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2014/10/22

バンジャマン・ミルピエのトークとVOGUEの記事(アニー・リーボヴィッツ撮影)

今シーズン、パリ・オペラ座バレエの芸術監督に就任したバンジャマン・ミルピエ。(正式就任は11月1日より)

彼が率いるL..A.ダンスプロジェクトは、11月8日、9日に彩の国さいたま芸術劇場で来日公演を行いますが、その前に、ニューヨーク、ブルックリンのBAM(ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック)で公演を行っています。

そのBAMでの公演の際に彼はトークを行い、そのトークが全編視聴できます(聞き手は、ダンス批評家のデボラ・ジュイット氏)。

http://www.bam.org/video#

http://youtu.be/pvFdNHcvgsM

この対談映像は、全部で1時間余りあるので、全部聞くのは大変なのですが、ミルピエはフランス人ではあるもののアメリカでの生活が長いため、とても聞き取りやすい英語で話しています。アフリカのセネガル、ダカールでの子供時代から、SAB時代にジェローム・ロビンスによって彼の新作に抜擢されたことなど、生い立ちから始まって、NYCB時代のこと、L.A.ダンスプロジェクトでの仕事の進め方、パリ・オペラ座バレエのことについてまで語っています。

かいつまんで、オペラ座について何を話していたかをまとめると、


パリ・オペラ座という機関に対してどのようなアプローチをするつもりか語っています。オペラ座の歴史、彼の振付家としての位置づけ、過去のバレエと現代のバレエとのバランスのとり方を考えているそうです。

オペラ座はヒエラルキーを重視しているけれど、コール・ドのダンサーも主役に抜擢することでその上下関係を少し崩していきたい。

音楽の重要性と音楽性を育てることについて。オペラ座のクラスレッスンでのピアノ演奏に対して不満を持っていること

芸術監督ではあるけど、クラスレッスンを教えたりもしたい。過去の芸術監督で、そのようなことをしたのはヌレエフくらいだったようです。

バレエ・リュスの100周年の際に多くのカンパニーがバレエ・リュス作品を上演したけれども、その上演については不満に思っていること
(バレエ・リュス作品をそのまま上演したことに対してなのか、それとも、バレエ・リュスにオマージュを捧げた新作を作りながらも、同じ音楽を使っていたことに対してなのかは不明。たとえばアクラム・カーンなどは「TMOi」という、ストラヴィンスキーにオマージュを捧げながらも、全く別の音楽を使っているのですが…)

オペラ座のダンサーのうちの何人かは、42歳の定年を全うして年金をもらうことばかりを考えていて、意欲がないことについてミルピエは批判的です。できれば、やる気のないダンサーには辞めてもらうことを考えていることを示唆していました。
(現実にはそれは不可能ですが)

彼自身は、32歳の時にはもうダンサーとしては意欲を失い、10年間ダンスを続けるよりは、と振付家、芸術監督の方向にかじを切り替えたとのことです。NYCBでは、ダンサーはオペラ座のような42歳までの契約ではなく、1年ごとの契約となっていて身分の保証はありません。

L.A.ダンスプロジェクトとオペラ座について、どのように自分の時間を割くか、ということについては、オペラ座はフルタイムの仕事であり、最優先である。この一年は、ロジスティックなことや事務手続きな問題を重点的に対応し、組織を変え、プログラミングも変えたいと。(具体的な内容はなし)。L.A.ダンスプロジェクトについては、今まで通りに継続させると。

パリとNYの違いについては、パリの方がNYよりもチケット代は安く、劇場は常に満杯だと。ただし、オペラ座の観客はエリート的で、多様性がなく、実際には様々な人々がいるパリという街を反映していない、と。彼はオペラ座を変えて、観客が舞台で観るものを理解できるものにしたいとのことです。また、今のオペラ座は、ガルニエでバレエを観たいと思っているだけの観客が多く、どんなにひどい作品を上演しても客が入るとしています。彼は、観客のすそ野を広げるために、ダンサーたちは砦の外に出て、ルーブル美術館やパレ・デ・トーキョーなど他の組織とのプロジェクトもやるべきだとしています。


一方、こちらのヴォーグの記事では、ガルニエの中で、著名写真家のアニー・リーボヴィッツが、スーパーモデルのナタリア・ヴォディアノヴァを配置させながら、ミルピエ、オペラ座のダンサーたちを撮影したスライドショーを掲載しています。ポートレートやモード写真のトップ写真家リーボヴィッツが撮影しただけあって、大変美しいのですが、気になるのは、ダンサーたちはほとんどが単なる背景として機能しており、主役は、ミルピエとヴォディアノヴァ。唯一、エルヴェ・モローの美しい跳躍だけが、ダンサーをきちんと写したものです。

http://www.vogue.com/2298381/natalia-vodianova-ballet-november-cover/

この記事のインタビューの中で、ミルピエは、2015/16シーズンについてこのように語っています。

・公演数は170回(現在とほぼ同じ)で、7つの新作を上演する予定
・ミルピエの新作が上演され、バランシン、ロビンスを含んだトリプルビルでシーズンは明ける予定
・「眠れる森の美女」が上演され、衣装のデザインは、 Mulleavy姉妹によるもの(「ブラック・スワン」の衣装や、ミルピエとナタリー・ポートマンの結婚式の衣装をデザインしたデザイナー)
・ウィールダン、ラトマンスキー、ジャスティン・ペック(NYCBのダンサー兼振付家)の新作が予定されている。

