107983/1731268040466340/

[ロイヤル・オペラ]
Norma 「ノルマ」
Così fan tutte 「コジ・ファン・トゥッテ」
Les Contes d'Hoffmann 「ホフマン物語」
Il trovatore 「イル・トロヴァトーレ」
Madama Butterfly 「蝶々夫人」
Otello 「オテロ」

[ロイヤル・バレエ]
Anastasia 「アナスタシア」 11月2日 オシポワ、ヌニェス、ボネッリ、ワトソン、ソアレス
The Nutcracker 「くるみ割り人形」 12月8日 カスバートソン、ボネッリ、ヘイワード、キャンベル
Woolf Works 「ウルフ・ワークス」 2月8日 フェリ、ラム、オシポワ、高田
The Sleeping Beauty 「眠れる森の美女」 2月28日 ヌニェス、ムンタギロフ
Jewels 「ジュエルズ」 4月11日 キャスト未定
The Dream / Symphonic Variations / Marguerite and Armand 「真夏の夜の夢」「シンフォニック・ヴァリエーションズ」「マルグリットとアルマン」 6月7日 キャスト未定

また続報はわかり次第お知らせします。

第27回〈バレエの祭典〉プレミアム・シーズン ラインナップ

先週海外に出かけていたため、いろいろとキャッチアップできていないところがあって申し訳ありません。多くの皆様はもうとっくにご存じだと思いますが、記録用に書いておきます。

第27回〈バレエの祭典〉プレミアム・シーズン ラインナップが発表されています。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/renew/saiten2016.html

栄光のエトワールが踊る、至高の舞台
オレリー・デュポンの「ボレロ」
【1演目】2017年2月下旬
併演「中国の不思議な役人」ほか  出演:東京バレエ団 


新芸術監督デュポン率いるバレエの殿堂が総力をあげて贈る
パリ・オペラ座バレエ団
【2演目】2017年3月初旬
「ラ・シルフィード」
<グラン・ガラ>「テーマとヴァリエーション」「アザーダンス」「ダフニスとクロエ」 

名花タマラ・ロホ率いるENB、〈バレエの祭典〉初登場!
イングリッシュ・ナショナル・バレエ
【2演目】2017年7月初旬〜中旬
「海賊」「コッペリア」


2大バレエ団のスターたちが一堂に会する夢のステージが実現!
"オペラ座&ロイヤル"夢の競演(仮題)
【2演目】2017年7月下旬
"オペラ座"組 代表:オレリー・デュポン
"ロイヤル"組 代表:スティーヴン・マックレー


プティの傑作を豪華ゲストを迎えて全編上演!
ローラン・プティ「アルルの女(全編)」東京バレエ団初演
【1演目】2017年9月初旬
併演「春の祭典」ほか

新規会員申し込み 8月22日より受付開始予定


今回は、2017年2月から9月までの7か月間のプログラムということで、期間も短くなっています。その中で、オーレリー・デュポンが3回来日するので(1回は芸術監督としてですが、踊る可能性もなくはない)、デュポン祭りといった様相を呈してきました。

バレエの祭典に初登場するイングリッシュ・ナショナル・バレエの来日公演はとても楽しみです。タマラ・ロホ、アリーナ・コジョカルに加え、プリンシパルに昇進した加瀬栞さん、パリ・オペラ座にもゲスト出演したイザック・エルナンデス、新星セザール・コラレスなどを観ることができるでしょう。男性陣がやや手薄なので、ゲストダンサーを迎える可能性も高いと思われます。

「アルルの女」は、先日の熊川哲也さんの名演も記憶に新しいところ。フレデリ役はゲストダンサーとのことで、誰が演じるのかも興味深いところです。

«テレビ放映情報 法村珠里さん、オニール八菜さん放映