なお、別のインタビューで、ウィリアム・フォーサイスがオペラ座のために新作を振付けることも明らかにされています。

********
ミルピエが目指しているものは、非常にアメリカ的なバレエ団なのではないかと、彼の来シーズンのラインアップ予定などを見ると感じられます。振付家の名前も、バランシンやロビンスといえばまさにNYCBだし、ウィールダン、ラトマンスキーの作品はNYCBのほか、世界中のバレエ団で上演されています。ペックに至っては、現役のNYCBのダンサーというわけです。フォーサイスはヨーロッパで活躍してきましたが、アメリカ人であり、現在はカリフォルニアで教鞭をとっています。

オペラ座は、古典だけでなく、現代作品にしても、プレルジョカージュ、マラン、カールソンなど、フランスダンスの伝統を受け継ぐ革新的な作品を上演してきたわけですし、それ以外にも、リファール、ラコットなど特徴的なプログラムを上演してきましたが、フランス的なコンテンポラリーも上演するかどうかは、今の感じではわかりません。


新しいパリ・オペラ座バレエの方向性を占うには、このL.A.ダンスプロジェクトの公演を観るのが良さそうですね。映像は非常に魅力的です。

http://youtu.be/loMU_cIttxg?list=UU79X9J1TYWOZG8WGsX_VxKQ

■バンジャマン・ミルピエ L.A. Dance Project
日程:11月8日(土)・9日(日)15時~
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
料金:<一般>S席¥6,000、A席¥4,000 <U25>S席¥3,000、A席¥2,000
(U25=25歳以下対象。枚数制限あり、入場時に身分証の提示が必要)
問い合わせ先:彩の国さいたま芸術劇場チケットセンター Tel.0570-064-939
www.saf.or.jp

2014/10/20

大貫勇輔さん出演 10/25TV東京「クロスロード」、NBAバレエ団「Dracula」

マシュー・ボーンの「ドリアングレイ」日本公演に主演し、またラスタ・トーマスの「ロック・ザ・バレエ」日本公演に、唯一の日本人キャストとして抜擢された大貫勇輔さん。
今度は、10月25日、26日のNBAバレエ団「Dracula/ドラキュラ」にも主演します。

その大貫さんを特集したドキュメンタリー番組が放映されます。

テレビ東京『クロスロード」
http://www.tv-tokyo.co.jp/crossroad/
2014年10月25日(土)夜10時30分~夜11時00分 

ダンサー・俳優 大貫勇輔26歳。 身長180センチ、日本人離れしたプロポーションと身体能力、表現力で、今、マシュー・ボーンをはじめとする世界中の著名演出家に注目されている。

今回、スーパーダンサーにして演出家のラスタ・トーマスの「ロック・ザ・バレエ」日本公演に、唯一の日本人キャストとして抜擢され、舞台に挑む。
ますます進化し続ける、大貫勇輔の奮闘の日々を追った。

彼は、どんな道を歩んでいくのだろう…。


大貫さんが主演するNBAバレエ団の「ドラキュラ」、大きな話題を呼んでおり、あちこちのメディアに取り上げられています。

【インタビュー】NBAバレエ団「Dracula」主演
大貫勇輔、ダンサーとしてのこれまでと、これから
http://astand.asahi.com/entertainment/starfile/ASGB3575HGB3UENI002.html?iref=com_rnavi

M・ピンク振り付けの「ドラキュラ」 NBAバレエ団が日本初演 主演・大貫勇輔
http://www.sankei.com/entertainments/news/141019/ent1410190013-n1.html

「ドラキュラ」甘美に…NBAバレエ団が日本初演
http://www.yomiuri.co.jp/culture/classic/clnews/02/20141007-OYT8T50115.html

こちらでは、大貫さんと、NBAバレエ団の芸術監督、久保紘一さんが和やかに対談し、また迫力あるリハーサル映像も観ることができます。公演がとても楽しみです。
http://youtu.be/WT7sTz-Eu68

ウェンディ・ウエーランのNYCB引退

10月18日に、NYCBで30年間踊った偉大なバレリーナ、ウェンディ・ウェーランが引退公演を行いました。

http://www.nytimes.com/2014/10/05/arts/dance/wendy-whelan-says-farewell-to-city-ballet.html

上演された演目は、

「夢遊病の女」 ジョージ・バランシン
「ダンシズ・アット・ア・ギャザリング」(ウェーランはアプリコット役) ジェローム・ロビンス
「コンチェルトDSCH」 アレクセイ・ラトマンスキー
「アフター・ザ・レイン」 クリストファー・ウィールダン
「By 2 With & From」新作
 Spring & Summer クリストファー・ウィールダン振付
 Autumn & Winter アレクセイ・ラトマンスキー振付

カーテンコールの動画 (NYCBオフィシャルのFacebookより)
https://www.facebook.com/video.php?v=10154739592210529

ウェンディ・ウェーランは、今までのどのバレリーナとも違った、現代的なバレリーナでした。引き締まった筋肉質の身体、長い手脚、動的な明快さ、ドラマティックでまるで別世界のような集中力をもち、男性振付家や芸術監督が未だ支配する世界において、強い意志をもって生き抜いた存在でした。

NYCBの歴史において、どの女性プリンシパルよりも幅広く変化に富むレパートリーを彼女は持っていました。ロマンティックバレエや古典から、コンテンポラリーまで並外れた多様性を誇っていました。バランシンやロビンスなどカンパニーのレパートリーを得意とし、その精神を体現していましたが、それよりもむしろ、新しいバレエ作品の創造で良く知られており、振付家の最良の作品を引き出すミューズとしての役割を果たしていました。

ウィリアム・フォーサイス、ウェイン・マクレガー、ヨルマ・エロ、バンジャマン・ミルピエ、トワイラ・サープ、リン・テイラー=コルベット、ピーター・マーティンスほか多くの振付家が彼女を起用してきました。NYCBのレパートリーでは、40作品も主演してきたとのことです。そして過去15年間においては、クリストファー・ウィールダンとアレクセイ・ラトマンスキーが、彼らのもっともすぐれた作品を彼女と作り上げてきました。

驚くべきことに、彼女のNYCB引退公演では、ラトマンスキーとウィールダンの二人が、彼女のために振付けた新作が上演されました。チケットは瞬く間に売り切れたとのことです。

ラトマンスキーは「まず私は彼女の脚の形に恋をしました」と語っています。「膝から踵、そして膝から腰までの長さは完璧な比率で、とても気品があって強靭です。動きのクオリティはこれらの構造に大きく依存し、彼女のたぐいまれな踊りのクオリティと官能性の理由がそこにあることを思い知らされました。彼女は偉大なバレリーナで、特別で並外れています」 彼女は、自分よりも20歳若いダンサーたちに混じって、ラトマンスキーと全くの新作を創造し、そしてそれら若いダンサーたちよりもずっと高いレベルでなんでもできる、と同僚のタイラー・アングルは語っています。

ウェーランは今でも高いレベルで踊ることができ、また今後も様々な振付家とコラボレーションし、自らのプロジェクト「Restless Creature」で踊り続ける予定ですが、47歳半でNYCBを去ることになります。多くの女性ダンサーは40歳前後で腰からのターンアウト、クラシックのテクニックの高い要求によってもたらされた深刻な身体の負担を感じ始め、関節や筋肉の衰えや怪我に見舞われるようになります。ウェーランは、果敢な技術への挑戦と成熟した芸術性をうまく操り踊り続けられた幸運な例で、怪我もほとんどしませんでしたが、2012年に腰の問題を抱えるようになりました。しかし、これも手術によって解決しました。

1984年、バランシンが亡くなった翌年にウェーランはNYCBに準団員として入団し、86年に正式な団員となります。鉤鼻の横顔、筋張った身体つき、バレリーナになるほど美しくないと自分で思い込み、誰かのお気に入りとなることもなかったため、人一倍の努力をしたとのことです。しかしその努力が実を結び、89年にはソリスト、91年にはプリンシパルに昇進します。自分自身がダンサーとして成功したと思ったのは、2001年にクリストファー・ウィールダンが彼女のために「ポリフォニア」を振付けたときでした。「私は、バランシンが死んだ後の世界でオーセンティックであろうと戦っていました。30歳になり、ジョック・ソトと踊り始め、ウィールダンが私のために作品を創り始め、そして私の世界が開けたのです」それは、長年のボーイフレンドだったニラス・マーティンス(ピーター・マーティンスの息子でNYCBの同僚)との辛い別れと時を同じくしていました。

「初めて、踊ることに魂を感じられるようになりました。コントロールされた強い女性でなくてはならないと長年思い続けた後で。その思い込みを乗り越え、ダンサーとしての自分が何なのか、自分のあるべき姿ではなく、自分自身が誰であるかということを見つけたのです」

クリストファー・ウィールダンは、「ポリフォニア」での彼女との出会いによって、振付家としての一歩を踏み出すことができたと語っています。この作品の後、彼女のために12もの作品を振付けました。中でも、2005年の「アフター・ザ・レイン」は非常に美しい作品で、彼の代表作の一つでもあります。「彼女は、ひとつの場所に安住しないことを教えてくれました。ウェンディを特別な存在たらしめているのは、抽象的な作品の中で、シンプルさを通して詩的な表現を行うことができる傑出した能力を持っていることです。まなざし、呼吸、彫刻のような形。彼女を取り巻く空気の中には、いつも物語が漂っていました」

アフター・ザ・レインの抜粋
http://youtu.be/MLsRfiD5gZA

ウェーランは年を重ねても、筋肉の驚異的なコントロールと技術的な正確さを通して、この世のものではないような、漂うような美しさを表現する力を失っていませんでした。しかしながら、NYCBにおいてバランシンやロビンスのレパートリーを踊る機会は減っており、カンパニーでの日々から離されていくことを彼女は感じ始め、30周年を機に、カンパニーを去ることを決めたのでした。

ウェーランが去ることを悲しいと語っていたピーター・マーティンスは、彼女は、カンパニーの歴史において、最も多くの外部の振付家と働いたダンサーだった、「信じがたいようなキャリアを築いた」と褒めたたえています。

NYCBを去った後も、ウェーランは「Restless Creature」で4人の若手振付家と作品を創り、来年1月から5月までアメリカ国内のツアーを行います。また、来年7月には、ロイヤル・バレエのエドワード・ワトソンとロンドンで新作の公演を行います。バレエ・カンパニーの芸術監督になることについては、目下のところは関心がないと語っています。

「誰よりも、私はミハエル・バリシニコフのキャリアが、私が今後向かっていく方向性の先例だと思っています。
彼は、考えられる限り幅広い分野の人々といつも新しいことを試している、常に動いているアーティストなのです。ダンスである必要もないのです、私はどんなことにでも挑戦したい」

ガーディアン紙では、彼女の美しい舞台写真のスライドショーを掲載しています。
http://www.theguardian.com/stage/gallery/2014/oct/17/wendy-whelan-farewell-nycb-ballerina-career-in-pictures

私も、NYCBの来日公演での「ポリフォニア」や、ニューヨークでのNYCB公演で何回か彼女の踊りを観ることができましたが、美しいプロポーション、圧倒的な芸術性に打ちのめされるような存在でした。公演後、たまたま入ったレストランで彼女とすれ違いましたが、意外と長身ではなかったけれどあまりの脚の長さに、同じ人間とは思えないと驚いたものでした。

ウェンディ・ウェーランのインスタグラムは、素敵な写真がよくアップされているので、おすすめです。
http://instagram.com/wendyw
ここにも、彼女の撮影した写真がまとめられています。
http://www.balletcatsandotherthings.com/

2014/10/18

ABTの2015年METシーズン

ABTの2015年春~夏のMETシーズンが発表されています。

http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=497

すでにリリースされていますが、アレクセイ・ラトマンスキー振付の新作「眠れる森の美女」が目玉です。5月29日初演でジリアン・マーフィとデヴィッド・ホールバーグが主演の予定。デザインは、レオン・バクストがバレエ・リュスのために1921年にデザインした衣装をもとに、トニー賞を受賞しているリチャード・ハドソンがデザインします。

また、ラー・ルボヴィッチの「オテロ」が5月21日より再演されます。

カンパニーの設立75周年を記念して、今までの代表的なレパートリーの中から選りすぐったレパートリープログラムも上演されます。5月11~16日の8公演。
フォーキンの「レ・シルフィード」、チューダーの「火の柱」「リラの園」、ロビンスの「ファンシー・フリー」、バランシンの「テーマとヴァリエーション」そしてアグネス・デ=ミルの「ロデオ」が上演されます。 ABTらしいこれらの作品がまとめて上演されるこのプログラムは、なかなか魅力的です。

全幕作品はほかに5作品。「ジゼル」、「ラ・バヤデール」(マカロワ版)、「ロミオとジュリエット」(マクミラン版)、「白鳥の湖」、そしてアシュトンの「シンデレラ」です。

このMETシーズンで、ジュリー・ケント、パロマ・ヘレーラそしてシオマラ・レイエスが引退します。急速にバレリーナ不足に見舞われたこともあり、今回も多くのゲストが出演します。

エフゲーニャ・オブラスツォーワ(「ロミオとジュリエット」)、ナタリア・オシポワ(「ジゼル」「眠れる森の美女」「ロミオとジュリエット」「ラ・バヤデール」)、オルガ・スミルノワとセミョーン・チュージン(「ラ・バヤデール」)、マリア・コチェトコワ(「ラ・バヤデール)、デニス・ニェダク(「ラ・バヤデール)、マリアネラ・ヌニェス(「シンデレラ」) 

ABTではもう踊りたくない、と退団したオシポワが、久々に帰ってきます。(一方、プリンシパルだったイワン・ワシーリエフは団員一覧から消えています)

NYTimesの記事
http://mobile.nytimes.com/blogs/artsbeat/2014/10/16/hallberg-and-osipova-to-dance-together-in-american-ballet-theaters-spring-season/?ref=dance

キャスティングを見ると、とにかく女性ダンサーに関してはゲスト公演の方が多いんではないかと思えるほど多いのと、ソリストレベルを育てようという意識が皆無なのが感じられます。珍しいのは、ミスティ・コープランドが「ロミオとジュリエット」「白鳥の湖」にキャスティングされていること。次のプリンシパル候補は彼女なんでしょうか。サラ・レーンが「眠れる森の美女」、ステラ・アブレラが「シンデレラ」で主演しますが、ABTファンには人気のある彼女たちは、実力のわりにあまりチャンスに恵まれていません。メトロポリタン歌劇場はとにかく巨大なので、席を埋めるために、知名度の高いゲストに依存する割合が高いようです。男性ソリストでは、先日ソリストに上がったばかりのジョゼフ・ゴラックがロミオ、眠れる森の美女、シンデレラに主演しています。

ディアナ・ヴィシニョーワが久しぶりにチュチュバレエに主演するのも話題で、ラトマンスキーの「眠れる森の美女」オーロラ役を踊ります。

今年のMETシーズンは、ホールバーグ、スターンズ、コルネホらが怪我をして緊急であちこちからゲストをかき集めたわけですが、今年は無事乗り切れるのでしょうか。一方で、プリンシパルなのにダニール・シムキンの出番が極端に少ないのも気になります。

2014/10/17

マライン・ラドマーカーがオランダ国立バレエに移籍

シュツットガルト・バレエのプリンシパル、マライン・ラドマーカーがオランダ国立バレエに移籍することが発表されました。2015年1月1日付。

http://www.marijnrademaker.com/m/

シュツットガルト・バレエには15年近く在籍していたラドマーカーですが、数年前からオランダ国立バレエでもゲスト出演していました。オランダ出身では数少ないトップダンサーで、移籍後も唯一のオランダ人プリンシパルとなります。

移籍した後も、ラドマーカーはシュツットガルト・バレエにはゲスト出演する予定なのだそうです。クランコ作品には定評のある彼ですが、ハンス・ファン=マネンでのシャープな表現力も大変素晴らしいものがあり、もちろん古典も踊れるので、大きな戦力になることでしょう。

それにしても、シュツットガルト・バレエ、ここ数年で退団するプリンシパル・ダンサーがあまりにも多くて、このカンパニーは大丈夫なのかと心配になってしまいます。ここ3年でも、カーチャ・ヴンシュ、ウィリアム・ムーア、アレクサンドル・ザイツェフ、エリザベス・メイソン、マリア・アイシュヴァルト、フィリップ・バランキエヴィッチ、エヴァン・マッキー、そして今回のマライン・ラドマーカー。スージン・カンも韓国国立バレエの芸術監督に就任したので、籍を残しているとはいえ、ほとんど出演していません。

ダニエル・カマルゴ、エリサ・バデネス、コンスタンティン・アレンなど、若くて非常に才能あふれるダンサーもたくさんいますが、それでもあまりにも世代交代が急なのに戸惑いを隠せません。来年の来日公演も誰が出演するのか、気になります。

とりあえずは、12月の東京バレエ団の「くるみ割り人形」で、マライン・ラドマーカーとエフゲーニャ・オブラスツォーワを楽しみにしようと思います。

http://www.nbs.or.jp/stages/1412_nuts/index.html

マラインの踊る「ドン・キホーテ」バジル役
http://vimeo.com/84137108

Don Quixote Elisa Badenes Marijn Rademaker debut from Heike Ballett on Vimeo.

パリ・オペラ座バレエのバックステージを違った視点でとらえた写真展

2013年9月から2014年7月まで、写真家のPierre-Elie de Pibracは1シーズン丸ごとパリ・オペラ座バレエと過ごしました。このシーズンは、ニコラ・ル=リッシュとブリジット・ルフェーブル芸術監督の最後のシーズンということで特別なものでした。Pierre-Elie de Pibracは、3つの写真シリーズを撮影するために、舞台裏に潜むことができました。

彼が撮影した写真は、In situ, dans les coulisses de l’Opéra de Parisという写真集にまとめられ、また11月23日まで、サンルイ島の Galerie Clémentine de la Féronnière で展示されています。

メイキング映像(「オネーギン」のリハーサルの様子ですが、足元のみ撮影されています)
http://youtu.be/9vRSdf1HoUI

ここで、3つのシリーズのうちの一つ、「Catharsis(カタルシス)」のスライドショーを観ることができます。
http://www.loeildelaphotographie.com/2014/10/16/exhibition/26346/pierre-elie-de-pibrac-backstage-at-l-opera-de-paris

「カタルシス」はダンサーの踊りを抽象的にとらえたシリーズです。ダンサーのエネルギー、そしてそのエネルギーがどうやって周囲に放たれていくかということをリサーチした結果生まれたものです。ダンサーの形ははっきりと映っていない者の、踊りのエネルギーが迫ってきて、ダンスを観たときに観客が受け取る力が感じられます。

こちらの記事では、Pierre-Elie de Pibracのインタビューが掲載されています。
http://www.citazine.fr/diaporama/photographe-dans-opera-garnier

写真集を撮影したいと申し出たとき、ブリジット・ルフェーブルは快諾したそうです。ただし、ダンサーの邪魔は絶対にしないことが条件でした。最初の1枚の写真を撮影するのに、数か月かかったそうです。毎日ランドマークを観察し、そしてカンパニーに受け入れられるように努力しました。何よりも、ダンサーたちに気づかれないように存在を消し、柱や壁の一部になったそうです。「彼らに拒絶されているという感覚はなく、彼らから友情と共犯関係の空気を感じるようになりました。自分たちが想像していたほど厳しい世界ではなかった。もちろん競争はあるけど、それはこのような場所では起こりうること。彼らのものすごい集中力には感銘を受けました」

「Confessions」と題したモノクロのシリーズでは、ダンサーに非常に接近して撮影され、いくつかの写真ではダンサーの息遣いも感じることができました。オペラ座に撮影のために足を踏み入れる前に、1年をかけて、適用される技術、適切な目的、自分が想像した写真のための道具をリサーチしました。モノクロ写真のシリーズでは、レンジファインダーのカメラを使いました。これは音を立てないので、ダンサーたちの邪魔にならないで近くで撮影することができたそうです。

「Analogia」という3つ目のシリーズでは、特に広いアングルを捉えるためのデバイスを見つけました。ガルニエという特別の場所にダンサーを置いたのがこのシリーズです。ここで彼は、この伝説的で美しいガルニエはどうやってその住民を得たのかを描こうとしました。この場所にはダンサーに強い影響を与えているとのことです。世界で最も大きなカンパニーであり、ガルニエは他には絶対にない劇場です。ダンサーたちは一日を過ごし、食事をし、時には寝ることもあります。バロック建築が彼らを包んでいます。

1年間、Pierre-Elie de Pibracは毎日ガルニエに通いました。同じ写真を撮影するのに7時間をかけたこともあります。本を作っている最中には、どのような物語を語りたいのか理解していました。撮影した翌日には、何が足りないのはすぐわかりました。彼はガルニエのすべての隅に潜り込んでいました。テクニシャンの助けでリスクを冒したこともありました。「セット、照明、飛びぬけた芸術の世界であり、一つの都市でした」撮影が終わった今、オペラ座とダンサーたちは彼がいなくなって寂しく思っているそうです。「終わったころには、すべてを諳んじていました。眠るときには音楽が聞こえてきて、どの部分に間違いがあるのかもわかりました」

2年間の作業、うち一年間はガルニエの中に入り浸ったあとで、Pierre-Elie de Pibracは、写真家の仕事に対する考えも変わったそうです。「ルポルタージュを作る際に、対象を知るために少なくとも1年間は必ず必要だと思いました。私たちは、誰か別の存在、カメレオンにならなければなりません」


写真集の内容も興味深いもので、3つの写真のシリーズのほか、
オーレリー・デュポン、ニコラ・ル=リッシュ、エレオノラ・アバニャート、そして若手ダンサーたちとのインタビュー。
イザベル・シアラヴォラのアデューとインタビュー
アマンディーヌ・アルビッソンのエトワール任命
バンジャマン・ミルピエ
についても取り上げているとのことです。

http://www.pierreeliedepibrac.com/

EXHIBITION
In situ - Dans les coulisses de l’Opéra de Paris
Photographs by Pierre-Elie de Pibrac
October 10th - November 23rd 2014
Galerie Clémentine de la Féronnière
51 rue saint-Louis-en-l’île
75004 Paris
France

http://www.galerieclementinedelaferonniere.fr/

BOOK
In situ - Dans les coulisses de l’Opéra
Photographs by Pierre-Elie de Pibrac
Publisher: Clémentine de la Féronnière
24 x 32,5 cm
368 pages
72 €

写真集はフランス語のほか英語でも書かれていてバイリンガル対応、約250枚の写真が掲載されているそうです。367ページ。ガルニエのブティック、フランスのアマゾン、そしてFNACなどで購入可能です。

http://boutique.operadeparis.fr/produit/in-situ-dans-les-coulisses-du-palais-garnier

http://www.amazon.fr/Situ-Dans-coulisses-lOp%C3%A9ra-Paris/dp/2954226633

2014/10/15

SWAN MAGAZINE 2014 秋号 (スワンマガジン)

SWAN MAGAZINE 2014 秋号が発売されています。発売日から少し経ってしまいましたが、大変充実した内容なのでご紹介しますね。

http://swanmagazine.heibonsha.co.jp/

巻頭カラーは、エトワールに夢中!特別篇ということで
ニコラ・ル・リッシュ アデュー公演を取り上げています。公演のレポートや写真、そして今までのベストショット。2010年のスワンマガジンの「エトワールに夢中」で楽屋でのリラックスしたニコラを紹介した時の写真なども掲載されています。

有吉京子さんの「SWAN ドイツ編」がスタートするということで、ハンブルグ・バレエのバレエ週間が特集されています。ノイマイヤーの新作「タチヤーナ」、そしてその「タチヤーナ」の元となったクランコの「オネーギン」のレポート、そして恒例の「ニジンスキー・ガラ」(今年はロシアがテーマなので、ボリショイのダンサーが多数出演)のレポートと盛りだくさんです。今年の「ニジンスキー・ガラ」は、引退するアンナ・ポリカルポヴァ、そしてNDTに移籍するティアゴ・ボアディンのさよなら公演ともなりました。

[特別企画]新国立劇場バレエ団「パゴダの王子」/ビントレー監督時代を振り返る
では、「パゴダの王子」のレビューと共に、ビントレー時代に上演された数々の作品を紹介しています。つい先日のことだったのに、すでにビントレー時代は過去のことになってしまったのだと思うと非常に寂しいです。写真を見ても、彼の時代にはユニークでバラエティに富んだ作品を上演してくれて、本当に楽しかったですよね。

インタビュー記事がとても充実しています。

スペイン国立ダンスカンパニーを率いて12月に来日するジョゼ・マルティネスの話は、とても興味深く、公演がとても楽しみになりました。前監督ナチョ・ドゥアトの時には彼の作品ばかりをカンパニーが踊っていましたが、マルティネスは、文化省から、クラシック、ネオクラシックからコンテンポラリーまで幅広いレパートリーを踊ることを求められました。したがって、女性ダンサーたちにはポワントで踊る訓練をしてもらうことになったとのことです。今回はダンサー28名を含む総勢40名での来日で、上演作品も人気のオハッド・ナハリン「マイナス16」、フォーサイス「ヘルマン・シュメルマン」、キリアン「堕ちた天使」、そしてガリり「Sub」、マルティネスの『天井桟敷の人々」と、20世紀、21世紀のすぐれた作品ばかりで、期待に胸が膨らみます。

ヴァルナ国際コンクールで銀賞に輝き、カルポー賞も受賞したオニール八菜さんのインタビューも。ヴァルナ国際コンクールなどについて語ってくれました。

2013年までスコティッシュ・バレエのプリンシパルを務めていた佐藤智美さんのインタビューも読みごたえがあります。154cmと非常に小柄であるにもかかわらず、幅広いレパートリーを持ち、数多くの作品で主演してきた彼女、並大抵の努力ではプリンシパルになれなかったでしょう。身長が足りないというだけで門戸を閉ざしている日本のバレエ団は、何か大事なものを見失っているのではないかと思ってしまいます。怪我をきっかけに退団し、バレエを続けながら新しい道を開いていこうとする彼女、ますますの活躍に期待したいですね。

そして「SWAN ドイツ編」が始まりました。シュツットガルトで行われたガラ公演をきっかけに、ノイマイヤーが「オテロ」に出演するダンサーのオーディションをするというところから始まります。去年舞台を観た「オテロ」がモチーフなので、私にとってはとても楽しめた回でした。役作りをするというのはどういうことなのか、バレエに情熱を持つというのはどういうことなのかが、精神性豊かに描かれています。まだ「オテロ」という作品が完成していない、という時代設定なのもとても興味深いです。有吉さんの作画も非常に美しいですね。この先の展開も待ちきれません。

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さて、有吉京子さんの「SWAN」の原画も展示されている、「わたしのマーガレット展」が現在、森アーツセンターギャラリーにて開催されています。

http://my-margaret.jp/

私はまだ観に行けていないのですが、観に行った友人の話では、とても充実していて素晴らしい展示だとのこと。さすがに凄く人気があって混雑しているそうですが…会期中に足を運ばなくては。

「エースをねらえ!」「ダンシング・ゼネレーション」「伊賀野カバ丸」「ホットロード」「愛してナイト」「ベルサイユのばら」「オルフェウスの窓」「花より男子」といった名作の数々の原画などが観られるようです。また、オスカルとアンドレの等身大立像が展示されていて、写真撮影もOKだとのことです。

開催日時 2014年9月20日(土)~ 10月19日(日)
※会期中無休
開館時間 午前10時 ~ 午後8時
最終入場 午後7時半
会  場 森アーツセンターギャラリー(東京・六本木ヒルズ)
〒106-6150 東京都港区六本木 6-10-1
六本木ヒルズ森タワー 52F
主  催 集英社、 東京新聞、 TBS、 ローソンチケット、 森アーツセンター
特別協賛 KDDI
お問い合わせ 0570-063-050(10:00 ~ 20:00 / ローソンチケット内)

2014/10/14

ベネッシュ・インスティテュートのジョーン・ベネッシュが逝去

舞踊記譜法の一つであるベネッシュ・ムーヴメント・ノーテーションを開発し、ベネッシュ・インスティテュートの共同設立者であるジョーン・ベネッシュが逝去しました。94歳でした。

http://www.rad.org.uk/news/joan-benesh

ベネッシュ・ムーヴメント・ノーテーションは、1956年にジョーンとその夫ルドルフが初めて文字化したもので、人間の動きを記録するための方法です。以来、世界中のダンス・カンパニーで採用されてきました。

1920年に生まれ、リディア・ソコロワに師事したジョーン・ベネッシュは、第二次世界大戦中は商業舞台に立っていましたが、1950年にロイヤル・オペラカンパニー、翌年にはサドラーズ・ウェルズ・ロイヤル・バレエに入団します。57年にはロイヤル・バレエのスタッフとなり、63年にはベネッシュ・インスティチュートを設立。76年に、校長を退任します。

1947年より、ルドルフとジョーンはベネッシュ・ムーヴメント・ノーテーションの開発に取り掛かり8年を費やします。1955年にこのノーテーションはロイヤルオペラハウスで初めて発表され、1958年には、ベネッシュ・ダンス・ノーテーションへの招待、という本が出版されます。同じ年に開催されたブリュッセルでの万博での英国館でも展示されました。

現在ベネッシュ・インスティテュートの代表を務めるサー・ピーター・ライトは、「ジョーン・ベネッシュは、夫のルドルフとともに、ダンスやほかのすべてのムーヴメントが記録され、分析され、そして再現する方法の革命をもたらしました。何千人もの振付家、ダンサー、教師、スポーツ選手が、彼女が人生をささげたこの仕事によって恩恵を受けました。ベネッシュ・ノーテーションのために彼女が戦う時の、彼女の献身、疲れを知らないエネルギーを私は忘れないでしょう。このように尽くした人生の後で安らかに眠ってほしい」と弔辞をささげています。

RAD(ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス)と統合されたベネッシュ・インスティチュートは、1962年にルドルフ・ベネッシュを会長として設立されました。1750ものベネッシュ・ムーヴメント・ノーテーションのスコアが書かれ、調査、レパートリーからダンスを教えること、そして動きの分析に活用されています。RADのシラバスの中にあるエクササイズやダンスはこのベネッシュ・ムーヴメント・ノーテーションによって記録され、これによって教師たちは共通言語によって作品を学ぶことができます。言葉による記録や映像のみよりも、これを使うことでより一層詳細に作品を知ることができるのです。

ベネッシュ・ムーヴメント・ノーテーションは、新国立劇場バレエ団でも採用されているそうです。

2014/10/12

10/11 K-BALLET COMPANY「カルメン」

http://www.k-ballet.co.jp/performances/2014carmen

ドン・ホセ:宮尾俊太郎
カルメン:佐々部佳代
エスカミーリョ:遅沢佑介
ミカエラ:浅野真由香
モラレス:伊坂文月
スニガ:スチュアート・キャシディ

演出・振付:熊川哲也
音楽:ジョルジュ・ビゼー
原台本:アンリ・メイヤック/リュドヴィク・アレヴィ(プロスペル・メリメの小説による)
舞台美術:ダニエル・オストリング
衣装:マーク・ブルーメンフェルド
照明:足立恒
指揮:福田一雄

K-BALLET COMPANYの15周年を記念して新制作された「カルメン」。以前、K-BALLET COMPANYはローラン・プティの「カルメン」を上演したことがあるのだが、今回は、プティ版のような変化球ではない。オペラの「カルメン」を忠実にバレエ化したような、オーソドックスな演出を熊川さんは心がけたという。

まず、目を引くのは、メトロポリタン・オペラで「ランメルモールのルチア」などを手掛けてきたダニエル・オストリングによる舞台装置。シンプルなのだが、スペインの強い光と乾いた大地を思わせるような、力強い大きな構造物が立っており、古典的でありながらモダンだ。日本の舞台ではないような、まさにどこか外国のオペラハウスでの公演を観ているような錯覚にとらわれるほどだ。舞台装置一つで物語に大きな説得力が加わるのだから、世界のトップの舞台美術家は違う。特にラストシーンでの装置がもたらすドラマティックな効果は実に見事であった。

K-BALLET COMPANYは、最近、ますますカンパニー全体のレベルが高くなっていることを実感する。冒頭に登場する衛兵たちを演じる男性ダンサーたちの踊りにはキレがあり、みな高いテクニックを備えている。工場の労働者たちや娼婦、町の人々などの女性ダンサーたちは、日本人でありながら、ラテンの雰囲気を出すのが上手くて、セクシーでパワフルだ。密輸業者、バンデリュロス(闘牛士たち)、大道芸人などの群舞、そしてソリストの見せ場がたっぷりあり、全体的に饒舌なダンスを通じて物語がスピーディに展開していくし、その群舞のレベルが高いので、楽しめる作品に仕上がっていた。

カルメンを演じる佐々部佳代さんを観るのは初めて。目を惹く華があるし、妖艶でありながらも誇り高さをも感じさせた。熊川さんが語ったことによれば、カルメンを演じるバレリーナには2タイプあって、魔性の女を演じられる演技派タイプと、バレエ作品なので踊りで観客を魅了するタイプがいるそうで、彼は、小手先の演技ではなく、彼の振付を踊れば自然とカルメンその人になるのが理想だと考えているとのこと。確かに佐々部さんは、大げさなところや取ってつけたような顔での演技というものではなくて、踊りを通してカルメンのキャラクターを表現できていたように感じられた。ダイナミックでしなやかな動きができるし、気高さの中に自然な色香があった。

ドン・ホセ役は宮尾俊太郎さん。長身でハンサムだけどやや線が細めで内向的なところが、いわばダメ男であるところのドン・ホセには合っているように感じられた。せっかくプロポーションはいいのだが、踊りの精度はもう少しあげてほしいところである。ただ、この役に気持ちはとても良く入っていて、特に最後、カルメンの心変わりに耐え切れず、苦悩のあげくに彼女を殺してしまうところに至る心理は上手く演じていて、思わず彼に同情してしまったほどだ。愛する女に裏切られ、愛憎の中で葛藤して混乱に陥り正気を失うまでの過程を細かく演じることができていて、良かった。

振付の中で、とても面白い工夫がされていたのが、1幕、逮捕されたカルメンが腕を紐で縛られているのだが、その紐の端をドン・ホセが持って、紐でつながった状態で踊るパ・ド・ドゥだ。二人の関係が変化していく様子もこのパ・ド・ドゥで物語ることができていて、とても効果的な演出になっていたと思う。一瞬その紐から手を放してしまった隙に、カルメンに逃げられてしまうところまで、とてもうまくできている。

目を引いたのはエルカミーリョ役の遅沢さん。外連味たっぷりの踊りが魅せてくれるし、テクニック的にはさすがに宮尾さんより2枚も3枚も上手。別の日には彼もドン・ホセを演じているというのでそれも観てみたい。終盤には、「ドン・キホーテ」のエスパーダさながらに闘牛士軍団を引き連れて、一瞬違うバレエを観ているのか、と思ったほどであった。小さな役であったけど、マヌエリータ役の山田蘭さんの悲痛なまでの美しさ、そして演技力はとても印象的だったし、狂言回しのように登場する娼婦役の湊まり恵さんもうまい。スニガ役のスチュアート・キャシディはさすがの重厚な存在感であった。また、清らかな浅野真由香さんのミカエラも強い印象を残した。

オーソドックスなつくりでありながら、ダンスでぐいぐいと話を進めていくスタイル、わかりやすい筋立て、そして舞台装置と相俟ってのドラマティックな効果もあって、だれでも楽しめるような作品に仕上がった「カルメン」であった。カンパニーは踊りのレベルも、演技力もとても高く、生きの良いダンサーがそろっていて充実ぶりがうかがえた。ぜひともお勧めしたいバレエの舞台である。

熊川さんのドン・ホセも観たかったけど、彼とロベルタ・マルケスが共演する公演はソールド・アウト。でも、それ以外のキャストでも間違いなく楽しめることでしょう。

こちらはプティ版のカルメン

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キエフ・バレエ「バレエ・リュスの祭典」出演者変更

今年12月27日(土)、28日(日)に予定してされている、キエフ・バレエ「バレエ・リュスの祭典」の来日公演につき、出演者の変更が発表されていました。

http://www.koransha.com/news/news_20141010.html

キエフ・バレエ 「バレエ・リュスの祭典」

12月27日(土)14:00開演 Bunkamuraオーチャードホール
12月28日(日)14:00開演 Bunkamuraオーチャードホール

公演の詳細
http://www.koransha.com/ballet/kiev2014/

◇出演者変更  第2部「シェヘラザード」
ファルフ・ルジマトフ  ⇒  イヴァン・プトロフ (元英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
ユリア・マハリナ    ⇒  エレーナ・フィリピエワ (キエフ・バレエプリンシパル)

出演者変更の詳細 9月上旬にタラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立歌劇場劇場総裁より、キエフ・バレエ来日公演の「バレエ・リュスの祭典」にゲスト出演を予定しているファルフ・ルジマトフ、ユリア・マハリナに関して、参加が不可能になったとの連絡が参りました。ウクライナ、ロシア間の政治的諸問題のため、両国間の文化的協力にも影響が及び、ロシア国籍の芸術家である彼らとキエフ・バレエとの共演ができないという決定に至ったとのことでした。 弊社といたしましても、劇場と出演者両者の合意を得て7月末から公演の優先予約受付を開始しているため、今回の劇場側の決定を覆してもらうべく、幾度となく交渉を続けて参りましたが、残念ながら合意が得られず、ルジマトフとマハリナの出演を断念してキャストの変更をせざるを得ないこととなりました。

変更後のキャストは、「シェヘラザード」"金の奴隷" 役に、元英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルで素晴らしいテクニックと情緒的な演技で人気実力ともに定評のあるイヴァン・プトロフがゲスト出演をいたします。"ゾベイダ"役には、前回の「シェヘラザード」でも素晴らしい演技を見せて場内に感動を呼び起こしたキエフ・バレエのプリンシパルであるエレーナ・フィリピエワが出演いたします。

弊社は、各国間の政治的諸問題が一日も早く解消され平和的解決に向けて事態が進展し、文化的交流に望まぬ影響を及ぼすことが無くなるよう願っております。


ウクライナとロシアの紛争が起きたときに、このような事態が起きてしまうのではないかと危惧していたことが起こってしまいましたね。現在は、日本人のダンサーもキエフで活動するのはビザの問題などで難しくなっているようです。

ウクライナ出身の優れたバレエ・ダンサーは非常に多く、ボリショイやマリインスキーでも、ザハロワ、ロパートキナ、サラファーノフ、マトヴィエンコらトップダンサーが多く活躍しています。彼らの活動も、滞りなくできるようになるのか、心配です。もちろん、キエフ・バレエも素晴らしいバレエ団ですし、今後のことが心配です。ルジマトフ、そしてマハリナのシェヘラザードは、とにかく圧倒的に凄いですし、今後観る機会があるかどうかもわからないので、今回出演がなくなってしまって非常に残念です。招聘元である光藍社さんも頑張ってくれたようなのではありますが…。

どうか両国の紛争が平和的に解決し、文化交流に支障が無くなることを祈っています。フィリピエワのゾベイダも素晴らしいので、見ごたえがあることでしょう。

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